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確定給付企業年金と企業型確定拠出年金の違いを比較!どっちがお得?

投稿日:2026年05月14日

更新日:2026年05月14日

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この記事を読むのに必要な時間は約 12 分です。

確定給付企業年金(DB)と企業型確定拠出年金(DC)は、企業が従業員の老後資産形成を支援するために導入する退職金・年金制度です。
両制度の最も大きな違いは、将来受け取れる年金額が確定しているか、自分自身の運用次第で変動するかにあります。

この記事では、それぞれの制度の仕組みやメリット・デメリットを従業員と企業双方の視点から比較し、どちらがより適しているかを判断するための情報を提供します。

目次

一目でわかる!確定給付企業年金(DB)と企業型確定拠出年金(DC)の主な違い

確定給付企業年金(DB)と企業型確定拠出年金(DC)の根本的な違いは、将来の給付額が約束されている「確定給付」か、掛金だけが決められ運用成果で給付額が変わる「確定拠出」かという点にあります。
また、それに伴い、資産運用の責任を企業が負うのか、従業員個人が負うのかという点も大きく異なります。
これらの違いが、従業員と企業の双方にとってのメリット・デメリットに直結します。

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そもそも確定給付企業年金(DB)とは?

確定給付企業年金(DB)は、英語の「Defined Benefit Plan」を略したもので、規約型と基金型の2種類が存在します。
これは、かつて主流であった厚生年金基金の受け皿制度として設立された背景も持ちます。

制度の最大の特徴は、将来従業員が受け取る給付額が、加入期間や給与水準などに基づいてあらかじめ計算され、約束されている点です。
企業が年金資産の管理・運用を行い、その結果に対する責任を負います。

将来の給付額があらかじめ約束されている仕組み

確定給付企業年金(DB)では、企業の規約によって将来の給付額が明確に定められています。
企業は、その約束した給付額を将来支払えるように、掛金を拠出して年金資産を管理・運用します。
運用は信託会社や生命保険会社などの専門機関に委託されますが、運用の責任はすべて企業が負います。

仮に運用がうまくいかず、予定していた利回りを下回って積立金に不足が生じた場合、企業はその不足分を追加で拠出する義務があります。
この仕組みにより、従業員は自身で運用リスクを負うことなく、計画的に将来の生活設計を立てることが可能です。

企業型確定拠出年金(DC)とは?

企業型確定拠出年金(DC)は、「Defined Contribution Plan」の略で、「企業型DC」や日本の制度が米国の401kプランを参考にしたことから「日本版401k」とも呼ばれます。
この制度は、企業が毎月一定の掛金を拠出し、従業員(加入者)自身がその資金をどの金融商品で運用するかを決定する仕組みです。
DBとは対照的に、将来の給付額は個人の運用実績によって変動するのが最大の特徴です。

加入者自身の運用実績で将来の給付額が変動する仕組み

企業型確定拠出年金(DC)では、企業が拠出した掛金を元に、従業員が自らの判断で運用指図を行います。
企業側は、投資信託や保険商品、定期預金といった複数の運用商品を提示し、従業員はそのラインナップの中から自分のリスク許容度やライフプランに合わせて商品を選択し、資産を運用します。

したがって、運用が成功すれば将来の受取額は大きく増える可能性がありますが、逆に市場環境が悪化すれば拠出した掛金の総額(元本)を下回るリスクも存在します。
最終的な給付額は、あくまで個人の運用成果次第であり、自己責任で老後資産を形成していく制度といえます。

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【従業員視点】DBとDCのメリットを比較

従業員の視点から見ると、DBとDCにはそれぞれ異なる魅力があります。
DBの最大のメリットは、将来の受取額が確定していることによる「安心感」と、運用をすべて会社に任せられる「手軽さ」です。

一方、DCは運用益が非課税になるなどの大きな税制優優遇を受けながら、自分の判断で積極的な資産形成を目指せる「自由度の高さ」と「可能性」がメリットとして挙げられます。
どちらを重視するかは、個人の投資に対する考え方や知識によって変わります。

運用を会社に任せられるDBのメリット

DBに加入する従業員の最大のメリットは、将来の給付額が規約で保証されており、老後の生活設計を立てやすい点です。
資産の運用はすべて企業(または企業が委託した専門機関)が行うため、従業員が自分で金融商品を選んだり、日々の市場動向を気にしたりする必要がありません。
投資に関する知識や経験がなくても、企業が運用責任を負ってくれるため、安心して任せられます。

