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中期経営計画と単年度経営計画の作成方法、経営コンサルタントが解説

中期経営計画は毎年作る必要があります

投稿日:2019年11月24日

更新日:2023年03月17日

経営者が知っておくべき「利益とキャッシュの最大化」セミナー

この記事を読むのに必要な時間は約 22 分です。

会社設立後3~5年経過して「支出ばかり嵩んで売上が伸びない」「借入金の返済に必要なお金を用意できない」などの悩みを持つ経営者の方たち。その多くは経営計画を立てていないことがほとんどです。

今回は中期経営計画と単年度経営計画の作り方を解説します。
行き当たりばったりの経営ではなく、5年後の理想の姿を描き、現実まで具体的に落とし込めれば必ず利益が残り儲かる経営を行うことができます。
中小企業の場合、新商品開発・人材の採用・取引先の変動・社会情勢などにより、計画は大きく変わっていきます。また、1年後は計画できたとしても、5年を計画通りに進めていくことは実際には不可能で、良くも悪くも必ず修正が必要になります。

つまり中期経営計画と単年度経営計画の違いは、中期経営計画は現時点から見た「目標設定」であり、単年度経営計画はその名の通り「計画」という点でしょう。理想の姿を実現する為に「今」何をするかを考えることが大事です。儲かる経営計画を作成しましょう。

中期経営計画の作成

経営理念・経営目標をつくる

経営理念とは会社が永遠に追い続けていくもので、会社の存在意義を謳ったものです。「お客様のため、従業員とその家族のため、社会のため」に会社があるのだということ、つまり会社が存在する根本の考えが経営理念です。
なかなか思いつかない場合には、他の会社の経営理念を真似するのも手です。いろいろ見ていくと自分にぴったりの経営理念が見つかったりします。
経営目標は自分の理想を指します。この目標は「こうなったらいいな」と楽観的な気持ちではなく「こうする!」と決めることが大切です。

例えば、東京在住の人が北海道の札幌市に行く目標を立てたとします。このときに「いけたらいいな」と思っているうちは、旅に出ようとはしないでしょうし、出ても方向を失い、いつまでたっても到着できなくなります。「○月○日に北海道に行く!」と決めて旅に出れば、今自分がどこに居るのか、向かっている方向は間違っていないか、今よりも他の交通手段に乗り換えるべきかなどをチェックし修正をすることができます。

売上を分類する(売上分類)

売上を商品別や取引先別等に分類していきます。売上計画を作成する際、売上を分類する作業はとても重要です。

  1. 商品別
  2. 取引先別
  3. ルート別

など、5年後を考えた時、この売上を意識して伸ばしていこう、この売上は縮小でいこう、とイメージできる分類が良いでしょう。
売上分類のポイントは

  1. 伸ばしたい商品、意識して伸ばそうとは思わない商品、減らそうと考えている商品等に分類する
  2. 粗利率の違いにより分類する。つまり、粗利の良い商品、悪い商品などに分類する

です。分類数に上限はありませんが、あまり多いと計画を立てにくくなります。4~8分類ぐらいが良いです。
例えば、直前期決算の売上を「商品別」で分類してみます。

<直前期売上>
A商品  4,000万円
B商品  1,000万円
C商品  3,000万円
D商品  2,000万円
売上合計  1億円

分類が終わりましたらどの商品をどのくらい伸ばすのか、または減らすのかをイメージします。
この時よく目にするのが、前年と比較して10%ずつアップしていくような売上計画です。10%ずつアップするので5年後には、1.1×1.1×1.1×1.1×1.1=1.61、つまり計画作成直前期の1.6倍の売上計画が出来上がるというものです。
こんな決め方では具体性がないため、実践以前に説得力もやる気もない計画となってしまいます。

B商品 ダメな計画
1年目 1,000万円×1.1倍=1,100万円
2年目 1,100万円×1.1倍=1,210万円
3年目 1,210万円×1.1倍=1,331万円
4年目 1,331万円×1.1倍=1,464万円
5年目 1,464万円×1.1倍=1,610万円

どの売上を伸ばすか判断する(限界利益)

