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企業型確定拠出年金は65歳まで可能?60歳以降の加入・拠出条件を解説

投稿日:2026年05月19日

更新日:2026年05月19日

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この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

企業型確定拠出年金(企業型DC・401k)は、法改正により60歳以降も加入しやすくなりましたが、65歳まで掛金を拠出し続けるには一定の条件を満たす必要があります。
働き方や勤務先の規約によって取り扱いが異なるため、自身の状況を正しく理解することが重要です。
この記事では、60歳以降の企業型DCの加入資格や拠出条件、退職後の手続きについて詳しく解説します。

2022年の法改正で企業型DCの加入可能年齢は原則70歳未満に引き上げ

2022年5月の法改正により、企業型確定拠出年金の加入可能年齢が引き上げられました。
これまで原則65歳未満とされていた加入者資格の上限が、70歳未満まで拡大されています。
この改正は、高年齢期における就労の多様化に対応し、より長く資産形成を続けられるようにすることを目的としています。

ただし、自動的にすべての人が70歳まで加入できるわけではなく、勤務先の規約や厚生年金の加入状況といった条件を満たす必要があります。

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65歳以降も企業型DCで掛金を拠出し続けるための2つの条件

法改正により、企業型DCの拠出限度額が引き上げられますが、加入可能年齢は会社の規約によって定められています。そのため、個人の状況や勤務先の対応によっては、制度の対象とならないケースがあるため、自身の条件を正確に把握しておくことが不可欠です。以下で、その具体的な条件について解説します。

条件1:勤務先の規約で加入者資格が70歳未満に設定されている

最も重要なのが、勤務先の企業型DCの規約です。
国の制度で加入年齢の上限が70歳未満に引き上げられても、会社がその規約を改定していなければ適用されません。
例えば、会社の規約で加入者資格が「65歳まで」と定められている場合、65歳に到達すると加入資格を失い、掛金の拠出はできなくなります。

多くの企業では法改正に対応して規約を見直していますが、定年や再雇用に関する独自の規定を設けている場合もあるため、まずは自社の総務や人事部門に問い合わせ、最新の規約内容を確認することが不可欠です。

条件2:会社の厚生年金に加入し続けている(第2号被保険者である)

企業型DCの加入資格は、厚生年金の被保険者資格と連動しています。
そのため、65歳以降も掛金を拠出するには、勤務先で厚生年金に加入し続けていることが必須条件となります。

定年後の再雇用などで勤務時間が短縮され、厚生年金の加入要件を満たさなくなった場合は、被保険者資格を喪失します。
その結果、企業型DCの加入者資格も失い、掛金の拠出はできなくなるため、自身の雇用契約や働き方の変更には注意が必要です。

【働き方別】60歳以降の企業型DCの取り扱い

60歳以降の働き方は、定年後の再雇用や転職、あるいは完全に退職するなど多岐にわたります。
こうした働き方の違いによって、企業型DCの取り扱いや必要な手続きは大きく異なります。
自身のキャリアプランに応じて、資産をどのように管理していくかを事前に理解しておくことが大切です。

ここでは、主なケース別に60歳以降の企業型DCの扱いについて解説します。

定年後、同じ会社で再雇用された場合の加入資格

定年を迎え、嘱託社員や契約社員として同じ会社で再雇用される場合、基本的に企業型DCの加入者資格を継続することが可能です。
ただし、そのためには前述した2つの条件、つまり「勤務先の規約で70歳未満まで加入が認められていること」と「再雇用後も厚生年金に加入し続けること」を満たす必要があります。

もし再雇用後の労働条件の変更により厚生年金の加入対象から外れたり、規約で再雇用者は加入対象外と定められていたりする場合は、定年のタイミングで加入者資格を喪失し、掛金の拠出は終了します。

定年退職または転職した場合の企業型DCの手続き

60歳以降に定年退職したり、別の会社に転職したりした場合は、それまで積み立てた年金資産を他の制度に移す「移換」の手続きが必要です。
この手続きは、原則として元の会社の加入者資格を喪失してから6ヶ月以内に行わなければなりません。

