投稿日:2026年06月12日
更新日:2026年06月12日
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SMC税理士法人は、全国で3,000社超の中小企業・オーナー経営者の税務顧問実績を持ち、企業型確定拠出年金(企業型DC)の導入支援においても豊富な経験を有しています。本記事では、役員・オーナー経営者が退職時に受け取る報酬を最大限に残すための「2階建て戦略」を、税務の根拠条文・具体的な節税シミュレーションとともに解説します。退職所得控除の仕組みを正しく理解し、功績倍率方式の役員退職金と企業型DCを組み合わせることで、数百万円〜数千万円単位の手取り差が生まれます。ぜひ最後までお読みください。
目次
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 退職所得控除とは | 退職金受取時に適用される大型の所得控除。勤続20年超で「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」が非課税 |
| 2階建て戦略とは | 1階=功績倍率方式の役員退職金、2階=企業型DC(全額損金)を組み合わせた節税スキーム |
| 最大のメリット | 退職所得控除枠を2つの制度で合算活用でき、受取額の大半を非課税にできる |
| 法的根拠 | 所得税法第30条、法人税法第34条・第36条、確定拠出年金法 |
| 企業型DC掛金上限(2026年時点) | 他制度併用なし:月額55,000円(年66万円)/DBなど他制度併用時:月額27,500円(年33万円) |
| 節税効果(勤続30年・月5.5万円積立の場合) | 2階建てにより退職所得税・住民税が最大数百万円圧縮可能 |
退職所得控除は、長年にわたる勤労への報酬を保護するために国が設けた、他の所得控除と比べても格段に大きな節税制度です。給与として毎月受け取るよりも、退職金として一括受け取りにした方が、圧倒的に手元に残る金額が増えます。
退職所得控除額は、所得税法第30条第3項に基づき以下のとおり計算されます(国税庁タックスアンサーNo.1420より)。
| 勤続年数(=A) | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × A(最低80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 × (A-20年) |
具体例:勤続20年の場合
具体例:勤続30年の場合
具体例:勤続35年の場合
(注)勤続年数に1年未満の端数がある場合は、1年に切り上げて計算します。また、障害者になったことが直接の原因で退職した場合は、上記金額に100万円が加算されます。
退職所得の税額計算は、以下の流れで行われます(所得税法第30条)。
① 退職所得の金額
=(収入金額 - 退職所得控除額) × 1/2
② 退職所得は他の所得と分離して課税(分離課税)
所得税速算表に基づき税額計算
③ 源泉徴収によって精算(確定申告原則不要)
つまり、退職金は:
という三重の優遇が受けられます。
注意:特定役員退職手当等の場合 役員等勤続年数が5年以下の場合は「特定役員退職手当等」に該当し、1/2課税の適用がありません。この場合、(退職金額 ー 退職所得控除額)がそのまま退職所得となります。5年超の在任期間を確保することが重要です。
前提:役員が20年間で3,000万円を会社から受け取る場合
パターンA:給与として受け取る場合(年150万円×20年)
パターンB:退職金として受け取る場合(勤続20年・退職金3,000万円)
このセクションのポイント 退職所得控除は「勤続年数が長いほど控除額が大きくなる」設計です。20年超勤続では控除額が急増し、長期にわたって会社に貢献した経営者・役員ほど大きな恩恵を受けられます。給与として課税されるより退職金として受け取った方が、税負担が大幅に軽くなります。
「2階建て戦略」とは、退職時の資産受取を「1階部分(功績倍率方式の役員退職金)」と「2階部分(企業型DC一時金)」に分けて設計し、それぞれの税制優遇を最大限に活用する手法です。SMC税理士法人グループがオーナー経営者・役員向けに強く推奨するスキームです。
役員退職金は、法人税法基本通達9-2-27に基づき、「最終報酬月額 × 勤続年数 × 功績倍率」で適正額が算定されます。これを功績倍率方式といいます。
