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企業型DCとふるさと納税の併用|限度額計算とシミュレーターの使い方

投稿日:2026年05月14日

更新日:2026年05月14日

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この記事を読むのに必要な時間は約 12 分です。

企業型DC(企業型確定拠出年金)とふるさと納税は、どちらも税制上の優遇が受けられるため、併用することで効率的に資産形成や節税が可能です。
しかし、企業型DCで本人が掛金を拠出すると課税所得が減少し、その結果ふるさと納税の控除限度額も下がります。
この影響を理解せずに寄付を行うと、自己負担額が増えてしまう可能性があります。

この記事では、企業型DCのタイプ別にふるさと納税の限度額がどう変わるのか、そして正確な限度額を把握するためのシミュレーション方法を具体的に解説します。

目次

企業型DC(企業型確定拠出年金)の掛金がふるさと納税の限度額を減らす仕組み

ふるさと納税の控除限度額は、個人の所得税や住民税の納税額に基づいて算出されます。
一方、企業型DCにおいて加入者本人が拠出した掛金は、全額が「小規模企業共済等掛金控除」などの所得控除の対象となり、課税される所得金額(課税所得)を減らす効果があります。
課税所得が減少すると、それに伴って納めるべき所得税と住民税の額も少なくなります。

ふるさと納税の限度額はこの税額に連動しているため、企業型DCの掛金によって課税所得が下がると、結果的にふるさと納税の限度額も下がることになります。
この仕組みを理解し、自身の限度額を正確に把握することが重要です。

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【重要】あなたの企業型DCはどのタイプ?掛金の拠出パターンを確認しよう

企業型DCとふるさと納税の併用を考える際、まず確認すべきは自身の企業型DCの掛金拠出パターンです。
掛金を事業主(会社)のみが拠出しているか、加入者(本人)も拠出しているかによって、ふるさと納税の限度額への影響が全く異なります。
加入者本人が掛金を拠出する場合でも、「マッチング拠出」なのか「選択制DC」なのかで計算方法が変わるため、ご自身の制度がどのタイプに該当するかを就業規則や担当部署への確認を通じて正確に把握することが、正しい限度額計算の第一歩となります。

事業主(会社)が全額を拠出するケース

勤務先の会社が企業型DCの掛金を全額拠出し、従業員本人による掛金の拠出(マッチング拠出など)が一切ない場合、ふるさと納税の控除限度額に影響が出ることはありません。 企業型DCに加入していない人と全く同じ基準で限度額を計算して問題ありません。

なぜなら、会社が拠出する掛金は、税法上、従業員の「給与(所得)」とは見なされないからです。源泉徴収票の支払金額(年収)にも含まれず、所得税や住民税の課税対象にもなりません。
したがって、会社が掛金を全額負担しているタイプの方は、ふるさと納税の限度額計算において会社の掛金額を考慮する必要はありません。通常通り、源泉徴収票に記載された年収や他の所得控除(生命保険料控除など)を基に、シミュレーションを行ってください。

加入者(本人)も掛金を上乗せする「マッチング拠出」

マッチング拠出とは、会社が拠出する掛金に加えて、加入者本人が任意で掛金を上乗せできる制度です。
この場合、本人が拠出した掛金の全額が「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除の対象になります。
所得控除が適用されると、その年の課税所得が拠出した掛金額だけ減少し、結果として所得税と住民税の負担が軽くなります。

ふるさと納税の控除限度額は、この軽減された後の税額を基に計算されるため、マッチング拠出を利用している場合はその分限度額が下がります。
シミュレーターで計算する際は、この本人拠出分を忘れずに入力する必要があります。

給与の一部を掛金にする「選択制DC」

選択制DCは、給与の一部を「ライフプラン手当」などとし、それを従来通り給与として受け取るか、企業型DCの掛金として拠出するかを従業員自身が選択できる制度です。
掛金として拠出した分は、そもそも給与(報酬)ではなかったものとして扱われるため、所得税や住民税、さらには固定費の算定基礎からも除外されます。
これにより、帳簿上の年収そのものが拠出した掛金額だけ減少します。

年収が下がれば課税所得も減るため、ふるさと納税の控除限度額も下がることになります。
マッチング拠出とは異なり、年収自体を補正して計算する必要があるのが特徴です。

ふるさと納税の限度額を正確に計算する2つの方法

企業型DCの掛金を考慮した上で、ふるさと納税の控除限度額を正確に把握するには、主に2つの方法があります。
一つは、ふるさと納税ポータルサイトが提供する詳細シミュレーターを利用する方法です。
源泉徴収票の情報を基に数値を入力すれば、手軽に精度の高い限度額を算出できます。

