投稿日:2022年01月26日
更新日:2023年08月24日
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「役員貸付金」と「役員借入金」は正しい使い方・返済方法を知らないと会社を倒産しかねません。
役員貸付金と役員借入金をあまり理解していない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、役員貸付金と役員借入金の正しい使い方・返済方法について解説しています。
この記事を読むことで、正しい使い方と返済方法を完全に理解できるようになるでしょう。
ぜひとも参考にしていただけたら幸いです。
目次
役員貸付金とは、会社(法人)から役員に対してお金を貸し付けることです。
中小企業の経営者が利用することが多いです。
使い方として、下記のケースが挙げられます。
・一時的な役員報酬の代わり
・領収書を切れない場合の資金使途
・会社資金の個人的利用
ここからは、役員貸付金のメリット・デメリットを解説していきます。
まずはメリットから見ていきましょう。
役員貸付金のメリットは、一時的な役員報酬の代わりになる点です。
役員報酬は一定の条件を満たしていないと損金不算入となり、法人税の負担が大きくなります。
役員貸付金を利用することで、役員報酬を低く抑えられるでしょう。
つまり、役員個人にかかる税金を下げることができます。
役員貸付金は、金融機関からの評価を大きく下げてしまいます。
なぜなら、金融機関は融資をする際に返済能力だけでなく、資金の使い方も重点的に見るからです。
また、役員貸付金には利息が発生するので、返済時には受取利息も計上しなければなりません。
そのため、税務上は会社の収益として計上するため、法人税が増える可能性もあります。
役員貸付金の返済方法は下記の3つです。
①貸倒で処理をする
②役員報酬からの返済
③個人の資産を会社に売却する
1つずつ見ていきましょう。
会社が役員への貸付金を放棄すれば、役員貸付金は無くなります。
ただしこの場合、放棄した貸付金は役員賞与として扱われるので、役員個人の税負担が増えます。
また、役員賞与として扱われる場合は、税務上は会社の経費と認められないため、法人税の負担も大きくなるでしょう。
毎月の役員報酬の一部を返済に充てることで、役員貸付金を減らしていく方法もあります。
役員報酬の増額を行わず、役員貸付金の返済に充てる場合は、役員の手取りが減少します。役員報酬の増額を行って、役員貸付金の返済に充てる場合は、個人負担の税金や社会保険料が増える場合もあります。
役員がプライベートで所有する個人資産を会社に売却し、その売却金を貸付金に充てる方法です。
注意点として、売却時に利益が出た場合は役員個人に税負担が発生します。
また、不動産の場合は司法書士への報酬料や登記費用もかかってきます。
役員貸付金は法人化したばかりの企業や、売上の予測が立てにくい会社で活用できます。
役員貸付金を利用する際は、金利や返済方法を明確化しておくと良いでしょう。
役員個人と会社の間で、金銭消費貸借契約を結んでおくことをお勧めします。
金融機関から資金を借り入れたい場合、役員貸付金の利用は避けた方が無難です。
役員借入金とは、役員から会社(法人)に対してお金を貸し付けることです。
使い方として、下記のケースが挙げられます。
・会社の資金が足りない時の増加策
・法人設立時の開業費用
ここからは、役員借入金のメリット・デメリットを解説していきます。まずはメリットから見ていきましょう。
役員借入金は、借り入れた人からの同意があれば利息を払う必要はありません。
また、役員借入金に返済期間は定められておらず、返済のタイミングは自由におこなえます。
いつかは返済する必要がありますが、資金に余裕があるタイミングで返済できるでしょう。
役員借入金が増えていけば、債務超過(資産より負債が多い)状態に陥ってしまいます。
債務超過状態になると、銀行から融資を受けるのが格段に難しくなるでしょう。
また、役員借入金は個人の財産となるので、借り入れている役員が死亡した場合、相続対象として相続税がかかってしまいます。
ただし、役員借入金は、金融機関によっては自己資本と同様に評価される場合があります。
役員借入金の返済方法は下記の3つです。
①DES
②暦年贈与
③債務免除
1つずつ見ていきましょう。
DESとは、債務と資本を交換することを指します。
つまり、債務と交換で会社の株式を取得することで、双方に恩恵が受けられます。
ただ、法人税や贈与税が発生する可能性もあるので留意しておきましょう。
暦年贈与とは、役員個人が貸付金を後継者に贈与することです。
暦年贈与では、贈与税の基礎控除額(110万円)の範囲内でおこなえば、贈与税はかかりません。
債務免除とは、役員個人が会社に対して債務の返済を免除することです。
免除額には「債務免除益」として法人税が課せられ、他にはみなし贈与として贈与税がかかる可能性もあります。
役員借入金は会社の資金繰りやキャッシュフローを増やすための方法として有効です。
債務免除をすれば、役員借入金を帳消しにできますが、税金の課税対象となるため適切なタイミングを見極める必要があります。
よって、顧問税理士と相談しながら債務免除のタイミングを決めましょう。
この記事では、役員貸付金と役員借入金の正しい使い方・返済方法について解説しました。
役員貸付金や役員借入金は利用する分には何の問題もありません。
ですが、使い方や返済方法を前もって決めておかなければ、会社に大きな損失を発生させかねません。
よく理解したうえで利用しましょう。
この記事が少しでも参考になったなら幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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債権者と債務者が同じ役員であれば、役員借入金と役員貸付金は相殺することが可能です。
役員借入金は会社に対する債権ですので、会社に対して貸し付けている金額がそのまま相続財産として相続税の課税対象になります。
可能です。借用書が公正証書の場合には裁判なしで差し押さえも可能ですし、裁判によって財産を差し押さえて回収に充てることもできます。
このコラムの著者 : 舩田 卓
1972年愛媛県生まれのA型。 愛媛県立松山商業高校卒業後、東京IT会計専門学校に進学。 在学中に税理士試験を全国最年少20歳で合格。 そのまま専門学校の専任講師となり、税理士試験の受験指導を担当。 22年間務めた講師の道から飛び出しSMC税理士法人に入社。