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コロナ禍の税務調査における重点調査項目

国税庁レポートから見えるコロナ禍の税務調査実態

投稿日:2022年09月20日

更新日:2023年05月23日

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日本国内で新型コロナウィルス(COVID-19)の感染者が初確認されたのが2020年1月16日でした。それから感染は拡大と減少を繰り返しながら今日に至り、まさに「コロナ禍」といえる状況でした。
ところでコロナ対策として「三密の回避」が声高に叫ばれていましたが、税務調査は密そのものなので、コロナ禍ではどのようになっていたのでしょうか。またこれから気を付けるべきことについて「国税庁レポート2022」から解説します。

国税庁レポートから見えるコロナ禍の税務調査

国税当局の事務年度末の6月に毎年公表される「国税庁レポート」ですが、その中では国税庁の取組の紹介や目指す方向などが示されています。それとともに注目されるのが、税務調査件数や追徴税額、そして税務調査における重点取組み事項です。
まずは「国税庁レポート2022」から見えてくるコロナ禍の税務調査と、見えてくるこれからの傾向について考えてみましょう。

コロナ過で実地調査件数は減少

コロナ禍においての税務調査は、体感的にも少ない印象がありましたが明確に数値になって表れています。国税庁レポートによる、令和2年事務年度(令和2年7月~令和3年6月)までの実地調査件数と追徴税額は下表のとおりです。

(単位:千件)
【実地調査件数】 H30 R元 R2
申告所得税 74 60 24
法人税 99 76 25
消費税 133 105 36
相続税 12 11 5
(単位:億円)
【追徴税額】 H30 R元 R2
申告所得税 961 992 533
法人税 1,943 1,644 1,207
消費税 1,099 1,004 862
相続税 708 681 482

見てのとおりコロナ禍において実地調査が激減していることが分かります。一方で調査1件あたりの追徴税額は倍増していることから、税務調査の必要性の高い悪質と見られる納税者に絞り込んでいたと見られます。

一方で増えた「簡易な接触」

ある意味「三密の回避」のため減少した実地調査の一方で、国税庁が「簡易な接触」という取組み件数が大きく増加しています。これは行政指導といわれるもので、申告内容に誤りがあると思われる納税者、あるいは無申告だと思われるものに、書面や電話による連絡や来署依頼による面接により、納税者に対して自発的な申告内容の見直しを要請するものです。
例えば法人税に関しては、下表のとおり大幅な増加となっています。

R元 R2
簡易な接触件数 44千件 68千件
申告漏れ所得金額 42億円 76億円
追徴税額 27億円 62億円

これからの税務調査はどうなっていくのか

現在の政府の動きをみていると、感染対策より経済活動に重きを置きつつあるようです。つまりコロナ後の平常に戻る日が近づくわけですが、これからの税務調査はコロナ前に戻るのでしょうか。
国税庁レポートにも記載されていますが、国税庁はデジタル化の推進に力を入れており、国税総合管理(KSK)システムなどデータの蓄積がかなり進んでいると思われます。また令和4年1月から、税務調査等で提出を求められた資料をe-TAXで提出できるようになっています。
これらを考えると従来型の実地調査は、コロナ前の水準までは戻らない可能性があります。近い将来はAI(人工知能)で調査対象をピックアップし、オンラインで調査という日がやってくるでしょう。

税務調査に備える帳簿の付け方。決算が終わっても帳簿書類は必要です。

税務当局の重点調査項目とその対策

国税庁リポートには、「適正・公平な課税・徴収」のため調査において重点的に取り組んでいる5つの事項が書かれています。そのうち最後の事項は、国税庁として法令順守に取り組みという内容なのであまり気にする必要はありませんが、残りの4つについてはある程度の対策を考える必要があるでしょう。
ここからは税務当局が重点調査項目と打ち出している内容の確認と、その対策について考えます。

