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法人が銀行借入・融資を成功させるための必要書類と流れを金融機関OBが解説します

信用力=社長の資質

投稿日:2021年06月25日

更新日:2023年01月06日

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この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。

法人が銀行借入を成功させるためには「銀行にいかに信用してもらえるか」という点に尽きます。それを融資申込における必要書類で説明できるようにしなければ成功確率は下がります。本コラムでは中小企業の経営者の方に知っておいて欲しいポイントを、融資実務の観点から元銀行員の中小企業診断士が必要書類・流れを交えて解説していきます。

  • 法人が融資を申込するときにどんな書類が必要かわかります
  • 銀行が必要書類で何を見ているのかわかります
  • 融資の成功確率を上げる方法がわかります

1.融資を成功させるためのポイント

銀行は決算書の内容だけで融資判断をしていると思われがちですが、決してそんなことはありません。他の要素も加味して総合的に判断しています。ここからは融資を成功させるための3つのポイントをお伝えします。

①使い道が適正である

融資金の使い道のことを「資金使途」といいます。この資金使途について次の3つの点を銀行はチェックしています。
(ア)資金使途の妥当性
(イ)申込金額の整合性
(ウ)投機的資金でないか
銀行は、申込のあった融資がその企業に本当に必要なのか、適正に使われるのかを提出書類と社長の説明から判断しています。
資金使途の大半は運転資金又は設備資金です。そして運転資金だろうと設備資金だろうと具体的に何にどのように使うのかを提出書類等で確認します。運転資金であれば「材料費・外注費・人件費」、設備資金であれば「機械購入・車両購入・建物購入」といったものです。
その次に資金が必要な理由と申込金額が合っているかどうかチェックします。これは必要以上に融資をしすぎるとその企業のためにならないと銀行側が考えているからです。明らかに自己資金が出せるのに全て借入での申込だった場合、減額されるケースもあります。
そして銀行融資はあくまで事業資金に融資をするのが大前提です。短期的な売買により利益を得ることを目的とするいわゆる「投機的資金」には融資はしません。例えば株式、FX、先物取引といったものです。また、濡れ手で粟のような要素が強いビジネスも同様です。
本業できちんと生かす、融資金の使い道が適正である、金額の必要性、を伝えられるようにしましょう。

②返済可能性

銀行側は融資したお金をキチンと返済してもらわなければなりません。そのため申込の時点でその融資がしっかり返済できそうかチェックしています。大きくは、①事業継続性 ②返済財源 ③担保・保証、の3つの視点です。

A)事業継続性

融資したものはキチンと返済してもらう大前提として、融資した企業が存続することが重要です。その企業が今後も事業を続けていける企業なのか判断しています。決算書などの財務内容はもとより、「今後事業をどう展開していくのか」「どれぐらい売上や利益を上げていくのか」も銀行側は知りたいのです。自社の事業方針や今後の事業展開を伝えられるようにしましょう。

B)返済財源

事業が続いていくだけでは返済はできません。事業収益から返済がキチンと行われることの説明が必要です。そのためには「返済財源」を明らかにしておきましょう。「返済財源」とは、融資金をキチンと返済できるお金の出どころのことです。短期間の融資であればいつどういったお金が入ってきたら返済できるのか、長期間で毎月返済する融資であれば、毎月返済額以上の利益を生み出せるのか、といったことを伝える必要があります。

C)担保・保証

本業でしっかり返済できると確信が持てればいいのですが、必ずしもそうではありません。万一事業収益で返せなくなった場合に、その代替手段があるかないかを銀行は検討しなければなりません。それが担保・保証というものになります。担保の代表的なものは不動産、保証の代表的なものは信用保証協会です。担保・保証で信用力を補完され融資が可能になる場合もあります。

③社長の資質

意外に思われるかもしれませんが、銀行は社長がどういう人物かということも重要視しています。なぜなら、銀行は融資判断に迷ったら最後は「社長の資質」で判断するからです。この社長を信用していいかどうかということです。そして銀行は経営管理がしっかりできている社長を好みます。いい加減な経営をしている社長がまっとうに返済できるとは思えないからです。また、資金調達は社長の重要ミッションの一つといえます。その重要ミッションを人任せにするような社長もなかなか信用しにくいのです。
どうしても必要な資金であれば、本当にその融資が必要なのだということを社長が直接熱意をもって伝えましょう。

