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個人事業主は企業型確定拠出年金に入れる?iDeCoとの違いを比較解説

投稿日:2026年04月16日

更新日:2026年05月20日

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この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。

個人事業主は、原則として企業型確定拠出年金(企業型DCまたは401k)に加入できません。
個人事業主の老後資金形成の基本は、iDeCo(イデコ)と呼ばれる個人型の制度になります。
ただし、法人を設立するなど特定の条件を満たせば、個人事業主でも企業型DCへの加入が可能になるケースが存在します。

この記事では、両制度の違いを比較し、それぞれのメリット・デメリットや、状況に応じた選び方を解説します。

個人事業主は原則として企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入できない

企業型確定拠出年金(企業型DC)は、企業が従業員の退職金や年金準備のために導入する福利厚生制度です。
掛金は主に企業が負担し、加入対象者はその企業に勤務する厚生年金被保険者となります。

そのため、個人事業主や自営業、フリーランスのように厚生年金に加入していない場合は、原則として企業型DCの加入資格がありません。
企業型DCは、あくまで会社に雇用されている従業員のための制度という位置づけです。

個人事業主・フリーランスの老後資金準備はiDeCo(個人型)が基本

個人事業主やフリーランスが利用できる代表的な私的年金制度は、iDeCo(個人型確定拠出年金)です。
iDeCoは、加入者自身が掛金を拠出し、自ら運用方法を選んで老後資金を準備する制度です。
最大のメリットは、掛金の全額が所得控除の対象となる点で、所得税や住民税の負担を軽減しながら将来に備えられます。

個人事業主の場合、iDeCoの他に小規模企業共済も重要な選択肢となります。
小規模企業共済も掛金が全額所得控除の対象となり、事業をやめた際の退職金準備として活用できます。
なお、iDeCoは会社員や公務員、専業主婦(夫)など、20歳以上65歳未満のほぼすべての人が加入対象です。

企業型確定拠出年金(企業型DC)とは?福利厚生で会社と従業員が得るメリット

【例外】企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入できる2つのケース

個人事業主は原則として企業型DCに加入できませんが、例外的に加入資格を得る方法が2つあります。
一つは、個人事業主が法人を設立して「一人社長」として厚生年金に加入する方法です。
もう一つは、従業員を雇用し、事業所自体が厚生年金の適用事業所となるケースです。

いずれも、事業形態を変更し、厚生年金被保険者となることで、企業型DCを導入・加入するための条件を満たすことになります。

ケース1:法人を設立して「一人社長」になる

個人事業主が法人を設立し、その代表者(社長)になると、役員として会社から役員報酬を受け取る立場になります。
従業員が社長一人の「一人法人」であっても、法人は厚生年金への加入が義務付けられるため、社長自身が厚生年金被保険者となります。
これにより、自社で企業型DC制度を導入し、自身が加入者となることが可能になります。

この方法の大きなメリットは、役員報酬の一部を企業型DCの掛金として拠出することで、固定費の算定基礎となる標準報酬月額を抑え、結果的に固定費の負担を軽減できる可能性がある点です。
ただし、法人設立には登記費用や税理士費用などのコストが発生します。

ケース2:従業員を雇用し、厚生年金適用事業所の事業主になる

法人化せずとも、個人事業のままで企業型DCに加入できるケースがあります。
それは、厚生年金保険の適用事業所となった場合です。
厚生年金適用事業所になると、事業主自身も厚生年金の被保険者となります。

これにより、事業所として企業型DC制度を導入し、事業主と従業員が共に加入することが可能になります。
この場合、事業主の掛金は事業の経費として計上できます。
ただし、従業員のための福利厚生制度として導入することになるため、制度設計や運営コスト、従業員への説明責任などを考慮する必要があります。

【徹底比較】企業型確定拠出年金とiDeCo、4つの違い

老後資金を準備する上で、企業型確定拠出年金(企業型DC)とiDeCo(個人型確定拠出年金)はどちらも有力な選択肢ですが、いくつかの重要な違いがあります。
ここでは、掛金の上限額、経費(損金)算入の可否、固定費への影響、手続きの手間、そして福利厚生としての活用の5つの観点から、両制度の違いを詳しく比較します。

これらの違いを理解することで、自身の事業形態や目的に合った制度を選択する際の判断材料となります。

違い① 掛金の上限額は企業型DCの方が高い

掛金の上限額は、制度や他の年金制度への加入状況によって異なります。
iDeCoの場合、個人事業主(国民年金第1号被保険者)の上限額は月額6.8万円(年額81.6万円)で、これは小規模企業共済などの掛金と合算した金額です。
一方、企業型DCのみに加入する場合の上限額は月額5.5万円(年額66万円)です。

iDeCoと企業型DCを併用する場合、企業型DCの掛金上限は月額3.5万円、iDeCoの上限は月額2万円となります。
一見iDeCoの方が上限額が高いように見えますが、企業型DCは役員報酬の設計と組み合わせることで、固定費を抑えつつ拠出できるため、実質的な手取り額への影響を考慮すると、企業型DCの方が有利になる場合があります。

