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社債と銀行融資の違いとは?それぞれのメリット・デメリット

社債と銀行それぞれのメリット・デメリット

投稿日:2022年09月26日

更新日:2023年08月24日

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この記事を読むのに必要な時間は約 4 分です。

中小企業が資金調達する手段として最も一般的なのは銀行融資ですが、「社債」という方法もあります。社債も銀行融資も企業外部からの資金調達方法であり、かつ償還(返済)しなければならない「負債」という点では同じですが似て非なるものであり、社債を上手に活用して企業成長に結びつけている中小企業もあります。
このコラムでは中小企業にとっての社債と銀行融資の違いやそれぞれのメリット・デメリットをご紹介します。資金調達方法を検討する場合に選択肢のひとつとして特徴を確認しておきましょう。

社債とは

社債とは一般的な事業を営む企業が債券を発行し資金調達をする方法です。債券とは資金調達を目的として、元本を償還(返済)する一定期限(満期)までの間、「一定期日に一定利率の利息を支払うこと」を約束した証券で有価証券の一種です。言い換えると社債は社債発行企業がその社債の引受人(資金の出し手)に、期限に償還(返済)し、かつ、その間利息を支払うことを約束した債券を発行することで、資金を調達する方法ということになります。期日に償還(返済)しなければならないということは必ず支払う義務がある「負債」ということになり、この点は銀行融資と変わらず社債は借入金の一種と言えます。そして社債には主に「公募債」と「私募債」があり、中小企業が利用できる社債は「私募債」となります。

(1)公募債

その名の通り「公に募る」ものであり、一般投資家を対象に広く投資を募集するものを指し、不特定多数の投資家を対象に公開市場で50人以上の投資家向けに債券(有価証券)を売り出し購入してもらうものです。公開市場とは「不特定多数の人間が集まって資金の賃借や有価証券の売買を行っている金融市場」のことをいいます。その為、企業単独で発行できるものではなく証券会社等を通して金融市場で募集することになります。又、公募債の発行は金融商品取引法などの法律により、有価証券届出書や有価証券報告書の作成・提出が義務付けられています。このような点から公募債は上場企業や大企業向けの資金調達方法となります。

(2)私募債

私募債は公募債と異なり、一般的に証券会社等を通さずに特定少数の投資家(50名未満)又は金融機関を始めとした特定の投資家に引受を依頼し、債券を発行するものです。
そのため中小企業が利用できる社債は一般的に「私募債」となります。そして私募債は大きく分けて「少人数私募債」と「プロ私募債」の2つあります。

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中小企業が利用できる私募債

公募債は証券会社等を通して広く投資家から資金を募る手法であるため、上場企業や大企業向きの資金調達方法です。一方で中小企業が利用できる社債は私募債となります。その私募債である「少人数私募債」と「プロ私募債」について解説していきます。

(1)少人数私募債

少人数私募債を発行するためには

  1. 募集人数が50名未満
  2. 社債権者に適格機関投資家(プロの投資家)がいない
  3. 社債総額を最低券面額で除した数が50未満(たとえば、最低券面額が100万円の場合には、社債総額が5,000万円未満)
  4. 譲渡制限を設ける

などの発行条件を満たすことが必要です。少人数私募債はその特性上、社債発行企業の親族、取引先等といった縁故者を引き受け先として行われることが多いですが縁故者でなければならないということはありません。又、一般的に利用できる金額は1億円未満といわれていることが多いですが、1億円以上となると金融商品取引法を始めとした法律に則った手続が多く必要となるためそのように言われていることが多く、1億円未満でなければならないということではありません。

(2)プロ(適格機関投資家向け)私募債

銀行や証券会社などの適格機関投資家に対して募集するものです。人数制限や発行総額の制限はありません。プロ私募債のうち、債券を購入する引受人が金融機関であるケースは「銀行保証付き私募債」と呼ばれています。銀行保証付き私募債は、銀行が事務委託の取り扱いから債券の引き受けまで一手に行ってくれます。そしてこの銀行保証付き私募債に信用保証協会の保証が付いたものが「信用保証協会付私募債」となります。

私募債の特徴

ここでは中小企業が利用できる私募債である「少人数私募債」「銀行保証付き私募債」「信用保証協会付私募債」の特徴をお伝えします。

項目 少人数私募債 銀行保証付き私募債 信用保証協会付私募債
社債引受人(資金の出し手) ・50名未満
・社債発行企業が自ら見つけてくる必要あり
金融機関が大半 ・金融機関
・信用保証協会は私募債に対し保証をする
社債発行手続を行う人 社債発行企業 金融機関 金融機関
調達金額

