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産休中の企業型確定拠出年金(DC)掛金はどうなる?育休との違いや手続き

投稿日:2026年04月09日

更新日:2026年05月20日

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この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

産休や育休を取得する際、給与や固定費の扱いとあわせて気になるのが、企業型確定拠出年金(企業型DC)の掛金の行方です。
休業中は給与の支払いが停止することが多いため、掛金の支払いがどうなるのか不安に思うかもしれません。
産休中と育休中では企業型DCの掛金の扱いが異なる場合が多く、事前に制度を理解しておくことが重要です。

この記事では、産休・育休期間中の掛金の基本的なルールや、自己負担分の扱い、手続きの流れについて解説します。

はじめに:産休中の企業型確定拠出年金(DC)掛金は原則として継続されます

産前産後休業(産休)は労働基準法に基づく休業であり、この期間中は固定費が免除されます。
しかし、企業型確定拠出年金(企業型DC)の掛金については、法律上、休業を理由に拠出を停止する規定がありません。
そのため、会社の規約に特別な定めがない限り、産休中も会社が拠出する事業主掛金は継続して支払われるのが原則です。

給与の支払いがない期間でも、将来のための資産形成は続いているという点をまず理解しておきましょう。

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【結論】産休と育休で異なる、企業型確定拠出年金の掛金の扱い

産休中と育休中では、企業型確定拠出年金の掛金の扱いが異なるのが一般的です。
産休期間中は、前述の通り、法律上の定めにより原則として掛金の拠出が継続されます。

一方で、育児・介護休業法に基づく育児休業(育休)の期間中は、会社の規約によって掛金の拠出を停止できる場合があります。
この違いを理解しないまま休業に入ると、予期せぬ掛金の支払いが発生することもあるため、自社の制度がどうなっているかを事前に確認することが不可欠です。

産休期間中:法律に基づき掛金の拠出は継続されるのが基本

産前産後休業は、労働基準法によって定められた労働者の権利です。
確定拠出年金法(日本版401k法)では、育児・介護休業法に基づく休業期間中の掛金拠出の中断は認められていますが、産前産後休業はこれに該当しません。
そのため、企業の年金規約で別途定められていない限り、会社は産休中の従業員に対しても掛金を拠出し続ける必要があります。

これは、会社が負担する事業主掛金だけでなく、従業員が任意で上乗せする加入者掛金(マッチング拠出)や、選択制DCの掛金についても同様に適用されるのが基本的な考え方です。

育休期間中:会社の規約により掛金の拠出を停止できる場合が多い

育児・介護休業法に基づいて取得する育児休業の期間中は、多くの企業で確定拠出年金の掛金の拠出を停止することが規約で認められています。
育休中は無給となるケースが多く、従業員の負担を考慮して、事業主掛金と加入者掛金の両方を停止できるよう定めているのが一般的です。
ただし、これは法律で義務付けられているわけではなく、あくまでも会社の規約次第です。

育休中の掛金拠出を希望しない場合は、事前に会社の担当部署に申し出て、所定の手続きを行う必要があります。
自動的に中断されるわけではないため注意が必要です。

自己負担分の掛金はどうなる?マッチング拠出・選択制DCの場合

企業型確定拠出年金において、従業員自身が掛金を上乗せする「マッチング拠出」や、給与の一部を掛金として拠出する「選択制DC」を導入している企業もあります。
これらの制度を利用している場合、産休・育休中の加入者掛金の扱いが問題となります。

給与からの天引きができない期間に、自己負担分の掛金をどのように支払うのか、その方法は企業の規約によって異なるため、休業に入る前に必ず確認しておくべき重要なポイントです。

マッチング拠出:産休中の上乗せ拠出の扱いは会社の規約次第

マッチング拠出を利用して加入者掛金を上乗せしている場合、産前産後休業期間中の事業主掛金の拠出は中断できません。育児休業期間中の掛金停止については、年金規約に定めがあり厚生局の承認を得ていれば可能です。会社の規約によって、育児休業期間中の拠出を継続するか停止するかが定められています。