どの売上を伸ばしていくのかを判断するためには「限界利益」を使います。限界利益の計算式は、
「限界利益=売上-変動費」
ここでいう変動費は、売上の増減に直接影響する経費で、

  1. 仕入(材料)
  2. 外注費

の2つを指します。
例えば運送業においては燃料費を変動費にする場合がありますが、まずは仕入(材料)と外注費の2つを変動費としましょう。ただし、在庫の増減は変動費に影響しますので、仕入(材料)と外注費に在庫の増減を加味したものを変動費として下さい。

つまり限界利益の計算式はこの様になります
「限界利益=売上-(仕入又は材料費+外注費+期首在庫-期末在庫)」
※期首在庫=期首商品・期首材料・期首仕掛・期首未成工事支出金
※期末在庫=期末商品・期末材料・期末仕掛・期末未成工事支出金

企業において、この限界利益をいかに増やしていくかが鍵であり、5ヵ年計画においても重要なポイントになります。
また、限界利益を売上で割った率が、限界利益率です。
「限界利益率(%)=限界利益÷売上高」
ここで前回の売上分類にもどりましょう。

<直前期売上>
A商品 4,000万円(限界利益率10%)・・・市場は飽和状態
B商品 1,000万円(限界利益率30%)・・・今後成長市場
C商品 3,000万円(限界利益率20%)
D商品 2,000万円(限界利益率20%)

前期の売上高を分類し、限界利益率を算出すると、上記のようになりました。
次に、売上高ではなく「限界利益」で分析してみます。

<前期限界利益>
A商品 400万円(限界利益率10%)
B商品 300万円(限界利益率30%)
C商品 600万円(限界利益率20%)
D商品 400万円(限界利益率20%)

A商品の売上高は最も大きいですが、限界利益でみるとC商品の方が儲かっていることが分かります。しかもA商品の市場は飽和状態で、今後売上を伸ばしていくのは難しい。
となると、5年後のA商品は縮小方向、そしてB・C・D商品を伸ばしていく、という計画になります。
特にB商品は、現在の売上高は少ないが、限界利益率も高く成長市場です。したがってB商品をメイン商品にするように計画を立てる。
こんな風に考え、売上計画を作ってみては如何でしょうか。

また「商材に成長性が無く、どう考えても売上を伸ばすのが厳しい」等という場合にはキャッシュに焦点を当てると良いでしょう。5年後の総売上高が計画作成直前期より下がっても構いません。粗利額が増えれば、キャッシュは増えます。
売上を伸ばすことができなくても、少しでも粗利率の高い商品に売上構成を変えていく。生産性を上げ、今いる従業員で数%の売上の伸ばすことはできないか、削れる経費はないか。知恵を絞り、工夫を重ねて手元の現金を増やす方法を検討しましょう。

具体的な売上金額を算出する(単価×件数)

売上を分類し、限界利益を算出し、どの売上を伸ばしていくのか、が見えてきました。次に具体的な売上金額を算出します。
この時には売上金額そのものではなく件数を目標にするとイメージしやすく、また達成管理も容易になります。「目標件数を受注するためにする事は何か」「目標件数をこなすために必要なものは何か」という具合ですね。

売上は、「単価×件数(個数)」で計算されます。
そりゃそうだという計算式ですが、業種によってはここで止まってしまう方もいらっしゃいます。
特に建築業の経営者から「受注金額がバラバラなので単価の算出はできない。だから「単価×件数」の計算はできない。」という声を多く聞きます。

ここからは建設業の売上目標の建て方です。
例えば、1戸建てを中心に建築するA工務店。大規模な公共工事から民間の工事までを請負う建築業で、受注物件は数十万円から数億円まであります。
このような場合、単価は平均単価を使用します。
受注金額がバラバラな建築業であっても、商品販売であっても、分類毎の売上と総件数が集計できれば、平均単価は算出できます。売上計画は、「平均単価×件数=売上高」で作ってください。
出来上がった売上計画は金額で表示されますが、その元となる件数を必ず押さえておきましょう。

