1.売上原価と在庫
前回、前々回と売上について確認しました。今回は、在庫について確認していきましょう。
在庫もまた、売上と同じく、税務調査で必ず確認される重要な項目です。
なぜなら、在庫は利益調整が行いやすく、またうっかりミスで、漏れることも多いからです。
売上原価は、下記の計算方法で、求めることができます。

「売上原価=期首棚卸高+当期仕入高-期末棚卸高」


在庫(期末棚卸高)を少なくすれば、売上原価が大きくなり、結果として利益が少なくなります。
利益がたくさん出そうな場合は、意図的に在庫の金額を調整して利益を減らそうという経営者もいるため、税務調査では必ず在庫についての調査が行われます。

2.売上原価とは
それでは、売上原価とは、法人税法上どのように規定されているか見てみましょう。

「内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、その事業年度の損金の額に算入すべき
金額は、別段定めがあるものを除き、その事業年度の収益に係る売上原価、完成原価
その他、これらに準ずる原価の額」と定められています。(法22条)

つまり、当期の売上に対応する部分は、すべて売上原価となり、残りの部分が在庫(期末棚卸高)となります。
このように当期の売上に対応する部分は、すべて売上原価として計上しなければならないため、利益を見ながら、在庫の金額を調整するということは、一切認められていません。

3.在庫計上の注意点
それでは、在庫を計上する際に、どのような点に注意すればよいか見ていきましょう。
 
①原資期資料の保管
在庫に限らず、税務調査では必ず原資資料を確認します。必ず原資資料を保管しておき、その原資資料から、在庫をどのように計算したのか説明できるようにしておきましょう。原資資料とは、取引の流れがわかる発注書、納品書、伝票、棚卸表をいいます。 
 
②棚卸除外、計上漏れがないかの確認
意図的に在庫を少なくすること(棚卸除外)は、もってのほかです。意図的な棚卸除外は不正であり、重加算税の対象となります。また期末の在庫がうっかり漏れていないかの確認が大切です。特に倉庫や仕入先等に預けている商品や未着品については、漏れやすいため、注意が必要です。 
 
③評価損、廃棄損の妥当性
評価損、廃棄損については、根拠となる資料を保管し、調査の際に説明できるように準備をしておきましょう。また廃棄損を計上しているのに、実はまだ倉庫に残っていたということがないように、現物確認も必要です。廃棄をする場合には、廃棄する商品の写真を撮ったり、マニフェスト(産業廃棄物管理表。廃棄物の処理が適正に実施されたかどうかを確認するために作成される書類)を残すなど、証拠を残しておきましょう。 
 
④引取運賃等の付随費用が棚卸資産の取得価額に含まれているか
仕入の際の付随費用が取得価格に含まれているかを確認しておきましょう。付随費用とは、引取運賃、運送保険料、購入手数料などをいいます。また輸入の場合には、輸入関税も取得価額に含まれます。

4.税務調査で注意したいポイント
在庫に関して、税務調査で注意したいポイントを確認しましょう。
 
1)税務調査の方法
税務調査では、決算後の売上と決算時点での在庫を一つ一つ照らし合わせて確認されます。
売上から見る場合は、決算直後の売上が、どの在庫を売り上げたのかを確認します。
仕入れから見る場合は、決算直前に仕入れた商品をいつ売ったのか、まだ売っていなければ、在庫として残っているかどうかを確認します。
 
2)倉庫に保管していない在庫
取次だけを行っている場合や、すでに倉庫から出荷したが、請求を上げていない場合などは、在庫の計上漏れが指摘される場合があります。また後者の場合は、売上の計上漏れの可能性もあります。
 
3)過去と比べて、在庫比率が大幅に変動している
過去と比べて、在庫比率が大幅に変動している場合は、その理由を尋ねられます。
処分した、安く仕入れることができた、バーゲンを行ったなどの理由を説明できるように準備をしておきましょう。
 
4)税務署に提出した届出と在庫の評価方法が合っているか
在庫の評価方法には、複数の評価方法があります。在庫の評価は、税務署に届出をした評価方法で行わなければなりませんが、いつのまにか届出をした評価方法と変わってしまっている場合があります。

5.まとめ
今回は売上原価と在庫についてご説明いたしました。
このように売上原価と在庫についても、税務調査では、さまざまな資料を確認されますので、日頃からきちんとした資料の整理・保管を心掛けていきましょう。