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インボイス制度がフリーランスに与える影響と対策をわかりやすく解説!

フリーランスインボイス制度2択

投稿日:2023年01月30日

更新日:2023年05月08日

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この記事を読むのに必要な時間は約 10 分です。

「インボイス制度って結局なに?」「インボイス制度はひどいって聞くけど、自分にどう影響するのかわからない、、、」など、インボイス制度に対して疑問や不安を感じている方は多いのではないでしょうか?

2023年10月から始まるインボイス制度が、免税事業者のフリーランスに大きな影響を与えます。本記事では、インボイス制度がフリーランスに与える影響をわかりやすく解説します。抱える取引先ごとに、フリーランスが取るべき対策も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

仕入税額控除の仕組み

インボイス制度を理解するには、仕入税額控除の仕組みを知ることが重要になります。

仕入税額控除とは、課税事業者が国に納税する消費税を計算する際に、仕入れにかかった消費税を差し引いて計算する仕組みです。企業のホームページ制作を請け負う代理店(課税事業者)を例に考えます。

まず、代理店は取引先企業から300万円でホームページ制作依頼を受けるとします。この際、代理店は消費税30万円(300万円×10%)を取引先企業から受け取ります。受け取った消費税30万円は、売上とは違い、国に納める消費税を仮で預かっているだけです。

一方で、代理店は企業のホームページ制作にあたってデザイナーやWebライターなどのフリーランスに仕事の一部を外注します。仮に、外注費が100万円であれば、代理店がフリーランスに支払う消費税は10万円(100万円×10%)です。

代理店が国に納める消費税は、売上にかかる消費税30万円から仕入れにかかる消費税10万円を差し引いた20万円になります。この売上にかかる消費税から仕入れにかかる消費税を差し引く仕組みが「仕入税額控除」です。

代理店が納めるべき消費税の流れをまとめると以下の通りとなります。

  1. 取引先企業から300万円の仕事を受注
    30万円(300万円×10%)の消費税を預かる
  2. フリーランスへ100万円で仕事の一部を外注
    10万円(100万円×10%)の消費税を支払う
  3. 売上にかかる消費税から仕入れにかかる消費税を差し引く
    20万円(30万円―10万円)を国に納める

フリーランスは、仕事の受注がメインで、発注する機会が少ない方もいるかもしれませんが、上記のような仕入税額控除が一般には行われていることを理解しましょう。

インボイス制度を分かりやすく解説!適格請求書発行事業者にならないとどうなる?

インボイス制度とは

2023年10月より開始するインボイス制度は、「適格請求書保存方式」と言い、仕入税額控除を行うための要件を新たに定めた制度です。

インボイス制度開始後に仕入税額控除を行うためには、外注先や仕入れ先が発行する適格請求書(インボイス)が必要になります。

取引先企業からホームページ制作を300万円(消費税30万円)で請け負う代理店が、仕事の一部をフリーランスに100万円(消費税10万円)で外注する場合の、代理店が納める消費税は以下の通り変更になります。

  • 外注先のフリーランスが適格請求書(インボイス)を発行できる場合
    今まで通り仕入税額控除を行えるため、納める消費税は20万円(30万円―10万円)
  • 外注先のフリーランスが適格請求書(インボイス)を発行できない場合
    仕入税額控除を行えないため、納める消費税が30万円となり、実質10万円損をする

代理店にとって外注先であるフリーランスは、適格請求書(インボイス)を発行しなくては、代理店(発注者)に損をさせることになります。

インボイスの発行は課税事業者のみ可能

適格請求書(インボイス)を発行できるのは、課税事業者のみです。

今まで免税事業者だったフリーランスは、インボイス制度開始後は課税事業者にならなければ適格請求書(インボイス)が発行できず、取引先に損失を与えることになります。

課税事業者と免税事業者の違いは、以下の通りです。

  • 課税事業者のフリーランス
    規定通り、取引先から受け取った消費税は国に納める必要がある
  • 免税事業者のフリーランス
    受け取った消費税を国に納めずに、自分で受け取れる。100万円(税別)の仕事を受注した場合、10万円(100万円×10%)の消費税も売上として受け取ることが可能

