会社にお金が残らない本当の理由をご存知でしょうか?

先日ある経営者さんからこんなご相談がありました。

「僕の会社は毎年黒字経営なのに、キャッシュがまったく残らないのですよ。
でも、どうやったらお金が借りられるのか・・・このままじゃ倒産してしまうのではないか・・・そればかり考えていて、正直言ってすごく不安なんです。」

皆さんは「黒字倒産」という言葉を聞いたことはありますか?
黒字倒産とは、文字通り黒字であるにもかかわらず倒産してしまうことをいいます。
会社に利益がでているのに、会社が借入金や仕入代金といった債務の支払ができなくなり、会社としての活動を続けていけなくなった状態になる・・・。

倒産した企業の財務データ分析した調査結果によると、赤字だった起業の割合は55.3%でした。
約半数の会社は赤字ではないのに「黒字倒産」したことになります。

一方で、赤字決算を発表する企業がありますが、赤字でありながら倒産はしていません。
この事例は決して特殊なものではなく、倒産していない企業の実に約26.2%が赤字決算でした。

何故そんなことが起きてしまうのでしょう?

今日は会社にキャッシュが残らない本当の理由を説明します。

「キャッシュの減少①」

まずは「損益」について見ていきましょう。
製造業の会社を例に考えてみます。

製品を作るのに、材料費、人件費、経費等、合わせて1,000円支払ったとします。
これが製品を作るための原価となります。

また、この製品を販売するために、広告宣伝費として500円払いました。
この製品を販売するためにかかった費用は製造費用1,000円と販売費用500円の
合計額、1,500円となります。

そしてこの製品を1,800円で売ったとします。

これで、当期の利益がいくらになるかというと、収入である1,800円から支出である1,500円をひいて、利益300円となります。つまり黒字企業です。

<損益合計>
製品売上 1,800円
材料費    500円
人件費    300円
経費等    200円
広告費    500円
費用合計 1,500円
差引利益   300円

では同じ条件をもとに、今度は「キャッシュの増減」を見ていきましょう。

<キャッシュの増減>
製品売上 1,800円
材料費    500円
人件費    300円
経費等    200円
広告費    500円
費用合計 1,500円
増加     300円

前提条件がこれだけだと、黒字=キャッシュの増加となるわけです。
ところが会社の取引はこんなに単純ではありません。

次は、条件を追加して損益とキャッシュの動きを見ていきたいと思います。

「キャッシュの減少②」

さきほどの会社が、借金の返済のために200円、土地の購入のために600円のキャッシュが支払ったとします。
借金の返済も、土地の購入も、当期の損益の計算には全く関係のないものです。

こういった損益の計算に登場しないものが、利益=キャッシュの増加にならない要因の一つです。

借金の返済と土地の購入を追加して、キャッシュの増減を見てみましょう!

<キャッシュの増減>
製品売上 1,800円
材料費    500円
人件費    300円
経費等    200円
広告費    500円
借入金返済  200円
土地購入   600円
支出合計 2,300円
収支    △500円

収入金額1,800円から支出合計金額2,300円を差し引くと、キャッシュは500円も減っています。

ここでのポイントは、損益計算書では300円の黒字にもかかわらず、キャッシュが500円も減っていることです。

なぜキャッシュが減ったのか?

「入ってきたお金=収入」と、「出て行ったお金=支出」を比べ、支出の方が収入より大きいとき、キャッシュは減少しています。
つまり黒字=キャッシュの増加ではない、という図式が成り立つわけですね。

会社に本当にお金が残らない本当の理由は、収入よりも支出の金額が大きい状態であって、赤字だからキャッシュがなくなるというわけではありません。

たとえ黒字であっても支出が大きく、借入金の返済や取引先への支払いが滞ってしまい、「黒字倒産」となるわけです。

つまり、会社経営においてもっとも重要なのは、「利益」ではなく「キャッシュ」なのです。

まとめ


多くの経営者は、売上を増やせば潰れない会社になると考えます。「利益至上主義」で会社の経営をし、時には無理な売上拡大や間違った節税対策、無計画な資金調達を繰り返していくことによって、経営者が気づかないうちに会社のお金がなくなっている・・・そんな間違った経営判断を下してしまうことがあります。

損益計算書で黒字だから安心していると、突然倒産してしまう・・・。
このようなことは、決してありえないことではありません。

弊社のお客さんの中にも、

「社長、先月の売上と利益はいくらでしたか?」
この質問に対して素早く回答できる経営者さんは沢山いらっしゃいますが、

「社長、先月の入ってきたお金と、出て行ったお金はいくらですか?」
この質問に対して口ごもる経営者さんも多いのです。

このコラムを読んでいる方が経営者の立場である場合、先月の売上はご存知ですよね?
しかし先月、現金として出ていったお金と入ってきたお金がどのくらいなのか、きちんと把握できていますでしょうか?

黒字倒産を避けるためにも、「利益=キャッシュの増加ではない!」
このからくりをしっかり理解しましょう!

また「黒字経営なのにキャッシュが残らない」という症状は、他にも様々な要素が複雑に絡み合って現れてきます。
キャッシュを減らしてしまう要素を、一つ一つ丁寧に解きほぐしていくことからスタートしていきましょう。

次回はキャッシュがなくなる具体例を、さらに詳しく説明していきます。

投稿者プロフィール

菱刈 満里子
菱刈 満里子
大学卒業後、大手証券会社、文部科学省研究室秘書等を経験後SMC税理士法人に入社。
会計・税務業務に13年間携わった後、経営計画を中心とした未来経営に軸足を移す。
のべ150社以上の経営計画を作成、経営支援を行っている。