万が一、運用成績が悪化して積立金が不足した場合でも、その不足分は企業が補填するため、従業員が元本割れのリスクを負うことはないという安心感が得られます。

運用益が非課税になるなど税制優遇が大きいDCのメリット

DCの大きなメリットは、税制上の優遇措置が充実している点です。
通常、金融商品の運用で得た利益(利息、配当、売却益)には約20%の税金がかかりますが、DC制度内の運用で得た利益はすべて非課税となります。
これにより、税金を差し引かれることなく利益を再投資に回せるため、複利効果を最大限に活かした効率的な資産形成が可能です。

また、掛金は所得控除の対象になりますが、年金や一時金として受け取る際には「公的年金等控除」や「退職所得控除」が適用され、税負担が軽減されます。
自分で運用商品を選べるため、リスクを取って大きなリターンを狙うことも可能です。

【従業員視点】DBとDCのデメリットを比較

各制度のメリットは、裏を返せばデメリットにもなり得ます。
DBの「お任せ運用」は、自分で積極的に資産を増やしたい人にとっては「自由度のなさ」というデメリットに感じられます。
また、企業の業績によっては制度自体の存続に不安が生じる可能性も否定できません。

一方で、DCの「自由度の高さ」は、運用結果のすべてを自己責任で負わなければならないという「元本割れリスク」と表裏一体であり、投資知識の習得も必要になります。

運用方針を自分で決められないDBのデメリット

DBのデメリットは、従業員が資産の運用方法に一切関与できない点です。
たとえ積極的にリスクを取って資産を大きく増やしたいと考えても、その意向を反映させることはできません。
運用は企業の定める方針に沿って行われるため、インフレが進行する経済状況下では、定められた給付額の実質的な価値が目減りする可能性もあります。

また、企業の財政状況が悪化した場合には、将来の給付水準が引き下げられたり、最悪の場合には制度自体が廃止されたりするリスクも存在します。
従業員は良くも悪くも企業の運用方針と財務状況に依存することになります。

運用結果によっては元本割れのリスクがあるDCのデメリット

DCにおける最大のデメリットは、運用責任をすべて加入者自身が負うため、運用成績によっては拠出した掛金の元本を割り込む可能性があることです。
将来の給付額が保証されておらず、自身の選択と市場の動向に左右されるため、老後の資産計画に不確実性が伴います。

また、適切な運用を行うためには、金融商品に関する一定の知識が必要となり、自ら情報収集や学習を行う手間が発生します。
どのような商品を選んでいいか分からず、元本確保型の商品に偏らせてしまうと、大きなリターンは期待できず、インフレによって資産の価値が実質的に減少してしまうことも考えられます。

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【企業視点】DBとDCのメリット・デメリットを比較

企業がどちらの制度を導入するかは、財務戦略や人材戦略に大きな影響を与えます。
DBは、従業員に手厚い福利厚生を提供できるため人材確保の面で有利ですが、将来の給付を約束するために大きな財務リスクを背負うことになります。

対照的にDCは、企業の掛金拠出額が確定しておりコスト管理が容易になる反面、従業員の資産形成を支援するための投資教育を実施する責任が生じるなど、異なる側面での負担が発生します。

DB導入における企業のメリットと積立不足リスク

企業がDBを導入するメリットは、従業員に安定した将来を約束することで、福利厚生の魅力を高め、優秀な人材の獲得や離職率の低下につなげやすい点です。
従業員のロイヤリティ向上にも寄与する可能性があります。
しかし、最大のデメリットは、年金資産の運用リスクをすべて企業が負う点にあります。

市場の低迷などで運用実績が予定利回りを下回った場合、企業は追加の掛金を拠出して積立不足を解消する義務を負います。
この将来の偶発的な債務は、企業の財務状況を大きく圧迫するリスクとなり、経営の柔軟性を損なう要因にもなり得ます。

DC導入で掛金の管理がしやすくなる企業のメリットと投資教育の必要性

DCを導入する企業側の最大のメリットは、毎月の掛金負担額が確定しているため、退職給付に関するコストを正確に把握し、管理しやすくなることです。
DBのような将来の積立不足リスクから解放され、財務的な見通しが立てやすくなります。
これにより、経営の安定化に貢献します。

その一方で、運用責任が従業員個人に移るため、企業には従業員が適切な資産形成を行えるよう、継続的に投資教育を提供する努力義務が課せられます。
この投資教育が不十分だと、従業員の資産形成がうまくいかず、福利厚生としての制度の魅力が低下してしまう可能性も考慮しなくてはなりません。

DBとDCの併用は可能?掛金の上限額はどうなる?

