投稿日:2026年05月19日
更新日:2026年05月19日
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企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入している会社員の方にとって、年末調整や確定申告の手続きが必要かどうかは分かりにくい点です。基本的には会社が手続きを行うため、個人での確定申告は不要なケースがほとんどです。しかし、iDeCo(イデコ)を併用している場合など、状況によっては手続きが必要になります。この記事では、企業型DCに関する確定申告や年末調整の要否、iDeCoとの手続きの違いについて詳しく解説します。
目次
企業型確定拠出年金(企業型DC)の掛金については、加入者自身が年末調整や確定申告を行う必要は原則としてありません。なぜなら、掛金に関する税金の計算や控除手続きは、すべて会社側で行われる仕組みになっているためです。従業員が拠出するマッチング拠出の掛金も、給与からの天引きと同時に会社が所得控除の手続きを進めてくれます。そのため、従業員が個別に申告手続きをしなくても、税制上のメリットを受けられるようになっています。
一人社長の退職金はいくらまで?節税できる制度と計算方法を解説企業型確定拠出年金(企業型DC)の掛金のうち、会社が拠出する事業主掛金については、従業員自身が年末調整の書類に記入したり、確定申告をしたりする必要はありません。ただし、従業員が上乗せで拠出する掛金(マッチング拠出)を行っている場合、マッチング拠出金が給与から控除されていれば、事業主が所得控除の手続きを行うため、原則として従業員自身での年末調整時の申告や確定申告手続きは不要です。
これは、会社が拠出する掛金と、従業員が上乗せで拠出する掛金(マッチング拠出)で、それぞれ税務上の処理方法が異なるものの、いずれも会社側で手続きが完結するためです。
ここでは、その2つの理由について具体的に解説します。
会社が従業員のために拠出する企業型DCの掛金は、税法上、従業員の給与所得とはみなされません。これは非課税の扱いとなり、所得税や住民税の計算の基礎となる給与所得には含まれないということです。もともと課税対象の所得ではないため、年末調整や確定申告で所得から差し引く「控除」という手続き自体が発生しません。会社が掛金を拠出した時点で税制上のメリットは完結しており、従業員が何らかの申告手続きを行う必要はないのです。
マッチング拠出制度を利用して従業員自身が掛金を上乗せしている場合、その掛金は全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象となり、所得税・住民税が軽減されます。この掛金は給与から天引きされるため、会社は拠出された金額を把握しています。
したがって、企業型DCのマッチング拠出(加入者掛金)は、会社が掛金額を把握しているため、会社が年末調整時に所得控除の手続きを行います。
企業型確定拠出年金(企業型DC)に関する税務手続きは、加入者の状況によって異なります。会社の掛金のみか、自身もマッチング拠出で掛金を出しているか、あるいはiDeCoを併用しているかによって、手続きの要否が変わってきます。ここでは、代表的な3つのパターンに分け、それぞれの場合で年末調整や確定申告の手続きがどうなるのかを具体的に解説します。
従業員の加入する企業型DCに対して、会社のみが掛金を拠出している場合は、従業員自身が行う年末調整や確定申告の手続きは一切不要です。
会社の掛金は従業員の給与所得には含まれない非課税の扱いとなるため、そもそも所得控除の申告対象になりません。
会社が掛金を支払った時点で税務上の処理は完了しているため、従業員が税金の手続きで何かを意識したり、書類を提出したりする必要は全くありません。
これは企業型DCに加入している最も基本的なパターンです。
マッチング拠出を利用して、従業員自身も給与から掛金を上乗せしている場合でも、原則として個人での手続きは不要です。従業員が拠出した掛金は給与から天引きされるため、会社がその金額を正確に把握し、年末調整の際に自動で所得控除の計算を行ってくれます。生命保険料控除のように、従業員が「給与所得者の保険料控除申告書」に金額を記入して申告する必要はありません。会社側で手続きが完結するため、手間なく税金の軽減メリットを受けられます。
企業型DCに加えてiDeCo(個人型確定拠出年金)にも加入している場合、iDeCoの掛金については自分で手続きを行う必要があります。企業型DCの掛金(マッチング拠出含む)については会社が年末調整で処理してくれますが、iDeCoの掛金は会社が把握していないためです。iDeCoの掛金は、国民年金基金連合会から送られてくる「小規模企業共済等掛金払込証明書」を用いて、年末調整で会社に申告するか、自身で確定申告を行う必要があります。この手続きを忘れると所得控除が受けられないため注意が必要です。
企業型確定拠出年金の定期預金は損?メリットと隠れたデメリット企業型確定拠出年金(企業型DC)とiDeCo(個人型確定拠出年金)は、どちらも掛金が所得控除の対象になるという税制上のメリットがありますが、その手続き方法は大きく異なります。会社員がこれらの制度を利用する場合、特に掛金の所得控除を受けるための方法や、控除証明書の扱いに違いがあります。ここでは、両者の税制上の手続きの違いを比較し、それぞれどのような対応が必要になるのかを解説します。
企業型DCのマッチング拠出における掛金は、給与から天引きされるため、会社が年末調整で自動的に所得控除の手続きを完了させます。
従業員が自ら申告書に記入するなどの手間はかかりません。
一方、iDeCoの掛金は、個人の口座から引き落とされるため、会社側では拠出額を把握できません。