免税事業者は誰でもなれるわけではありません。以下の基準期間もしくは特定期間に課税売上が1,000万円を超えた事業者は免税事業者になれず、課税事業者となります。

基準期間 特定期間
個人事業主 前々年の1月1日~12月31日 前年の1月1日~6月30日
法人 前々年の事業年度 前年の事業年度開始時後の6ヶ月

今までは、免税事業者は消費税が受け取れるメリットが大きく、免税事業者でいれるのに、わざわざ課税事業者になるフリーランスは少なかったです。

しかし、インボイス制度開始後は、免税事業者でいると適格請求書(インボイス)が発行できず、取引先に損失を与えるため、判断が難しくなります。

インボイス制度がフリーランスに与えうる影響

2023年10月に始まるインボイス制度が、現在免税事業者のフリーランスに与えうる影響を解説します。

取引先から仕事がもらえなくなる

インボイス制度開始後も免税事業者を続ける場合、取引先である発注者は仕入税額控除を行えません。そのため、取引先は実質損失を被ります。

同じ仕事を頼むのであれば、適格請求書(インボイス)が発行可能な課税事業者に仕事を依頼する取引先もいるでしょう。すると、今まで仕事をもらえていた取引先から仕事がもらえなくなる可能性が高いです。

税負担と経理処理が増える

適格請求書(インボイス)を発行するために課税事業者になった場合は、当然自分の税負担が増えます。今まで売上としてもらえていた消費税を、国に納める必要があるためです。

また、仕訳の際に消費税を別で記帳する必要があり、税務処理も増えるでしょう。

免税事業者のフリーランスに仕事を発注する際に損をする

フリーランスは仕事の受注がメインの方が多いですが、中には受注した仕事の一部を他のフリーランスなどに発注する方もいます。

自分自身が課税事業者で、発注先のフリーランスが免税事業者の場合は仕入税額控除が行えません。そのため、発注先のフリーランスに支払った消費税は全額自己負担となります。

自分自身が発注者になる場合は、発注先が免税事業者か課税事業者かを確認しましょう。

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免税事業者フリーランスの取るべき対策と緩和措置

現在免税事業者のフリーランスが、インボイス制度開始後に取るべき対策を紹介します。また、インボイス制度開始から数年は緩和措置が設けられるため、緩和措置の詳細についても解説します。

免税事業者のままでいる

今まで通り免税事業者のままでいることも選択肢の一つです。ただし、取引先は仕入税額控除が行えず損失を被ります。

一方で、インボイス制度開始後から数年は緩和措置が設けられ、免税事業者への発注や仕入れでも一定額を仕入税額控除できます。仕入税額控除できる割合は以下の通りです。

期間 割合
2023年10月1日~2026年9月30日 仕入税額相当額の80%
2026年10月1日~2029年9月30日 仕入税額相当額の50%

2025年に免税事業者のフリーランスに100万円の仕事を依頼した場合、消費税10万円(100万円×10%)のうち8万円を仕入税額控除できます。これにより、発注者が免税事業者に発注する際の急激なコスト増加の軽減が可能です。

課税事業者(簡易課税制度)になる

インボイス制度開始後に課税事業者になることも考えられるでしょう。課税事業者は、「簡易課税制度」と「一般課税制度」の二つがあります。

簡易課税制度では、業種に応じて売上にかかる消費税の一定割合をみなし仕入れ率として控除可能です。業種ごとのみなし仕入れ率は以下の通りとなります。

事業区分 みなし仕入率
第1種事業(卸売業) 90%
第2種事業(小売業、農業、林業、漁業(飲食料品の譲渡に係る事業)) 80%
第3種事業(農業、林業、漁業(飲食品の譲渡に係る事業を除く)、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業および水道業) 70%
第4業種(第1、2、3、5、6業種以外の事業) 60%
第5種事業(運輸通信業、金融業および保険業、サービス業(飲食店業に該当するものを除く)) 50%
第6種事業(不動産業) 40%

例えば、フリーランスWebライターの場合、第5種事業(サービス業)に該当します。
年間売上が400万円(税抜)で、受け取った消費税が40万円であれば、納める消費税は40万円―20万円(40万円×50%)=20万円です。