企業によっては、従業員への福利厚生を充実させる目的で、確定給付企業年金(DB)と企業型確定拠出年金(DC)の両方の制度を導入しているケースがあります。
このように両制度を併用することは認められていますが、その場合、DCに拠出できる掛金の上限額には特別なルールが適用されます。

以前は一律で月額2.75万円でしたが、2024年の法改正によって、より詳細な計算方法に変更されたため、内容を正しく理解しておく必要があります。

制度改正による併用時の拠出限度額のルール

DBとDCを併用する場合、DCの拠出限度額は、まず「月額5.5万円」から、各従業員の「DBの掛金相当額」を差し引いて算出します。
このDBの掛金相当額とは、企業がその従業員のためにDB制度へ拠出していると見なされる理論上の金額です。
以前の制度ではこの計算で算出された額と、「月額2.75万円」を比較し、いずれか低い方の金額がその従業員のDCの拠出限度額となります。
2024年12月1日以降は、DBが手厚くない(掛金相当額が小さい)場合は、DCで2.75万円を超えて拠出することも可能になっています。

iDeCoも利用する場合の上限額と注意点

企業型DCに加入している従業員が、個人型確定拠出年金(iDeCo)にも加入する場合、その掛金上限額はさらに複雑になります。
まず、企業型DCの規約でiDeCoとの併用が認められていることが前提です。
その上で、iDeCoの拠出限度額は原則として月額2万円となります。

ただし、企業型DCの事業主掛金とiDeCoの掛金の合計額が、企業型DCの拠出限度額(DB等に加入していない場合は月額5.5万円)の範囲内に収まる必要があります。
DBにも加入している場合は、企業型DC自体の限度額が低くなるため、iDeCoに拠出できる金額はさらに少なくなるか、枠が残らないこともあります。

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転職・退職したら年金資産はどうやって引き継ぐ?

キャリアプランの中で転職は一般的な選択肢となっており、その際に積み立ててきた年金資産をどう引き継ぐかは非常に重要です。
確定給付企業年金(DB)と企業型確定拠出年金(DC)では、この資産の持ち運び(ポータビリティ)の仕組みに違いがあります。

特にDCは個人の口座で資産が管理されるため、転職時にも資産を移換しやすい制度設計になっています。
スムーズな引き継ぎのためには、それぞれの制度の手続きについて事前に把握しておくことが求められます。

確定給付企業年金(DB)から他制度へ資産を移す場合の手続き

DB加入者が転職または退職する場合、年金資産は原則として脱退一時金として受け取ることになりますが、一定要件を満たせば他の年金制度へ資産を移換して、将来年金として受け取ることが可能です。
転職先にDB制度がある場合は、双方の規約が認めれば資産を引き継げる場合があります。

転職先にDBがない、または自営業者になる場合は、企業年金連合会に資産を移し「通算企業年金」として受け取るか、iDeCo(個人型確定拠出年金)に資産を移換する方法があります。
ただし、加入期間が短い場合など、規約によっては移換が認められないケースもあるため、必ず勤務先の担当部署に確認が必要です。

企業型確定拠出年金(DC)のポータビリティと移換手続きの流れ

DCはポータビリティに優れており、積み立てた年金資産を個人の資産として持ち運べるのが大きな特徴です。
転職先に企業型DC制度があれば、そこに資産をすべて移換して運用を継続できます。
転職先に企業年金制度がない場合や公務員、自営業者になる場合は、iDeCoに資産を移換します。

重要なのは、退職後6ヶ月以内にこの移換手続きを完了させる必要がある点です。
手続きを怠ると、資産は国民年金基金連合会に自動移換され、管理手数料が発生するうえに新たな運用ができなくなります。
また、勤続年数が3年未満で退職すると、事業主掛金の一部が会社に返還され、移換できる資産額が減る規約もあるため注意が必要です。
勤続3年以上であれば全額持ち運べます。

【タイプ別診断】あなた(貴社)に合うのはDB?それともDC?

