1.はじめに
 前回は、寄付金の概要についてご説明いたしました。今回は、寄付金の税務上の否認事例について見ていきましょう。

2.売上値引きが寄付金と認定された事例
 【概要】
A社は子会社であるB社に対して、商品を販売していました。子会社B社は当期、多額の赤字が見込まれることから、B社に対して販売した商品の売上値引きを行いました。
裁判での争点は、売上値引きが寄付金に該当するかが争われましたが、寄付金として取り扱うと判定されました。(東京地方裁判所 平成3年11月7日判決)

【解説】
本件の売上値引きは、A社がB社に対して売上債権の一部を免除することにより、関連会社の損失補てんを行っています。この行為は、実質的に関連会社に対する経済的利益の無償の供与に該当し、寄付金に該当すると判決が下されました。
そのため、全額経費とすることはできず、一般寄付金の損金算入限度額を超える部分は、経費となりません。
売上値引きとは、売上品について量目不足・品質不良等があった場合に一定の具体的な算定根拠に基づいて行われるものを言います。本件の売上値引きは、通常の売上値引きとは性質が異なるため、売上値引きとは認められませんでした。
今回のケースから、寄付金に該当するかどうかは、名目ではなく、取引の実態によって判断されることがご理解いただけるでしょう。

3.親子会社間の無利息融資
 【概要】
親会社が子会社に対して無利子で融資を行った事例です。
「親子会社間の無利息融資に係る利息相当額が収益に該当するか」と「親子会社間における商取引が寄付金の除外費用(寄付金に該当しない)かどうか」が争点となりました。
判決では、無利息融資は無償の役務の提供に該当し、収益となる。また寄付金の除外費用には該当しないという判決が下されました。(大阪高等裁判所 昭和53年3月30日判決)

【解説】
 本件の無利息融資は「役務の提供」に該当します。「役務の提供」とは、人的労務提供だけでなく、資産の融資なども含みます。よって、無利息融資の場合は、利息相当額の収入があったものとして、取り扱います。また親子会社間の無利息融資は、寄付金の除外費用には該当しないため、利息相当額のうち、一般寄付金の損金算入限度額を超える部分は、経費として認められません。

4.法人の役員が個人として負担すべきもの
 【概要】
E社は、E社の会長F氏の出身地にある神社の改修工事に伴い多額の寄付をしました。
E社は、寄付を行う十分な理由があったと主張しましたが、裁判所は、寄付行為の主体はF氏にあると判断しました。F氏が負担すべき費用をE社が代わりに負担し、その弁済を求めないものであるため、F氏に対する役員賞与として取り扱うこととされました。
(徳島地方裁判所 平成5年7月16日判決)

【解説】
本件は、法人が支出した寄付行為の主体が個人か法人かで争われた事例です。
つまり、法人が支出した寄付金であっても、役員が負担すべきと認められるものは、その役員に対する給与となります。本件においては、「F氏が取締役会の決議前に承認している」
「神社側では寄付の受入れ手続きについてF氏を中心として行っている」等の事実から、上記のような判決が下されました。
このような場合、法人に対しては法人税、役員に対しては所得税が課せられることになります。

5.まとめ
 今回は寄付金の税務上の否認事例をご紹介いたしました。
いずれのケースも、寄付という名目ではなく、取引の実態で判断されていることがご理解いただけたでしょうか。ご自分では、経費になると思っていたものが、経費と認められない部分が発生してしまう場合があります。寄付をする場合は、事前にSMC税理士法人の担当者までご相談ください。