拠出を継続する場合、給与からの天引きができないため、会社が一時的に掛金を立て替え、後日精算する、あるいは従業員が会社指定の口座に直接振り込むといった対応が考えられます。

どのような支払い方法になるのか、また、育児休業を機に加入者掛金の拠出を一時的に停止することができるのかについても、事前に人事や総務の担当部署に確認しておきましょう。

選択制DC:給与がない期間の掛金支払い方法を事前に確認しよう

選択制DCは、本来は給与として受け取る金額の一部を、掛金として拠出するか給与として受け取るかを選択できる制度です。
産休に入り給与の支払いがなくなると、掛金の原資も発生しないことになります。
この場合の掛金の支払い方法については、事前に会社へ確認することが極めて重要です。

会社によっては、休業期間中は掛金の拠出が自動的に停止される場合や、会社が立て替えて復職後に精算する場合など、対応が異なります。
確認を怠ると、後から想定外の請求が発生する可能性もあるため注意が必要です。

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産休中に企業型DCの掛金を拠出し続けることの利点と注意点

産休中に企業型DCの掛金拠出が継続されることには、資産形成を止めずに続けられるというメリットがある一方、注意すべき点も存在します。
特に、所得がない期間に掛金を支払うことによる家計への影響や、iDeCoの所得控除のような節税効果が薄れる可能性、あるいは企業型DCの掛金拠出の継続に関する会社の制度設計について理解しておく必要があります。

ここでは、拠出を継続する場合の利点と注意点を具体的に解説します。
メリットとデメリットの両方を把握し、自身の状況に合わせて判断することが大切です。

メリット:休業期間中も着実に資産形成を進められる

産休中に掛金の拠出を継続する最大のメリットは、休業によって資産形成が中断されることなく、将来に向けた準備を着実に進められる点です。
特に、長期的な資産形成において有効とされるドルコスト平均法の観点からも、定期的に一定額を投資し続けることは重要です。
市場価格が変動する中でも購入を続けることで、価格が低いときには多く、高いときには少なく購入することになり、平均購入単価を抑える効果が期待できます。

キャリアの中で一時的に休業期間があったとしても、資産形成のブランクを作らずに済むのは大きな利点と言えます。

デメリット:所得がない状況で手元の資金が減る可能性がある

産休中は、健康保険から出産手当金が支給されますが、給与が満額支払われるわけではありません。
収入が減少する中で、企業型DCの掛金の支払いが続くと、家計のキャッシュフローを圧迫する可能性があります。
出産や育児には何かと費用がかかるため、手元の資金が想定以上に減少してしまうことも考えられます。

掛金の拠出が継続される場合は、休業中の収入と支出を事前にシミュレーションし、家計に無理がないかを確認しておくことが重要です。
負担が大きいと感じる場合は、後述する掛金の減額なども検討する必要があります。

注意点:産休中は所得税が発生しないため掛金の所得控除は適用されない

企業型DCの掛金は、全額が所得控除の対象となるため、所得税や住民税が軽減されるという大きな節税メリットがあります。
しかし、産休中は給与所得が発生しないため、そもそも課税対象となる所得がありません。
健康保険から支給される出産手当金は非課税所得です。

したがって、この期間に掛金を拠出しても、所得控除による節税メリットは受けられません。
将来の資産形成は進められるものの、現役で給与所得を得ている期間とは異なり、税制上の優遇措置の恩恵は受けられないという点は理解しておくべき注意点です。

産休・育休に入る前に確認すべきことと手続きの流れ

産休・育休をスムーズに迎えるためには、事前の準備と情報確認が欠かせません。
特に企業型確定拠出年金の掛金の扱いは、会社の規約によって詳細が異なるため、個別の確認が必須です。

休業が始まってから慌てないように、掛金の拠出はどうなるのか、自己負担分の支払いはどうするのか、そして必要な手続きは何かを、決められたステップに沿って進めていきましょう。
ここでは、休業前に確認すべき項目から、復帰後の手続きまでを順を追って解説します。