課税事業者(一般課税制度)になる

課税制度者の一般課税制度は、売上にかかる消費税と仕入れにかかる消費税を相殺し、納める消費税を計算します。

年間売上が500万円(消費税は50万円)で、外注費などの仕入れにかかった費用が100万円(消費税は10万円)の場合、納める消費税は40万円(50万円―10万円)です。

仕入れにかかる費用が多いフリーランスは、一般課税制度の選択を検討してみてください。

課税事業者に支援措置を実施

インボイス制度開始に伴い、免税事業者のフリーランスが課税事業者になった場合、支援措置が実施されます。

支援措置では、2026年9月30日まで、納める消費税が売上にかかる消費税の20%となります。年間売上が500万円(消費税50万円)の場合、納める消費税は10万円(500万円×20%)です。

免税事業者フリーランスの選択肢と緩和措置のまとめ

免税事業者フリーランスの選択肢と経過措置の内容をまとめると以下のようになります。

選択肢 フリーランスの消費税負担 取引先の消費税
免税事業者のままでいる 発生しない 発生する
~2026/9/30は仕入税額の80%を仕入税額控可能
~2029/9/30は仕入税額の50%を仕入税額控可能
課税事業者(簡易課税制度)になる 売上税額の50%を納税(サービス業の場合)
~2026/9/30は売上税額の20%を納税
発生しない
課税事業者(一般課税制度)になる 発生する
~2026/9/30は売上税額の20%を納税
発生しない

少額取引はインボイス不要

2029年11月30日までは、1万円未満の仕入れはインボイスがなくても仕入税額控除ができます。そのため、1万円未満の少額受注が多いフリーランスは、免税事業者のままで適格請求書(インボイス)が発行できなくても、取引先(発注者)に損失を与えることはないでしょう。

取引先ごとに免税事業者のフリーランスが取るべき選択

取引先の性質ごとに、現在免税事業者のフリーランスが取るべき選択を解説します。

取引先が企業の場合

取引先に企業(課税事業者)が多い場合、取引先は仕入税額控除の処理が必要です。そのため、取引先は免税事業者のフリーランスに仕事を発注すると仕入税額控除をできず損失を被ります。

取引先と関係性を維持するためには、課税事業者になる方が無難でしょう。

取引先が個人の場合

適格請求書(インボイス)の発行が必要な相手は、仕入税額控除を行う方です。

そのため、会社員や主婦(夫)などがプライベートで利用する事業を行うフリーランスは、そもそも適格請求書(インボイス)の発行を求められないため、免税事業者のままで問題ないでしょう。

取引金額が1万円未満の場合

2029年11月30日までは、1万円未満の仕入れはインボイスがなくても仕入税額控除ができます。よって、1万円未満の取引がメインのフリーランスも、ひとまずは免税事業者のままで問題ないでしょう。

令和4年度税制改正における適格請求書等保存形式の登録手続きにまつわる変更内容とは?

インボイス制度の登録はいつまで?

2023年10月1日から適格請求書(インボイス)を発行するには、原則、2023年3月31日までに税務署に登録申請書の提出が必要です。

ただし、インボイス制度開始後もインボイス制度の登録はできるので、様子を見たい方は、インボイス制度が始まってから登録を検討してもいいでしょう。

まとめ

インボイス制度がフリーランスに与える影響について解説しました。インボイス制度は、今まで免税事業者だったフリーランスに大きな影響を与えます。

一定期間は経過措置も取られるので、内容をよく理解してから免税事業者のままでいるのか、課税事業者になるのかを決めましょう。判断によっては、仕事が取れなくなったり、税負担が重くなったりするので注意してください。

また、自分が課税事業者になるべきか判断が難しい場合は、税金のプロである税理士への相談も検討してみてください。税理士は、インボイス制度のみでなく、普段の事業に関わるお金のあらゆる悩みにアドバイス・サポートが可能です。

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このコラムの著者 : 舩田 卓

1972年愛媛県生まれのA型。 愛媛県立松山商業高校卒業後、東京IT会計専門学校に進学。 在学中に税理士試験を全国最年少20歳で合格。 そのまま専門学校の専任講師となり、税理士試験の受験指導を担当。 22年間務めた講師の道から飛び出しSMC税理士法人に入社。

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