役員退職金の適正額(目安)
= 最終報酬月額 × 勤続年数 × 功績倍率(役員:2.0〜3.0程度)
例:月額報酬100万円・勤続30年・功績倍率3.0の場合
この退職金は、会社にとっては損金算入(法人税法第34条・第36条)が認められ、法人の税負担を軽減しながら、受け取る役員個人には退職所得控除が適用されます。
重要:過大退職金の損金不算入 功績倍率が高すぎる場合、税務上「不相当に高額な役員退職給与」として損金不算入とされる可能性があります(法人税法第34条第2項)。適正額の設定には税理士への相談が必須です。
企業型確定拠出年金(企業型DC)の事業主掛金は、確定拠出年金法に規定する企業型年金規約に基づいて支出した事業主掛金として、全額損金算入が認められます(法人税法第87条・所得税法第31条、国税庁タックスアンサーNo.5231)。
2026年時点の企業型DC掛金上限は以下のとおりです。
| 加入者の状況 | 月額上限 | 年額上限 |
|---|---|---|
| 確定給付型(DB)など他制度なし | 55,000円 | 66万円 |
| 確定給付型など他制度あり | 27,500円 | 33万円 |
企業型DCで積み立てた資産は、退職時に「一時金(退職所得)」または「年金(雑所得)」として受け取れます。一時金受取にすれば、退職所得控除の対象となります。
2階建て戦略が最強である理由は、以下の3点にあります。
理由1:退職所得控除の合算適用
役員退職金と企業型DC一時金を同一年に受け取る場合、両者の合計額に対して退職所得控除が1回適用されます。また、受取年を分ければ、それぞれに退職所得控除が適用される場合もあります(税務上の取扱いに注意が必要です)。
理由2:積み立て段階での法人税削減
企業型DC掛金は全額損金。月5.5万円(年66万円)を20年積み立てると、法人税率約30%で計算した場合、約396万円の法人税節税効果があります。
理由3:個人資産としての保護
企業型DCの資産は加入者(役員個人)の財産として分別管理されます。会社が倒産しても差し押さえられません。
企業型確定拠出年金とiDeCoの併用条件・メリットを解説!マッチング拠出との比較もこのセクションのポイント 2階建て戦略は、「法人の損金」「個人の退職所得控除」「運用益非課税」という3つの税制優遇を同時に活用する、経営者・役員向けの最も効率的な報酬設計です。役員退職金だけに頼る従来の設計と比べ、手取りが大幅に増加します。
具体的な数字で比較することで、2階建て戦略の効果を実感していただけます。以下のシミュレーションでご確認ください。
共通前提条件
勤続20年の場合
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 役員退職金(100万円×20年×3.0) | 6,000万円 |
| 退職所得控除額 | 800万円 |
| 退職所得の金額 | (6,000万円 ー 800万円)× 1/2 = 2,600万円 |
| 所得税(速算表33%・控除153.6万円) | 約704万円 |
| 住民税(10%) | 約260万円 |
| 税負担合計 | 約964万円 |
| 手取り額 | 約5,036万円 |
勤続30年の場合
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 役員退職金(100万円×30年×3.0) | 9,000万円 |
| 退職所得控除額 | 1,500万円 |
| 退職所得の金額 | (9,000万円 ー 1,500万円)× 1/2 = 3,750万円 |
| 所得税(速算表40%・控除279.6万円) | 約1,220万円 |
| 住民税(10%) | 約375万円 |
| 税負担合計 | 約1,595万円 |
| 手取り額 | 約7,405万円 |
企業型DCは、月額55,000円×20年(または30年)積み立て、運用利回り年3%で試算します。
勤続20年の場合
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 役員退職金 | 6,000万円 |
| 企業型DC積立元本(5.5万円×12ヶ月×20年) | 1,320万円 |
| 運用益(年3%・20年複利概算) | 約580万円 |
| DC一時金受取額(概算) | 約1,900万円 |
| 退職金+DC合計受取 | 約7,900万円 |
