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M&A・事業譲渡で企業型DCはどうなる?|資産承継の基本的な考え方と実務上の注意点

投稿日:2026年07月10日

更新日:2026年07月10日

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この記事を読むのに必要な時間は約 6 分です。

M&Aや事業譲渡を検討する経営者の方から、「従業員の企業型確定拠出年金(企業型DC)は買収後どうなるのか」というご質問をいただくことが増えています。結論として、M&Aのスキーム(株式譲渡か、事業譲渡・会社分割か)によって企業型DCの扱いは大きく異なります。本記事では、スキーム別の基本的な考え方と、デューデリジェンスで確認すべきポイントを整理します。ただし、具体的な移換手続きの要否や期限は個別のスキームに強く依存するため、実際の案件では専門家への確認が不可欠である点をあらかじめお伝えしておきます。

結論:株式譲渡なら規約は存続、事業譲渡・会社分割では資産移換の検討が必要になりうる

M&Aで会社そのものが存続する株式譲渡の場合、会社自体が実施主体である企業型DCの規約も基本的にはそのまま存続すると考えられます。一方、事業譲渡や会社分割のように従業員が別法人へ転籍するスキームでは、転籍する従業員の年金資産をどのように扱うか(移換の要否や手続き)を個別に検討する必要があります。確定拠出年金制度には、離職・転職時などに積み立てた資産を他の年金制度へ持ち運べる「ポータビリティ」の考え方がありますが、具体的な手続きの詳細は個別のスキームや制度設計によって異なるため、専門家への確認が必須です。

このセクションのポイント

  • M&Aのスキームによって企業型DCの扱いは大きく変わります。「会社が存続するかどうか」「従業員の雇用契約がどう扱われるか」が判断の分かれ目になります。
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企業型DCの資産承継を理解する前提知識(ポータビリティ)

確定拠出年金制度には、加入者等が離転職した場合や、勤務先の企業年金制度が変わった場合に、積み立てた資産を他の年金制度へ持ち運べる「ポータビリティ」と呼ばれる仕組みがあります。M&Aによって従業員の勤務先や適用される企業年金制度が変わる場面でも、この考え方が関わってくる可能性があります。

ただし、ポータビリティの具体的な移換ルール(どのようなケースでどの制度へ移換できるか、手続きの期限など)の詳細については、本記事執筆時点で厚生労働省の関連ページの内容を十分に確認できていません。詳細は厚生労働省のポータビリティ関連ページ、および運営管理機関にご確認いただくことをお勧めします。

このセクションのポイント

  • 確定拠出年金には資産を持ち運べる「ポータビリティ」の考え方がありますが、具体的な移換ルールは制度や状況によって異なるため、公式情報・専門家への確認が欠かせません。

スキーム別に見る企業型DCの扱い

M&Aの代表的なスキームごとに、企業型DCとの関わり方の一般的な考え方を整理します。以下はあくまで一般的な傾向であり、個別の契約内容や制度設計によって結論が異なる点にご留意ください。

スキーム 会社の存続 従業員の雇用契約 企業型DCへの一般的な影響
株式譲渡 会社自体は存続(株主が変わるのみ) 雇用契約はそのまま継続 規約もそのまま存続するのが基本的な考え方
事業譲渡 譲渡対象事業の主体が変わる 個別の同意を得て転籍することが一般的 転籍先の企業型DCへの加入・資産移換の要否を個別に検討する必要がある
会社分割 分割により新設・承継会社が発生 労働契約承継法等に基づく手続きが関わる 承継会社側の制度設計に応じて資産移換等の対応を検討する必要がある

株式譲渡は会社そのものの実体に変化がないため、企業型DCの規約や資産管理の枠組みも維持されるのが基本的なイメージです。一方、事業譲渡や会社分割は、従業員がどの法人に所属することになるかという点が変わりうるため、企業型DCの加入資格や資産の帰属についても個別の検討が必要になります。

いずれのスキームであっても、具体的な手続きの要否や期限については法令上の明確な裏付けが本記事の調査範囲では確認できていないため、個別のスキームに応じて専門家にご確認いただく必要があります。

このセクションのポイント

  • 「会社の実体が変わらない株式譲渡」と「従業員の所属先が変わりうる事業譲渡・会社分割」とでは、企業型DCへの影響の考え方が異なります。表はあくまで一般的な傾向の整理です。
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M&Aのデューデリジェンスで確認すべきポイント

M&Aを検討する際、買い手・売り手いずれの立場でも、企業型DCに関して次のような点をデューデリジェンス(DD)の段階で確認しておくことが望ましいと考えられます。

  • 企業型年金規約の内容(加入対象者の範囲、掛金設定、拠出方法など)
  • 過去の掛金拠出状況に未払い・遅延がないか
  • 法令遵守状況(投資教育の実施状況、加入者への説明義務の履行状況など)
  • 運営管理機関・資産管理機関との契約内容
  • 対象会社の従業員数・加入者数と、制度運営に伴うコスト構造