もう一つは、自身の所得税率などを用いて、掛金が限度額に与える影響をおおまかに手計算する方法です。
それぞれの特徴を理解し、自分に合った方法でシミュレーションを行いましょう。

方法1:シミュレーターで企業型DCの掛金を入力して計算する

最も簡単で正確な方法は、ふるさと納税ポータルサイトが提供している詳細シミュレーションを利用することです。
多くのシミュレーターには企業型DCの掛金を直接入力する欄はありませんが、掛金のタイプに応じて特定の項目に入力することで正しく計算できます。
具体的には、マッチング拠出の場合は本人が拠出した年間掛金額を「小規模企業共済等掛金控除」の項目に入力します。

一方、選択制DCの場合は、年収から年間の掛金額を差し引いた金額を「給与収入」の欄に入力します。
この操作により、企業型DCの掛金が課税所得に与える影響を反映した、より正確な控除限度額のシミュレーションが可能となります。

楽天ふるさと納税「詳細シミュレーション」での入力手順

楽天ふるさと納税の「詳細シミュレーション」を利用する場合、まず源泉徴収票を手元に用意し、「給与収入」や「給与所得控除後の金額」「固定費等の金額」などを入力します。
企業型DCの掛金の入力方法は、拠出タイプによって異なります。
マッチング拠出を利用している場合は、ご自身が拠出した年間の掛金総額を「その他の控除」の項目内にある「小規模企業共済等掛金控除額」の欄に入力してください。

選択制DCの場合は、この欄には何も入力せず、シミュレーションの最初に入力する「給与収入」の金額から、年間の掛金総額をあらかじめ差し引いた額を入力します。
この手順で、正しいシミュレーション結果が得られます。

さとふる・ふるなび「控除上限額シミュレーション」での入力手順

さとふるやふるなびなどの主要なふるさと納税サイトでも、詳細なシミュレーション機能が提供されており、同様の手順で企業型DCの掛金を反映させた計算が可能です。
これらのサイトでも、企業型DCの掛金タイプに応じた入力が求められます。
マッチング拠出の場合、年間の本人拠出額を「小規模企業共済等掛金」の項目に入力します。

選択制DCの場合は、シミュレーターの「年収」または「給与収入」の欄に、本来の年収から年間の掛金総額を引いた金額を入力してください。
サイトによって項目名が若干異なる場合がありますが、「小規模企業共済掛金」というキーワードを目印に探すとスムーズに入力できます。

方法2:手計算で限度額への影響額を算出する

シミュレーターを使わずに、企業型DCの掛金がふるさと納税の限度額に与える影響額を大まかに把握したい場合、手計算で概算することも可能です。
影響額の目安は「年間の本人拠出掛金額×(所得税率+住民税率10%)÷(90%-所得税率)」という式で求められますが、より簡易的には「年間の本人拠出掛金額×(所得税率+住民税率10%)」でも大まかな減少額がわかります。
所得税率は課税所得に応じて5%から45%まで変動します。

例えば、年収500万円で所得税率が10%の人が年間12万円の掛金を拠出した場合、約24,000円(12万円×20%)程度、限度額が下がると考えられます。
ただし、これはあくまで目安であり、正確な金額を知るにはシミュレーターの利用が推奨されます。

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【年収・家族構成別】企業型DCあり・なしでのふるさと納税限度額シミュレーション

企業型DCの掛金がふるさと納税の限度額に具体的にどの程度影響するのか、年収や家族構成別のモデルケースを用いてシミュレーションした結果を紹介します。
ご自身の状況に近いケースを参考にすることで、限度額への影響をよりイメージしやすくなります。
なお、シミュレーション結果は固定費控除を年収の15%と仮定するなど、一定の条件下での目安であり、個々の状況によって実際の限度額は変動しますので、最終的にはご自身の源泉徴収票を基に計算してください。

【年収400万円・独身】企業型DCの掛金が月1万円の場合

年収400万円の独身の方が、企業型DCの掛金を個人で月額1万円(年間12万円)拠出しているケースでシミュレーションします。
この場合、企業型DCに加入していない場合のふるさと納税の限度額目安は約42,000円です。
一方、年間12万円の掛金を拠出すると、その分課税所得が減少するため、限度額の目安は約39,000円となります。