違い② 掛金を全額損金(経費)に算入できるのは企業型DC

掛金の税務上の扱いには大きな違いがあります。
企業型DCの場合、事業主が負担する掛金は全額を福利厚生費として法人の損金(個人事業の場合は必要経費)に算入できます。
これにより、法人税や事業所得にかかる所得税の負担を軽減する効果があります。

一方、iDeCoの掛金は、事業の経費にはなりません。
その代わり、加入者個人の所得から全額が「小規模企業共済等掛金控除」として控除されます。
これにより、確定申告を通じて個人の所得税・住民税が軽減されます。
つまり、企業型DCは事業の利益を圧縮し、iDeCoは個人の課税所得を圧縮するという違いがあります。

違い④ 加入手続きの手間が少ないのはiDeCo

手続きの手軽さではiDeCoに軍配が上がります。
iDeCoは、個人が自分で金融機関を選び、オンラインなどで直接申し込みを行うため、比較的簡単に始めることができます。
必要書類を準備すれば、数週間から1ヶ月程度で手続きが完了します。

一方、企業型DCは、まず事業所として制度を導入するための手続きが必要です。
これには、運営管理機関の選定、導入プランの決定、規約の作成と厚生労働局への申請・承認といったプロセスが含まれ、導入までに数ヶ月を要することも少なくありません。
制度導入後も、事業主として加入者の管理や掛金の納付といった事務作業が発生します。

違い⑤ 従業員の福利厚生としても活用できる企業型DC

企業型DCは、もともと従業員の資産形成を支援するための福利厚生制度としての側面が強い制度です。
従業員を雇用している事業所が導入した場合、従業員の老後資金準備を会社がサポートする体制を整えることができ、企業の魅力を高めることにつながります。
これは、優秀な人材の採用や離職率の低下に貢献する可能性があります。

一定の要件を満たせば、正社員だけでなくパートタイマーやアルバイト、派遣社員なども加入対象とすることができ、多様な働き方に対応した福利厚生を提供できます。
一方、iDeCoはあくまで個人の判断で加入する制度であり、福利厚生としての機能はありません。

企業型確定拠出年金と厚生年金の違いとは?関係性と仕組みをわかりやすく解説

節税効果か手軽さか?あなたに合った制度の選び方

企業型DCとiDeCoのどちらが適しているかは、個人事業主としての現在の事業規模や所得、将来的な法人化の意向、そして何を最も重視するかによって変わります。
節税効果を最大限に追求し、法人設立などの手間を惜しまないのであれば企業型DCが有力です。

一方で、まずはシンプルに、かつ迅速に老後資金の準備と所得控除のメリットを得たいと考えるなら、iDeCoが最適な選択となるでしょう。
自身の状況を客観的に見極めることが重要です。

節税メリットを最大化したいなら法人化して企業型DCを導入

所得が高く、より大きな節税効果を求める個人事業主にとっては、法人化して企業型DCを導入することが有効な選択肢となります。
掛金を法人の損金として計上できる点に加え、役員報酬の設計を工夫することで固定費の負担を軽減できる可能性があるためです。
これにより、法人税、個人の所得税・住民税、固定費という多角的な観点から資金効率を最適化できます。

また、企業の規約によっては企業型DCとiDeCoを併用することも可能で、両制度の掛金上限まで拠出すれば、さらに非課税メリットを拡大できます。
ただし、法人設立や制度運営のコストと手間を上回るメリットがあるかを慎重に検討する必要があります。

まずは手軽に始めたい個人事業主ならiDeCoが最適

事業を始めたばかりの方や、まずはシンプルに老後資金の準備をスタートさせたい個人事業主にはiDeCoが適しています。
法人化や複雑な制度導入の手続きが不要で、自分で金融機関を選んでオンラインで手軽に申し込みができます。
掛金は月々5,000円から1,000円単位で自由に設定でき、事業の収支状況に応じて柔軟に見直すことも可能です。

また、掛金が全額所得控除の対象となるため、着実に節税しながら資産形成を進められます。
将来的に法人成りして企業型DCを導入する場合でも、iDeCoで積み立てた資産は移換できるため、iDeCoでのスタートが無駄になることはありません。