主な移換先としては、転職先の企業型DCやiDeCo(個人型確定拠出年金)が挙げられます。
手続きを怠ると、資産は国民年金基金連合会に自動的に移換され、手数料が発生するうえに新たな運用ができなくなるため、速やかに手続きを進めることが重要です。

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掛金の拠出が終了した場合の2つの選択肢

定年退職や勤務先の規約により、企業型DCの掛金を拠出できなくなった場合、積み立てた資産の取り扱いについて2つの選択肢があります。
一つは掛金の拠出を停止し、これまでの資産の運用のみを続ける方法、もう一つはiDeCoなどの他の制度に資産を移し、掛金の拠出を再開する方法です。

自身のライフプランや資産状況に合わせて、どちらが適しているかを検討する必要があります。

運用だけを続ける「運用指図者」になる

掛金の拠出ができなくなった後も、それまで積み立てた資産の運用は継続できます。
この状態を「運用指図者」と呼びます。
運用指図者は新たな掛金を拠出することはできませんが、保有している金融商品の配分を変更する「スイッチング」は引き続き可能です。

ただし、注意点として、在職中は会社が負担していた口座管理手数料などが自己負担に切り替わる場合があります。
受給開始年齢に達するまで運用を続け、資産の成長を目指す選択肢ですが、手数料負担については事前に確認しておくことが求められます。

iDeCo(個人型確定拠出年金)に移換して拠出を再開する

企業型DCの加入資格を失った後も掛金の拠出を続けたい場合は、iDeCoに資産を移換する方法があります。
iDeCoは、国民年金の被保険者であれば原則として65歳未満まで掛金を拠出できます。
これにより、企業型DCで拠出できなくなった後も、税制優遇を受けながら老後資産の積立を継続することが可能です。

iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象となるため、所得税や住民税の負担を軽減する効果も期待できます。
移換には金融機関での手続きが必要となります。

企業型DCはいつから受け取れる?受給開始の基本ルール

企業型確定拠出年金で積み立てた資産は、老齢給付金として受け取ります。
この老齢給付金をいつから受け取れるかについては、基本的なルールが定められています。
原則となる受給開始可能年齢や、法改正によって拡大された選択の幅、また個人の加入期間によって例外が生じるケースなど、受け取りに関するルールを正しく理解し、自身のライフプランと照らし合わせることが大切です。

原則60歳から75歳の間で受給開始時期を選択可能

企業型確定拠出年金の老齢給付金は、原則として加入者が60歳に到達した時点から受け取りを開始できます。
さらに、2022年の法改正によって受給開始時期の上限が70歳から75歳に引き上げられました。
これにより、60歳から75歳までの15年間の中から、自身のライフプランに合ったタイミングを柔軟に選んで受給を開始することが可能になっています。

公的年金の受給開始時期と合わせたり、退職後の生活設計に応じて決めたりするなど、より自由な出口戦略を立てやすくなりました。

注意:加入期間が10年未満だと受給開始年齢が繰り下げになるケースも

原則として60歳から受給できますが、そのためには確定拠出年金の「通算加入者等期間」が10年以上必要です。
この期間にはiDeCoや他の企業のDC加入期間も含まれます。
期間が10年に満たない場合、受給を開始できる年齢が段階的に繰り下げられ、最短でも61歳、最長で65歳となります。

例えば、55歳で初めて確定拠出年金に加入した場合、60歳時点での加入期間は5年となり、受給開始可能年齢は63歳に繰り下げられます。
自身の加入期間を事前に確認しておくことが重要です。

60歳以降も拠出を続ける場合の受給開始タイミング

60歳以降も企業型DCの加入者として掛金を拠出し続けている場合、受給を開始できるタイミングは勤務先の規約によって異なります。
一般的には、退職などにより加入者資格を喪失した後に、受給手続きを開始します。
つまり、掛金を拠出しながら同時に老齢給付金を受け取ることは基本的にできません。