どの業種であっても

  1. 売上分類
  2. 限界利益
  3. 単価×件数

この3つのポイントを押さえて売上計画を立ててみて下さい。

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アクションプランの作成

さあ売上が決まったら、次はその売上を達成するためのアクション・プランを作成しましょう。
売上計画達成にどのような手段や方法があるのかを考え、逆算して1年目の計画を立てます。

5年後の会社はどのようになっているか想像しましょう。
例えば…取り扱う商品は4種類で粗利率約25%、店舗数は東京の青山と愛知の名古屋市に2店舗で家賃は年間360万円、従業員は各店舗5人で計10人で人件費は3,500万円、広告宣伝の方法としてDMと折込広告、SNSの3つで費用は年400万円、5年後の売上げを上げるための経費などを具体的に決めていきます。なお、現在の経費とさほど変動のない費用については、実績値として現在の経費の金額を用いることをお勧めします。
後はカンタンですね。5年後の計画から逆算して今現在から何をやるべきか落とし込んでいきます。例えば、従業員を増やし、研修する必要から3年後には従業員を2人採用するとか、新店舗の開店を4年後にするから3年後には資金1,000万円の借入れをして店舗内装工事を着工し、DM10,000通で広告を打つなどなど各年で行うべきアクション・プランを立てていきます。このアクション・プランは具体的に時期や目標数値などを決めることで経営者自らの行動指針が出来てきます。

ただし、1点だけ注意が必要です。
それは最初に決めた経営理念及び経営目標に合致しているかどうかです。それらに合致していれば実行に移した時に目標を見失わずに進むことが可能となりますので、計画を立て終わったときにもう一度確認してみましょう。

人件費計画の作成

従業員の人数や給与を考える(人件費計画)

売上計画により、5年後のワクワクするような売上となり、商品構成や取引先も具体的にイメージできるようになりました。
このイメージを実現するために必要なのは「人」です。みなさんはどのように人件費計画を立てていますか?
「今の従業員だけでは人数が足りないので、5年後には10人増やそう」「10人という採用に根拠はないけれど、今までの経験から、このぐらい増やせば人は足りるかな」「みんな忙しそうなので、少し人を増やして、残業もなくして…」
このようなことを考えながら計画を作っていませんか?

従業員が忙しそうにしているのには2パターンの理由があります。

  1. 人が足りないから忙しい」
  2. 人は足りているが、生産性が悪いので忙しい」

この2つには大きな違いがあります。

生産性が悪くて忙しいのに、人が足りていないと勘違いし、増員するケースを本当に良く見ます。こうなると利益を圧縮し、赤字経営に陥ってしまいます。
或いは人は足りているのに、一人辞めたから一人採用する、という採用も多いように思います。

現在の従業員数が適正であるかどうかを見ることができる、適正人員の考え方について見ていきましょう。
適正人員は

  1. 限界利益
  2. 給与分配率
  3. 平均給与

の3つを使って計算します。

つまり適正人員を算出するには先ほどの限界利益と給料から計算する必要があります。
「売上」から「変動費(仕入+外注)」を差し引いたものが「限界利益」です。この限界利益のうち給料の占める割合、これが「給与分配率」です。
「給料÷限界利益=給与分配率」
この場合の給料とは、役員報酬・給料・賞与、および製造原価がある場合は賃金・工員賞与をいい、社会保険料や福利厚生費は含みません。

(1)給与分配率
給与分配率は、目安として40%~50%の間に収まるようにコントロールすると良いでしょう。
給与分配率が40%以下だと給料が安すぎて従業員が定着しない傾向があり、また50%を超えると会社の利益が出にくくなります。ただし業種や会社の方針によってこの率の目安は変わります。

それでは自社の給与分配率はどのくらいが適正なのでしょうか。
まずは過去の決算書から10年分の給与分配率を算出してみましょう。そして並んだ給与分配率をもとに10年間の業績や社員の採用等を思い出してみて下さい。

  1. 残業続きで従業員に苦労をかけた年・・・38%
  2. 仕事が減って、従業員が暇そうだった年・・・55%
  3. 比較的残業も少なく、会社の利益も出た年・・・45%

ベストな状態だった時の給与分配率が45%だったとすると、この会社にとって適正な給与分配率は45%です。

直近の決算書の給与分配率が48%なら「45%に収まるよう人件費をコントロールしよう」という計画を立てることができますし「新卒から採用して育てていく経営方針にしたので、来期も48%で良い」という意思決定もできます。
このように給与分配率を知ることで、人件費に関わる経営の判断をすることが出来るようになります。

(2)平均給与
次に、直近の決算書から平均給与を計算してみましょう。決算書の給与を期末の人員で割れば、平均給与が計算できます。
いかがですか?あなたの会社の平均給与はいくらになりましたか?

