1.減価償却費か?消耗品費か?
企業会計では、少額の減価償却資産を取得した場合には重要性の原則が適用されます。つまり、重要性の乏しいと判断された場合には、本来の厳密な会計処理によらず、その購入時又は払出時に費用として処理する方法も例外として認めています(企業会計原則注解1)。では、減価償却した場合とどのように異なる結果となるか次の例題で見てみましょう。
[例題]
⑴ 当期首に耐用年数3年の器具備品を6万円で取得した。
 ⑵ 残存価額は0(零)円とし、償却方法は定額法で行う。
   したがって、毎期の償却費は2万円となる。
 ⑶ 耐用年数を経過するまでの各期間の売上高は10万円、販売費3万円とする。

減価償却費の計上を選んだ場合の3年間の損益計算書を作成すると…


取得価額6万円が減価償却費として毎期2万円ずつ費用に計上され、結果、毎期の利益が5万円と同額になります。
しかし、この備品を重要性が乏しいと判断し、消耗品費として当期に費用計上した場合の3年間の損益計算書を作成すると...

1年目は利益が1万円と少なくなりますが、2年目と3年目は償却費2万円の計上がないため当期利益が7万円と大幅に上がります。
ところが、3年間の合計額を見てみるといずれをとっても費用に計上される金額の総額は備品の取得価額6万円と同じであり、当然当期利益の合計額も15万円と同じになります。
もちろん、法人税の支払いも1年目は減価償却費を選択した場合は当期利益が毎期同じであるから法人税の額も毎期同額になります。消耗品費を選択した場合の法人税は1年目の法人税はその支払いを抑えられても、2年目以降は増えることになります。(例えば、法人税の税率を30%であると仮定したら減価償却の場合には、毎期の法人税は1万5千円です。消耗品費として処理した場合には1年目の法人税は3千円ですが、2年目と3年目は2万1千円となります。ただし、3年間で支払う法人税の合計額は4万5千円とどちらの方法をとっても変わりません。

2.早期に費用処理するメリット
少額の減価償却資産を消耗品費として早期に費用処理するメリットには複数ありますが、主なものとしては、次のことが挙げられます。
⑴ 固定資産の取得に投下した資金を早期に回収できること。
 ⑵ 減価償却費との差額分だけ当期の法人税の支払いを抑えられ、その支出が抑えられた
   資金を運用することにより将来の法人税の支払いのために蓄えることができること。
 ⑶ 償却資産税の対象から外され、結果、償却資産税の支払いを抑えられること。

なお、上記⑵のメリットは固定資産に限ることではありません。費用は早期に計上し、収益はなるべく後に計上することにより⑵のメリットを受けることができます。

3.法人税法では3つのパターンがある
法人税の計算上、期末に所有する減価償却資産については減価償却の方法により費用計上をすることを原則としていますが、例外として次のように一時に費用計上又は3年間で均等額を費用計上することが認められています。
⑴ 取得価額が10万円未満の少額資産(法令133)
減価償却資産のうち取得価額が10万円未満のものについては、事業の用に供した事業年度において、その取得価額を全額費用に計上した場合には、その費用処理が認められます。
⑵ 取得価額が30万円未満の少額資産の特例(措法67の5)
次の法人に該当する場合には、取得価額が30万円未満である減価償却資産を事業の用に供した場合にも、その取得価額の全額を費用計上することができます。ただし、こちらは1年間で300万円までという限度があります。
① 青色申告法人である中小企業者(期末資本金の額が1億円以下の法人をいいます。
   ただし、大規模法人の子会社など一定の法人は除かれます。)であること。
 ② 常時使用する従業員の数が1,000人以下であること。

⑶ 取得価額が20万円未満の一括償却資産(法令133の2)
取得価額が20万円未満の減価償却資産については、減価償却や上記⑴と⑵のほか、その全部又は一部の合計額を一括し、これを3年間で均等額を費用計上していく方法を選択することもできます。

4.償却資産税との関係
上記3で述べた⑴の取得価額10万円未満の少額資産と⑶の取得価額が20万円未満の一括償却資産については、償却資産税の対象とならないメリットもあります。これに対して、取得価額が20万円以上となった減価償却資産についてはたとえ30万円未満で⑶の少額資産の特例を受けても償却資産税の対象となりますので注意が必要です。

5.まとめ
少額の固定資産の費用計上の方法には複数ありますから、会社の状況に応じて選択しましょう。