投稿日:2022年04月26日
更新日:2023年08月24日
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営業活動をして売上の数、量を増やしているのに、なぜか利益は思ったように増えていないということはありませんか?
売上の増加率は利益の増加率とは一致しません。この記事では売上が増えても利益が思ったようには増えない理由をご説明し、利益を増やすために着目すべき「粗利率」と「値決めの方法」を解説します。
売上が上がっても利益が増えない理由は何でしょうか?
まずは会社の利益について見ていきましょう。
① | 売上高 |
---|---|
② | 売上原価 |
①-②=③ | 売上総利益 |
④ | 販売費及び一般管理費 |
③-④=⑤ | 営業利益 |
⑥ | 営業外収益 |
⑦ | 営業外費用 |
⑤+⑥-⑦=⑧ | 経常利益 |
⑨ | 特別利益 |
⑩ | 特別損失 |
⑧+⑨-⑩=⑪ | 税引前当期純利益 |
⑫ | 法人税等 |
⑪-⑫=⑬ | 当期純利益 |
「利益」と一言でいっても、以下のとおり種類があります。
最終的な会社の利益は⑬の当期純利益ですが、売上の数量に比例して増減するのは③の売上総利益です。この売上総利益を「粗利」とよんでいます。
売上が上がっても利益が思うように増えない理由のひとつとして「粗利」が考えられます。この記事では粗利に注目し、利益を増やす方法を探っていきます。
「粗利」は売上から売上原価を差し引いた残りの利益です。売上原価は販売した商品やサービスの仕入れや製造、提供に必要となった原価、費用のことです。つまり売上が0円なら売上原価も0円です。
「粗利」は上記表の⑤営業利益や⑧の経常利益とは何が違うのでしょうか。
営業利益は粗利から販売のための費用そして会社を維持するための管理の費用を差し引いています。経常利益はさらに受取利息などの営業外の損益も加味した利益です。
このように利益の源泉はまず粗利です。売上がいくら多くても、粗利が少なければ最終的に利益は残りません。会社は売上ではなく粗利をスタートとして考えて頂きたいところです。
では粗利はどう伸ばせばよいのでしょうか。
例えば売価100円の商品で、原価が60円であったとします。この時、粗利は100円-60円=40円です。40円÷100円=0.4を粗利率とよび、粗利率40%、のように割合で考えます。
この場合、販売数量が伸びれば比例して粗利の金額も伸びますが、粗利率としては同じです。粗利をさらに伸ばすためには粗利率を上げる、つまり「販売価格を上げる」か「製造原価を下げる」しかありません。
販売価格を上げるのは経営者の意思決定で簡単にできます。しかし当然値上げ後に販売数量が維持できるのか、下がってしまうのかはわかりません。いくら粗利率が高くなっても、販売数量が減少してしまうと利益は減ってしまいます。
ではどのように値決めをしていけばよいでしょうか。いくつかのケースを見ていきます。
最終利益がいくら欲しいか、いくらないと厳しいかを計算し、粗利の目標値を出します。そこから販売数量を見込み、価格を決めます。これは利益を残すための大前提です。
しかし目標の利益は自社の都合なので、その価格で売れるかどうかはわかりません。また、一般的な市場価格と乖離してしまう可能性があります。
製造に必要な原価から価格を決める方法です。かかる原価の金額から乗せたい利益を決めるだけなので、現実的な金額かつ簡単に決められます。
しかし原価がかかっているからといって、売れるかどうかは別の問題です。また、この方法も一般的な市場価格と乖離してしまう可能性があります。
前二つとは異なり、価格から決める方法です。まずは競合や市場価格を調査して自社の価格をどうするか決めていく方法が一般的でしょう。そして目的に応じて、例えば粗利率を低くしてもシェアを高めたい、ブランドイメージを作って高価格路線でいきたい、などの方向性を考えてどのような価格設定をおこなうか決めます。
このようにさまざまな要素を考慮した上で値決めをおこなっていきます。しかしここが一番難しい部分であり、経営者の重要な仕事のひとつといえるでしょう。
利益を増やすには「製造原価を下げる」ことも有効な手段です。
前述したように、販売価格を上げることで市場価格と乖離するなどの理由で思うように販売数量が伸び悩む可能性も多くあります。原価を下げれば自社の努力だけで粗利率が上がるので、できる限りコストカットすることは有効な手段です。業務フローを見直したり、仕入れ先を見直したりして原価率を下げられるかもしれません。
しかし必要以上のコストカットをしてしまうと、商品の質が下がってしまいます。質が下がれば消費者が離れてしまう原因になるため注意が必要です。
このように値決めと粗利率は、目標とする利益を考えるのに重要な要因です。もし自社が設定した価格と、必要な原価から算定した、自社の「適正な粗利率」で販売数量が伸び悩む場合にはどうすればよいでしょうか。
価格を下げる選択肢もありますが、当然粗利率が下がってしまいます。その前にできることを模索しましょう。
「売れない」ということは、消費者が感じている価値がその値段に見合っていないといえます。サービスを追加して付加価値を高める、ブランディングをおこない、設定価格が適正であると感じてもらうなどの方法があります。非常に難しい課題であり、短期間でできるものではありません。しかし方向性を決めて仮説と挑戦と改善を繰り返すことで、将来的に高い粗利率を維持できまするようになるかもしれません。
以上、利益を増やすために重要な「値決め」と「粗利率」についてご紹介しました。実際に販売活動をしてみないとわからない場合が多く、予測がとても難しい部分になります。経営者もコンサルタントも追い求めている難しいテーマです。値決めは経営者の重要な仕事であり、値決めは経営そのものであるともいえます。自社商品の価値を把握して、常に着目しておきましょう。
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売上高とは企業が商品やサービスを顧客に提供した対価(売上)を一定期間で集計したものをいいます。年商は1年間の売上高の合計額をいいます。
粗利益とは、売上から仕入や外注費といった原価を引いた利益を言います。会計上は売上総利益に相当します。営業利益とは、売上総利益から役員報酬や家賃といった販売費及び一般管理費を控除した利益を言います。
売上は企業が商品やサービスを顧客に提供して得た対価のことです。売上高は一定期間の売上を集計した金額を指します。
このコラムの著者 : 菱刈 満里子
大学卒業後、大手証券会社、文部科学省研究室秘書等を経験後SMC税理士法人に入社。 会計・税務業務に13年間携わった後、経営計画を中心とした未来経営に軸足を移す。 のべ150社以上の経営計画を作成、経営支援を行っている。