| 退職所得控除額(勤続20年) | 800万円 |
| 退職所得の金額 | (7,900万円 ー 800万円)× 1/2 = 3,550万円 |
| 所得税(速算表40%・控除279.6万円) | 約1,140万円 |
| 住民税(10%) | 約355万円 |
| 税負担合計 | 約1,495万円 |
| 手取り額 | 約6,405万円 |
| ケース①との手取り差 | +約1,369万円 |
※DC積み立て段階で法人税削減効果(年66万円×30%×20年 ≒ 396万円)も加算すると、総合的な恩恵は1,700万円超になります。
勤続30年の場合
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 役員退職金 | 9,000万円 |
| 企業型DC積立元本(5.5万円×12ヶ月×30年) | 1,980万円 |
| 運用益(年3%・30年複利概算) | 約1,570万円 |
| DC一時金受取額(概算) | 約3,550万円 |
| 退職金+DC合計受取 | 約12,550万円 |
| 退職所得控除額(勤続30年) | 1,500万円 |
| 退職所得の金額 | (12,550万円 ー 1,500万円)× 1/2 = 5,525万円 |
| 所得税(速算表45%・控除479.6万円) | 約2,006万円 |
| 住民税(10%) | 約553万円 |
| 税負担合計 | 約2,559万円 |
| 手取り額 | 約9,991万円 |
| ケース①との手取り差(税引後) | +約2,586万円 |
※DC積み立て段階の法人税削減効果(年66万円×30%×30年 ≒ 594万円)を加算すると、総合的な恩恵は3,100万円超となります。
2階建て戦略で大きな差が出る理由は以下のとおりです。
このセクションのポイント 勤続年数が長いほど、また掛金が多いほど2階建て戦略の効果は大きくなります。勤続30年のケースでは、退職金のみと比べて手取りが約2,600万円増加し、法人税削減効果を含めると3,100万円超の差が生じます。これは経営者の老後資産形成において極めて大きな差です。
企業型DCを2階部分として活用することは、単なる退職金の上乗せではありません。法人税・所得税・住民税のトリプル節税が実現できる点で、他の積み立て手段と一線を画します。
企業型DCの事業主掛金が損金算入される根拠は以下の条文です。
これにより、会社が支払う企業型DC掛金は支出時に全額損金となります。役員個人には掛金支払時点で課税されません。
損金算入の効果(試算)
通常の金融商品で得た運用益には、20.315%の税金(所得税・住民税)が課されます。しかし企業型DCの運用益は非課税です。
運用益非課税の試算(年3%・月5.5万円積立の場合)
| 期間 | 積立元本 | 運用益(概算) | 非課税メリット(税率20.315%) |
|---|---|---|---|
| 20年 | 1,320万円 | 約580万円 | 約118万円 |
| 30年 | 1,980万円 | 約1,570万円 | 約319万円 |
長期積立であるほど複利の効果が大きく、非課税メリットも増大します。
企業型DCの加入者資産は、信託財産として会社の資産と完全に分別管理されます。
これは、会社の内部留保や役員借入金として資産を会社内に留めておくリスクと比較して、大きな安心感があります。
企業型DC 経営者・役員のための運用商品の選び方と基本戦略【AFP・DCプランナーが解説】このセクションのポイント 企業型DCは「積み立て段階の損金算入」「運用中の非課税」「受取時の退職所得控除」という3段階で税制優遇を受けられる、制度として唯一無二の仕組みです。30年積立では運用益非課税だけで約320万円、損金算入節税で約594万円、合計900万円超の税制上のメリットが生じます。
2階建て戦略は、「今すぐ始めることが最大の節税」です。企業型DCは積み立て期間が長いほど効果が大きいため、60歳前後で気づいても手遅れになるケースがあります。以下のステップで今すぐ行動してください。
Step 1:現状の退職金規程を見直す
現在の役員退職慰労金規程が適切な功績倍率・支給基準になっているか確認します。過去の設定のまま放置されている規程は、税務上の損金算入が認められないリスクがあります。
Step 2:企業型DCの掛金上限を確認する