思っていた金額よりも低いと感じた方は、将来いくら給料を払ってあげたいかを考えて下さい。希望する平均給与と限界利益、そして給与分配率が分かれば、あなたの会社の適性人員をはじき出せます。
今いる人数で足りているのか、多すぎるのか、採用しなくてはいけないのかの判断をすることが出来るようになるのです。

社員の人数は適正か(適正人員)

「給与分配率」と「平均給与」、この2つを使って適正人員を算出し、5年後の従業員数を計算しようと思います。

例えば以下のような決算書があったとします。
売上 1億2000万円
変動費 4000万円
限界利益 8000万円(限界利益率66.7%)
給与 3600万円 (給与分配率45%)
従業員数 12人
平均給与 300万円

この決算書を元に、未来の給与や従業員数をはじき出します。
まず「平均給与が300万円では少ないので、将来400万円払えるようにしたい。」という目標を立てます。
そして、過去、給与分配率が50%の時が残業も少なく会社の利益もあるという最も良い状況だったので「給与分配率を50%にしたい」とします。

限界利益のうち給与に50%を配布し、平均給与を400万円にしたいということですから
400万円÷50%=800万円 

上記の計算で、一人当たりいくらの限界利益を出せばよいのかが計算できます。これを「一人当たり限界利益」といいます。

目標平均給与÷給与分配率=目標一人当たり限界利益

この会社の限界利益は年間8000万円ですので、目標である一人当たり限界利益800万円で割ると
8000万円÷800万円=10人
つまり10人で現状の限界利益を出せば、平均給与400万円を出してあげられることが分かります。この人数が「適正人員」なのです。

現在12人の従業員がいますので、適正人員と比較すると2人多いことになります。
ただし2人を解雇するわけにはいきませんので、経営者は12人で平均給与400万円を出せる限界利益を目標とすることが必須となるのです。
こちらの計算もカンタンに出せます。

目標限界利益=目標一人当たり限界利益×人数
       =800万円 × 12人
       =9600万円

限界利益率も分かっていますので、上記に必要な売上高も算出できます。

目標売上高=目標限界利益÷限界利益率
      =9,600万円÷66.7%
      =1億4,392万円

つまり1億4,392万円の売上があれば、従業員12人に平均給与400万円を出してあげられるのです。

この計算を行い適正人員が分かれば、採用の要否も分かります。
適正人員より現在の従業員数が多い場合、残業が多く忙しそうにしている原因は、人員不足にあるのではなく生産性が悪いからだと気づきます。
そうすると、人を増やすのではなく生産性を上げる対策をとる、という意思決定ができるようになります。

5年後の従業員数を逆算

さて、経営計画にもどりましょう。
5年後何人の従業員が必要なのか。この計算に今まで解説してきました適正人員を使います。

  1. 5年後の平均給与は〇〇円にしたい。
  2. 5年後の給与分配率は〇〇%にコントルールする

この2点が決まると、「目標一人当たり限界利益」が決まります。先ほどの例で言いますと、平均給与400万円÷給与分配率50%=800万円 です。

例えば、売上計画をたて、5年後の限界利益が算出できたなら、
【例:5年後】
売上 3億円
変動費 1億円
限界利益 2億円

限界利益を目標一人当たり限界利益800万円で割ってみて下さい。
2億円÷800万円=25人

これが5年後の売上が達成できた際の適正従業員数です。
5年後をイメージしたとき、この従業員数では足りないということであれば、再度売上計画に戻り、もっと限界利益をアップする計画、または、売上そのものをアップする計画に修正する必要があるかもしれません。
25人も必要なければ、平均給与をもっとアップし、採用計画を減らしても良いかもしれません。

