資金繰りを改善し会社にお金を残す秘訣
2019年11月17日
- 経営
目次
「資金繰り」という言葉を聞いてどう感じますか?
「難しそう」「取っ付きにくい」「楽しそう」「興味津々」等、色々な感じ方があると思いますが、会社経営において「資金繰り」ほど大事なことはありません。
会社経営は「資金繰りがすべて」と言っても過言ではありません。
どんな高尚な経営理念を掲げようとも、どんな高い目標を設定したとしても、お金がなければ何も実現できません。仕入れもできませんし、人を採用することもできません。様々な経費を使うことも、設備投資も借入返済も何もできないのです。
更には経営者が自分の役員報酬すら満足にもらえないこともあるのです。
「資金繰り」さえしっかりしておけば、経営はうまくいくのです。繰り返しますが、会社経営は「お金」がすべてなのです。
それでは企業はどのような原因で倒産するのでしょうか。
企業が倒産・廃業に追い込まれる理由は、唯一「お金が無くなるから」です。
企業でお金が無くなるということは、人間で言えば、「心臓が止まる」「体を流れる血液がなくなる」に等しいのです。裏を返せば、たとえ赤字が続いても、お金さえあれば、資金繰りさえうまくいけば、企業はいつまでも生き続けることが出来るのです。
日本には1000年企業が十数社、100年企業が2万社以上も存在します。
これらの企業はお金を常に潤沢に持っていたからです。
経営者は「お金が無くならないようにすること」、そして「もっと積極的にお金を増やすこと」を、最大の経営課題にしなければなりません。
黒字倒産が一番怖い!
「決算ではそこそこ利益が出ているのに、なぜか手元にお金がない。資金がショートしてしまう。どうしてだろう?」
「経費を削る努力をしているのにお金が無い・・・なんでだろう?」
そんな話をよく経営者の方からお聞きします。これこそ「資金繰り」のキホンがわかっていないときに出る言葉です。
会社は利益を上げる活動、つまり営利活動を行っていますが、収益・費用の計上と資金の入金・出金のタイミングは必ずしも一致しているとはいえません。
例えば、現金で1,000円で買った商品を、1,200円で「掛け」で販売したとします。
利益は
売上高1,200円 - 売上原価1,000円 = 売上総利益 200円
ですね?
ところが現金の収支は、掛け売上のため売上時には収入がまったく無く、商品仕入により手元の現金が1,000円減ってしまっている状態です。
利益は200円出ているのに、すでに資金が1,000円マイナスです。
これを回避するためには、売掛金1,200円の早期回収を行ったり、商品仕入のための借入をしたりすることにより、「資金繰り」は改善されます。
ホントに怖いのは黒字倒産です。利益は上がっているのに「資金繰り」がうまくいかず、倒産してしまった企業は数多くあります。
実際に2018年に倒産・廃業した会社の中で、黒字にも関わらす倒産・廃業した企業は、なんと47.7%も占めています。つまり、倒産・廃業した企業の約半分が、黒字で会社が消滅しているのです。倒産の理由には、後継者がいないなどもありますが、一番は「資金繰り」が悪くなってお金がなくなったことです。
会社経営は「資金繰りがすべて」、経営者は手元資金がなくならないように経営をしていかなければなりません。しかし経営をしていく中では、資金繰りが苦しくなることもあります。
次は苦しくなった資金繰りを良くする方法をお伝えしていきます。
「資金繰り」を良くする方法には下記のような方法があります。
売掛金の回収を早くする。
商売においては、売上代金の回収ができて取引が完了となります。売上代金の回収前に経費等の支払いがあれば、会社の資金は減少します。そのため、売上代金の回収が遅くなるほど「資金繰り」は悪化してしまいます。
これを防ぐためには、やはり得意先に売掛金の回収サイトを短くしてもらえるように交渉を続けることが大切です。
例えば、既存のお客様には新しい商品を発売する際に売掛金の回収サイトを短くしてもらう、新規のお客様に対しては商談の際に短い回収サイトとする等、取引条件を交渉しましょう。
粗利を増やす。
借入等によるものではなく会社の資金を健全に調達するには、本業の成果である売上と利益を増やしていくことです。
特に粗利を引き上げることが大切です。粗利とは、売上高から変動費を差し引いた限界利益を指します。変動費とは、小売・卸業であれば売上原価が、製造業や建設業であれば材料費や外注費などがこれに当たります。
この限界利益を引き上げるためには、限界利益の高い新商品の開発、仕入先との交渉や仕入先の変更による商品原価の引き下げ、外注先の変更による外注費の引下げなどの努力が必要です。
安いものしか売れないという価格競争に巻き込まれたときには、なかなか利益を確保することができません。支出の伴う原価や費用を無視した売上は、かえって資金不足を招くことになります。最大の利益を生み出すことが、キャッシュを増やし「資金繰り」を改善します。
在庫(棚卸資産)を減らす。
商品を売るためには、ある程度在庫を持つ必要があります。しかし、余剰在庫となったときは「資金繰り」が悪化してしまいます。
ロット数が多いほうが安いからといって単価ばかりを気にする経営者がいますが、売れなければ意味がありません。そうならないためにも、在庫管理の徹底をおすすめします。
商品、材料、製品などの棚卸資産の在庫を減らすことで「資金繰り」を改善することが可能です。また販売見込み数量を検討することも在庫管理につながります。実際の販売数量の把握し購入数量を調整すれば、やみくもに商品の購入をしたり、製品の製造をしたりするようなことはなくなります。
