投稿日:2026年04月08日
更新日:2026年04月08日
この記事を読むのに必要な時間は約 5 分です。
プロ野球のシーズンシート、取引先へのサッカー観戦招待、社員向けライブチケットの配布。こうした“ちょっとワクワクする支出”は、会社の経費になるのか迷いやすいところです。
結論からいえば、観戦チケットは誰のために、何の目的で使ったかで扱いが変わります。従業員の慰安目的なら福利厚生費になり得ますし、取引先との関係づくりなら交際費等が基本です。さらに、シーズンシートは消費税の考え方も押さえておく必要があります。
国税庁は、法人税等の考え方として、交際費等を「得意先や仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答などのために支出する費用」としています。つまり、取引先を野球観戦やライブに招待したり、観戦チケットを渡したりする支出は、基本的には交際費等の発想で考えることになります。
一方で、専ら従業員の慰安のために行う運動会、演芸会、旅行などの通常費用は、交際費等から除かれ、福利厚生費などになると国税庁は示しています。ライブ鑑賞やスポーツ観戦も、従業員向けのレクリエーションとして公平に実施されているなら、この考え方に沿って福利厚生費で整理できる可能性があります。
さらに、野球場のシーズン予約席料について国税庁は、野球観戦という役務提供の対価であり、消費税の考え方として、課税仕入れに当たり、仕入税額控除の対象になり得るとしています。入場券は整理券的な性格とされ、物品切手には該当しないと整理されています。
飲食費は全額経費にできる!?損金算入ルールを基本から徹底解説ポイントは大きく3つあります。
1つ目は、取引先向けか、従業員向けかです。取引先や事業関係者に対する観戦招待は交際費等の可能性が高く、従業員の慰安目的なら福利厚生費の可能性があります。
2つ目は、公平性があるかです。従業員向けといっても、社長と役員だけ、営業トップだけ、特定の社員だけに偏っていると、福利厚生費としては弱くなります。税務では「専ら従業員の慰安」といえるかが大切です。
3つ目は、飲食がセットになるかです。観戦前後の会食まで含めると、チケット代だけでなく飲食費の整理も必要になります。社外者との飲食であれば、1人当たり1万円以下の少額飲食費ルールの確認も必要です。令和6年4月1日以後に支出する飲食費については、この基準が1万円以下に引き上げられています。
中小企業では、営業活動の一環としてスポーツ観戦やライブチケットを使う場面があります。たとえば、年間シートを押さえて主要取引先との関係強化に使うケースです。この場合、単純に「広告宣伝費」や「雑費」にしてしまうと、後で説明がつかなくなるおそれがあります。国税庁の通達では、交際費等の支出時期は、接待等の事実があった時点で考えるとされており、実態ベースでの整理が前提です。
また、シーズンシートは金額が大きくなりがちです。法人税では交際費等の論点、消費税では課税仕入れの論点があり、どちらかだけ見て処理すると危険です。特に、税抜経理か税込経理かによって、交際費等の1万円判定も算定価額が変わる点は実務上の見落としポイントです。
飲食費は全額経費にできる!?損金算入ルールを基本から徹底解説まず、誰に渡したかを残すことが大切です。取引先向けなら相手先、従業員向けなら配布対象や参加者一覧を保存しておきましょう。税務では、勘定科目よりも実態が重視されます。
次に、目的を明文化することです。営業接待なのか、従業員レクリエーションなのか、販促企画なのかを、稟議書や社内申請書に書いておくと後で説明しやすくなります。交際費等の判断は「接待、供応、慰安、贈答」に当たるかどうかなので、目的の記録が効いてきます。
さらに、シーズンシートは消費税資料も保存することです。請求書、契約書、支払記録、利用記録がそろっていると、法人税と消費税の両方で説明しやすくなります。国税庁はシーズン予約席料を課税仕入れと整理しているため、記録の質が大切です。
事例1:取引先2社をプロ野球観戦に招待したケース
年間シートを利用して、主要取引先の担当者を招待。観戦後に会食も実施。
このケースは、取引先という事業関係者に対する接待の色合いが強く、チケット代は交際費等の整理が基本になります。会食費も別途、交際費等や少額飲食費ルールの対象かを確認する必要があります。
事例2:全社員向けに抽選でライブチケットを配布したケース
福利厚生企画として、全社員を対象に応募を募り、抽選で配布。役員だけを優遇しない運用。
このケースは、従業員慰安の実態を整えやすく、福利厚生費として説明しやすい形です。ただし、対象範囲や配布基準を記録しておくことが大切です。
事例3:社長個人が使う前提でサッカーの年間席を購入したケース
会社名義で購入しても、実態が社長個人や特定役員の私的利用に近い場合は、福利厚生費としては弱くなります。実態次第では交際費等や役員に対する経済的利益の論点も意識すべき場面です。少なくとも「全社的な福利厚生」とは説明しにくいケースです。
野球、サッカー、ライブ、舞台のチケット代は、チケットそのものが経費になるかどうかではなく、誰のために、何の目的で使ったかで処理が分かれます。取引先向けなら交際費等、従業員の慰安目的なら福利厚生費の可能性があり、シーズンシートは消費税上の課税仕入れも論点になります。
エンタメ性のある支出ほど、経理では「なんとなく」で処理しやすいものです。だからこそ、
誰に使ったか
何の目的か
公平性があるか
飲食が含まれるか
利用記録が残っているか
を押さえることが大切です。個別事情で結論が変わるため、実際の処理は税理士等の専門家に確認してください。
SMC税理士法人では、金融機関OBや税理士をはじめ経験豊富なプロが御社の円滑な 帳簿・決算書作成 をサポートいたします。お電話やお問い合わせフォームから相談可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
なり得ます。ただし、誰のために使ったかで扱いが変わります。取引先向けなら交際費等、従業員向けの慰安目的なら福利厚生費の可能性があります。
可能性はありますが、全社員向けに公平な基準で配るなど、従業員慰安として説明できる実態が必要です。特定の役員や一部社員だけに偏ると、福利厚生費とは言いにくくなります。
一般論としては、取引先など事業関係者に対する接待・贈答に当たるなら交際費等で考えるのが基本です。実態によっては別の整理余地もありますが、安易に広告宣伝費とするのは危険です。
国税庁は、野球場のシーズン予約席料を、観戦という役務提供の対価として課税仕入れに当たるとしています。仕入税額控除の対象になり得ます。
チケット代だけでなく飲食費も別に整理する必要があります。社外者との飲食費は、一定要件を満たせば1人当たり1万円以下の費用として交際費等から除外できる場合があります。
このコラムの著者 : 長縄 龍哉
会計税務を中心に皆様の支援をしております。経営において、会計税務は切り離すことのできないものです。経営の意思決定を行う上で、指標の一つに会計があります。皆様がよりよい経営ができるよう、会計税務の支援を通じて、経営サポートを行うことを心がけています。また、SMCグループは、会計税務だけではなく、様々なサポートを行っております。お気軽にご相談ください。皆様の経営のサポーターとして、尽力いたします。