投稿日:2026年04月16日
更新日:2026年04月30日
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一人社長として会社を経営するうえで、ご自身の退職金をどう準備するかは重要な課題です。
会社員と異なり、ひとり社長の退職金は自動的に用意されるものではなく、計画的な準備が不可欠となります。
この記事では、一人社長が自身の退職金を準備するメリットから、税務署に認められる妥当な金額の計算方法、節税効果の高い具体的な積立制度、そして実際に支給するまでの手続きについて詳しく解説します。
将来の安定と会社の節税を両立させるための知識を身につけましょう。
目次
会社員であれば退職金制度が用意されているのが一般的ですが、一人社長の場合は自ら準備しなければなりません。
公的年金だけでは将来の生活資金に不安が残ることも少なくなく、計画的な資産形成が求められます。
また、退職金は役員報酬として受け取るよりも税制面で大幅に優遇されているため、手元に残る資金を最大化する有効な手段です。
ご自身の会社から、賢く資産を個人に移転させる出口戦略として、退職金の活用は非常に重要な選択肢となります。
一人社長は、厚生年金に加入していても、会社員のような企業年金や退職一時金制度の恩恵を自動的に受けられるわけではありません。
そのため、引退後の生活を支える資金は、すべて自分で計画的に準備する必要があります。
退職金制度を設けることは、会社の資金と個人の老後資金を明確に区分し、将来のために着実に資産を積み立てるための仕組み作りになります。
経営者としての責務を全うした後の豊かな生活基盤を築くためにも、現役時代から計画的に会社の利益を原資として老後資金を確保しておくことが肝要です。
これは、事業の成功を個人の安定した未来につなげるための重要なプロセスです。
退職金が役員報酬と大きく異なる点は、税制上の優遇措置が非常に手厚いことです。
役員報酬は給与所得として累進課税の対象となり、所得が高くなるほど税率も上がります。
一方、退職金は「退職所得」として扱われ、「退職所得控除」という大きな非課税枠が適用されます。
さらに、控除後の金額を2分の1にしてから課税されるため、同じ金額を受け取る場合でも、所得税や住民税の負担を劇的に軽減できます。
この税負担の差は数百万から数千万円に及ぶこともあり、手元に残る金額を最大化するための極めて有効な手段です。
退職金を活用するメリットは、単に老後資金を準備できるだけではありません。
法人と個人の両面において、極めて高い節税効果を発揮します。
法人側では、支払う退職金を損金として計上することで法人税の負担を軽減できます。
一方、個人側では、手厚い税制優遇措置により所得税や住民税が大幅に抑えられます。
この二重の節税効果により、会社の資金を効率的に経営者個人へ移転させることが可能になるのです。
役員報酬で受け取る場合との差を理解することが、賢い資産形成の第一歩です。
法人が役員に支払う退職金は、適正な金額であれば損金として計上できます。
法人税は会社の利益に対して課税されるため、損金が増えればその分、課税対象となる所得を圧縮できます。
例えば、適正な3,000万円の退職金を支払った場合、その期の利益が3,000万円減少する効果があり、結果として法人税の納税額を削減することが可能です。
これは、会社の内部留保を活用し、税負担を抑えながら経営者個人の資産形成に役立つ、有効な方法といえます。
個人が退職金を受け取る際の最大のメリットは、税制上の優遇措置にあります。
まず、勤続年数に応じた「退職所得控除」が適用され、課税対象額が大幅に圧縮されます。
例えば勤続20年なら800万円、30年なら1,500万円が非課税となります。
次に、控除後の金額をさらに2分の1にした額が課税対象となります。
また、退職所得は他の給与所得などとは合算せずに税額を計算する「分離課税」方式が採用されるため、所得が多くても急に高い税率が適用されることを避けられます。
これらの仕組みにより、役員報酬で受け取る場合に比べて所得税・住民税の負担が格段に軽くなります。