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単年度計画の作成

その計画1年目を分解して、毎月の計画に作り直す。これが単年度計画です。
年間の売上・人件費・経費・投資・借入計画は、すでにあることを前提にお話しします。それでは早速、売上計画からみていきましょう。

売上計画を作る

売上計画を作る上で最も重要なのは、売上分類です。分類の方法は、「商品別「取引先別」「ルート別」など、毎月、目標が達成されたか検証しやすいよう、自社で把握しやすい売上分類が良いでしょう。
中期経営計画を作成した際に売上分類は作成していると思いますので、その分類をそのまま使っても良いと思います。
売上計画のポイントは2つあります。

ポイント1つ目は、各売上に対する「単価」と「数量(件数)」の把握です。単価というと、いろんな単価があって決められないと思われる方も多いですが、売上分類毎の過去数年の平均単価・前期の平均単価を参考にすると良いでしょう。あくまでも、売上分類毎の平均単価ですので、実際の単価との違いがあってもかまいません。
売上分類毎の単価が把握できれば、単価に数量(件数)を掛けて、実際の売上計画を作っていきます。
中期計画で売上分類毎の年間売上は決めていると思いますので、先ほどの「平均単価」で割って年間の数量(件数)を計算してみて下さい。金額ではなく、数量(件数)にすると、各売上のイメージが付きやすくなると思います。
年間の数量(件数)が把握できれば、この数量(件数)を月別に分解していきます。前期の売上推移・季節変動・人の採用などを参考に、年間の数量(件数)を各月に配布して下さい。
数量(件数)計画ができれば、単価を掛けて、金額ベースに直したものが、売上分類毎の月別計画になります。
なぜ、ここまで、数量(件数)と単価に拘っているか?
経営計画は、将来の目標を達成するためのビジョンを明確にし、計画と実績との差を把握し、ズレが生じた場合には、そのズレを速やかに修正していくという、PDCAサイクルを効果的に回していく道具として使うことが目的です。
大切なのは、「計画と実績のズレを明確にする」ということです。計画と実績がズレたことに気がつき、修正しやすい数字は、実際の売上金額ではなく、売上分類毎の数量(件数)と単価です。
売上金額を数値目標にすると、頑張って売上を上げようという努力目標になり、具体性に欠けることで行動が取りづらくなります。
一方、件数や単価でズレを見ることで、「数量(件数)が足りないので、数量を上げる対策をしよう」「数量には限界があるので、単価を上げる対策をしよう」という行動につながります。
このため、数量(件数)と単価に拘った計画をつくることをお勧めします。

売上計画のポイント2つ目は、各売上に対する限界利益の把握です。
限界利益とは、売上から変動費を差し引いたものです。変動費とは、売上が増減すればそれに応じて増減する費用で、仕入(材料)・外注の2つが該当します。
厳密には、運送業の燃料費や、商品販売の荷造運賃も変動費とすることがありますが、ここでは、仕入(材料)・外注の2つとします。
過去数年の平均限界利益・前期の限界利益・中期経営計画で作った1年目の限界利益など、これらをもとに、今期の目標限界利益を決めましょう。
限界利益の改善は、並大抵の努力では達成できません。限界利益を改善するための具体的なアクションプランをたて、今期の大きな柱にすべき内容となります。

人件費計画を作る

中期計画で、年間の予算は決めていると思います。この金額をもとに毎月の計画を作成します。
人件費計画を作成する際は、横行に従業員の名前、縦列に月(期首から期末の12列)の一覧表を作って計画します。
今いる従業員については昇給・賞与の計画を立て、新しく人を採用する場合は、いつ入社し、いくら給料を支払うのか。賞与はいつから支給するのか、等の計画を立てます。

また退職する人がいる場合、いつ退職するのか、いくら退職金を支払うのか等も計画に必要でしょう。

単年度計画で、売上計画・人件費計画は大きな柱です。特に昨今は採用が厳しく、計画が立てづらいところではありますが、「人を採る」という計画があって初めて採用ができるのだと思います。

また人件費は経費に一番インパクトを与えるため、最終利益も大きく変わってくることもあります。
人が足らないから採用するのではなく、まず計画することから始めましょう。