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2.融資実行までの一連の流れ

一般的には事前相談⇒資料準備⇒申込⇒審査⇒契約⇒実行という流れです。それぞれにおけるポイントをお伝えします。

①事前相談~書類準備

スムーズに融資を獲得したいのであれば、いきなり融資申込するのではなく「事前に相談」をしてください。事業資金の融資では個別企業毎に銀行が知りたい情報や必要書類などが異なってくる場合がほとんどです。この事前相談をすることで、銀行が自社に対してどういった情報や資料を望んでいるかがつかめます。そのため、必要書類の準備がしやすくなります。銀行も事前に相談してくれる方がありがたいです。

②申込~審査

融資申込書や必要書類提出をして、一安心、ではありません。きちんとした審査は申込をしてから始まります。また、一つの融資案件について銀行内では、数人から場合によっては10人以上の人が審査に携わります。そのため審査が進んでいく中で様々な疑問点が出てきて、追加の情報提供や資料提出を求められることがあります。事前相談で必要書類を準備できていても、追加で資料提出を要求されるものと思っていたほうが良いです。

③契約~実行

無事審査が通ったら、お金を借りる契約をします。「金銭消費貸借契約書」という契約書と共に数種類の付随契約書が必要になることが多いです。その上で契約書に不備がないことが確認されると晴れて融資が実行されます。ほとんどが自社の口座に融資金が振り込まれます。ケースバイケースですが、書類に不備がなくとも通常は申込から融資実行まで最短で2週間はかかると思っていたほうがいいでしょう。また一回で必要書類が全て揃うことは稀です。早め早めの相談・申込をしましょう。

3.必要書類とそのポイント

いずれも前述の「融資を成功させるポイント」でお伝えしたことを銀行側に証明するために必要となります。

①最低限必要な書類

決算書・試算表、資金使途明細、受注明細(売上見込)、はほぼ100%求められます。ですので、これらの書類がそろえられない時点で、信用力が下がります。よく、試算表を依頼すると「今から税理士へ頼んで作らせます」とおっしゃる方がいますが、最新の試算表を用意して相談するようにしましょう。最新の試算表が手元にない時点で、経営管理ができていないいい加減な社長、とみなされてしまうからです。前述の事前相談の際には最低限これらの資料は用意しましょう。

②内容次第で必要となる書類

資金繰り表、経営分析資料、事業計画書、納税等が遅れていないことの証明、といったものです。これらは企業毎、融資案件毎に違ってきます。一回で必要書類がそろうことはレアです。審査を進める中で追加資料が必要になることもあります。前述の事前相談の時に銀行側としっかり打ち合わせしましょう。

③必要書類を社長が説明する

用意した資料の内容について回答を求められるのは社長です。銀行は必要書類から、その会社の、過去・現在・未来、を見たいのです。今までどのようなことをしてきたのか、その結果今経営状況はどのようになっているのか、そしてこれから自社をどのようにしたいのか、が知りたいのです。それを社長が自らの言葉できちんと説明できなければ伝わりません。決算書の内容を聞かれて「自分ではわからない」「税理士じゃないとわからない」「数字は苦手だ」などと答えた時点で、融資審査においてはマイナスとなります。

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4.成功具体例

ポイントは、銀行に信用される行動ができているか否か、です。信用力を高めて融資に成功している例をピックアップします。

①日頃から事業に関する情報を提供している企業

ある企業の社長は新規の融資申込が無くても、毎月、経営分析資料などを持参して経営状況の説明に銀行へ行っていました。そのため銀行は業績はもとより資金状況や事業見通しを常に把握できていました。融資の時に銀行が知りたい情報を常に知ることができていたのです。こういった情報共有をすることで信用力が高まり、新規の融資が必要となってもスムーズに実行まで持っていくことができます。