ここまでDBとDCの違いについて解説してきましたが、どちらの制度が最適かは、個人の価値観や企業の経営方針によって異なります。
従業員にとっては、安定性を求めるか、自己裁量での積極的なリターンを追求するかという投資スタンスが判断基準となります。

企業にとっては、財務的なリスク許容度や、従業員にどのような福利厚生を提供したいかという人材戦略が選択の鍵を握ります。
ここでは、それぞれのタイプに応じた推奨制度を紹介します。

安定性を重視する従業員・企業におすすめな確定給付企業年金(DB)

投資の知識に不安がある、あるいは市場の変動を気にして資産運用に時間を割きたくないと考える従業員には、DBが適しています。
将来受け取れる金額が確定しているため、安定したライフプランを立てやすいという安心感が得られます。
企業側としては、手厚い福利厚生を従業員に提供することで、人材の確保や定着を促進したい場合にDBは有効な選択肢です。

ただし、企業には将来にわたって約束した給付を履行するための財務的な体力と、運用リスクを引き受ける覚悟が求められます。
従業員と企業、双方が安定を最優先に考える場合に最適な制度です。

積極的な資産形成を目指す従業員・企業におすすめな企業型確定拠出年金(DC)

税制優遇を活用し、自己責任のもとで積極的に資産を増やしていきたいと考える従業員には、DCが向いています。
運用商品や配分を自分で決められるため、高いリターンを目指すことが可能です。
また、転職を視野に入れている人にとっても、資産を持ち運びやすいポータビリティの高さは大きな魅力です。

企業側にとっては、退職給付に関する将来の財務リスクを回避し、コストを固定化できる点が大きなメリットです。
従業員の自律的な資産形成を支援するという形で福利厚生を提供したいと考える企業に適した制度といえます。

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まとめ

確定給付企業年金(DB)と企業型確定拠出年金(DC)は、老後資産を形成するための重要な制度ですが、その仕組みと特性は大きく異なります。
DBは、将来の給付額が約束された安定志向の制度で、運用責任は企業が負います。
一方のDCは、企業が拠出した掛金を従業員自身が運用し、その成果によって将来の給付額が変動する自己責任型の制度です。

従業員は自身のリスク許容度や資産運用への関心度を、企業は財務状況や人材に対する考え方を踏まえ、どちらの制度が自社や自分にとって最適かを慎重に判断することが求められます。

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よくあるご質問

結局、従業員にとってDBとDCはどちらが「おトク」なのですか?

運用の手間なく確実に将来の額を確定させたいならDB、税制優遇を活用して自分の力で受取額を増やしたいならDCがおトクといえます。

会社がDBを導入している場合、自分からDCに変更することはできますか?

制度は会社単位で導入されるため、個人で制度自体を切り替えることはできません。

DCで元本割れが怖いのですが、安全な運用方法はありますか?

「元本確保型」の商品(定期預金や保険など)を選べば、受取額が減るリスクは回避できますが、インフレで資産の価値が目減りする可能性には注意が必要です。

DBの「掛金相当額」はどこで確認すればいいですか?

会社から年に一度届く「退職金・年金資産の通知書」に記載されていることが多いですが、不明な場合は人事・総務部に直接問い合わせるのが確実です。

勤務先が倒産した場合、積み立てた年金はどうなりますか?

DCは個人名義の資産なので全額守られます。DBも一定の資産は保護されますが、会社の積立状況によっては給付額が削減されるリスクがゼロではありません。

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このコラムの著者 : 宍戸沙綾

株式会社SMC総研:株式会社日本企業型確定拠出年金センター 企業型DC導入支援グループ
AFP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)/DCプランナー2級 
前職で税理士法人グループの保険代理店に所属し、税務の観点から企業にとっての最適な金融商品の提案を実施。その経験を活かし、現在は企業型確定拠出年金の導入を多数支援。提携先の税理士事務所や大手保険会社との共催セミナーの主催や社内勉強会を実施。経営者の想いに寄り添い、「経営者と従業員の資産最大化」をサポートしている。

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