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節税が理由で倒産する会社のパターン

節税によって会社が良くなることは絶対にありません

投稿日:2020年01月12日

更新日:2023年03月17日

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この記事を読むのに必要な時間は約 12 分です。

今回から4つの実体験で、破産弁護士が「節税」の恐ろしさについてお伝えしていきましょう。あなたは節税がお好きですか?

節税という言葉の魔力

節税と聞くとどう感じるでしょうか?
税金の負担が軽くなるのですから、経営者は節税したいと思うでしょう。
脱税ではなく合法的に税金が安くなる方法を税理士から提案されれば、何の問題もなく良いことばかりだと感じるでしょう。

節税という言葉は、経営者の財布の紐を緩めさせる魔力を持った「殺し文句」なのです。
節税によって会社は良くなるのでしょうか? はっきり言って大きな間違いです。

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節税とは何か?

節税をすると本当に会社は得するのでしょうか?税金が安くなれば、会社の税負担は軽くなり、会社の発展にとって良いことなのでしょうか?
そもそも節税なんて言葉は、法律にはありません。

経費を節約するという言葉はありますが、税金を節約するなんていう概念自体が存在しないのです。
おそらく節税という言葉は、節約と税金を組み合わせて税理士が作った造語です。

税金に関しては多くの法律が存在します。そこには、法律要件(条件が整えば)とその結果(こうなる)が書かれています。
税法には、所得控除や税額控除等のよくわからない専門用語が沢山並んでおり、それを駆使して税理士が節税をしてくれると思っている人が多いでしょう。

法律に書いてある税金が安くなる条件というものは、そもそも節税などとは呼びません。税理士がやって当たり前のことであり、お客さんに情報提供しなければむしろ業務上のミスになるだけです。

「節税」という言葉が、税金を安く抑えることができるウルトラCや裏道、マル秘テクニックの様な方法であるように経営者には聞こえるのかもしれません。
節税という言葉自体に決まった定義はなく曖昧で、範囲もはっきりせず実態も掴めません。

税理士やファイナンシャルプランナーが使う節税という言葉には「合法的に税金を安くするテクニック」という意味があると思います。

節税とは「機会喪失を招き、会社倒産のリスクを高め、会社を悪くすること」

私は、かつて破産専門の弁護士でした。破産する会社の過去3期分の決算書を見ると、どれも判をついたように同じ特徴があります。

それは倒産する3年前から現金預金残高が減少しているということです。

現預金残高が減少している原因の最大の要因は「借金の返済」と「節税」です。

会社が倒産する理由は支払い不能です。要するに会社の現預金などの資産で借金を返せなくなることです。その支払い不能の原因が、実は節税にあるということに気がついていない経営者や税理士が非常に多いことが問題です。

「うちは利益が出ているのに現金が残らない。なんでや?長年不安に思っていたが、税理士は何も言わないし、銀行も貸付をしてくれていたので、大丈夫だと思っていた。」という破産会社の社長さんの愚痴をたくさん聞いてきました。

この社長さんはどこで舵(かじ)を切り損ねたのでしょうか。色々な要因がありますが、会社の財務の基本を理解せずに、節税税理士に会社の経理を丸投げして、脳みそをアウトソーシングしてしまったことに大きな原因があると思います。
税理士は、経営を理解しお客さんの会社の将来を考えている人ばかりではないということを理解する必要があります。

税理士がよく使う節税と言われる方法には様々なものがありますが、その中で一番にお客さんに勧めたがる商品は、生命保険と不動産等への投資です。

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貯蓄性があるのに経費計上できる節税保険

税理士やファイナンシャルプランナーが使う節税という言葉には「合法的に税金を安くするテクニック」という意味がある、とここまででお話ししました。
では合法的に税金を安くするにはどのような方法があるのでしょうか?