一人社長の退職金は自由に金額を決められますが、税務上、その金額が「不相当に高額」であると判断された場合、損金として認められないリスクがあります。
そうした事態を避けるため、客観的で合理的な根拠に基づいた金額を算出することが重要です。
一般的に、役員退職金の妥当性を判断する計算方法として広く用いられているのが「功績倍率法」です。
この方法を用いることで、税務署に対しても支給額の妥当性を説明しやすくなります。
功績倍率法を用いた役員退職金の計算式は、以下の通りです。
「役員退職金=最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率」。
ここでいう「最終報酬月額」とは、退職直前に支給されていた役員報酬の月額を指します。
次に「役員在任年数」は、その会社の役員として在籍していた期間のことで、1年未満の端数は切り上げて計算するのが一般的です。
「功績倍率」は、役員の役職や会社への貢献度を反映させるための係数であり、この3つの要素を掛け合わせることで、客観的な基準に基づいた退職金額を算出します。
功績倍率は、退職する役員の会社への貢献度を数値で示すものであり、役職に応じてその水準が変動します。
税務上の妥当性を判断するにあたっては、過去の判例などが参考とされることがあります。
かつては、社長(代表取締役)が3.0倍、専務取締役が2.4倍、常務取締役が2.2倍、平取締役が1.8倍、監査役が1.6倍といった平均功績倍率が判例で示されたこともありますが、これらは当時の調査に基づくものであり、現在の一般的な目安とは異なる可能性があります。近年の裁判例では、平均功績倍率が2倍弱と認定されるケースも見られるため、一概に特定の倍率が税務上妥当と判断されるわけではありません。
一人社長の場合、代表取締役として高い貢献度が認められることが多いため、これを踏まえて功績倍率を検討することが一般的です。
これらの目安を参考に、自社の役員退職慰労金規程で具体的な倍率を定めておくことが重要となります。
実際に功績倍率法を用いて、退職金の目安額を計算してみましょう。
例えば、最終報酬月額が80万円の一人社長が、20年間役員として勤務した場合を想定します。
この場合、功績倍率は社長の目安である3.0倍を適用します。
計算式は「最終報酬月額80万円×役員在任年数20年×功績倍率3.0倍」となります。
これを計算すると、4,800万円が妥当な役員退職金の目安額として算出されます。
この金額であれば、税務調査などで不相当に高額であると指摘されるリスクは低いと考えられます。
事前に自社の状況に合わせてシミュレーションしておくことが大切です。
功績倍率法は有効な基準ですが、絶対的なものではありません。
税務署は、同業種・同規模の法人の退職金支給状況と比較して妥当性を判断することもあります。
特に、最終報酬月額を退職直前に意図的に引き上げるなどの操作は、租税回避行為とみなされるリスクが高いです。
また、1億円を超えるような高額な退職金を支給する場合は、その算出根拠をより詳細に説明できる準備が必要です。
最も重要な対策は、事前に「役員退職慰労金規程」を作成し、その規程に基づいて支給することです。
これにより、支給基準の客観性と公平性を担保し、税務上のリスクを大幅に低減できます。
退職金は高額になるため、退職時に一括で会社の資金から捻出するのは困難な場合があります。
そのため、経営者として在任中から計画的に原資を準備しておくことが不可欠です。
幸い、一人社長が活用できる退職金の積立制度には、節税メリットを享受しながら将来に備えられるものが複数存在します。
それぞれの制度の特徴を理解し、自社の状況や目的に合った最適な方法を組み合わせることが、賢い退職金準備の鍵となります。
小規模企業共済は、国が運営する中小企業の経営者や役員、個人事業主のための退職金制度です。
最大の特長は、毎月の掛金(月額1,000円から7万円まで)が全額、個人の課税所得から控除される点です。
これにより、所得税・住民税を直接的に節税しながら、将来の退職資金を積み立てられます。
