投稿日:2026年05月08日
更新日:2026年05月08日
この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)を利用する企業において、2026年度から重要なルール変更が実施される予定です。 これまで、賃金の一部として計算されることがあった企業型確定拠出年金(企業型DC)の掛金が、今後は昇給要件の算定基準から除外されることになります。 この見直しは助成金申請を予定している企業に大きな影響を与えるため、賃金制度の再構築など事前の準備が必要です。
目次
キャリアアップ助成金(正社員化コース)を利用する企業において、2026年度から重要なルール変更が実施される予定です。 これまで、賃金の一部として計算されることがあった企業型確定拠出年金(企業型DC)の掛金が、今後は昇給要件の算定基準から除外されることになります。 この見直しは助成金申請を予定している企業に大きな影響を与えるため、賃金制度の再構築など事前の準備が必要です。
2026年10月1日以降の正社員転換においては、キャリアアップ助成金(正社員化コース)で求められる3%昇給の算定方法が変わります。 選択制の企業型DCにおける事業主掛金(生涯設計手当等)は、昇給額のベースとなる賃金に含まれなくなります。 そのため今後は、労働基準法で賃金と認められる基本給や諸手当のみで、3%以上の賃金アップを達成しなければなりません。
このコースは、有期雇用労働者などを正規雇用(多様な正社員を含む)に転換、または直接雇用した企業を支援する制度です。
雇用形態に関わらず公正な待遇を実現し、働き手のモチベーションやスキル向上を促進することを目的としています。 また、企業にとっては優秀な人材の定着や生産性の向上に繋がり、無期雇用への転換を後押しする重要な施策となっています。
企業型DCの掛金を昇給計算に含めないという新基準は、2026年(令和8年)10月1日以降に実施される正社員転換から適用されます。 逆に言えば、2026年9月30日までに正社員転換を行った場合は、これまでの旧ルールで申請することが可能です。 申請予定の企業は、この期日を意識しながら賃金体系の見直しや転換のスケジュールを組む必要があります。
選択制の企業型DCの掛金が除外される最大の理由は、それが労働基準法第11条の「賃金」に該当しないと解釈されたためです。
選択制DCは、従業員自身が給与の一部を掛金にするか、そのまま給与として受け取るかを選べる制度です。
したがって、会社側が一方的に支払う労働の対価とは言えず、企業側の純粋な負担による賃上げとは性質が異なるとみなされたのです。
2026年10月からの新ルール移行を前に、自社の賃金制度がキャリアアップ助成金の支給条件をクリアしているか、改めて確認することが必須です。
これまで選択制の企業型DC掛金を含めて昇給要件を満たしていた企業は、新基準では要件を満たせなくなるおそれがあります。
スムーズに助成金を申請できるよう、現行ルールと新ルールの差異を正しく把握し、早めに要件の確認を行いましょう。
2026年9月30日までの転換を対象とした現行ルールでは、選択制企業型DCの掛金が昇給要件として認められるかどうかは、個別の状況によって判断が異なっていました。
よくあるケースとして、基本給とは別に「生涯設計手当」などを支給し、それを原資として従業員が自由に掛金を拠出する仕組みがあります。
手当の全額が賃金総額に含まれるかは規定や性質によりますが、賃金総額に含めたうえで転換前後の賃金比較を行い、3%以上の昇給要件をクリアできるかは具体的なケースごとの確認が必要でした。
繰り返しになりますが、令和8年(2026年)10月1日を境に昇給計算のルールが変わる点には十分に注意してください。
この日以降に正社員へ転換したケースでは例外なく新ルールが適用されるため、選択制企業型DCの掛金等を含まない賃金で3%以上の増額を証明する必要があります。
申請スケジュールを立てる際は適用開始日をしっかり把握し、誤った計算による不支給を回避しましょう。
新基準を満たしているか確認するには、まず賃金台帳を用意し、正社員転換の前後6ヶ月分の給与を比較します。
その際、選択制DCの原資である生涯設計手当などの掛金分は、総支給額から差し引いて計算します。
その上で、基本給や純粋な手当のみで3%以上の賃金アップができているかをチェックしてください。
厚生労働省が公開している「キャリアアップ助成金賃金上昇要件確認ツール」を使えば、より正確に計算できます。
キャリアアップ助成金の正社員化コースにおいて、正社員と認められるためには賞与または退職金制度が設けられていることが条件の一つです。
企業型DCは、就業規則や退職金規程に制度として明記されていれば、この「退職金制度」として認められます。
ただし、全正社員が対象となっているかなど、一定の条件を満たすような事前の規定整備が必要です。
退職金制度として認められるためには、いくつかの条件をクリアしなければなりません。
第一に、就業規則や独立した退職金規程にその制度が明確に記されている必要があります。
また、原則として会社側が掛金を負担する仕組みであり、正社員全員が加入対象者でなければなりません。
こうした条件を整え、実態としても退職金制度として運用されていることを客観的に示す必要があります。
就業規則に退職金制度として記載する場合は、具体的な運用ルールの明記が重要です。
「加入対象者(例:正社員)」「会社側が負担する掛金額や計算方法」「加入資格の取得・喪失条件」「中途退職時の扱い」などを定めます。