それは、税金の計算方法がわかれば簡単に理解できます。
税金の計算方法は、「税引前利益 × 税率」です。

つまり税引前の利益が少なくなれば税金は安くなり、多くなれば税金が高くなるということです。
税率を勝手に変えることはできませんので、税金を安くするには税引前の利益を減らさなければいけません。その方法の一つが経費を増やすことでしょう。

一方で経費を増やすことについて経営者には抵抗があります。
「コピー用紙の無駄を省くために裏紙を使え」と、経費削減を従業員に口酸っぱく指導しているように、経営者は経費の無駄は大嫌いです。

しかし「節税保険は実質的に貯蓄性があり後で還ってくるのですが、税法上は経費として計上できますよ?」と意味の分からないことを言われると、経営者は「よくわからないけど、そんな方法があるんですか!」と前のめりになり、「是非そのような方法で税金を安くしたい」と考えます。

通常貯蓄性がある金融商品は経費としては認められませんが、節税保険は、通達によって保険金の一部が経費計上できるということになっていました。
(節税保険の多くは半損と呼ばれ、50%が経費計上できていました。)
ところが、2019年2月14日以降、ほとんどの節税保険は通達により既に廃止されました。いわゆるバレンタインショックです。

ただし、廃止前に締結された節税保険の契約関係は依然としてして有効であり、巷には多くの節税保険がいまだに残存している状態です。

生命保険の役割


本来、生命保険というものは、経営者の死亡リスクに備えるというリスク回避という機能があります。
経営者が突然死亡した場合の、会社の負債の返済や従業員の給料を確保するために加入するものです。
例えば、負債が2億円であり、従業員の半年分の給料が1億円であれば、3億円を保障する生命保険に入る必要があります。

そのための生命保険は必ず必要です。なぜなら、多額の負債の返済ができなかったり、従業員の給料を支払えなくなったりした場合、債務者や従業員に迷惑がかかるだけではなく、亡くなった経営者の家族がその会社の多額の保証債務を相続することになるからです。

そのリスク回避のための保険料は安いに越したことはありませんので、掛け捨ての定期保険に加入すれば足りるのです。

3億円の保証額を確保するための定期保険の保険料は、せいぜい年間150万円ぐらいです。
お金を借りると利息がかかります。
だいたい1%ぐらいであれば、3億円の借入の年間利息は300万円程になるでしょう。

掛け捨ての保険料の150万円も、利息と同じように必要な経費だと思ってください。

倒産リスクを減らす基本契約書の具体的なチェックポイント

節税保険の危険性

ここまででは、将来のリスクに備えるために、なるべく安い掛け捨ての定期保険が有効だとお伝えいたしました。
それでも月額10万円を超える保険料が無駄であると感じる経営者もおります。必要であることを伝えても、なかなか首を縦に振りません。

そこで税理士やファイナンシャルプランナーは「のちのち保険料は返ってくるけど、半分は経費として計上でき節税になります」と、貯蓄性のある節税保険を勧めます。
勿論こうした保険も有効ですが、問題は保障額です。
前回の事例に挙げた3億円(負債2億円、従業員の半年分の給料1億円)の保証額を確保するために貯蓄性のある節税保険に加入すれば、保険料は掛け捨ての150万円よりも5倍程度高額になります。とてもそんな保険料は払えません。

そこで不誠実な税理士やファイナンシャルプランナーは、会社が支払える金額の範囲内で加入できる節税保険を勧めるのです。
その結果、会社は「保障額の足りない保険」に加入することになってしまいます。

掛け捨ての定期保険であれば保障できていた3億円。同じ年間150万円程の保険料で貯蓄性のある節税保険に入れば、保障額はせいぜい多くても7,000万円程度です。残りの1億3,000万円の負債も従業員の半年分の給料の1億円もカバーできません。

このような保証額の足りない節税保険に加入していた会社の経営者が死亡すると、会社の負債をその家族が背負うこととなり、最後は相続放棄手続をするという悲惨なケースをたどります。これにより経営者の相続人は、経営者名義であった自宅も失って住めなくなるという結果となるのです。

そもそも生命保険は、経営者の死亡リスクに備えるために加入するものです。万が一経営者が亡くなっても、ご家族や従業員が安心して暮らしていけるために加入するのが生命保険であり、それこそが生命保険の役割です。いわば「天国から大切な人の生活を守るためのもの」なのです。