つまり、このケースでは企業型DCへの加入によって、ふるさと納税の限度額が約3,000円減少することになります。
掛金拠出による節税メリットと、ふるさと納税の限度額減少の影響を比較検討する際の参考にしてください。

【年収600万円・夫婦(配偶者控除あり)】企業型DCの掛金が月1.5万円の場合

年収600万円で、配偶者の年収が低く配偶者控除が適用される方が、企業型DCの掛金を個人で月額1.5万円(年間18万円)拠出しているケースでシミュレーションします。
企業型DCに加入していない場合のふるさと納税の限度額目安は約69,000円です。
これに対し、年間18万円の掛金を拠出している場合、課税所得が圧縮されるため、限度額の目安は約63,000円に下がります。

このモデルケースでは、企業型DCの掛金拠出により、ふるさと納税の限度額が約6,000円減少するという結果になります。
年収や控除額が高くなると、減少額も大きくなる傾向があります。

【年収800万円・夫婦共働き・子1人】企業型DCの掛金が月2万円の場合

年収800万円で夫婦共働き(配偶者控除なし)、高校生の子どもが1人(扶養控除あり)の方が、企業型DCの掛金を個人で月額2万円(年間24万円)拠出しているケースを想定します。
この条件でシミュレーションすると、企業型DCに加入していない場合のふるさと納税の限度額目安は、いくつかのシミュレーションサイトでは約109,000円から130,000円と提示されています。
一方、年間24万円の掛金を拠出している場合、課税所得が減少するため、ふるさと納税の限度額目安も減少する可能性があります。具体的な減少額は、個別の状況や計算方法によって異なります。

企業型DCとふるさと納税を併用するときの注意点

企業型DCとふるさと納税を併用する際には、いくつかの注意点があります。
これらを事前に把握しておくことで、手続きをスムーズに進め、控除の恩恵を最大限に受けることができます。
ワンストップ特例制度の利用可否や、住宅ローン控除といった他の税制優遇との関係、そして正確な計算に必要な書類など、事前に確認しておくべきポイントを解説します。

ワンストップ特例制度は通常通り利用できる

企業型DCの掛金を拠出している場合でも、ふるさと納税のワンストップ特例制度は通常通り利用できます。
ワンストップ特例制度の利用条件は、もともと確定申告が不要な給与所得者であることや、年間の寄付先が5自治体以内であることなどです。
企業型DCのマッチング拠出や選択制DCによる掛金の所得控除は、会社の年末調整で手続きが完了します。

そのため、医療費控除や住宅ローン控除(初年度)など、他に確定申告をする必要がなければ、企業型DC加入者もワンストップ特例制度を活用してふるさと納税の手続きを簡略化することが可能です。

住宅ローン控除と併用すると限度額がさらに変動する場合がある

住宅ローン控除と企業型DC、ふるさと納税を併用する場合、控除限度額の計算がより複雑になるため注意が必要です。
住宅ローン控除は、まず所得税から直接税額が控除され、引ききれない分は住民税からも一部控除されます。
企業型DCの掛金控除によって課税所得が減ると、納めるべき所得税額も減少します。

その結果、住宅ローン控除で引ききれる所得税額が少なくなり、住民税からの控除額に影響が出たり、ふるさと納税の限度額が想定より低くなったりする可能性があります。
これらの制度を併用する際は、必ず源泉徴収票の情報を基に詳細シミュレーターで計算することをおすすめします。

正確なシミュレーションには源泉徴収票の準備が必要

ふるさと納税の控除限度額を最も正確に把握するためには、源泉徴収票に記載された情報が不可欠です。
詳細シミュレーションでは、「支払金額(年収)」「給与所得控除後の金額」「所得控除の額の合計額」「源泉徴収税額」といった項目を入力する必要があります。
特に、固定費の金額や生命保険料控除、地震保険料控除などの各種所得控除額が正確でないと、シミュレーション結果に大きな誤差が生じる可能性があります。

その年の年収や控除額が確定する年末調整後に発行される源泉徴収票を手元に用意し、その数値をそのまま入力することが、最も確実な方法です。

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企業型DCとふるさと納税の併用に関するよくある質問

企業型DCとふるさと納税を併用するにあたり、多くの方が抱く疑問について解説します。
併用することで損をしないか、会社の掛金のみの場合の影響、iDeCoとの違いなど、具体的な質問にQ&A形式で回答します。
これらの情報を参考に、制度への理解を深め、安心して両制度を活用してください。