ただし、規約によっては、70歳未満の加入者が65歳以降に受給を開始することを認めている場合もあります。
詳細は勤務先の規約で確認する必要があるため、人事・総務担当部署への問い合わせが不可欠です。

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企業型確定拠出年金の65歳までの加入に関するよくある質問

ここでは、企業型確定拠出年金の65歳までの加入に関して、特に多く寄せられる質問とその回答をまとめました。
勤務先の規約の確認方法や、拠出を続けることのメリット、また拠出終了後の手数料など、具体的な疑問点を解消するための参考にしてください。

勤務先の企業型DCの規約はどこで確認できますか?

勤務先の人事・総務部など、企業年金制度の担当部署に問い合わせるのが最も確実です。
また、入社時や制度導入時に配布された規約に関する書類や、自身が利用している運営管理機関(金融機関)の加入者専用ウェブサイトでも閲覧できる場合があります。

65歳まで掛金を拠出する最大のメリットは何ですか?

最大のメリットは、掛金が全額所得控除の対象となり、所得税・住民税が軽減される税制優遇を受けながら老後資産を上乗せできる点です。
また、運用期間中に得た利益も非課税となるため、複利効果を活かした効率的な資産形成を長く続けられます。

運用指図者になると手数料は自己負担になりますか?

はい、自己負担になるケースが多いです。
在職中は会社が負担してくれていた口座管理手数料などが、加入者資格を喪失して運用指図者になると、個人負担に切り替わることが一般的です。
手数料の金額は運営管理機関によって異なるため、事前に確認が必要です。

まとめ

2022年の法改正により、企業型確定拠出年金に加入できる年齢は原則70歳未満まで引き上げられました。
しかし、65歳以降も掛金の拠出を継続するためには、「勤務先の規約が70歳未満までの加入を認めていること」と、「厚生年金に加入し続けていること」の2つの条件を満たす必要があります。
定年退職や転職などで加入資格を失った場合は、運用のみを続ける「運用指図者」になるか、iDeCoへ資産を移換して拠出を再開するかを選択します。

年金の受給開始は原則60歳から75歳の間で選択可能ですが、通算加入期間が10年未満の場合は開始年齢が繰り下げられる点に注意が必要です。
最終的な取り扱いは個人の状況と勤務先の規約に依存するため、まずは自社の担当部署へ確認することが重要です。

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よくあるご質問

法改正で70歳まで入れると聞きましたが、誰でも継続できますか?

いいえ。「勤務先の規約が対応していること」と「厚生年金に加入し続けていること」の2つの条件を満たす必要があります。

60歳以降、再雇用で時短勤務になった場合も掛金は出せますか?

勤務時間が減り、厚生年金の加入対象(第2号被保険者)から外れてしまうと、企業型DCの加入資格も失い拠出はできなくなります。

65歳まで掛金を出し続ける最大のメリットは何ですか?

長く働くほど、掛金の全額所得控除による節税メリットをより長く受けられ、非課税での運用期間も延びる点です。

退職して拠出が終わった後、そのまま資産を置いておいても大丈夫ですか?

「運用指図者」として運用を続けられますが、会社負担だった口座管理手数料が自己負担に切り替わるケースが多いので注意が必要です。

iDeCoに資産を移せば、65歳以降も掛金を積み立てられますか?

DeCoの掛金拠出は原則65歳未満までです。65歳以降も積み立てたい場合は、厚生年金に加入して企業型DCを継続する形となります。

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このコラムの著者 : 宍戸沙綾

株式会社SMC総研:株式会社日本企業型確定拠出年金センター 企業型DC導入支援グループ
AFP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)/DCプランナー2級 
前職で税理士法人グループの保険代理店に所属し、税務の観点から企業にとっての最適な金融商品の提案を実施。その経験を活かし、現在は企業型確定拠出年金の導入を多数支援。提携先の税理士事務所や大手保険会社との共催セミナーの主催や社内勉強会を実施。経営者の想いに寄り添い、「経営者と従業員の資産最大化」をサポートしている。

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