②事業計画がある企業

事業計画書があると銀行に喜ばれます。融資の審査をする中で、付随資料として事業計画書は強力です。融資の決定権者にも良いアピール材料になります。なぜなら銀行が知りたい、その会社の、過去・現在・未来、がわかることが多いからです。また、事業計画がある=経営管理がしっかりしている、という印象も与えます。融資の申込時に事業計画書や経営計画書があると成功確率はかなり上がるでしょう。

5.失敗具体例

銀行は、困ったらお金を貸してくれるところ、ではありません。適切な企業へ適正に融資をするところです。以下では融資に失敗する典型例をピックアップします。

①返済や税金の支払が遅れている企業

現時点で払うべきものが遅れている企業に対して新たな融資は出ません。これには借入の返済だけでなく、税金や社会保険料も含まれます。税金や社会保険料の遅れは黙っていればわからないでしょ、と思われるかも知れません。ただ、残念ながら銀行は多くの場合そういったものの遅れが無い証明を求めてきます。融資申込してから遅延が発覚して融資を断られた、というケースはかなり多いです。

②財務内容が悪すぎる企業

財務内容とは簡単に言えば決算書や試算表の内容です。「数字は行動の結果」です。そのため決算書や試算表には今までのその企業の行動の結果が現れています。銀行は貸したお金は必ず返してもらわなければなりません。ですので、ずっと赤字が続いている企業や資産より負債が多い企業=「今までの行動が良くない企業」は信用しにくいのです。そもそも論になってしまいますが、会社の業績や資産・負債の状況には十分に目を配りましょう。

③必要書類がなかなか揃えられない企業

こういったことで融資獲得に失敗する例は意外とあります。準備するのが遅いのはもとより、銀行側が要求していたものと内容が違うということがよくあるからです。そのため、何回も資料のやり取りをすることで時間をとられ、期限に間に合わないことが数多くあります。要求された資料がどういった目的で使うのか、何が記載されていればいいのか、といったことを銀行へよく確認しましょう。

④返済期間や金利について見当違いをする企業

「早く返したいから返済期間は短くて」といって返済期間を極端に短くしたがる方がいますが、返済期間を短したら早く返せるわけではありません。返済期間を短くすればそれだけ毎月の返済額が多くなり返済していくことがきつくなります。結果として返済額が大きすぎて資金が足りなくなりまた借りなければならないといった例が散見されます。そのため自社の資金繰りに不相応な返済期間を望むことは審査にも悪影響を与えます。
又、金利が安ければ返済が楽になると勘違いしてとにかく安く借りたがる方もお見えになりますが、銀行金利は低金利状態が続いており金利が少し安くなったからといっても毎月支払う額は微々たる変化です。又、金利は多くの場合企業の信用力によって決まるものなので、信用力がないにも関わらず安い金利を要求してくる企業に銀行は融資したいと思いません。
例えば、1000万円を「返済期間7年金利1.5%」と「返済期間5年金利1.0%」で借りた場合の支払額(元金+利息)を比較すると、

「返済期間7年金利1.5%」 返済元金120千円+利息12.4千円=初月支払額132.4千円
「返済期間5年金利1.0%」 返済元金166千円+利息8.2千円=初月支払額174.2千円
となり、金利が安い「返済期間5年金利1.0%」の方が毎月の支払額が多くなってしまいます(元金均等返済の場合)。

返済期間と金利については自社の収益力と信用力に見合ったもので融資申込するようにしましょう。

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6.まとめ

繰り返しになりますが、銀行は困ったらお金を貸してくれるところではありません。信用力のない企業には融資をしません。一方で、銀行はできるだけ事業者の要望に沿った融資をしたいと思っていることも事実です。銀行へきちんと情報提供や資料提出をすることで信用力を高めて、融資成功に結び付けましょう。

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このコラムの著者 : 小川弘郎

中小企業診断士 金融機関OB 20年勤務した金融機関在籍時には融資担当や企業改善支援担当を歴任、融資現場における多数の経営支援や事業再生の実践経験を持つ。会計業界に転身後は経営計画に基づく経営サポートを行っている。経営戦略、経営管理、資金繰りが専門。

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