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2023年以降人材確保等投資税制に代わる「賃上げ促進税制」

人材確保投資税制に変わる賃上げ促進税制

投稿日:2022年07月14日

更新日:2023年08月24日

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この記事を読むのに必要な時間は約 5 分です。

政府はあの手この手で給与所得者の収入増加を、今のところ税制面の優遇措置で図ろうとしています。そのなかで新規雇用創出に特化したのが「人材確保等投資税制」で、新規雇用者への給与支払総額の比較だけで済んだので、企業によってはハードルの低く使い勝手の良い税制でした。この税制は令和5年3月31日までの間に開始する各事業年度が適用期間なので、残りは1年を切っています。
しかし少し趣旨は変わるものの、適用対象になればさらにメリットの大きい「賃上げ促進税制」がスタートしました。この記事では賃上げ促進税制のポイントについて解説します。

賃上げ促進税制とはどのような制度なのか

これまでも税制による賃金引き上げを実現するため「所得拡大税制」はあったのですが、令和4年4月1日以後開始事業年度から適用になる「賃上げ促進税制」は、何が違うのでしょうか。
まずは賃上げ促進税制の内容について、所得拡大税制との違いを踏まえながら説明します。

賃上げ促進税制の内容

賃上げ促進税制の適用を受けるためには、これまでの制度と同じように給与支給額を増やさなければならない点は同じです。では何が変わったのかといえば対象事業者の拡大と、基準を満たしたときのメリットの拡充で、これまでどおり徐々に「ゆるい制度」へ変化していることが分かります。
つまりうがった見方をするならば、「税制で賃上げを図ろうとしても上手く行かなかった」とも考えられるのですが、現実に賃上げをしている企業にとっては有難いことです。

適用対象事業者の大拡大!

これまでの所得拡大税制では、適用対象は「中小企業者等」となっていて、具体的には極端に儲かっている法人以外(前3事業年度の平均所得が15億円以下)で、資本金が1億円以下の法人や、常時使用する従業員数が1000人以下の個人事業主などでした。
ところが賃上げ促進税制では、資本金1億円以上の大企業も適用対象となりました。これも「大企業の力を借りなければ賃上げが進まない」と考えたとしか思えないのですが、如何なのでしょうか。
とはいえ求められる必須条件は、中小企業者等とは違っていて、「継続雇用者の給与等支給額」を比較するという、経理担当者泣かせの面倒な作業が必要になります。

税額控除の拡充

賃上げ促進税制は、企業が賃上げを実施したときの「ご褒美(アメ)」にあたる税額控除額が拡充された点も大きな変化です。
従来の所得拡大税制では賃金増加額の最大25%を法人税又は所得税から控除(但し法人税又は所得税の20%が上限)だったのが、賃上げ促進税制では最大40%になりました。要件は以下のように3階建てとなっています。

①②
適用要件(中小企業) 控除率
雇用者給与等支給額が前年度と比べて1.5%以上増加 15%
雇用者給与等支給額が前年度と比べて2.5%以上増加 15%(上乗せ)
教育訓練費が前年度と比べて10%以上増加していること 10%(上乗せ)

※①の要件を基準に、②や③の要件を満たすことで控除率が上乗せされる

また新たに適用対象となった大企業の要件は以下のとおりで、控除率は30%が最大です。

適用要件(大手企業) 控除率
継続雇用者の給与等支給額が前年度と比べて3.0%以上増加 15%
継続雇用者の給与等支給額が前年度と比べて4.0%以上増加 15%(上乗せ)
教育訓練費が前年度と比べて20%以上増加していること 5%(上乗せ)

※①の要件を基準に、②や③の要件を満たすことで控除率が上乗せされる

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賃上げ促進税制の活用を考える

賃上げ促進税制は、令和4年4月1日以後開始事業年度から適用になっているので、令和5年3月期決算の法人から適用対象となります。
従来の所得拡大税制の活用と基本的に変わりはないのですが、改めて賃上げ促進税制の活用法について考えてみましょう。

賃上げ促進税制のメリット

普通の事業活動を考えると、賃上げ促進税制の適用となる1.5%以上の給与支給額の増加は、拡大期の企業にとっては簡単なハードルとなるでしょう。そのような企業は、そもそも従業員数が増加しているはずで、結果的に「賃上げ促進税制を利用できた」となるに過ぎません。
しかしそれ以外の企業にとっても、今後難しくなっていくと予想される人材確保の手段として、従業員の昇給や新規の採用は積極的に考えなければならない事項なので、賃上げを検討するきっかけにはなるでしょう。

適用ありきではありません

デフレが長いこと続き過ぎたせいで、「賃上げの仕方を忘れた」ともいえる日本ですが、確かに給与を上げることは固定費の増加になるので、簡単に踏み切れないものです。
たとえ税制優遇措置で、適用期間は大きな負担にならなくても、増えた固定費はなかなか下げられません。とくに日本の労働法制では固定的賃金の引き下げは難しいものです。
つまり賃上げ促進税制は、適用を受けるために何かをするのではなく、将来にわたった経営計画の中で「必要な賃上げ」に活用する以外に考える必要はないものといえます。

賃上げ促進税制の注意点

賃上げ促進税制の適用を受けるため注意する点ですが、この制度は青色申告事業者が対象なので、特に個人事業主の方は気を付けましょう。
制度自体は事前の申請などいらないので、法人であれば確定申告書に適用額明細書並びに税額控除の対象となる控除対象雇用者給与等支給増加額、控除を 受ける金額及びその金額の計算に関する明細書を添付します。
また教育訓練費の上乗せ要件を受ける場合、必要書類は添付する必要がなくなり、保存義務に緩和されています。

まとめ

新たに始まった賃上げ促進税制ですが、優遇措置の拡充と要件の緩和がメインで、中小事業者にとっての目新しさはあまり感じられないものです。ただ適用を受けられるならメリットは大きいので、ぜひ活用すべき税制なのは確かです。
とはいえ今回の賃上げ促進税制を見て「大企業の経営者の皆さん、お願いだから社員の給料を3%上げてください」と言っているように見えるのですが、実際の思惑はどうなのか気になるところです。

SMC税理士法人では、金融機関OBや税理士をはじめ経験豊富なプロが御社の円滑な 税務処理、確定申告 をサポートいたします。お電話やお問い合わせフォームから相談可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。

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よくあるご質問

中小企業も賃上げをすれば税制優遇を受けられますか?

賃上げ促進税制で適用対象に大企業が追加されたので、これまで通り中小事業者は賃上げによって税制優遇を受けることができます。

賃上げの対象となる従業員にはアルバイトも含まれますか?

対象となる従業員には パート、アルバイト、日雇い従業員も含まれます。

赤字の場合、賃上げ促進税制の恩恵は受けられますか?

赤字の場合にはそもそもが国税(所得税・法人税)の納税がないので賃上げ促進税制の優遇は受けられません。

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このコラムの著者 : 舩田 卓

1972年愛媛県生まれのA型。 愛媛県立松山商業高校卒業後、東京IT会計専門学校に進学。 在学中に税理士試験を全国最年少20歳で合格。 そのまま専門学校の専任講師となり、税理士試験の受験指導を担当。 22年間務めた講師の道から飛び出しSMC税理士法人に入社。

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