expand_less

iDeCo+(イデコプラス)と企業型DCの違いを比較|中小企業はどちらを選ぶべきか

投稿日:2026年07月10日

更新日:2026年07月10日

確定拠出年金はこちら

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

「企業型DCを導入したいが、規約作成や運営コストのハードルが高そうで踏み切れない」という中小企業の経営者様は少なくありません。実は、企業年金を実施していない従業員300人以下の事業者には、iDeCo(個人型確定拠出年金)に事業主が掛金を上乗せできる「中小事業主掛金納付制度(iDeCo+・イデコプラス)」という選択肢があります。本記事では、iDeCo+と企業型DCの制度上の違いを整理し、自社に合う制度を選ぶための判断軸をご紹介します。

結論:企業年金なしの小規模企業はiDeCo+、制度設計の自由度を求めるなら企業型DC

企業年金(企業型DC・確定給付企業年金・厚生年金基金のいずれか)を実施していない従業員300人以下の事業者であれば、iDeCo+(中小事業主掛金納付制度)を使って、従業員個人のiDeCoに事業主掛金を上乗せする形で退職給付制度に近い仕組みを持つことができます。一方、制度設計の自由度(拠出額の設定方法、対象者の範囲設定など)を重視する場合や、従業員規模の制約を受けたくない場合は企業型DCが選択肢になります。どちらも事業主拠出分は損金算入でき、加入者掛金は所得控除の対象になるという税制メリットは共通しています。

このセクションのポイント

  • iDeCo+は「iDeCoの上乗せ」、企業型DCは「独立した企業年金制度」という位置づけの違いがあります。
役員のiDeCo(イデコ)加入は企業型DCとどっちがお得?メリット比較

iDeCo+(中小事業主掛金納付制度)とはどのような制度か

iDeCo+(イデコプラス・中小事業主掛金納付制度)は、企業年金を実施していない、従業員300人以下の事業主が、iDeCoに加入している従業員の掛金に上乗せして事業主掛金を拠出できる制度です。2020年10月1日施行の見直しにより、対象範囲が「従業員100人以下」から「従業員300人以下」に拡大され、より多くの中小企業が利用できるようになりました。

制度の概要は次のとおりです。

項目 内容
事業主要件 企業年金を実施していない、従業員300人以下の事業主
労使合意 事業主掛金の拠出開始時・金額変更時に労使合意(労働組合等の同意)が必要
拠出対象者 iDeCo加入者のうち、事業主掛金の拠出に同意した者(一定の資格を定めることも可)
拠出額 定額。事業主掛金と加入者掛金の合計で月額5,000円以上23,000円以下の範囲(1,000円単位)。資格ごとの階層化も可能
納付方法 事業主が事業主掛金と加入者掛金をとりまとめて納付
税制 事業主掛金は全額損金算入、加入者掛金は全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)

このセクションのポイント

  • iDeCo+は「従業員が個人で入っているiDeCoに会社がお金を足す」制度です。会社が新たに年金制度を作るわけではない点が企業型DCと大きく異なります。

企業型DCとの違いを比較表で整理

比較項目 iDeCo+ 企業型DC
制度の位置づけ 従業員個人のiDeCoへの事業主上乗せ拠出 事業主が実施する企業年金制度そのもの
対象規模 従業員300人以下(企業年金未実施が条件) 規模の制限なし
拠出額の設計 定額のみ、事業主掛金と加入者掛金の合計で月額5,000〜23,000円 定額・定率・定額+定率など柔軟に設計可能、拠出限度額は月額55,000円(他制度の掛金相当額を控除。経過措置あり)
対象者の範囲設定 加入同意者ベース、資格による階層化も可 職種・年齢等による対象者設定が可能(規約による)
運用商品の選定・提示 従業員が個人でiDeCoの運営管理機関・商品を選択 事業主が運営管理機関を選定し、運用商品ラインナップを用意
規約承認手続き 企業型年金規約のような事業主単独の規約承認は不要 労使合意の上、企業型年金規約を作成し地方厚生(支)局長の承認が必要
運営コストの考え方 一般的に事業主側の制度運営に関する固定費は企業型DCに比べて小さい傾向にあるとされる 一般的に運営管理機関への手数料等、事業主側の固定費が発生する
税制 事業主掛金:全額損金算入/加入者掛金:全額所得控除 事業主拠出:全額損金算入/マッチング拠出:全額所得控除

(注)運営コストについては、契約する運営管理機関やプラン内容によって金額が大きく異なるため、本記事では具体的な金額の比較は行っておりません。実際の費用は各運営管理機関に直接お問い合わせください。

このセクションのポイント

  • 最大の違いは「会社が年金制度を新設するか(企業型DC)」「個人の制度に会社が乗るか(iDeCo+)」という制度設計思想の違いです。
企業型DC 導入事例|従業員数名規模の中小企業が実現した節税・退職金設計

iDeCo+が向いている企業の特徴

  • 従業員数が少なく、企業型DCの規約作成・運営管理の事務負担を抑えたい
  • すでに従業員が個人でiDeCoに加入しているケースが多い、または今後iDeCo加入を促進したい
  • 退職給付制度をゼロから作るのではなく、まずは小さく福利厚生を強化したい
  • 企業年金(企業型DC・DB・厚生年金基金)をまだ何も実施していない

