前回のコラムでは、「キャッシュの減少」について見ていきました。
利益が出ていても、それが単純なキャッシュの増加とは言えません。

黒字経営なのに十分なキャッシュを確保することが出来ず、借入金の返済や、取引先への支払いが滞り「黒字倒産」してしまう可能性があることは、前回以前のコラムをご覧になられた方はもうご理解いただけていると思います。

今回のコラムでは、キャッシュが減少してしまう理由について、まず損益計算書を使って見ていこうと思います。

キャッシュが減少してしまう理由として、皆さんは何が思い浮かぶでしょうか。

「キャッシュが減少」ということですから、お金を使うことがキャッシュを減少させる理由ですよね。
会計的に見ると、大まかに3つの使途に分けられます。

費用の支出
資産の購入
負債の返済

では、具体的に内容を見ていきましょう。

キャッシュが減少する理由 その①費用の支出

例えば、給与の支払い、消耗品の購入、電気、水道、ガスの料金の支払い、家賃の支払いなどが挙げられます。
②資産の購入、③負債の返済と区別するポイントは、少額の物品の購入や、サービスに対する対価であることです。
また、未払いであったものを支払った時や、前払いのために支払ったものは、資産の購入や負債の返済になることもあります。

費用の支出は、事業活動をする上では避けられないものです。
必要以上の支出をしないため、今どれくらい費用を支出しているのかを把握するためにも、費用と収益が集計されている損益計算書の読み方について、しっかり見ていきましょう。

損益計算書には、「一定の会計期間における企業の経営成績」が、表れています。つまり、その期にどれだけ費用が発生していて、どれだけ収益を上げられたかが集計されているものです。

経営者の皆さんが一番気になるのは、損益計算書の一番下にある当期純利益でしょう。ですから、損益計算書は普段からよく見ていらっしゃると思います。

当期の損益計算書を見た時に、「キャッシュの増加をもたらす収益」と「キャッシュの減少をもたらす費用」を比較し、収益の方が大きければ利益が出て経営は黒字、キャッシュが増加している状態です。
逆に、費用の方が大きければ利益が無く経営は赤字、キャッシュが減少している状態になります。

算式にすると、収益-費用=利益 で表されます。
(※ 尚、キャッシュの増加、減少をもたらさない収益、費用もあります。例えば、収益では掛売上、費用では減価償却費などです。)

これらのことを踏まえて、利益を上げる=キャッシュを増やそうとするならば、費用を抑えるか収入を上げる必要があります。

しかし、費用を抑えて収益を上げることができるでしょうか。

過剰に支出していた費用であれば、その分を削減すれば良いのですが、費用を抑えて収益を上げると言うことは、事業活動に附随して発生する費用を抑えるということですから、事業規模を小さくしてなおかつ収益も上げなければならなくなります。
費用を抑えられても、収益が上げられないので、キャッシュは増加しません。

このことから、単純に費用を抑えて収益を上げることはとても難しいことがわかると思います。

キャッシュが減少する理由 その②資産の購入

例えば、建物や機械の購入、商品の購入や売掛金の増加、リゾート会員権やゴルフ会員権の購入などが挙げられます。「費用の支出」と区別するポイントは、その資産の価格が10万を超えるかどうかです。

前回のコラムでもお話しましたが、物品の購入やサービスに対する対価について前払いのために支払ったものは「費用の支出」ではなく「資産の購入」になります。「前払金」という資産を購入したものとみなします。

キャッシュが減少する理由 その③負債の返済

負債の返済とは、文字通り借入金の返済のことを言いますが、その他にも買掛金の支払いや手形の支払いなども「負債の返済」とします。
物品の購入やサービスに対する対価について未払いであったものを支払った時も、「負債の返済」です。「未払金」という負債を返済したわけです。

次に貸借対照表を見ていきましょう。

貸借対照表には、「ある一時点での企業の財務状態を表すもの」が表されています。
さらにキャッシュに着目して言い換えると、設立後から今までのキャッシュの動きが反映されている財務諸表なのです。
全体的なキャッシュの動きを見るのなら、「一定の会計期間における企業の経営成績」を見ることが出来る損益計算書よりも、「ある一時点での企業の財務状態を表す」貸借対照表を見た方が、正しい判断が下せるということになりますね。

貸借対照表がどのように構成されているかご説明します。

貸借対照表の右側には、資金をどのように調達したのかを表す「負債」と「資本」、左側には調達した資金をどのように運用したのかを表す「資産」、そして右側と左側の合計はバランスをとっています。
これが「貸借対照表」またはバランスシートと言われる理由です。

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また、「負債」で表される調達方法は返済義務があり、いつかはお金を返す必要があります。
一方「資本」は返済義務がない調達方法です。

負債の中には、いわゆる借入金のほか、買掛金や支払手形など、お金そのものを借りたわけではないが支払いを待ってもらっているものや、前受金のように支払いを先に受けているもの、預り金のようにお金を一度預かった後に支払うものなどがあります。
資本には、資本金、準備金、剰余金などの自ら生み出したお金が集められています。

負債と資本、つまり調達した資金を使って会社は事業を行っていますが、一時点でその負債と資本の合計を上回る資産があればその差額が利益となっています。
ですから、利益の算式は 資産‐(負債+資本)=利益 となります。

では貸借対照表から見て、利益を増やすためにはどうすればよいのか。

1つ目は、資産を増やせばおのずと利益も増えます。
2つ目は、負債を減らせばおのずと利益も増えます。
つまり、貸借対照表では資産の増加、負債の減少があれば利益の増加につながるということになります。

しかし・・・
資産を増やす、負債を減らすという行為は、キャッシュが出ていきます。
 資産を増やす ⇒ キャッシュが減少
 負債を減らす ⇒ キャッシュが減少する。

もうお分かりでしょうか?
利益が出ているからキャッシュが増えて資産を購入でき、負債を減らすことが出来るのです。健全な貸借対照表というのは、「利益が先」なのです。

まとめ

キャッシュの減少の理由についてご理解いただけたでしょうか。
経費を支出する以外にも、資産を増やす、負債を減らす行為でキャッシュは減少しますので、損益計算書で利益が出ていたとしても、単純なキャッシュの増加にはなっていないことを覚えておいていただきたいです。

次回のコラムは、「在庫がキャッシュを減らす」です。

投稿者プロフィール

菱刈 満里子
菱刈 満里子
大学卒業後、大手証券会社、文部科学省研究室秘書等を経験後SMC税理士法人に入社。
会計・税務業務に13年間携わった後、経営計画を中心とした未来経営に軸足を移す。
のべ150社以上の経営計画を作成、経営支援を行っている。