他の企業年金(DB・厚生年金基金等)を導入している場合、企業型DCの掛金上限が変わります(月額27,500円)。自社の状況に応じた適切な掛金を設定することが重要です。
Step 3:退職時の受取設計を事前に決める
退職金と企業型DC一時金を同一年に受け取るか、年度をずらすかによって税負担が変わります。特に退職所得控除の計算において、前年以前に退職金を受け取ったことがある場合は控除額の計算が異なります。事前のシミュレーションが必須です。
Step 4:SMC税理士法人への相談
企業型DCの新規導入、既存退職金規程の見直し、退職時の一括受取シミュレーションまで、SMC税理士法人では一貫してサポートしています。企業型DCの導入は、規約設定から掛金設計まで専門知識が必要です。まずは無料相談をご活用ください。
退職所得控除は、国が認めた最強の節税制度です。功績倍率方式の役員退職金(1階)と企業型DC一時金(2階)を組み合わせる「2階建て戦略」を実行することで、勤続20年では手取りが約1,400万円、勤続30年では法人税削減も含めると3,100万円超の差が生まれます。
重要なポイントを再確認します:
「もっと早く知りたかった」という経営者の声を多くいただきます。2階建て戦略は、始める時期が早ければ早いほど効果が大きくなります。まずはSMC税理士法人の専門チームにご相談ください。
SMC税理士法人では、金融機関OBや税理士をはじめ経験豊富なプロが御社の円滑な 確定拠出年金導入 をサポートいたします。お電話やお問い合わせフォームから相談可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
同一年に受け取る場合、合計額に対して退職所得控除が適用されます。ただし、退職所得控除額を超える部分については課税されるため、事前にシミュレーションを行い、最も有利な受取年度・受取方法を検討することをお勧めします。国税庁タックスアンサーNo.2735「同じ年に2か所以上から退職手当等が支払われるとき」も参照してください。
はい、加入できます。ただし、企業型DCの加入者は原則として「厚生年金保険の被保険者」である必要があります。代表取締役等も厚生年金に加入している場合は加入対象となります。なお、2022年10月からiDeCoとの併用が可能になっています。
役員等勤続年数が5年以下の場合、「特定役員退職手当等」に該当し、退職所得の1/2課税が適用されません。この場合は税負担が重くなるため、5年超の在任期間を経てから退職金を受け取る設計を強くお勧めします。
企業型DCの導入には、厚生労働省への規約認定申請が必要です。認定を受けた規約に基づいて支出した掛金が損金算入の対象となります(法人税法施行令第135条・国税庁No.5231)。無認定のまま掛金を拠出しても損金算入は認められませんので、正規の手続きを経ることが必須です。
企業型DCの掛金は、規約上の加入資格を満たす従業員全員に適用されるのが原則です。役員のみに高額掛金を設定することはできません。ただし、「選択制DC」の設計を活用することで、役員と従業員の希望に応じた柔軟な掛金設計が可能です。詳細はSMC税理士法人グループにご相談ください。
退職所得控除の計算に使用する勤続年数は、退職金等に係る勤続期間の年数です。1年未満の端数は1年に切り上げて計算します(例:10年2か月 → 11年)。企業型DCの場合は、DC加入期間ではなく、在籍・勤続期間が基準となります。
功績倍率方式で計算された役員退職金であっても、税務上「不相当に高額」と判断された部分は損金不算入となります(法人税法第34条第2項)。一般的に功績倍率3.0を超えると否認リスクが高まるとされています。適正額の設定、および退職金規程の整備は必ず税理士と連携して行ってください。
年金形式で受け取る場合は「公的年金等に係る雑所得」として課税されます(所得税法第35条・国税庁No.1600)。65歳未満では公的年金等控除額が小さいため、税負担が重くなるケースが多いです。退職所得控除を最大活用するには、一時金受取(退職所得)の選択を基本として設計することをお勧めします。
小規模企業共済は個人が掛金を拠出し、小規模企業共済等掛金控除(所得控除)が適用されます。企業型DCは会社が掛金を拠出し、全額損金算入されます。法人格のある会社の経営者・役員にとっては、法人の損金として計上できる企業型DCの方が、法人税・個人所得税双方の観点から有利なケースが多いです。ただし個別の状況により異なりますので、専門家へのご相談をお勧めします。