制限なし但し、1億円以上は法律上の制限あり 銀行毎に限度額が定められている 信用保証協会で限度が定められている
資金の用途 社債発行時に定める必要はない 事業資金(設備資金・運転資金) 事業資金(設備資金・運転資金)
償還期限 自由に決められる 銀行毎に限度期限が定められている 信用保証協会で限度期限が定められている
償還方法 原則期日一括償還 期日一括償還又は定時償還(分割償還) 期日一括償還又は定時償還(分割償還)
金利 自由に決められる 銀行審査により決定 銀行審査により決定する場合が大半
手数料 不要 必要なケースが大半 信用保証協会に支払う「保証料」が必要
担保 不要 原則不要 原則不要

銀行保証付き私募債や信用保証協会付私募債と比べて、少人数私募債は調達金額や償還期限あるいは償還方法などを自由に決めることができますが、私募債の引受人は自ら見つけてくる必要があり、又、社債発行・償還に関する手続は全て自社で行う必要があります。
一方で銀行保証付き私募債や信用保証協会付私募債は当然のことですが審査に通らないと私募債を発行できません。又、手数料や保証料が必要となったり、償還方法も期日一括償還とは限りません。ただし、社債発行に関する手続は銀行側で行う為、審査に通れば少人数私募債と比べて煩雑な手続を社債発行企業が行うことはありません。現実としては法律やルールに則って煩雑な社債に関する手続を行うことを中小企業側で全て行うことは難しいため、中小企業における社債発行による資金調達は、銀行保証付き私募債や信用保証協会付私募債を利用する場合が多いです。

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私募債のメリット・デメリット

ここでは中小企業が利用できる社債である私募債のメリット・デメットについて少人数私募債と銀行保証付き私募債の場合に分けてご紹介します。尚、ここでいう銀行保証付き私募債には信用保証用付私募債を含みます。

(1)少人数私募債

A.メリット
資金調達のコストを抑えられる
少人数私募債の場合、一般的に社債引受人に金利を支払う必要がありますがそれ以外に手数料や保証料といったものは発生しないため、銀行融資を受ける場合と比べて資金調達コストが低くなるケースが多いです。

担保や保証人が不要
銀行融資の場合は何らかの担保や保証(連帯保証人、信用保証保証協会の保証)を求められるケースが多いですが、少人数私募債の場合は不要です。

資金使途や発行形式が自由に決められる
少人数私募債の発行について資金使途を定める必要はありませんので、資金の使い道は自由に私募債発行企業が決めて良いことになります。又、償還期限や償還方法や金利といったものも社債引受人との間で自由に決められますので発行形式は柔軟に行えます。

B.デメリット
手続を全て企業側が行う必要がある
一般的に公募債の発行と比べて私募債の発行は手続きが簡単であると言われますが、それでも少人数私募債は私募債の発行や償還、管理に関する手続を法律やルールに則って中小企業側で行う必要があるため、中小企業にとってかなり労力がかかるものとなります。

期日に一括で償還できる資金が必要
例えば5,000万円・償還期間3年・期日一括償還で私募債を発行すれば3年後に償還(返済)するために5,000万円を用意しなければならないということになります。原則として私募債は償還期限の延長といったいわゆるリスケジュール(リスケ)は認められないため、償還できるだけの資金を償還期限に用意しなければなりません。

(2)銀行保証付き私募債

A.メリット
発行手続は銀行側が行う
私募債の発行から償還までの様々な手続は銀行側が行ってくれますので、中小企業は煩雑な手続に頭を悩ませる必要はありません。

資金調達手段が多様化
私募債については通常融資と同じで審査がある点は共通してますが、通常融資枠とは別枠で審査してくれるケースが多いです。特に信用保証協会付私募債の場合は別枠での保証となります。そのため、企業側にとっては融資以外の資金調達枠を確保できるということになります。

固定金利で長期間の資金調達が可能
私募債の場合銀行は固定金利で取扱う場合が多く、期日一括償還としては通常融資と比べて長期間となるケースが多いです。そのため、固定金利で比較的長期間の資金調達となるケースが多いです。

B.デメリット
手数料・保証料が発生
銀行が私募債発行に関する手続を行う代わりに手数料を求めるケースが多いです。その為、手数料+金利で考えると融資と比べて割高になるケースが多いです。又、信用保証協会付私募債となった場合はこれに加えて信用保証協会へ支払う保証料も必要となります。その為少人数私募債と比べて資金調達コストは割高となります。

期日一括償還とは限らない
社債の特徴の一つは「長期一括償還」ですが、銀行保証付き私募債の場合、期日一括償還に加えて定時償還を設定している銀行が多いです。定時償還とは年1回とか年2回といった形で定額の償還を求めるものです。例えば5,000万円・償還期間5年・年1回償還であれば、毎年年1回1000万円償還(返済)が必要となります。多くの銀行がこの「定時償還」による私募債引き受けを取り扱っていますので、私募債だからといって期中の償還(返済)がないとは限りません。尚、償還方法の変更や償還期限の延長は原則として認められないためこの点も注意が必要です。