企業型DCが向いている企業の特徴

  • 従業員の年齢層・職種に応じて拠出額や対象者を柔軟に設計したい
  • iDeCo+の拠出額上限(合計月額23,000円)では退職給付制度として不十分と感じる
  • 将来的に従業員数が300人を超える見込みがある、またはすでに超えている
  • 運用商品のラインナップや投資教育を会社主導で整備し、福利厚生としてアピールしたい
企業型確定拠出年金の平均受取額はいくら?計算方法と賢い受け取り方

2026年4月施行、iDeCo+の届出簡素化

2026年4月1日施行の改正により、中小事業主掛金納付制度における届出が簡素化されました。従来は拠出開始時・変更時に厚生労働大臣と国民年金基金連合会(国基連)の両方への届出が必要でしたが、改正後は国基連のみを届出先とし、国基連が厚生労働大臣に書類の写しを送付する仕組みに変更されています。これにより、iDeCo+を導入する事業主の事務負担は従来より軽減されると考えられます。

このセクションのポイント

  • iDeCo+はもともと企業型DCより手続きが軽い制度でしたが、2026年4月の改正でさらに事務負担が軽くなりました。中小企業にとっての導入ハードルは一段と下がっています。

SMC税理士法人からのアドバイス

iDeCo+と企業型DCは、どちらが「優れている」という単純な優劣関係にあるわけではなく、自社の従業員規模・将来計画・福利厚生戦略によって最適解が異なります。特に次の点は導入前に整理しておくことをおすすめします。

  1. 自社が現在、企業年金(企業型DC・DB・厚生年金基金)を実施しているかどうか(実施している場合はiDeCo+の対象外)
  2. 従業員数が将来的に300人を超える見込みがあるかどうか
  3. 拠出額として月額23,000円程度の上乗せで福利厚生ニーズを満たせるか、それとも企業型DCのような柔軟な設計が必要か
  4. 労使合意を取るための社内体制が整っているか

制度選択を誤ると、後から企業型DCへの移行時に追加の事務負担が発生することもあります。当法人では、企業型DC・iDeCo+いずれについても制度設計の初期段階からご相談を承っておりますので、比較検討の段階でぜひお声がけください。

退職所得控除を最大活用する「2階建て戦略」とは|節税シミュレーション付き

まとめ

  1. iDeCo+は企業年金未実施・従業員300人以下の事業者が使える、iDeCoへの事業主上乗せ拠出制度
  2. 企業型DCは事業主が独自に実施する企業年金制度で、規模制限がなく制度設計の自由度が高い
  3. iDeCo+の拠出額は定額で、事業主掛金と加入者掛金の合計が月額5,000〜23,000円の範囲に限定される
  4. 企業型DCは拠出方法や対象者範囲を柔軟に設計できるが、規約承認など手続きの負担がある
  5. 2026年4月施行の改正でiDeCo+の届出は国基連への一本化により簡素化された
  6. どちらを選ぶかは、企業規模・将来計画・福利厚生戦略を踏まえて専門家と相談のうえ判断することが望ましい

出典・参考法令

SMC税理士法人では、金融機関OBや税理士をはじめ経験豊富なプロが御社の円滑な 確定拠出年金導入 をサポートいたします。お電話やお問い合わせフォームから相談可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。

確定拠出年金はこちら

よくあるご質問

iDeCo+と企業型DCは両方同時に導入できますか。

iDeCo+は企業年金(企業型DC・DB・厚生年金基金)を実施していない事業主が対象のため、企業型DCを実施している場合はiDeCo+の対象外となります。詳細は運営管理機関にご確認ください

iDeCo+の対象になる従業員数の上限はありますか。

企業年金を実施していない従業員300人以下の事業主が対象です。2020年10月の改正で100人以下から300人以下に拡大されました。

iDeCo+の掛金は会社の経費にできますか。

事業主掛金は全額損金算入が可能です。加入者(従業員)掛金についても全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象となります。

iDeCo+を導入するのに労働組合の同意は必要ですか。

事業主掛金を拠出する場合、および金額を変更する場合には、労働組合等(労働者の過半数を代表する者等)との労使合意が必要です。

企業型DCとiDeCo+、どちらが運営コストが安いですか。

一般的に企業型DCは運営管理機関への手数料等の固定費が発生するとされますが、具体的な金額は契約内容によって異なります。正確な比較は各運営管理機関への確認が必要です。

従業員数が300人を超えたらiDeCo+はどうなりますか。

iDeCo+は従業員300人以下の事業主が対象の制度であるため、規模要件を超えた場合の取り扱いについては国民年金基金連合会または運営管理機関にご確認ください。

アバター画像

このコラムの著者 : 宍戸沙綾

株式会社SMC総研:株式会社日本企業型確定拠出年金センター 企業型DC導入支援グループ
AFP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)/DCプランナー2級 
前職で税理士法人グループの保険代理店に所属し、税務の観点から企業にとっての最適な金融商品の提案を実施。その経験を活かし、現在は企業型確定拠出年金の導入を多数支援。提携先の税理士事務所や大手保険会社との共催セミナーの主催や社内勉強会を実施。経営者の想いに寄り添い、「経営者と従業員の資産最大化」をサポートしている。

確定拠出年金