共済金を受け取る際も、一括受取なら退職所得扱い、分割受取なら公的年金等の雑所得扱いとなり、税制上の優遇措置を受けられます。
国の制度であるため信頼性が高く、多くの経営者が最初に検討する選択肢の一つです。
iDeCoは、個人が掛金を拠出し、自ら運用方法を選んで資産を形成する私的年金制度です。
小規模企業共済と同様に掛金が全額所得控除の対象となるほか、投資信託などで得られた運用益も非課税になるという大きなメリットがあります。
さらに、60歳以降に受け取る際も退職所得控除または公的年金等控除が適用されるため、入口(掛金)、運用中(利益)、出口(受取)の3つの段階で税制優遇を受けられます。
ただし、原則として60歳まで資金を引き出せない点や、運用結果によっては元本割れのリスクがある点には留意が必要です。
企業型確定拠出年金(企業型DC)は、会社が掛金を拠出し、従業員がその資金を運用する制度ですが、従業員が社長一人の会社でも導入可能です。
会社が支払う掛金は全額損金として計上できるため、法人税の節税につながります。
また、この掛金は役員報酬とは見なされないため、社長個人の所得税・住民税の課税対象から除外されます。
これにより、会社と個人の双方で手取り額を減らすことなく、会社の経費を活用して個人の老後資産を最大化できるという大きなメリットがあります。
iDeCoよりも掛金の上限額を高く設定できる場合が多いのも魅力です。
経営セーフティ共済は、取引先の倒産による連鎖倒産を防ぐための制度ですが、その仕組みを退職金の準備に応用できます。
毎月の掛金(上限20万円)は全額損金に算入でき、最大で800万円まで積み立てられます。
この共済を任意で解約すると、納付期間に応じて解約手当金が受け取れます(40カ月以上納付で100%)。
社長が退職するタイミングに合わせて解約し、その手当金を退職金の支払原資に充てるという活用法です。
本来の目的である貸付制度も利用できるため、節税と事業リスクへの備えを両立できる点が特徴です。
逓増定期保険や養老保険といった法人向けの生命保険を活用して、退職金原資を準備する方法もあります。
支払う保険料の全部または一部を損金として計上し、節税を図りながら資産を形成します。
そして、社長の退職時期に合わせて保険契約を解約し、その際に受け取る解約返戻金を退職金の支払いに充当する仕組みです。
この方法の利点は、社長に万一のことがあった場合に死亡保険金が支払われるため、事業保障資金や役員の遺族への弔慰金としても機能する点です。
保障と貯蓄の両方の機能を備えているのが大きな特徴といえます。
一人社長へ退職金を支給する際は、単に資金を移動させるだけでなく、法的に定められた手続きを適切に行うことが極めて重要です。
これらの手続きを怠ると、税務調査で退職金が損金として認められなかったり、役員賞与と見なされて余計な税金が発生したりするリスクがあります。
支給額の妥当性を証明し、税務上の問題を未然に防ぐためにも、これから説明するステップを確実に実行することが求められます。
退職金を損金として計上するための最も重要な根拠となるのが、「役員退職慰労金規程」です。
この規程には、支給対象者、支給基準(功績倍率法など)、支給時期、支給方法などを明記します。
規程を事前に作成し、株主総会で承認を得ておくことで、退職金の支払いが恣意的なものではなく、会社のルールに基づいて行われることを客観的に証明できます。
税務調査においても、この規程の有無は重要な判断材料となるため、会社設立後、なるべく早い段階で整備しておくことが望ましいです。
規程があれば、金額の妥当性を主張しやすくなります。
役員への退職金の支給は、会社法上、株主総会の決議事項とされています。
一人社長で株主も自分一人という会社であっても、この手続きを省略することはできません。
形式的ではあっても、株主総会を開催し、退職金の支給額、支給時期、支給方法などを決議する必要があります。
そして、その決議内容を証明する書類として「株主総会議事録」を作成し、会社で適切に保管しておかなければなりません。