会社員から独立する人へ|企業型DCからiDeCoへの資産移換手続き

会社員時代に企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入していた人が退職して個人事業主になる場合、これまで積み立ててきた年金資産をiDeCo(個人型確定拠出年金)の口座に移す「移換」という手続きが必要です。
この手続きは、退職後6ヶ月以内に行う必要があり、期限を過ぎてしまうと様々なデメリットが生じます。
ここでは、移換手続きの概要と、手続きを怠った場合のリスクについて解説します。

退職後6ヶ月以内にiDeCoへの移換手続きが必要

会社を退職して企業型DCの加入資格を失った場合、原則として資格喪失日の翌月から6ヶ月以内に、iDeCoへの資産移換手続きを完了させる必要があります。
手続きの第一歩は、iDeCoを取り扱う金融機関(運営管理機関)を選んで口座開設を申し込むことです。
その際、企業型DCからの資産移換を希望する旨を伝え、必要な書類を提出します。

これにより、以前の企業型DCで運用していた資産は一度すべて現金化され、新しく開設したiDeCo口座へ移されます。
将来の資産の受け取り方には年金や一時金がありますが、移換の時点では資産が動くだけで、受け取ることはできません。

手続きを忘れると「自動移換」となり手数料や運用停止のデメリットが発生

退職後6ヶ月の期限内に移換手続きを行わないと、それまでの年金資産は国民年金基金連合会に「自動移換」されます。
自動移換の状態になると、資産は特定の金融機関で現金として管理されるだけで、一切の運用が行われません。
つまり、インフレリスクにさらされ、資産が増える機会を失ってしまいます。

さらに、自動移換時や管理期間中、そして将来iDeCoに移換する際に都度手数料が資産から差し引かれ、資産が目減りしていきます。
自動移換にはデメリットしかないため、退職後は速やかに移換手続きを行うことが非常に重要です。

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まとめ

個人事業主は、原則として企業型確定拠出年金には加入できず、老後資金準備の基本はiDeCoとなります。
ただし、法人を設立して厚生年金被保険者になる、あるいは従業員を雇用して厚生年金適用事業所となることで、企業型DCへの加入が可能になります。
企業型DCは、掛金の損金算入や固定費の軽減効果など、税制上のメリットが大きい一方で、導入・運営には手間とコストを要します。

iDeCoは手続きが手軽で、掛金の全額所得控除という分かりやすいメリットがあります。
ご自身の事業規模や節税に対する考え方、将来の展望などを踏まえ、最適な制度を選択することが重要です。

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よくあるご質問

個人事業主だけど、どうしても「企業型DC」に入りたい!その方法は?

最も現実的なのは「法人成り(法人設立)」して一人社長になることです。社会保険(厚生年金)の適用事業所になれば、自分一人だけの会社でも企業型DCを導入し、加入者になることができます。

会社員時代の企業型DC、そのまま放置して個人事業主になっても大丈夫?

絶対に避けてください。 6ヶ月以内にiDeCoなどへ移換手続きをしないと、資産が強制的に現金化される「自動移換」となり、運用が止まるだけでなく、毎月手数料だけが引かれ続けて資産が目減りしてしまいます。

法人化して企業型DCを入れる場合、初期費用はどれくらいかかる?

金融機関やプランによりますが、初期費用で10万円〜20万円、月額の手数料で数千円〜が一般的です。iDeCoは個人負担の手数料(月数百円)で済むため、このコスト差を上回る「節税・固定費削減メリット」があるかが判断基準になります。

従業員を1人雇った場合、企業型DCは自分だけ入ることはできる?

原則できません。 企業型DCは「福利厚生」なので、一定の条件を満たす従業員全員を加入対象にする必要があります。「自分だけ得をする」ための導入は難しいため、従業員への掛金負担も含めた資金計画が必要です。

結局、所得がいくらくらいなら「法人化して企業型DC」がお得なの?

一般的には課税所得が500万円〜800万円を超えてくると、所得税率の高さや固定費の負担感から、法人化して企業型DCを導入するメリットが経費や手間を上回ることが多いです。それ以下なら、まずは手軽なiDeCoから始めるのが賢明です。

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このコラムの著者 : 宍戸沙綾

株式会社SMC総研:株式会社日本企業型確定拠出年金センター 企業型DC導入支援グループ
AFP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)/DCプランナー2級 
前職で税理士法人グループの保険代理店に所属し、税務の観点から企業にとっての最適な金融商品の提案を実施。その経験を活かし、現在は企業型確定拠出年金の導入を多数支援。提携先の税理士事務所や大手保険会社との共催セミナーの主催や社内勉強会を実施。経営者の想いに寄り添い、「経営者と従業員の資産最大化」をサポートしている。

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