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税抜経理における未払消費税・仮払消費税の適切な処理方法

未払い消費税・仮払い消費税どう処理する?

投稿日:2022年07月29日

更新日:2023年08月24日

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この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

課税事業者である場合、消費税の処理方法を「税抜経理方式」と「税込経理方式」の2つから選択できます。
しかし、2つの違いが分からない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、「税抜経理方式」と「税込経理方式」の違いの他、双方のメリット・デメリットなども解説しています。
この記事を読むことで、消費税の処理方法を適切に理解できるようになるでしょう。
ぜひとも参考にしていただければ幸いです。

消費税の課税事業者と免税事業者の決まり方

消費税の課税事業者を満たす要件としては主に下記の4つになります。
※その他の要件もありますが、一般的には下記の要件が多くの事業者に当てはまるでしょう。

  • 2年前の事業年度(基準期間)の売上高が1,000万円を超える事業者
  • 課税事業者選択届出書を出した場合
  • 特定期間の売上が1,000万円超かつ支払給与額が1,000万円超
    ※個人事業者は前年1月1日~6月30日までの間、法人は前年の事業年度開始後6ヶ月間
  • 設立資本金が1.000万円以上の場合(設立後2期目までの要件)

要件を満たしていない場合は、免税事業者となります。
多くの事業者の場合は、2年前の事業年度(基準期間)における売上高が1,000万円を超えているかどうかが基準になるでしょう。

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消費税の処理方法には「税抜経理方式」と「税込経理方式」がある

消費税の処理方法には、税抜経理方式と税込経理方式の2通りあります。
なお、免税事業者は税込経理方式を採用するしかありません。
まずは、税抜経理方式と税込経理方式それぞれの概要を見ていきましょう。

「税抜経理方式」とは

税抜経理方式とは、本体価格と消費税を分けて処理する方法です。
例えば、1万円の商品(消費税:1,000円)を買掛金で仕入れた際の仕訳は下記の通りです。

借方 貸方
仕入 10,000円
仮払消費税 1,000円
買掛金 11,000円

仕入れた商品を2万円(消費税:2,000円)で売り上げた際の仕訳は下記の通りです。

借方 貸方
売掛金 22,000円 売上 20,000円
仮受消費税 2,000円

税抜経理方式では、決算時に仮払消費税と仮受消費税を相殺させます。

借方 貸方
仮受消費税 2,000円 仮払消費税 1,000円
未払消費税 1,000円

相殺した後、納めなければならない消費税分を「未払消費税」という科目で処理します。
なお、消費税が還付される場合は「未収消費税」で処理しましょう。

「税込経理方式」とは

税込経理方式とは、本体価格と消費税を合算して処理する方法です。
例えば、1万円の商品(消費税:1,000円)を買掛金で仕入れた際の仕訳は下記の通りです。

借方 貸方
仕入 11,000円 買掛金 11,000円

仕入れた商品を2万円(消費税:2,000円)で売り上げた際の仕訳は下記の通りです。

借方 貸方
売掛金 22,000円 売上 22,000円

税込経理方式では、決算時に確定した未払消費税分を「租税公課」で処理します。

借方 貸方
租税公課 1,000円 未払消費税 1,000円

「税抜経理方式」と「税込経理方式」のメリット・デメリット

ここからは、税抜経理方式・税込経理方式のメリットとデメリットを解説していきます。
まずは、税抜経理方式のメリット・デメリットから見ていきましょう。

「税抜経理方式」のメリット

税抜経理方式のメリットとして、期中の数字が把握しやすい点が挙げられます。
また、固定資産の計上においても、税抜き価格で判定するため有利になりやすいでしょう。

例えば、税抜経理方式を採用していた場合、99,000円(税抜)のパソコンは経費で一括計上できます。
しかし、税込経理方式を採用していた場合、108,900円(税込)となり、固定資産として計上しなければなりません。
交際費の損金算入の限度額800万においても、税抜経理方式であれば税抜き価格で判定するため有利です。

「税抜経理方式」のデメリット

税抜経理方式の主なデメリットは、処理に手間がかかる点です。
本体価格と消費税を分けて計上する必要があるため、経理処理が煩雑になります。

ただし、会計ソフトを使っている場合は自動で処理してくれるため、それほどデメリットになりません。
また、特別償却や特別税額控除は取得価格が大きい方がより恩恵を受けられるため、税抜経理方式はデメリットといえるでしょう。

「税込経理方式」のメリット

税込経理方式のメリットとして、処理が簡単な点が挙げられます。
税込価格だけを記帳すれば良いため、仕訳作業に労力がかかりません。
また、設立開始後は免税事業者に該当するため、税込経理方式で処理する必要があります。

方式を変更しないことで、過去の数字との比較もしやすくなるでしょう。
特別控除や特別税額控除の面においても、制度の恩恵を大きく受けられます。

「税込経理方式」のデメリット

税込経理方式のデメリットは、期中の数字が把握しにくい点です。
税込経理方式は決算時まで消費税額が損益に反映されないため、期中の数字は正確な数字ではありません。
また、固定資産や交際費の面においても不利です。
税込価格であるがゆえに一括で経費計上できなかったり、交際費が損金算入の限度額800万円を超えてしまったりする可能性もあります。

現在は消費税率も「10%」と「8%」の2つが混在しており、適切に処理できているか把握しづらいのもデメリットです。

日が浅い・経験が浅い経理担当者の方の中には、
「仮払消費税と未払消費税の関係がいまいちはっきりしない」という方もいらっしゃるかと思います。次は、税抜経理における未払消費税・仮払消費税の適切な処理方法について解説していきます。