この議事録が、税務署に対して退職金支給が正式な手続きを経て決定されたことの証拠となります。
退職金を受け取る社長は、会社(支払者)に対して「退職所得の受給に関する申告書」を提出します。
この申告書を提出することで、会社は退職所得控除などを適用した正しい金額で源泉徴収を行うことができます。
もしこの申告書が提出されないと、退職金の支給額に対して一律20.42%の高い税率で源泉徴収されることになり、後で社長自身が確定申告をして還付手続きをしなければなりません。
適切な源泉徴収をしてもらい、確定申告の手間を省くためにも、忘れずに会社へ提出することが重要です。
現在個人事業主として活動している方が法人化(法人成り)を検討する際、社会的な信用の向上や有限責任といったメリットが挙げられますが、税務面での大きな利点の一つが「自分自身に退職金を支払える」ことです。
個人事業主と法人では、事業主と事業との関係性が根本的に異なるため、経費として認められる範囲に大きな違いが生じます。
この退職金の損金算入というメリットは、法人化を後押しする強力な動機となり得ます。
個人事業の場合、事業主個人と事業が一体と見なされます。
事業で得た利益はすべて事業主の「事業所得」となり、そこから自分自身へ給与や退職金を支払うという概念が存在しません。
そのため、将来のために積み立てた資金を、事業の経費として計上することは不可能です。
個人事業主が老後資金を準備する場合は、小規模企業共済やiDeCoなどを活用し、所得控除を受ける形での節税が主な手段となります。
事業の経費として直接的に利益を圧縮することはできないのです。
法人を設立すると、社長個人と法人は法律上、別人格として扱われます。
社長は法人から役員報酬を受け取る雇用関係に近い形になるため、法人から社長個人へ退職金を支払うことが可能になります。
そして、法人が支払った退職金は、妥当な金額であれば会社の損金として計上できます。
これにより、会社の利益を圧縮し、法人税の負担を軽減させることができます。
これは個人事業主にはない大きな節税メリットであり、事業で得た利益を効率的に個人の資産として移転させるための有効な出口戦略となります。
一人社長が退職金を準備することは、ご自身の老後資金を確保するだけでなく、法人税や所得税の負担を軽減する上で極めて有効な手段です。
税務署に否認されないためには、「功績倍率法」などの客観的な基準で妥当な金額を算出し、役員退職慰労金規程の整備や株主総会決議といった適正な手続きを踏むことが不可欠です。
また、小規模企業共済や企業型DC、生命保険といった制度を活用し、在任中から計画的に原資を積み立てることで、将来の資金繰りを安定させられます。
計画的な準備と適切な実行が、会社の資産と個人の未来を両立させる鍵となります。
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はい、受け取れます。法律上、退職金を受け取るための最低勤続年数という定めはありません。ただし、退職所得控除額や功績倍率法による適正額は勤続年数に比例して大きくなるため、年数が短いと支給額が少額になり、節税メリットも限定的になる傾向があります。役員退職慰労金規程で最低勤続年数を定めている場合は、その規定に従う必要があります。
出せます。ただし、会社にお金がない場合は無理に払うと倒産してしまいます。そうならないために、会社の損益に関わらず受け取れる「小規模企業共済」などの個人積立を併用するのが安心です。
はい。計算式(最終報酬月額 × 在任年数 × 功績倍率)の性質上、最終報酬が低いと退職金の適正上限額も下がってしまいます。引退数年前から報酬を適正な水準まで上げておくなどの出口戦略が重要です。
別の会社であれば問題ありません。ただし、元の会社で「実質的に経営権を握り続けている」とみなされると、前の会社からの退職金が「賞与(税制優遇なし)」として再計算されるリスクがあります。
「死亡退職金」として遺族に支払われます。この場合、所得税ではなく相続税の対象となりますが、「500万円 × 法定相続人数」の非課税枠が適用されるため、相続対策としても非常に有効です。