消費税の適正課税の確保

2023年10月から適格請求書等保存方式(インボイス制度)が始まるなど、何かと話題の多い消費税ですが、国税庁の重点調査項目のトップに書かれています。
とくに指摘されているのが、「架空の課税仕入れ計上」「輸出免税制度の悪用」といった内容で、確かに悪質な内容といえるでしょう。悪質な事例ではなくても、消費税で還付申告になる場合は注意が必要です。現状でも還付申告時に追加の書類提出を求められるケースが多いので、税理士への相談は不可欠になります。
またインボイス制度が始まると、さらに適正課税の観点から重点的に調査される可能性が高まるので、制度開始に向けた準備は怠れません。

資産運用の多様化・国際化への対応

近年増加しているのが海外への投資や海外取引による租税回避で、国税庁もかなり取組みを強化しています。その中でも特に力を入れているのが「富裕層対策」で、平成30年には全国の国税局に「富裕層PT(プロジェクトチーム)」という部署が設置されました。
主な取組みは、「海外資産の情報収集」「専門調査担当の充実」「グローバルネットワークの強化」で、その一環として海外当局との租税条約等に基づく情報交換や、共通報告基準(CRS)によって得た情報の蓄積を行っています。
海外取引は納税者にとっても複雑で、意図的な租税回避ではなくても誤りが多くなります。富裕層ではなくても専門家へ相談することで、税務当局の指摘を回避しましょう。

無申告者の把握

3年ほど前に芸人による7年にもおよぶ無申告が話題になりましたが、適正な申告をしている納税者に強い不公平感をもたらすことになるため、積極的な調査を実施しています。
近年はビットコインのような暗号資産取引を申告していなかったケースが話題になりましたが、無申告で定番といえるのは相続税の無申告です。
先ほど紹介した国税庁のKSKシステムには、個人の所得税情報や固定資産税の情報が蓄積されていて、生前から目を付けられていると思っておいた方が良いでしょう。死亡届を提出すると市町村から税務署に死亡情報が伝わるので、ある程度の相続財産がある場合は専門家へ相談することをおすすめします。

シェアリングエコノミー等新分野の捕捉

国税庁リポートに「シェアリングエコノミー等新分野の経済活動」の補足説明が書かれていますが、それによると「シェアリングビジネス・サービス、暗号資産(仮想通貨)取引、ネット広告(アフィリエイト等)、デジタルコンテンツ、ネット通販・オークションその他新たな経済取引を総称するもの」とされています。
つまり国が推進してきた副業にしっかり課税するという意味で、無申告ともリンクしますが、400万人を超えるといわれる副業をしている人たちに適正な申告を促す取り組みになります。
これに関連して国税庁は2022年8月31日まで、『「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)(雑所得の例示等)』にたいする意見を公募していました。簡単にいえば「収入300万以下の副業は原則雑所得」というものです。
影響を受ける納税者の数でいえば、この重点調査項目が一番大きな影響を与えるかもしれません。雑所得は20万円以下であれば確定申告は不要です。しかし生活のためにやむにやまれず副業をしている人が20万円以下の所得になるとは思えません。
普通に申告するとほとんどの人は課税になるはずなので、心配であれば専門家に意見を求めるのも手です。

絶対にやっておくべきこと

これらの重点調査項目だけをケアすれば良いわけではありませんが、これからの傾向として「簡易な接触」、つまり納税者に連絡をして自主申告を促すケースが激増する可能性があります。
この行政指導を無視し続けると、いきなり実地の税務調査に切り替わる恐れもあるので、決して無視してはいけません。連絡がきて慌てないために、帳票や証憑書類を整理しておきましょう。

まとめ

「国税庁リポート2022」をもとに、コロナ禍の税務調査における重点項目を解説しましたが、多くの項目はここ数年間ずっと重点項目として取り組まれてきたものです。
ただコロナ禍が後押しするかたちで「簡易な接触」が増えるのは確実なので、普段から書類を整理するなどの備えが今まで以上に重要になります。それとともに申告が必要だと思われる方は、税理士などの専門家に相談だけでもしておくことをおすすめします。

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このコラムの著者 : 舩田 卓

1972年愛媛県生まれのA型。 愛媛県立松山商業高校卒業後、東京IT会計専門学校に進学。 在学中に税理士試験を全国最年少20歳で合格。 そのまま専門学校の専任講師となり、税理士試験の受験指導を担当。 22年間務めた講師の道から飛び出しSMC税理士法人に入社。

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