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大企業で話題になる内部留保、企業の貯金に思えるけれど現預金残高と何が違って問題なのか?

内部留保と現預金残高何が違って何が問題なのか

投稿日:2022年03月03日

更新日:2023年08月24日

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この記事を読むのに必要な時間は約 4 分です。

近年、大企業の内部留保がニュースで取り上げられることも増えてきました。
「内部留保せずに、その資金を従業員の給与・投資家への配当金に回せ!」といった声も挙がっています。
内部留保は個人でいう貯金のようなものです。
この記事では、内部留保とは何か?・内部留保の問題点や内部留保のメリットなどを解説しています。この記事を読むことで、内部留保の本質的な意味を把握できるようになるでしょう。
自分自身の内部留保への考え方も変わるかもしれません。ぜひとも参考にしていただけたら幸いです。

そもそも内部留保って?

内部留保とは「当期純利益(損益計算書)のうち配当金に回されない部分」を指します。
つまり「最終的に余ったお金」とも言えるでしょう。また内部留保は貸借対照表では「純資産の利益剰余金」の部分になります。
「損益計算書の当期純利益=貸借対照表の利益剰余金」となるため、利益を出し続けていれば年々内部留保(利益剰余金)は増えていきます。
注意点として、内部留保に含まれるのは現金だけではありません。株や有価証券の含み益、不動産や土地なども内部留保に含まれます。
「現金=内部留保」ではないのです。

企業の内部留保は年々増えている

財務省によると、企業の内部留保は2020年末で484兆円3648億円(前年度比2.0%増)だったそうです。
(参照元:企業の内部留保、9年連続で過去最高更新…前年度比2%増の484兆円 : 経済 : ニュース : 読売新聞オンライン )
2012年以降、9年連続で過去最高を更新しています。2020年はコロナの影響で売上高1362兆4696億円(▲8.1%)、経常利益は62兆8538億円(▲12.0%)と大きく下げましたが、内部留保は増える結果となったのです。

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大企業の内部留保が話題・問題になる理由

大企業の内部留保が問題になっているのは「従業員の給与や投資家への分配金に回すべきだ!」との声が、政治家・評論家から挙がっているからです。
現在内部留保は、企業の成長や海外への投資に使われることが増えています。
つまり給与が上がらないことで消費が減退し、さらには日本経済の停滞につながることから、内部留保が話題になったり問題視されたりしています。

内部留保を取り崩して給与を上げるのは不可能

ただ、内部留保を取り崩して給与を上げるのは、実質的に不可能です。そもそも給与は自社の売上金額から支払われるものです。
内部留保を使って給与を上げることはできません。もっとも、大幅に給料を上げ利益を減らして当期純利益を赤字にすれば、内部留保は減るでしょう。
それは内部留保で賃上げしたことになりませんし、そんなことを受け入れる企業もあるはずがありません。

企業が内部留保を積み上げるメリット3つ

企業が内部留保を積み上げるメリットとして、下記の3つが挙げられます。

  • 設備投資など企業の成長に活用できる
  • 企業の信用力につながる
  • 万が一にも備えられる

1つずつ見ていきましょう。

メリット①「設備投資など企業の成長に活用できる」

内部留保は設備投資や新規事業など、新しい取り組みを行いたいときに活用できます。
つまり、企業の成長のために資金を費やせるということです。
企業が新しい分野への投資を行うとしても、その投資が必ず成功するとは限りませんが、 内部留保を多く積み上げていれば、攻めの投資もしやすくなります。
企業として成長を続けるためにも、内部留保の多寡は非常に重要な要素となってくるのです。

メリット②「企業の信用力につながる」

内部留保は企業の信用力にも直結します。
例えば 銀行から融資を受ける際、利益を積み立てている企業(内部留保が多い企業)は銀行から好印象です。
なぜなら「利益を安定して出し続けている=貸倒れのリスクが低く、安心して融資できる」からです。
新しい取引先や得意先と契約を結ぶ際も、信用力が高ければ高いほど契約は結びやすくなります。
どの企業も安定している会社と取引したいですからね。

メリット③「万が一にも備えられる」

内部留保は万が一のときに備えることもできます。
例えば新型コロナでは経済が停滞し、飲食業界や観光業界は大打撃を受けました。
いくら売上が減少して利益が減ったとしても、従業員の給与や家賃代は払い続けなければなりません。
そういった状況下で企業を支えてくれるのが、利益の積み上げである「内部留保」です。
内部留保を積み上げていくことにより、強固な経営基盤を作成できます。

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そもそも内部留保は悪いものではない

この記事では、内部留保とは何か・内部留保の問題点や内部留保のメリットなどを解説しました。
そもそも内部留保は悪いものではありません。
1つの企業が懸命に稼いだ結果、内部留保(利益剰余金)になるので、それをどう使おうが企業の勝手です。
確かにマクロ経済の視点から見れば、消費活動の減退・日本経済の停滞につながるでしょう。
しかし万が一の際に体力がなければ、企業は倒産してしまい、従業員を雇うことさえできなくなります。

このように内部留保は深い問題であり、取り扱いは非常に検討する必要があります。
もし自社の内部留保の取扱いに悩んでいるのならば、一度税務のプロである税理士に相談してみても良いでしょう。
この記事が少しでも参考になったなら幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

SMC税理士法人では、金融機関OBや税理士をはじめ経験豊富なプロが御社の円滑な 経営改善 をサポートいたします。お電話やお問い合わせフォームから相談可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。

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よくあるご質問

内部留保の使い道はなんですか?

内部留保とは税引後の利益から配当など支払われた後に残るお金で「利益剰余金」のことです。そのため、事業拡大のための設備投資や返済など事業活動の様々なことに使われます。

日本企業は海外と比較して内部留保は多いですか?

2020年の内部留保は9年連続で過去最高となっており、世界の中でも非常に多くなっています。

海外企業よりも日本企業の内部留保が多い理由はなんですか?

アメリカには内部留保に課税を行う内部留保税が導入されていることに加え、日本企業は「危機対応のために現金を持っていたい」というマインドが強いことが理由として挙げられます。

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このコラムの著者 : 菱刈 満里子

大学卒業後、大手証券会社、文部科学省研究室秘書等を経験後SMC税理士法人に入社。 会計・税務業務に13年間携わった後、経営計画を中心とした未来経営に軸足を移す。 のべ150社以上の経営計画を作成、経営支援を行っている。

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