投稿日:2026年03月25日
更新日:2026年03月25日
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「社会保険の壁」と聞くと、106万円の壁と130万円の壁が一緒くたに語られがちです。
ただ、実務ではこの2つは別物です。
106万円の壁は、主に勤務先の社会保険に加入するかの話です。
130万円の壁は、主に家族の扶養に残れるかの話です。
しかも2026年時点では、106万円の壁も130万円の壁も、どちらもまだ現行ルールとして残っています。その一方で、106万円の壁については今後の適用拡大が決まっており、中小企業から見ると「壁がなくなる」というより、これまで遠かった壁が自社の方へ近づいてくる改正です。
この記事では、社会保険の壁を統括的に整理し、106万円・130万円の違い、2026年時点の確定事項、今後の変更、中小企業が押さえるべき実務ポイントをわかりやすく解説します。
目次
社会保険の壁としてよく話題になるのは、106万円の壁と130万円の壁です。
ただし、この2つは同じ制度ではありません。
106万円の壁は、短時間労働者が勤務先の健康保険・厚生年金保険に加入するかに関係する話です。現行では、週20時間以上、月額8.8万円以上、2か月超の雇用見込み、学生でないこと、そして従業員51人以上の企業等で働いていることなどが主な要件です。
一方、130万円の壁は、主に配偶者などの被扶養者として認定され続けるかに関係します。協会けんぽの案内では、被扶養者の年間収入は原則130万円未満が基準で、60歳以上または一定の障害がある場合は180万円未満です。
つまり、106万円は「自分の勤務先で社保に入る話」、130万円は「家族の扶養に残る話」と整理するとわかりやすくなります。
2026年3月時点でまず明確に言えるのは、106万円の壁も130万円の壁もまだなくなっていないということです。
106万円の壁については、現行の短時間労働者への適用拡大ルールがそのまま動いています。したがって中小企業の現場で「もう106万円の壁はない」と説明すると誤解を招きます。
130万円の壁についても、扶養認定の基本ルールは残っています。
ただし、厚労省の支援強化パッケージでは人手不足による労働時間延長などで一時的に年収130万円以上となっても、事業主の証明があれば扶養認定を継続できる取扱いが示されています。
したがって、2026年時点の実務では、
という整理が必要です。
今後の変更で特に中小企業への影響が大きいのは、106万円の壁側です。
厚労省は、2025年成立の年金制度改正法により、短時間労働者への社会保険適用について、賃金要件を公布から3年以内に撤廃し、企業規模要件を10年かけて段階的に縮小・撤廃すると案内しています。
ここで大事なのは、中小企業にとっての意味です。
一般向けには「106万円の壁がなくなる」と表現されることがありますが、中小企業の実感としてはそうではありません。実際には、これまで主に従業員51人以上の企業等が対象だったルールが、今後はより小規模な企業にも広がっていくということです。
つまり、中小企業から見ると、106万円の壁は「消える」のではなく、自社に近づいてくる改正です。
パート採用の多い会社ほど、この変化は人件費やシフト設計に直結します。
一方で、130万円の壁は「もう古い論点」ではありません。
2026年時点でも、扶養内勤務を希望する従業員が多い中小企業では、引き続き実務上とても重要です。
特に現場で混乱しやすいのは、「一時的に超えた場合」と「継続的に超える見込みの場合」を混同することです。
厚労省の支援強化パッケージでは、人手不足による一時的な収入増で年収130万円以上になった場合、事業主の証明があれば、連続2回まで扶養認定を継続できる取扱いが示されています。
そのため、会社としては、繁忙期の残業やシフト増加で一時的に年収が上振れしたのか、それとも今後も継続的に130万円を超える見込みなのかを分けて確認する必要があります。
ここを雑に説明すると、従業員とのトラブルや誤認につながりやすくなります。
中小企業が今やるべきことは、106万円と130万円を別々に管理することです。
まず106万円の壁については、将来の適用拡大を前提に準備する必要があります。
2026年時点ではまだ現行ルールでも、今後は企業規模要件の段階的撤廃で、自社にも短時間労働者の社会保険加入が広がる可能性があります。従業員規模、週20時間以上勤務者の人数、パート比率を把握しておくことが重要です。
次に130万円の壁については、従業員説明の精度を上げることが大切です。
「130万円を超えたら即扶養から外れる」とだけ伝えるのではなく、一時的な収入増に関する特例の有無や、継続的な超過見込みとの違いを説明できるようにしておくと、現場の混乱を減らせます。
最後に、税金の壁と社会保険の壁を混同しないことも重要です。
従業員は「103万円」「123万円」「106万円」「130万円」をまとめて質問してくることが多いため、社内では税金の話か、社会保険の話かをまず切り分けて説明する体制を作ると実務が安定します。
たとえば、従業員30人の会社で、パート社員が多く、数名が週20時間以上働いているケースを考えます。
2026年時点では、企業規模要件の関係で、106万円の壁に関する加入判定が直ちに広く及ばない場合があります。
しかし、将来的には企業規模要件の撤廃で、この会社にも短時間労働者の社会保険加入が広がる可能性があります。
このため、経営者としては「今はまだ対象外か」だけでなく、数年後に同じ働き方のままで保険料負担がどう変わるかを見ておく必要があります。
また、別のパート社員が配偶者の扶養に入っていて、繁忙期だけ残業が増えて年収130万円を少し超えそうな場合は、一時的な収入増なら事業主証明の特例が使える可能性があります。
このケースでは、会社が特例を知らないと、従業員に不要な不安を与えてしまうことがあります。
社会保険の壁を2026年時点で整理すると、結論は3つです。
1つ目は、106万円の壁と130万円の壁は別物だということです。
106万円は勤務先の社会保険加入、130万円は扶養認定の話です。
2つ目は、2026年時点ではどちらもまだ現行ルールとして残っていることです。
ただし、106万円の壁は今後の適用拡大が決まっており、中小企業にとっては壁がなくなるのではなく、壁が自社に近づいてくる改正と考えた方が実態に合います。
3つ目は、130万円の壁も引き続き実務上重要だということです。
一時的な収入増の特例も含めて、従業員への説明を整えておくことが大切です。
個別の加入判定や扶養認定は、勤務時間、収入見込み、会社規模、家族状況で変わります。具体的な判断は、社会保険労務士等の専門家に確認してください。
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いいえ。2026年3月時点では、現行の短時間労働者への社会保険適用ルールが残っています。賃金要件も企業規模要件もまだ有効です。
はい。被扶養者認定の基本基準として、2026年時点でも引き続き重要です。協会けんぽは原則130万円未満を案内しています。
将来の制度変更という意味では、106万円の壁側の影響が大きいです。企業規模要件の段階的撤廃により、これまで対象外だった中小企業にもルールが広がる方向だからです。
必ずしもそうではありません。人手不足による一時的な収入増には、事業主の証明による特例があります。
106万円については将来の適用拡大を見据えた人員設計、130万円については扶養相談への説明整備が優先です。2つを別論点として管理するのが実務上の近道です。
このコラムの著者 : 山口剛志
創業30年。私は、中小企業経営者の未来を守る企業側社労士です。 経営者目線・経営者感覚を徹底し、経営者に役に立つ提案と実行力をお届けします。 「会社を人事労務面から盤石にしたい」「ブラック企業の烙印を打破し、ホワイト企業へ変革したい」――そんな思いを持つ経営者を全力で支援します。 経営課題の解決はもちろん、永続的な成長と発展を実現するための道筋を共に切り拓きます。 貴社の将来を明るく照らすために、いつでもご相談ください!