にもかかわらず、経営者が死亡してもリスクを回避できない節税保険を勧める税理士やファイナンシャルプランナーがあとを絶ちません。また、保障額が足りない節税保険に加入してしまっていることにすら全く気が付いていない経営者も非常に多いのが実態です。

生命保険は死亡リスクを回避する目的の商品です。節税保険に加入することで、保障額が十分な掛け捨ての定期の生命保険に加入する機会を失い、従業員や経営者の家族が路頭に迷う結果を招くというのは、本末転倒という外はありません。

会社の負債額を念頭に置かずに、安易に保障額の足りない節税保険を会社経営者に勧めるのは不誠実というほかありません。節税という殺し文句にのせられて、保障額の足りない節税保険に加入して得をした気分になり、従業員や家族にリスクを負わせる経営者も本当に愚かだという外はありません。

経営者の方は、もう一度現在加入している生命保険の保障額を確認し、「少なくとも会社の負債額を全額カバーできているのかどうか」ぐらいは確かめてください。

私の経験上、生命保険には加入しているものの会社の負債を全額生命保険でカバーできない、すなわち保障額の足りない節税保険に入っている会社は90%程度あると思っています。

なぜ、節税保険を売りたいのか

保険という商品は、将来の死亡リスクなどを回避するための金融商品であり、元気な人ほど縁のない商品です。しかし、いつどこでどんなふうに死ぬかを人は選択できません。多額の銀行借り入れを抱える経営者は、会社や家族を守るために生命保険に加入しなければなりません。ただし、そのリスクを理解しようとしない経営者も多いので、生命保険は売りにくいものです。

保証額が大きければ掛け捨て保険料もバカになりませんし、ご自分の死について不安がないため、経営者はなかなか入ろうとしません。
ところが節税と言えば経営者は急に耳を傾けます。途端に保険は売りやすくなります。

しかも年間150万円の掛け捨て保険の保険料を渋っていた経営者も、節税のためとあれば、倍の300万円でも平気で出したりするのです。
そうです。節税保険は売りやすく、高額な契約になりやすい。そして年間保険料の約3割は代理店の報酬になります。

年間保険料が150万円の掛け捨ての定期保険よりも、年間保険料が300万円の節税保険を売る方が、実入りが良く儲かるのです。
だから税理士やファイナンシャルプランナーは、高額の節税保険を売りたがるのです。

倒産リスクを減らす基本契約書の具体的なチェックポイント

破産するかもしれないのに、節税保険を解約したがらない社長の話

私:「財務を見ると年々現預金残高が減っています。ここ3年で30%ずつ現預金が減っているので、このまま行くとあと3年で支払い不能となり、破産の危険があります。破産専門弁護士の私が言うので間違いありません。3年後に潰れることは決算書を見ればわかるのです。」

社長:「先生、ではどうすればいいですか?」

私:「まず、経営は1年を通して現預金残高が増える経営をしなければなりません。税引後の利益が1,000万円で減価償却費が500万円であれば、1,500万円のキャッシュが増えますが、1年間に支払う借入金の額が4,000万円なので、2,500万円足りません。現在の現預金残高は7,500万円なので、3年後に潰れます。」

社長:「なるほど。」

私:「感心している場合ですか!現状について税理士は何と言っていますか?」

社長:「利益が出ているので節税しろと言っています。」

私:「アホな税理士ですね。ところで何ですか、この決算書の保険積立金って?」

社長:「税理士に勧められました。」

私:「年間保険料が300万円も要るじゃないですか!すぐに解約してください。」

社長:「いやあ。それは勘弁してください。ほかに会社を立て直す方法はありませんか。」

私:「社長の給料が2,000万円もあるじゃないですか。600万円にしてください。それで、キャッシュは1,400万円浮きますよ?それから300万円の節税保険を解約して、150万円ぐらいで掛け捨ての保険に加入すればこれだけで150万円浮きますし、万が一の時も安心です。これだけで、1,550万円キャッシュが改善します。あと約1,000万円なんとかなりませんか?」

