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投資の様な支出、戦略的経費から経営を考える

投資の様な支出、戦略的経費から経営を考える

投稿日:2018年12月15日

更新日:2022年12月28日

経営者が知っておくべき「利益とキャッシュの最大化」セミナー

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重要な資金繰りの一つである「支出」のご説明をいたします。

経費の区分

まずは支出の第一に挙げられる「経費」からお話していきましょう。
経費の区分には、製造経費と販売費及び一般管理費という経費の発生した場所で分ける方法と、変動費売上に比例する経費)と固定費(売上に比例しない経費)という、売上との関係で分ける方法があります。

さらに戦略的経費と消費経費に分ける方法もあります。
戦略的経費とは、経費の支出の仕方次第で収益が上がったり下がったりするものです。経費と言いながら投資のような性格を持っている経費、つまり現在の支出の効果が、将来にわたって出てくる経費が戦略的経費です。

戦略的経費には人件費(給料・賞与・採用費・福利厚生費・教育研修費)・広告宣伝費・研究開発費・効果のある支払手数料などが含まれます。
一方、消費経費とは、支出の効果が測定することが困難な経費です。

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戦略的経費について

今回はこの戦略的経費についてお話をします。

経営というものは、売上と人件費とキャッシュの3つをコントロールできれば上手くいくと私は思っています。戦略的経費の中で最も大切なのが人件費です。会社である組織は、人と仕組みからできています。
言い換えれば、「組織の中身は人」と言っても良いかもしれません。

恐らくどの会社も、総経費のうちに人件費の占める割合はかなり高いと思います。私たち会計事務所業界は人件費が50%を超えているところが多いでしょう。

給与・賞与について

まずは給料・賞与です。
給料や賞与について、賃金規定や評価制度を整備したりすることは多少必要だと思いますが、整備すれば客観的な評価ができて社員が不満を持たない、などという幻想を多くの経営者が抱いています。この世の中にベストの賃金体系や評価制度などはないのです。

どんな制度であっても誰かが不満を持つものなのです。この幻想を抱く三流アホ経営者は、自分の意思決定に自信がないからなのです。自信がないために客観性を求めて社員の不満から逃れようとするのです。

しかし、人が人の評価をして賃金を決める以上、絶対に経営者個人の主観が入るものです。この主観に自信を持って社員に説明すれば良いのです。極論を言えば、「好き嫌いで評価をして何が悪い」と開き直るぐらいになれなければ中小企業経営はできませんよ。

話は変わりますが、「給料を高くすると社員のモチベーションが上がり一所懸命働く」などという、バカげた妄想を抱いている三流アホ経営者が後を絶ちません。大幅昇給なんかしても、感謝しているのは長くて3か月ぐらいです。3カ月も経ってしまえば、自分の実力に見合った当然の給料と思っています。

ですから、給料を上げても決して社員のモチベーションは上がりません。
一方、給料を下げたり安い給料のままだったりすると、社員のモチベーションは下がります。つまり給料は、社員のモチベーションを上げる要因ではなく、下がる要因なのです。

給料が社員のモチベーションを上げると思っている経営者に続き、利益が大きく出ると「決算賞与」を払うアホ経営者も後を絶ちません。
社員が頑張ると利益が出て、頑張らないと赤字が得るのであれば、社長は要りませんね。
会社経営とは社員の頑張りで決まるものではなく、社長の自身の経営方針や意思決定で決まるものです。

社員のお陰で利益が出て決算賞与支払うのであれば、赤字の責任も社員にあるはずですから、社員から赤字補てん分のお金を拠出させるべきです。
利益が出た時だけ決算賞与を支払うのであれば、社員の機嫌取り以外の何物でもありません。
更に、決算賞与を継続して支払っていると、決算賞与が無くなった時のモチベーションの下がり方は大きいものです。

前述しましたが、給料・賞与は多く支払ってもモチベーションは殆ど上がらないにもかかわらず、下がると一気に下がります。
長く決算賞与を支払い続けたために、決算賞与が慣行となり、利益に関係なく支払い続けている三流アホ経営者もいます。