例えば「正社員として採用された者を対象とし、会社は毎月〇円の掛金を拠出する」といった条文を設けることで、制度の内容が明確になります。
選択制DCを退職金制度とする場合は特有の注意点があります。
従業員自身が拠出額を選べるため、「拠出額ゼロ」を選択した従業員に対しても退職金制度が適用されていると言えるか、という問題が生じます。
これをクリアするために、規程には従業員が拠出しない選択肢があることを明記しつつ、制度自体は全正社員に適用されていることを示す必要があります。
判断に迷う場合は、事前に管轄の労働局へ相談するのが望ましいでしょう
キャリアアップ助成金には、有期雇用労働者等に向けて賞与や退職金制度を新設・支給した場合に助成される「賞与・退職金制度導入コース」も用意されています。
企業型DCをこの退職金制度として新たに導入することで、コースの活用が可能です。 正社員化コースとの併用もできますが、その場合は助成額の調整(併給調整)が行われる点に注意してください。
手続きとしては、計画書の提出、制度の導入、6ヶ月間の運用と実際の支給というステップを踏む必要があります。
このコースの助成対象となるには、制度が特定の基準を満たしていなければなりません。
退職金制度の場合、事業所のすべての有期雇用労働者等を対象とした新たな制度であることが求められます。
また、事業主が負担する掛金が「月額5,000円以上」といった一定額以上であることも条件となります。
さらに、導入後6ヶ月以上の運用期間と、実際の退職金支給実績(中退共などの場合は6ヶ月分の掛金納付実績)が必要です。
退職金制度を導入する場合の具体的な要件は以下の通りです。
事業主が負担する掛金は、対象労働者1人あたり「月額3,000円以上を6か月分」、または「6か月分相当額として18,000円以上」の積立が必要です。
それに加えて、制度導入後6ヶ月以上の継続運用と掛金納付実績が求められます。
このコースを利用する上で最も重要なのが、制度の適用範囲です。
賞与・退職金制度は、事業所で働くすべての有期雇用労働者等を対象としなければ助成対象となりません。
特定の職種や部署に限定した制度は要件を満たさないため、制度設計の段階から雇用形態を問わず公平に適用される仕組みを作ることが必要不可欠です。
2026年10月のルール改正に向けて、企業は早めの対策を進める必要があります。
場合によっては企業型DCの掛金を含めた賃金体系全体の見直しが迫られます。
具体的には、基本給や手当の増額を検討し、新しい基準でも3%の昇給要件をクリアできるかシミュレーションを行う必要があります。
それに伴い、就業規則や賃金規程の改定作業も発生するため、計画的な進行が重要です。
新基準に対応する確実な方法は、基本給や職務手当などの各種手当を増額することです。
まずは企業型DCの掛金分を差し引いた現行の賃金総額を計算し、そこから3%以上の賃上げに必要な金額を割り出します。
その不足分をどの手当でカバーするか、あるいは基本給を上げるのかを検討し、賃金改定案を作成しましょう。
このような再計算を行うことで、助成金要件を確実に満たす賃金制度を構築できます。
賃金を引き上げることになった場合は、就業規則や賃金規程の改定が法的に義務付けられます。
賃金の決定方法、計算方法、支払方法などの変更事項を反映させた新しい規程を作成しなければなりません。
また、改定後は労働基準監督署への届け出と、従業員への周知手続きも必要です。
変更内容を従業員へ丁寧に説明し、理解を得ることがスムーズな制度移行のポイントとなります。
助成金のルール変更は複雑で、賃金制度や就業規則の改定には専門的な法的知識が必要です。
自社だけで対応するのが難しい場合や、最適な賃金設計のアドバイスを受けたい場合は、社会保険労務士などの専門家に相談するのも一つの有効な手段です。
専門家であれば最新の法令に基づいて、助成金申請から規程改定、従業員説明までをトータルでサポートしてくれるため、確実かつスムーズな対応が期待できます。
キャリアアップ助成金の正社員化コースでは、2026年10月1日以降の正社員転換から、選択制の企業型DC掛金が3%昇給要件の計算対象から除外されます。
これは、該当する掛金が労働基準法の賃金として認められないと整理されたためです。
今後も助成金を活用する企業は、基本給やその他の手当を引き上げるなど、賃金体系の再設計が求められます。
これに伴い、就業規則・賃金規程の改定や従業員への説明手続きも必要となるため、計画的に準備を進めることが不可欠です。
SMC税理士法人では、金融機関OBや税理士をはじめ経験豊富なプロが御社の円滑な 確定拠出年金導入 をサポートいたします。お電話やお問い合わせフォームから相談可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
いいえ、返還の必要はありません 。 今回の変更は、2026年10月1日以降に行われる正社員転換から適用されるルールです 。 それ以前に旧ルールに沿って適正に審査・受給した助成金について、遡及して返還が求められることはありません 。
はい、外れます 。 中退共の掛金は福利厚生費として扱われ、労働基準法上の賃金には当たりません 。 そのため、選択制の企業型DC掛金と同じく、3%昇給要件を計算する際の賃金総額には含められません 。
令和8年(2026年)9月30日までの転換が旧ルールの対象です 。 この日までに有期雇用労働者等から正社員への転換を行った場合は、現行の旧ルールで賃金増額要件が審査されます 。 10月1日以降の転換になると、新しいルールが適用されます 。