財務内容が良好である必要がある
私募債は通常融資と比べて金額が大きくなりがちであり期日一括償還が原則であることから、銀行は償還(返済)に不安のあるような企業の社債引受人とはなりません。そのため財務内容が良好である=信用力の高い企業、にのみ私募債の取扱いをします。よく社債(私募債)利用のメリットとして「企業の信用力の向上」が挙げられますがこれは結果論であり、信用力の高い企業でないと利用できないのが銀行保証付き私募債です。

私募債と銀行融資の違い

企業外部から資金を調達して期限が来たら償還(返済)が必要であるという点では同じである私募債と銀行融資ですが異なる点があります。以下ではその違い(特徴)についてお伝えしていきます。

(1)求められる信用力の高さの違い

特に銀行保証付き私募債においては、財務内容を始めとした信用力が高い企業でないと利用が難しいです。少人数私募債であっても社債引受人を社債発行企業自ら見つけてくるとはいえ、会社への信用力がなければ社債を引き受けてもらうのは難しいです。一方で銀行融資は例え連続赤字や債務超過に陥っているような信用力が劣る企業でも融資を受けられる場合はあります。ちなみに信用保証協会ははそのような信用力が劣る企業でも信用保証協会の保証(連帯保証)をつけることで融資を受けられるようにするための公的機関です。

(2)償還方法の違い

私募債は償還期限が来たら一括償還することになります。銀行保証付き私募債では定時償還を求める場合がありますが、原則期日一括償還です。そのため私募債発行企業は期限に全額償還(返済)できるだけの資金を用意することが必要です。一方で銀行融資は、その資金使途に応じて様々な融資形式があります。受取手形を銀行に買い取ってもらう手形割引、原則として1年以内に一括返済する手形貸付、限度枠を設定しその限度枠の金額の範囲内であればいつでも(随時)借入や返済が可能な当座貸越、原則として1年超の期間で分割返済していく証書貸付、といったものです。そのため返済財源(返済の元手)や資金使途に応じて融資形式や返済方法を選択できます。

(3)調達コストの違い

少人数私募債であれば金利以外の調達コストは発生しませんが、銀行保証付き私募債であれば金利以外に銀行へ払う手数料が発生します。又、信用保証協会付私募債であれば保証協会へ支払う保証料が発生します。一方で銀行融資は金利以外に信用保証協会付融資であれば保証料が必要となりますが、金利と保証料以外の調達コストが発生することはまれです。尚、融資制度によっては手数料が発生するケースもありますし、融資を繰上返済する場合に手数料を要求されるケースがありますのでご注意ください。そのため銀行が介在する場合と銀行が介在しない場合では後者の方が調達コストは少なくて済む可能性が高いです。

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まとめ

社債も銀行融資も同じ「負債」であり、利息を支払い元本も返済(償還)が必要です。どちらも企業外部から資金調達するという点では同じですが、それぞれメリット・デメリットがあります。会社の状況に応じて使い分けることが大切です。
中小企業の最もポピュラーな資金調達方法は銀行融資であると考えられますが、社債(私募債)を利用することで資金調達方法に多様性も持たせることも一手です。ただし、社債(私募債)を利用するためには企業としての高い信用力が求められます。業績や財務内容を良くしていって信用力の高い企業となり、スムーズに社債(私募債)を利用することで自社の更なる成長へつなげていきましょう。

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よくあるご質問

当社のような中小企業でも私募債を発行して資金調達できるでしょうか?

中小企業が私募債を発行する場合は銀行を引き受け先として行う場合が多いです。又、社長の知人等一定の方を対象に発行する少人数私募債という方法もあります。

社債の方が融資よりも金利が高いと思うのですが、それでも社債を発行するメリットとはなんですか?

融資は分割返済となることが多いですが、社債は一定期間経過後に一括償還(支払)する形となります。そのため期限が来るまで償還(支払)しなくてよいというメリットがあります。

社債は一括返済なので返済できない場合のリスクが怖いです

確かに一括返済ですが、会社の信用があれば、償還期日前に新たに発行して借り換えることも可能です。

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このコラムの著者 : 小川弘郎

中小企業診断士 金融機関OB 20年勤務した金融機関在籍時には融資担当や企業改善支援担当を歴任、融資現場における多数の経営支援や事業再生の実践経験を持つ。会計業界に転身後は経営計画に基づく経営サポートを行っている。経営戦略、経営管理、資金繰りが専門。

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