また、商品や材料の購入単価を下げることも検討が必要です。
昔馴染みの仕入先からしか商品や材料を購入したことがなく、他の会社からいくらで仕入れられるか検討をしたことがない中小企業の経営者は少なからずいます。一度も見直しをされていないのであれば、他の会社に見積もりをとったり、インターネットで購入価格を検索したりして、購入単価を調べてみましょう。これにより価格の交渉を行うか、仕入先を変えるだけでも単価は下げることができます。
商品は在庫管理をしっかりすることで「資金繰り」の改善が可能です。
消耗品は徹底的に管理する。
ボールペンやクリアファイル、コピー用紙などの事務用品は、安価でしかも短期間で使い切ってしまうため、必要以上の量を購入してしまいがちです。
また、購入先により購入金額が変わることもありますので注意が必要です。
消耗品は数量や単価をしっかりと管理することで「資金繰り」の改善が可能です。
効果のない広告宣伝費は削減する。
売上の成果が出ない広告宣伝にお金を費やすのも無駄な支出です。
そのためにも広告宣伝費は必ず費用対効果を測定しなければなりません。
例えば、新聞の折込チラシで宣伝を行った場合、何枚のチラシを配って、何人が来店したかなどを調べることで、かけた費用がいくらの売上に繋がるかがわかります。
広告宣伝費は効果を測定することで無駄な支出を抑え「資金繰り」を改善することが可能です。
人件費は粗利を基準に決定する。
過剰に従業員を雇用し人件費がかさむ状態もなくさなくてはいけません。そうは言っても解雇をするわけにはいきませんし、今後の人材不足は避けて通れないでしょう。先ずは適正な人件費を知ることです。
一般的に適正な人件費かどうか判断に用いられるのが労働分配率です。
労働分配率とは、給料や賞与、福利厚生費などの人件費が付加価値(一般的には売上総利益)に占める割合をいい、業種によりますが、40%~60%が適正だと言われます。
もし労働分配率が高い場合には、従業員の給料を下げたり解雇をするのではなく、新たな商品を開発し販売するなど付加価値を高めることが、労働分配率を下げる一番の解決策です。
経営者は、付加価値を上げる努力をし、適正な在庫や人件費や経費を見極め、出費を抑えていくこに努めなければなりません。こうした努力により資金繰りを改善することができます。
資金繰り改善に近道はありません。
資金繰りが悪くなる理由、資金繰りを改善する方法をお伝えしております。
次は売上を上げる以外でのキャッシュの増やし方をご紹介しましょう。
数値で観るキャッシュを増やす3つのヒケツ
キャッシュを増やす手段で、最も優れた方法は利益を出すことです。
このため企業は、売上だけではなく利益を出し続けなくてはいけません。
しかし利益を出し続けることは難しく、キャッシュが減り資金繰りが悪化する場合もあります。
或いは「これ以上銀行から借入ができない。」「借入の元金返済額が多すぎてキャッシュの流出が大きい。」等が重なると、さらにキャッシュが厳しくなることもあります。
では、どうすれば良いのでしょう。
売上を上げ、利益を出し続けること以外にもキャッシュを増やす方法があるのです。
その方法を3つご紹介しましょう。
粗利の高い商品へシフトしてキャッシュを増やす
年間2億円の売上があったとします。
商品別に売上を区分すると、下記のような構成になりました
A商品 売上1億2,000万円 原価8,000万円 粗利4,000万円(粗利率33.3%)
B商品 売上6,000万円 原価3,600万円 粗利2,400万円(粗利率40%)
C商品 売上2,000万円 原価 800万円 粗利 1,200万円(粗利率60%)
A商品は、当社の主力商品で年間売上の60%を締めます。
C商品は、売上は少ないですが、最も原価の低い商品です。
キャッシュを増やすためにはどの商品に力を入れたらよいでしょうか?
現状のままで十分に利益が出ており、キャッシュも十分であればこのまま事業を拡大すれば良いのですが、現状のままでは利益が出にくくキャッシュが厳しいということであれば、思い切って粗利の低いA商品を捨て、粗利の高いC商品の売上を伸ばすことに力を入れるべきです。
主力商品を捨て、売上を拡大できるか分からない商品にシフトすることは勇気の要る事ですが、売上の規模より粗利率にこだわった経営は大変重要です。
A商品 売上6,000万円 原価4,000万円 粗利2,000万円(粗利率33.3%)
B商品 売上4,000万円 原価2,400万円 粗利1,600万円(粗利率40%)
C商品 売上1億円 原価 4,000万円 粗利 6,000万円(粗利率60%)
いかがでしょう。商品の売上構成を変え、粗利の高い商品にシフトすることにより、粗利が2,000万円増えました。言い換えるとキャッシュが2,000万円増えたわけです。
主力商品を入れ替えてC商品の売上を上げていくためには、相当な努力が要ります。それでもA商品を売上げるのに費やしていたチカラをC商品の販売に移していくことで、不可能なことではありません。諦めることなくチャレンジしていくことで、新しい道が見えてくるかもしれません。
PROFILE

曽根 康正
SMCグループ代表、1959年(昭和34年6月8日)に岐阜県多治見市で生まれる。 「社外重役の立場から専門能力を発揮し中小企業を支援する」 というグループ経営目標のもと、東海エリアにおいてNo.1の会計事務所を目指す。