社長:「先生、社長の給料を下げると利益が出て税金が高くなるので、社長の給料をもっと上げろ、と税理士が言っていましたよ。」

私:「アホな税理士ですね。それから、これとこれをやめてください。あとは銀行と交渉して、これとこれを借り換えて、借り換え期間を3年から7年にするように交渉してください。公庫は8年まで返済を伸ばせないか交渉してください。年間の銀行への返済金額を減らす必要があります。それが成功すれば、年間1,000万円のキャッシュのマイナスは改善されます。しかし今の売上では、現預金残高の推移はプラスマイナスゼロになるだけですが、これが実現すれば、会社が何年も多額の赤字にならない限り会社は潰れません。あとは売り上げを増やして粗利を確保するだけです。」

社長:「先生、保険は解約しないといけませんか?」

私:「(怒)(怒)(怒)‥‥。どうせ破産する前に保険を解約することになると思いますよ。今解約するか、3年後に解約するかの違いだけですが。」 

社長「・・・・・・。」

自分の船が沈みかけているのに、それを理解できない社長と自分の利益ばかり考える税理士にはつける薬がありません。
いくら会社の将来やご家族や社員さんのことを考えて必死になってアドバイスをしても、なかなかご理解いただけません。・・残念です。

創業後10年存続する会社はわずか7%

社長:「あのう。じゃあ、どんな保険に入ったらいいんですか?」

私:「借入金額に対して全額保障できて、掛け捨ての安い保険です。税理士に今加入している保険で、『借り入れに対して全額保障できていますか?』と質問してください。」

・・・・・後日。

社長:「やっぱり、あの税理士は変です。保障額は足りていないけど大丈夫だと言っていました。保険を解約したいと言ったら、反対されて怒られました。3年後に満期になるのでそれまでに解約したら損だと言われました。」

私:「3年後に会社が倒産する恐れがあるのに、会社と保険の満期とどちらが大切なんでしょうかね?どうして保険を解約しなくても大丈夫なのかという理由を、税理士から訊けましたか?」 

社長:「何を言っているのかよく分かりませんでしたが、税理士は自分の利益のために言っているのはよく分かりました。」

毎年事業活動によって現預金残高が増える経営を「良い経営」といいます。逆に現預金が減っている経営は「悪い経営」です。

キャッシュがどんどん減っているのに、節税保険をやめられない経営者、利益が出ているのに金がないとボヤいてばかりの経営者が沢山います。そこには必ずと言っていいほど節税税理士が傍にいます。

「三流経営者と三流会計事務所がタッグを組んで会社を潰す」
こういう会社はたくさんあります。だからこそ、創業後10年存続する会社はわずか7%に過ぎないのだと思います。
会社の現預金残高が減少しているのに、節税保険に加入して更に現預金残高を減少させている経営者が多いです。悪い経営をしていることに気が付いておらず、税理士もそれに気が付いていないのでしょう。

自分の会社を良い会社にするためには、三流税理士の言いなりにならず、経営者が自ら判断して、キャッシュを増やす「良い経営」をして下さることを願ってやみません。

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このコラムの著者 : 白木智巳

ロータックス法律会計事務所 代表弁護士 昭和45年12月生まれ(いて座のA型)•大阪府豊中市出身 平成元年 • 大阪府立豊中高校卒業(豊陵会41期) 平成6年 • 同志社大学経済学部卒業 平成14年 • 弁護士登録(大阪弁護士会)(修習期55期) 平成19年 • 中国留学(上海復旦大学)・上海協力法律事務所で執務(現日本法顧問) 平成22年 • 白木法律事務所開設 • 桃山学院大学大学院 経営学研究科 講師(平成27年まで) • 独立行政法人 中小企業基盤整備機構 国際化支援アドバイザー就任 • 大阪商工会議所 国際部 中国ビジネス支援室 外部相談員 • 京都企業支援ネットワーク 中国法分野相談担当 平成24年 • 近畿税理士会へ税理士登録 • 白木法律会計事務所に名称変更 平成28年 • ロータックス法律会計事務所へ名称変更

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