ステップ1:休業前に会社の担当部署へ確認するべき項目

産休・育休の取得が決まったら、なるべく早い段階で会社の総務部や人事部など、企業年金制度の担当部署に確認を行いましょう。
具体的には、「産休中・育休中の事業主掛金および加入者掛金の拠出の有無」「マッチング拠出や選択制DCなど自己負担分の支払い方法」「掛金額の変更(減額など)の可否と、変更手続きの時期・締切日」「拠出の中断や再開に必要な書類と提出期限」といった項目です。

口頭での確認だけでなく、規約の該当箇所を書面で見せてもらうと、より確実です。

ステップ2:育休取得時に掛金の拠出を停止する際の手続き

育児休業期間中に掛金の拠出を停止(中断)することを決めた場合は、会社が定める手続きに従って申請を行います。
一般的には、「休業取得者申出書」といった所定の書類を担当部署から受け取り、必要事項を記入して提出します。
この手続きには提出期限が設けられていることがほとんどであり、期限を過ぎるとその月の掛金が引き落されてしまう場合もあります。

育休の開始時期に合わせて、いつまでに書類を提出する必要があるのかを事前にしっかりと確認し、余裕をもって手続きを進めるようにしましょう。

ステップ3:職場復帰後、掛金の拠出を再開するための手続き

育児休業が終了し、職場に復帰する際には、停止していた掛金の拠出を再開するための手続きが必要です。
育休中に拠出を中断していた場合、復職したからといって自動的に掛金の拠出が再開されるわけではありません。
通常は「復職届」など、拠出再開のための書類を会社に提出する必要があります。

この手続きを忘れると、掛金の拠出が再開されず、その期間の資産形成の機会を失うことになります。
復帰のタイミングや給与計算の締日などを考慮し、いつから拠出が再開されるのかを担当部署に確認の上、忘れずに手続きを行いましょう。

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まとめ

産休中の企業型確定拠出年金の掛金は、法律上の定めにより原則として拠出が継続されます。
一方で、育休中は会社の規約によって拠出を停止できる場合が多いという違いがあります。
特にマッチング拠出や選択制DCを利用している場合は、給与がない期間の自己負担分の支払い方法を事前に確認することが不可欠です。

休業中は所得控除のメリットは受けられませんが、資産形成を継続できる利点もあります。
いずれにせよ、休業に入る前に会社の担当部署へ制度の詳細を確認し、必要な手続きを計画的に進めることが重要です。

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よくあるご質問

産休中、給与はゼロなのに掛金が引かれるのはなぜですか?

前産後休業は法律上、掛金を停止できる「育児・介護休業」に含まれないため、規約に定めがない限り拠出が継続されます。

育休中に掛金を止めたら、これまでの運用益も消えてしまいますか?

消えません。新たな積み立てが止まるだけで、これまでに蓄図した資産はそのまま運用され続け、利益も発生します。

産休中も掛金を払い続けるメリットは、節税以外にありますか?

あります。市場価格に関わらず買い続ける「ドルコスト平均法」により、将来に向けた資産形成をブランクなしで継続できる点です。

育休中に会社からの拠出が止まったら、iDeCoに入れますか?

入れます。企業型DCの拠出が休止している期間は、iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入資格を満たすケースが多いです。

復職したら、自動的に掛金の拠出は再開されますか?

自動ではありません。「復職届」などの書類提出が必要な場合が多く、手続きを忘れると未拠出の期間が発生してしまいます。

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このコラムの著者 : 宍戸沙綾

株式会社SMC総研:株式会社日本企業型確定拠出年金センター 企業型DC導入支援グループ
AFP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)/DCプランナー2級 
前職で税理士法人グループの保険代理店に所属し、税務の観点から企業にとっての最適な金融商品の提案を実施。その経験を活かし、現在は企業型確定拠出年金の導入を多数支援。提携先の税理士事務所や大手保険会社との共催セミナーの主催や社内勉強会を実施。経営者の想いに寄り添い、「経営者と従業員の資産最大化」をサポートしている。

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