結局、自信のない経営者がやりたがる決算賞与など絶対に支払うべきではありません。

採用費について

続いて、採用費です。
買い手市場の時は、ハローワークなどで求人をすれば、それなりに経費を使わず人の採用ができていました。
しかし最近のように売り手市場になってきますと、ハローワークだけでは採用が困難となっています。
有料の求人サイトや紹介会社に紹介手数料を支払って採用するのは当たり前で、優秀な幹部を採用しようとすれば、ヘッドハンティングの会社に依頼する場合もでてきました。

ある求人業界の人に「正社員1名採用するためのコストは100万円かかりますよ」と言われて驚いたことがあります。

また、採用はコストだけではなく、戦略も必要になってきています。
社員が退職したら人を採用するというような補充採用ができたのも、買い手市場の時代だからです。
中小企業が人を採用する場合に、自社の都合の良い時に欲しい人材が採用できる時代は、とっくの昔に終わっています。

今は、常時採用を継続して、良い人が見つかれば即採用することをしなければ、優秀な人材は採用できません。

つまり、人が足りなくて採用するのではなく、優秀な人材がいたら採用するのです。

採用により人が余剰になった分、会社は成長していかなければなりません。
今すぐ人が必要でなくても、採用しておけば会社の成長に伴っていずれ必要になるものです。人が足りなくて慌てる必要も無くなります。

どの会社でも優秀な人材は欲しいものです。人材の手当ては早め早めに行うことによって、優秀な人材が採用できます。中小企業にありがちな補充採用は絶対にやめましょう。
さらに「採用の失敗は教育では補えない」ということを肝に銘じておいてくださいね。

採用は重要な経営意思決定事項です。

教育研修費について

経営者は、採用した社員を教育し、自社の戦力にしていく必要があります。
そのためには、現場でのOJT(On the Job Training)だけの教育では、有効とは言えません。
中小企業の経営者に「社員研修をしていますか?」と聞くと「うちはOJTだけです。」という方が多くいます。

以前は自主的に勉強する社員が多くいましたし、経営環境も複雑ではなかったので、OJTだけでも何とかなりましたが、昨今のITの進化、複雑な消費者心理などで、勉強をしない社員は使い物になりません。

そして最近の若者は、与えられなければ勉強をしない傾向が強くあります。
一方、与えられたものは一生懸命勉強します。
ですから勉強ができる環境づくり、つまり社員研修に力を入れる必要があります。

新人研修、一般社員研修、幹部研修などを定期的に行いましょう。

さらに資格取得を奨励することも必要でしょう。
社内資格でも国家資格でも構いません。
資格を取るための勉強を自主的に行うような環境を整えることです。

働き方改革などで厳しい残業規制が推奨される中、自分の能力を向上させるための自己研鑽に時間を使うように誘導することです。

社員の能力や実力を身に着けさせるためには、勉強だけでもだめ、OJTだけでもだめで、「知識+経験」で身についていくものだと、私は思っています。

福利厚生費について

何のために福利厚生費を支出するのか?私はコミュニケーションを円滑するためだと思っています。
社員旅行、忘年会、誕生日会、バーベキュー大会等での社員同士、そして社員の家族も巻き込んだコミュニケーションは、とても大事なことだと思います。

SMCグループでも、全社員で行く社員旅行の後はとっても雰囲気が良くなり、コミュニケーションも円滑になります。

ところが中小企業によっては殆ど福利厚生費を使わないところもあります。
やはり三流アホ経営者は社員のためにお金を使いたくないのですね。

広告宣伝費について

広告宣伝費は、使い方によって売上を大きく左右します。広告宣伝費の支出の難しさは、その効果がなかなか測定できないことです。
例えば、野立て看板の効果がどの位あるのか、商品カタログの効果は?HPの効果は?等、効果の測定は本当に難しいものです。