今回は、経費計画からお話しします。

経費計画を作る

売上計画をはじめ、人件費計画、その他今期のイベントなどを考慮して経費計画を作成します。
科目ごとの年間計画は中期計画でできていると思いますが、意識して増やす経費と減らす経費を確認しながら作成していきます。計画を立てる時には、前期の元帳を用意しておくと良いでしょう。
例えば、広告宣伝費の計画を作成する際、前期の元帳を良く確認し、今期減らすことができる項目がないか探していきます。前年はホームページの作成を行ったが、今期はなし。その代わり秋には展示会に出展する、といった要領です。

経費削減の計画と、今期のアクションに対して必要な追加経費の計画を同時に行っていきます。その結果、広告宣伝費の年間合計が中期計画の金額より多くなった場合は、もう少し展示会を安く抑えられないか、また他に削れる項目はないか、などを検討しましょう。
中期計画の金額より少なく収まったのであれば、次の項目にすすんでいきます。
この手順を繰り返し、すべての経費科目について月毎の計画を作成します。

投資計画を作る

機械・車の購入や建物の建設などの計画があれば、計画に入れていきます。
機械・車・建物などの設備投資は、支払う金額をそのまま単年度計画に表示することはできません。設備投資の費用は、損益計算書において減価償却費という科目で少しずつ経費化されますので、設備投資による減価償却費がいくらになるかは税理士に確認して計画しましょう。
また、建物を建てると、引越し代金・机やパソコンなどの備品・その他付随して多くの費用がかかります。この追加経費も各科目計画にプラスして計画しましょう。

最終確認

売上計画→人件費計画→経費計画→投資計画の手順で作成した、単年度計画の経常利益を確認します。
最終確認のポイントは2つです。

・売上高経常利益率
売上高に対して経常利益が何%あるか。という指標です。売上高経常利益率は10%以上を目指します。なんとか「売上高の10%以上は利益を残す!」という計画を作り、次に計画を達成する方法を考えましょう。
10%以上残らなければ、もう一度売上計画から検討します。売上高の10%以下の利益しか残らない計画にすると、それが目標となるため、作った計画以下になる事はあっても、計画を上回る利益が残るということはまずありません。
ぜひ高い目標設定をしましょう。

・税引前当期利益 1,000万円以上
2つ目のポイントである「当期利益を1,000千円以上にする」という目標は、会社の規模により当期利益が1,000万円ではまったく足りない会社もあれば、そもそも売上が2,000万円程しかない会社もあるので、すべての会社に同じ指標を当てはめることは出来ません。
しかし「1,000万以上の利益を出すと税金が大変なので・・・」など、利益を出すことに慣れていない中小企業の経営者が多くいます。経営計画をつくる目的は、会社にとって最も大切なキャッシュを増やし、潰れない強い会社になり、ワクワクする目標を達成することです。
利益を出し続けることが、キャッシュを増やす最も健全な方法です。
中小企業にとって1,000万円以下の利益は、採用の失敗、得意先の撤退など、すぐに赤字に転じてしまいかねない利益です。
したがって単年度計画を作成する際は「何があっても必ず黒字にする」という覚悟を持ち、税引前当期利益が1,000万以上になるような計画を作って下さい。

中期計画が「夢目標」である一方、単年度計画は必ず達成しなければならない「実現目標」です。
作った計画は、必ず達成する覚悟をもって強い会社になって頂きたいと思います。

たどり着くまでぐるぐる回す。PDCAこそが肝心

目的地に到着するために徒歩、自転車、車、電車、飛行機、船など様々な方法があります。また、ルートも手段によって陸だったり、空だったり、海だったりします。
陸を車で行くのであれば、高速道路だったり、一般道だったり、遠回りしたり、近道を見つけたり、電車で行くのであれば、新幹線であったり、在来線であったり、地下鉄であったりと、ルートと手段の組み合わせでいろいろと変わってきます。
到着予定日に間に合うように途中でルートや手段を変更しながら旅を続けていくことになるでしょう。