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仮払い消費税はどんな内容の科目なのか

仮払い消費税は、税抜方式で仕訳する際のみに発生する科目ですが、仮払い消費税は法人や個人事業主が仕入れなどをする際や外注費などを支払う際に費用と消費税をわけることで発生します。

例えば、税込110万円の仕入れを行った場合、
税抜処理:実際に支払った費用(仕入)仕入高100万円
仮払い消費税(消費税の支払い)10万円
を分けて会計処理を行います。
ちなみに、税込処理の場合は、消費税も一緒に経費処理する処理方法のため税込処理といい、
実際に支払った費用もそれに係る消費税の支払いも合算して、仕入高110万円のみの会計処理を行います。そのため、仮払い消費税は生じません。

反対に商品の売上時に預かった消費税については、税抜き処理の場合は仮受消費税として処理し、実際の売上高と消費税をわけて会計処理をすることになります。

未払い消費税はどんな内容の科目なのか

未払い消費税は未払い金の中に含め計上しますが、決算上において重要性が高いと判断される際には、未払い金の中に含めず未払い消費税として別に表示して計上します。
未払い消費税は、主に税抜方式で計上をする場合に発生する内容の科目で、賃借対照表上では流動負債として表示をおこない、決算のタイミングで納税額を計上します。

ただし、決算時には未払い消費税として計上していますが未払い消費税などは中間納付で支払うことになるため、中間納付で支払った際には勘定科目には租税公課や仮払金として未払い消費税と仕訳をしてください。
中間納付をするかどうかは前年度の消費税金額によって異なりますが、一定の消費税金額を越えている場合には中間納付(確定申告分の消費税の前払い)として、先に納税することが求められる場合があります。その場合、中間納付分を支払った際に、租税公課や仮払金といった科目で処理する他、確定申告分の消費税税額の前払いの意味合いから未払い消費税として処理する場合もあります。

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では、未払い消費税はどうやって計算するのか

原則として、法人や個人事業主が仕入れや経費の支払い時に支払った仮払い消費税と売上の際に預かった仮受消費税を基準にして計算します。
期中における仮払い消費税と仮受消費税を計算し、仮受消費税の方が多い際には未払い消費税が発生することになります。
必ずしも、仮払い消費税と仮受消費税の差額が未払い消費税と一致するわけではなく、消費税の計算の仕組み上、千円未満や百円未満の端数を切り捨てる計算を行います。そのため、少額ですが差額が出ることを理解しておきましょう。端数の処理により差額が出た場合は、主に雑収入か雑損失のどちらかに計上します。

未払い計上する理由

未払計上をすることで、決算書をみるだけで、どれくらいの消費税を支払う必要があるかが分かります。また、将来確実に支払いが必要な消費税を未払計上することで、未払消費税の記載のない決算書と比較し、適切な財務分析が可能です。

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税抜処理による未払い計上は良いの?悪いの?

税抜処理による未払計上には良い点と悪い点があります。
良い点として、税抜処理を行い仮払い消費税と仮受消費税を記載することで、試算表の段階である程度の納税額を計算予測することができます。
ただし、悪い点として、会計処理時に消費税と経費の科目を分ける必要があり、税込み方式よりも処理が複雑になります。

また、2022年現在での日本の消費税率は10%と8%が混在しているため、仕入れや経費に関して異なった消費税が発生することが多いため、本来の費用の金額を明確化させる意味でも税抜方式での計上が有効といえます。
税抜方式か税込方式のどちらを選択するかに関しては企業での経営状況などを考慮しながら選ぶようにしてください。

未払い消費税を計算する際には仮払い消費税と仮受消費税は重要になることから、普段からの仕訳を間違えないように丁寧に会計処理をすることが大切です。

まとめ

この記事では、「税抜経理方式」と「税込経理方式」の違いや双方のメリット・デメリット、税抜経理における未払消費税・仮払消費税の適切な処理方法について解説しました。
2つのメリット・デメリットを見比べると、「税抜経理方式」が有利な傾向にあります。
ただ、最終的に決めるのは経営者や経理担当者です。
双方のメリット・デメリットを知っておいて損はないでしょう。
消費税の処理方法で悩む場合は、税理士に相談してみるのも手です。
自社の状況に応じて、適切なアドバイスをしてくれるでしょう。

SMC税理士法人では、金融機関OBや税理士をはじめ経験豊富なプロが御社の円滑な 帳簿・決算書作成 をサポートいたします。お電話やお問い合わせフォームから相談可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。

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よくあるご質問

軽減税率について記載されていない領収書を受け取った場合はどうすればよいですか?

相手方がインボイス対応してる場合は再発行を求める必要があります。ただし軽減税率"以外"の記載がされていて軽減税率の記載のみが漏れている場合は、受け取った事業者側が追記をおこなうことも可能です。

中間納税とはなんですか?

中間納税とは前期の消費税額が一定額を超えた場合、消費税の中間申告をしなければならないという制度です。

インボイス制度導入後に免税事業者から課税仕入れを行った場合はどのように処理すべきですか?

原則インボイス制度導入後の免税事業者からの仕入については仕入税額控除はできません。ただし、制度開始後6年間は経過措置が設けられているので、すぐに全ての仕入税額控除ができなくなるわけではありません。

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このコラムの著者 : 舩田 卓

1972年愛媛県生まれのA型。 愛媛県立松山商業高校卒業後、東京IT会計専門学校に進学。 在学中に税理士試験を全国最年少20歳で合格。 そのまま専門学校の専任講師となり、税理士試験の受験指導を担当。 22年間務めた講師の道から飛び出しSMC税理士法人に入社。

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