Q. 企業型DCとふるさと納税を併用すると、結果的に損をしますか?

いいえ、ご自身の正しい控除限度額内で寄付を行えば、損をすることはありません。
企業型DCの掛金控除も、ふるさと納税の寄付金控除も、それぞれ税負担を軽減する効果があります。
両制度を併用することで節税メリットは大きくなります。

ただし、企業型DCによって下がった限度額を超えて寄付をすると、超過分は純粋な自己負担となるため、結果的に損をしてしまいます。
したがって、事前の正確な限度額計算が非常に重要です。

Q. 会社の掛金のみで、自分で掛金を出していない場合も限度額は下がりますか?

いいえ、会社の掛金のみでご自身が掛金を拠出していない場合は、ふるさと納税の控除限度額に影響はありません。
限度額が変動するのは、マッチング拠出や選択制DCを利用し、ご自身の給与から掛金を拠出することで所得控除が適用され、課税所得が減少する場合のみです。
会社の掛金は従業員の課税所得の計算に含まれないため、限度額計算への影響を考慮する必要はありません。

Q. iDeCo(イデコ)と併用する場合も計算方法は同じですか?

はい、iDeCoの掛金も企業型DCのマッチング拠出分と考え方は同じです。
iDeCoの掛金は全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象となるため、ふるさと納税の限度額を押し下げる要因になります。
シミュレーターで計算する際は、企業型DCのマッチング拠出額とiDeCoの年間掛金額を合計し、その金額を「小規模企業共済等掛金控除」の欄に入力してください。

これにより、両方の掛金を反映した正確な限度額が算出できます。

まとめ

企業型DCとふるさと納税の併用は、税制メリットを享受できる有効な手段ですが、本人が掛金を拠出する場合にはふるさと納税の控除限度額が下がる点に注意が必要です。
限度額を正確に把握するためには、まずご自身の企業型DCが「マッチング拠出」か「選択制DC」かを確認することが重要です。

その上で、ふるさと納税サイトの詳細シミュレーターを使い、マッチング拠出なら「小規模企業共済等掛金控除」の欄に、選択制DCなら年収から掛金を引いた額を「給与収入」の欄に入力します。
源泉徴収票を基に正しく計算し、両制度のメリットを最大限に活用してください。

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よくあるご質問

確定申告が必要になる?「ワンストップ特例」は使える?

他に理由がなければ「ワンストップ特例」が使えます。企業型DCの掛金控除は会社の年末調整で完結するため、ふるさと納税のためにわざわざ確定申告をする必要はありません。寄付先が5自治体以内なら、これまで通り特例を利用可能です。

結局、限度額はどのくらい下がるものなの?

年収や掛金によりますが、「拠出した掛金の約2割程度」限度額が下がると見積もっておくのが安全です。例えば年間12万円(月1万)拠出しているなら、ふるさと納税の枠が2,000円〜3,000円ほど減るイメージでシミュレーションしてみましょう。

「マッチング拠出」をしている場合、シミュレーターのどこに入力する?

楽天やさとふる等の詳細シミュレーターにある「小規模企業共済等掛金控除」の欄に、1年間の拠出総額を入力してください。ここにiDeCoの掛金も合算して入れることで、正確な限度額がはじき出されます。

「選択制DC」の場合のシミュレーション方法は?

選択制DCは「給与そのものが減った」とみなされるため、「年収(給与収入)」の欄に、掛金を差し引いた後の金額を入力します。他の控除欄に入れるのではなく、入り口の年収額を調整するのが正しいやり方です。

会社が全額払ってくれている場合は、計算し直さなくていい?

はい、不要です。 会社だけが掛金を出していて、あなたの給与から1円も拠出していないなら、ふるさと納税の限度額には一切影響しません。一般的な年収別限度額表をそのまま参考にしても大丈夫です。

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このコラムの著者 : 宍戸沙綾

株式会社SMC総研:株式会社日本企業型確定拠出年金センター 企業型DC導入支援グループ
AFP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)/DCプランナー2級 
前職で税理士法人グループの保険代理店に所属し、税務の観点から企業にとっての最適な金融商品の提案を実施。その経験を活かし、現在は企業型確定拠出年金の導入を多数支援。提携先の税理士事務所や大手保険会社との共催セミナーの主催や社内勉強会を実施。経営者の想いに寄り添い、「経営者と従業員の資産最大化」をサポートしている。

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