これらは税務・労務デューデリジェンスの一部として確認されることが多い項目ですが、企業型DC特有の論点として見落とされがちな部分でもあります。特に中小企業のM&Aでは、企業型DCの制度運営体制が十分に整っていないケースもあるため、早い段階での確認が重要です。

このセクションのポイント

  • デューデリジェンスでは、規約内容・拠出状況・法令遵守状況の3点を軸に企業型DCを確認することが、後のトラブル防止につながります。

SMC税理士法人からのアドバイス

SMC税理士法人は中小企業の税務・M&A支援と企業型DC導入支援の双方に携わる立場から、M&Aにおける企業型DCの取扱いは「見落とされやすいが影響の大きい論点」であると感じています。特に事業譲渡や会社分割では、従業員の転籍に伴う年金資産の扱いが曖昧なまま契約が進んでしまうケースも見受けられます。

ただし、具体的な移換手続きの要否や、労働契約承継に関する法的な論点は、税理士の専門範囲を超える部分も多く含まれます。M&Aを検討される際は、税務・会計面については税理士に、労務・法務面については社会保険労務士・弁護士に、それぞれ早い段階からご相談いただくことで、企業型DCを含めた制度全体をスムーズに承継することができます。私どもも税務・制度設計の観点から、M&Aチームの一員としてサポートいたします。

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まとめ

  1. M&Aのスキーム(株式譲渡か事業譲渡・会社分割か)によって、企業型DCの扱いは大きく異なる。
  2. 株式譲渡では会社自体が存続するため、企業型DCの規約も基本的にそのまま存続すると考えられる。
  3. 事業譲渡・会社分割では従業員の転籍に伴い、資産移換の要否など個別の検討が必要になりうる。
  4. 確定拠出年金にはポータビリティの仕組みがあるが、詳細な移換ルールは公式情報・専門家に確認する必要がある。
  5. デューデリジェンスでは、企業型DCの規約内容・拠出状況・法令遵守状況を確認することが望ましい。
  6. 具体的な手続きの要否・期限は個別スキームに応じて専門家(税理士・社会保険労務士・弁護士)に確認すべきである。

出典・参考法令

SMC税理士法人では、金融機関OBや税理士をはじめ経験豊富なプロが御社の円滑な 確定拠出年金導入 をサポートいたします。お電話やお問い合わせフォームから相談可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。

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よくあるご質問

M&Aで会社を売却すると企業型DCはなくなりますか?

株式譲渡の場合、会社自体が存続するため企業型DCの規約も基本的にそのまま存続すると考えられます。事業譲渡や会社分割の場合は個別の検討が必要です。詳細は専門家にご確認ください。

事業譲渡で転籍する従業員の企業型DC資産はどうなりますか?

転籍先の制度への加入や資産移換の要否について個別に検討する必要があります。確定拠出年金にはポータビリティの考え方がありますが、具体的な手続きは状況によって異なります。

M&Aのデューデリジェンスで企業型DCの何を確認すべきですか?

企業年金規約の内容、掛金拠出 状況に未払いがないか、法令遵守状況(投資教育の実施等)、運営管理機関との契約内容などを確認することが望ましいと考えられます。

会社分割の場合、企業型DCの手続きは自動的に行われますか?

自動的に行われるとは限りません。労働契約承継の手続きと合わせて、承継会社側の制度設計に応じた対応が必要になる場合があります。個別のスキームに応じて専門家にご確認ください。

M&A後に企業型DCの規約内容を変更することはできますか?

一般的に企業年金規約の変更は所定の手続きを経て行うことが想定されますが、具体的な変更手続きの詳細は運営管理機関や専門家にご確認ください。

M&Aを検討する際、企業型DCについて誰に相談すればよいですか?

税務・会計面は税理士、労務・法務面は社会保険労務士や弁護士、制度運営の実務面は運営管理機関に、それぞれ早い段階からご相談いただくことをお勧めします。

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このコラムの著者 : 宍戸沙綾

株式会社SMC総研:株式会社日本企業型確定拠出年金センター 企業型DC導入支援グループ
AFP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)/DCプランナー2級 
前職で税理士法人グループの保険代理店に所属し、税務の観点から企業にとっての最適な金融商品の提案を実施。その経験を活かし、現在は企業型確定拠出年金の導入を多数支援。提携先の税理士事務所や大手保険会社との共催セミナーの主催や社内勉強会を実施。経営者の想いに寄り添い、「経営者と従業員の資産最大化」をサポートしている。

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