計画を練って実行し、計画通り進んでいるかを確認し、大丈夫であればそのままで、間に合いそうになければ、違う手段やルートを変更してまた先に進んでいくことになります。このサイクルがPDCAです。PDCAがうまく回らないときは、計画に近づくことができない状態が続きます。
お気づきお気付きかと思いますが、PDCAサイクルの中で一番大事で一番難しいのは“C(Check)”と“A(Action)”です。

計画通りにできているか一定期間でチェックし、計画通りでなければ修正するための方法を考えて実行することが計画を達成するために必要になります。

達成できない理由を知れば達成の可能性が高まる

計画が達成できない理由をまとめると以下のとおりです。
①目標そのものが高すぎた
高い目標を立てるのは大切ですが、売上を5億、10億、20億と絵空事のような目標ですと未達成に終わってしまいます。
②会社内部に浸透せず、やる気がでない。
経営者は盛り上がって計画を立てたが、従業員は誰も知らない状態ではいけません。
③目標は正しいがやり方が間違っている
新しい市場で新しいモノを売るだとか、ホームページを作るだけ作って何もしないというようにやり方を間違ってしまうと目標は未遂で終わってしまいます。
④会社本位でお客様無視
値上げをする、外注先に無理をいうなど会社本位で動いていては計画は達成されません。
⑤目標達成の動機づけがない
なぜ、達成しなくてはいけないのか、達成すると会社がどうなっているのか、スタッフはどうなっているのか、お客様はどうなっているのかという動機づけがないと上手くいきません。
⑥徹底力が足りない
これが一番重要です。「やろう!」と意気込んで計画を立てても、計画を立てて終わりという経営者や徹底力が足りず途中で諦めてしまう経営者もいます。
徹底して計画達成に向けてPDCAを回していくことが重要です。
⑦大きな状況変化が起きた
リーマンショックのような経済が急変したとか地震や火山噴火なののような自然災害などは避けられませんので仕方ありません。
ただし、東京オリンピックや消費税増税はこの大きな状況の変化には含まれませんので、これは計画に織り込む必要があります。

自分でできなければ他人の力を借りるのも手!

子供を勉強するようにするための方法の一つに学習机を買わないというのがあります。
学習机がなかったら勉強しないのでは?と思われるかもしれませんが、子供を食卓で勉強させ料理など家事をしながらお母さんが子供を見ているのが良いそうです。

そうすることで子供は勉強することが習慣付いてきて、一人でも勉強するようになるそうです。
母親が見ているから勉強をするようになるのです。

誰かにチェックしてもらえばやれる場合の一例ですが、自分でチェックできないのであれば、誰かにチェックを頼むのも計画を達成する一つの方法です。

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中期経営計画は毎年作る

「中期経営計画を作成し、5年後の目標に向かって進み、1年目の行動計画・2年目の行動計画・・・そして5年目の行動計画を順番にクリアしていき、5年後には当初立てた計画を必ず達成する。」
「一度立てた計画は、5年かけて計画通り進めていく。」
こんなイメージを持っていませんか?

つまり、中期経営計画を一度作成したら、次に計画をつくるのは5年後。このように思われている経営者が非常に多いのですが、効果のある計画はそうではありません。

中期経営計画は毎年作ります。
毎年作り続ける計画は中期経営計画と言えるのか、と思われるかもしれませんが、それで良いのです。
なぜなら、中期経営計画の目的は目標設定であり、必ず達成すべき計画とは異なるからです。

中小企業の場合、毎年成長し続けなければ将来はありません。
1年後は売上の構成も従業員も取引先も、また景気も、大きく変わっているでしょう。
1年前に立てた5年後と、現在イメージする5年後では大きく変わっているはずです。
また、そうでないと中小企業は生き残っていけません。

過去に作った5年後の目標に向かって行動を続けるだけでは、大きな成長は望めません。
5年後にはこうなりたいというワクワクする目標は毎年変わるので、毎年作り続けるのです。

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このコラムの著者 : 浅田 和利

SMCグループ (株)SMC総研 経営コンサルタント 1968年大阪府生まれのB型 東京・千葉の会計事務所を経て、2008年SMCグループに入社。 先行経営(MAS監査)を通じてお客様の経営支援を行っている。

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