一方、DM発送やPPC広告など、反響管理がしやすく効果が測定できるものもあります。

そこで、私の考えでは、効果の測定が難しい広告宣伝費は一度止めてみることです。

例えば、効果の測定が難しい看板などは一度止めてみます。
止めてみて売上が下がれば、その看板は効果があったということですので、改めて看板を設置すれば良いのです。
SMCグループのお客様で、2年1回、商品カタログを1000万円以上で作成して配布している会社がありました。

その社長に私が何故2年に1回ですかと質問したところ、明確な回答がありませんでした。
そこで、カタログを作成する期間を延ばしてみました。するとカタログ作成を延ばしても売上は一向に落ちませんでした。
今では5年に1回カタログを作っています。これだけで1500万円の広告宣伝費が削減できました。

また、お客様から「広告宣伝費はどれぐらいが適切ですか?」と聞かれますが、会社によって全く状況が異なるので一概には言えませんが、「粗利の5~10%位が目安ではないでしょうか?」と私は答えます。
他社との差別化された競争力のある商品を持っていれば少なくて済みますし、口コミで広がる商品であれば広告宣伝費も必要ありません。
広告宣伝費は会社によってケースバイケースで考えれば良いと思っています。

研究開発費について

製造業の場合、研究開発は不可欠なものです。しかし、中小企業は研究開発部門を設けることはとてもできません。
最新鋭の機械が購入できない、優秀な研究開発要員がいない等の理由を付けて、研究開発をしていない中小企業が如何に多いか。

しかし中小企業の研究開発は、もともと製造現場で行うものだと私は思っています。
京セラの稲盛氏も「研究開発や発明は優秀な研究員がするものではなく、コピー用紙を一枚一枚重ねるように日々の努力から出てくるものだ。」と言われています。
その通りです。どんなに才能のある研究員が居ようと、最新鋭の機械がいくつあろうと、一朝一夕に発明や研究開発ができるものではありません。

やはり、日々の努力の積み重ねから出てくるものであり、他社に真似できない競争力のある製品を作り出すのです。
決して他社のモノマネをして安く売ろうなどという、泥棒のようなことはしてはなりません。またこの物余り時代に、他社のマネをして商品が売れるような甘い環境ではありません。

しかし、三流アホ経営者はまだまだモノマネをして安売りをしています。そういう経営者は、いずれ市場から退場することになるでしょうね。

支払手数料について

支払手数料には経営コンサルタントに支払う報酬、会計事務所に支払う報酬、弁護士に支払う報酬などがあります。
これらの報酬の支払いによって企業の成長や業績は大きく左右されるものです。
例えば、損益計算書にしか興味がない三流アホ経営者が、貸借対照表を読めない三流会計事務所と付き合うと、キャッシュを減らす節税の提案などをされ、会社を悪くして潰れる方向へまっしぐらなのです。

世の中には貸借対照表が読め、経営が分かる会計事務所はほんの一握りしかいないものです。

また、どんなコンサルタントと付き合うかでも、会社の経営は大きく左右されます。
SMCグループはあるコンサルタントとお付き合いするようになってから、25年もかかって築き上げた売上をたった5年で達成して、売上が倍増した経験を持っています。
いずれにしても、支出の効果が出るかどうかは経営者次第です。実践するのは経営者なのです。

以上の通り経費は、戦略的経費を如何に効果的に支出し、消費経費を如何に削減するかにかかっています。「収益は最大に、経費は最小に!」です。

SMC税理士法人では、金融機関OBや税理士をはじめ経験豊富なプロが御社の円滑な 経営改善 をサポートいたします。お電話やお問い合わせフォームから相談可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。

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このコラムの著者 : 曽根 康正

SMCグループ顧問、1959年(昭和34年6月8日)に岐阜県多治見市で生まれる。 「社外重役の立場から専門能力を発揮し中小企業を支援する」 というグループ経営目標のもと、東海エリアにおいてNo.1の会計事務所を目指す。

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