そのため、iDeCoの掛金で所得控除を受けるには、年末調整の際に「給与所得者の保険料控除申告書」に自分で金額を記入し、控除証明書を添付して会社に提出する必要があります。
年末調整に間に合わなかった場合は、個人で確定申告を行います。
手続きの違いは、控除証明書の有無にも表れます。企業型DC(マッチング拠出含む)では、会社が掛金額を把握し年末調整を行うため、所得控除を証明するための書類(控除証明書)は発行されません。従業員が会社に提出するべき必要書類もありません。対してiDeCoでは、加入者本人が所得控除の申告を行うため、その証明として国民年金基金連合会から「小規模企業共済等掛金払込証明書」というハガキが毎年10月下旬頃に送付されます。この証明書は、年末調整や確定申告の際に提出が必須となる重要な書類です。
これまで解説してきたように、企業型確定拠出年金(企業型DC)の掛金を拠出している期間中は、原則として確定申告は不要です。
しかし、将来その積み立てた資産を「給付金」として受け取る段階になると、受け取り方によっては確定申告が必要になるケースがあります。
年金として分割で受け取るか、一時金として一括で受け取るかによって課税方法が異なり、確定申告の要否も変わってくるため注意が必要です。
企業型DCの資産を60歳以降に年金形式で分割して受け取る場合、その給付金は「雑所得」として扱われ、公的年金等控除の対象となります。通常、年金が支払われる際には所得税が源泉徴収されます。しかし、公的年金等の収入金額の合計が400万円以下で、かつ他の所得が20万円以下であるなど、一定の条件を満たせば確定申告は不要です。それ以外の場合や、医療費控除など他の控除を適用したい場合は、確定申告を行うことで源泉徴収された税金が還付される可能性があります。特に65歳を境に控除額が変わるため、自身の状況を確認することが重要です。
老齢給付金を一時金として一括で受け取る場合、その所得は「退職所得」として扱われます。通常、勤務先から退職金を受け取る際に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、会社側で所得税の計算と納税が完結するため、原則として確定申告は不要です。しかし、この申告書を提出しなかった場合や、他の会社からも退職金を受け取る場合などは、正しい税額を計算するために自分で確定申告を行う必要があります。退職所得控除という大きな控除があるため、多くの場合は税負担が軽くなります。
企業型確定拠出年金の定期預金は損?メリットと隠れたデメリット企業型確定拠出年金(企業型DC)の税務手続きについては、iDeCoとの違いや年末調整での具体的な扱いなど、分かりにくい点が多くあります。そのため、加入者からは毎年同じような質問が寄せられる傾向にあります。ここでは、特に多くの方が疑問に思う点について、Q&A形式で分かりやすく解説していきます。
問題ありません。企業型DCの掛金(マッチング拠出含む)は、会社が給与天引きと年末調整で処理するため、個人で申告するための「小規模企業共済等掛金払込証明書」は発行されません。この証明書はiDeCoの加入者に送付されるものであり、国税庁の指針でも給与天引きの場合は証明書の添付が不要とされています。証明書が届かなくても所得控除は正しく行われています。
自分で記入する必要はありません。
マッチング拠出の掛金は会社が給与から天引きする際に金額を把握しているため、年末調整の計算に自動的に含めてくれます。
年末調整で提出する「給与所得者の保険料控除申告書」は、生命保険料や地震保険料など、会社が金額を把握できないものを自己申告するための書類です。
マッチング拠出の書き方で悩む必要はなく、何も記入せずに提出して問題ありません。
iDeCoの掛金分のみ、年末調整または確定申告で申告が必要です。この組み合わせの場合、企業型DCの掛金(マッチング拠出含む)は会社が年末調整で処理しますが、iDeCoの掛金は会社が把握していないため、自分で申告しなければ所得控除を受けられません。国民年金基金連合会から届く「小規模企業共済等掛金払込証明書」を使って、必ず申告手続きを行ってください。
企業型確定拠出年金の掛金については、会社が拠出する分も、マッチング拠出で従業員が上乗せする分も、会社側で税務処理が完結するため、原則として個人での確定申告や年末調整での申告は不要です。ただし、iDeCoを併用している場合はiDeCoの掛金分のみ申告が必要であり、手続きを忘れた場合は所得控除が受けられません。また、将来給付金を受け取る際には、受け取り方によって確定申告が必要になる場合があります。転職時には資産の移換手続きが必須となるなど、確定申告以外にも重要な手続きが存在します。選択制DCも同様の考え方ですが、自身の加入制度について不明な点があれば、会社の担当部署に確認することをおすすめします。
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原則として不要です。会社が掛金を管理し、税金の計算や控除の手続きをすべて代行してくれる仕組みだからです。
不要です。マッチング拠出金は給与から天引きされており、会社が金額を把握しているため、自動的に所得控除の処理が行われます。
iDeCo分のみ手続きが必要です。iDeCoの掛金は会社が把握していないため、自身で年末調整時に「払込証明書」を提出するか、確定申告を行う必要があります。
いいえ、非課税です。会社の掛金は従業員の給与所得とはみなされないため、所得税も住民税もかからず、申告の対象にもなりません。
受け取り方や金額によっては必要です。年金形式で受給額が多い場合や、一時金受取で「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかった場合などは申告が必要です。