投稿日:2026年06月11日
更新日:2026年06月11日
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「企業型DCを導入すると節税になると聞いたけれど、実際にいくら法人税が減るのかよくわからない」という経営者の方は多いのではないでしょうか。企業型確定拠出年金(企業型DC)の事業主掛金は全額損金算入が認められており、掛金の額と人数に応じて法人税を大幅に削減できます。AFP・DCプランナーとして企業型DC導入支援を多数手がける宍戸沙綾が、税務バックグラウンドを持つFPの視点から、複数のシミュレーションケースを交えて具体的に解説します。本記事はSMC税理士法人グループの税務知識に基づき監修しています。
月額5.5万円×役員1名で、年間約99,000円〜149,000円の法人税節税が見込めます(法人実効税率約15〜23.2%の場合)。役員1名+従業員5名・月額3万円の構成では、年間約324,000円〜475,200円の節税効果になります。
| ケース | 掛金総額(年) | 法人税節税額(概算) |
|---|---|---|
| 役員1名・月額5.5万円 | 66万円 | 約99,000〜153,120円 |
| 役員1名+従業員5名・月額3万円 | 216万円 | 約324,000〜501,120円 |
| 全員月額上限フル活用・20年累積 | ―(個別試算) | 数百万〜数千万円規模 |
上記は法人税(国税)のみの試算です。住民税・事業税を含む実効税率ベースでは節税額はさらに大きくなります。詳細は各セクションのシミュレーションをご確認ください。
企業型確定拠出年金の掛金の決め方|上限・平均相場と計算方法を解説企業型DCで法人税が減る理由は、事業主掛金が支払った期の損金として全額算入できるからです。
損金算入とは、法人税の計算において費用として認められ、課税所得(=税金の計算基礎となる利益)を減らせることをいいます。掛金を拠出した分だけ課税所得が減り、その課税所得に税率をかけた法人税額も減少します。
仕組みをシンプルに整理すると、以下のとおりです。
【法人税の計算イメージ】
課税所得(利益) × 法人税率 = 法人税額
企業型DC導入後:
(課税所得 - 掛金総額) × 法人税率 = 法人税額(減少)
掛金を従業員への給与として支払う場合も損金になりますが、給与の場合は受け取った従業員に所得税・住民税がかかります。企業型DCの掛金は、拠出時には従業員の課税所得に含まれないため、法人・個人の両サイドで税制上の恩恵を受けられる点が大きな特徴です。
企業型DCの掛金が損金算入できる根拠は、以下の法令に基づいています。
つまり、掛金を拠出(支払い)した事業年度に、その全額を損金として処理できます。なお、運用期間中に積立額が増えても法人の課税所得には影響しません(従業員個人の口座で運用されるため)。
同じ金額を「給与」として支払う場合と「企業型DC掛金」として拠出する場合を比較すると、法人側の損金算入額は同じです。しかし、大きな違いがあります。
| 項目 | 給与として支払う場合 | 企業型DC掛金として拠出する場合 |
|---|---|---|
| 法人の損金算入 | 全額損金 | 全額損金(同じ) |
| 従業員の課税 | 給与所得として課税 | 拠出時は非課税 |
| 運用益 | ― | 非課税(特別法人税は凍結中) |
| 受取時 | ― | 退職所得・公的年金等控除が適用 |
給与増額の場合、受け取った従業員は所得税・住民税を負担します。一方、企業型DC掛金は従業員の拠出時課税がなく、将来の受取時も退職所得控除等が適用されます。同額のコストでも、従業員の実質的な資産形成効果が高くなる点が企業型DCの強みです。
このセクションのポイント
- 企業型DCの事業主掛金は法人税法・確定拠出年金法の根拠に基づき、拠出時に全額損金算入できる
- 掛金の分だけ課税所得が減り、法人税額が減少する
- 給与と比べて従業員の拠出時課税がなく、個人・法人の両方にメリットがある
国税庁タックスアンサー No.5759(令和7年4月1日現在)によると、中小企業(資本金1億円以下等)の法人税率は以下のとおりです。
| 所得区分 | 法人税率(国税) |
|---|---|
| 年800万円以下の部分 | 15% |
| 年800万円超の部分 | 23.2% |
※令和7年4月1日以後開始事業年度適用。所得10億円超の法人は年800万円以下部分も17%となりますが、中小企業には通常非該当。
法人実効税率について
実際の税負担は法人税だけでなく、法人住民税・法人事業税・地方法人税も合算して考える必要があります。中小企業の場合、法人実効税率は概ね34〜36%程度(東京都の場合)とされています。以下のシミュレーションでは、計算を明確にするため「法人税のみ(15%または23.2%)」と「実効税率34%」の両パターンを併記します。
他の企業年金制度がない場合、企業型DCの掛金上限は**月額5.5万円(年66万円)**です(厚生労働省・確定拠出年金の拠出限度額より)。
前提条件
| 区分 | 年間掛金額 | 法人税節税額(15%) | 法人税節税額(23.2%) | 実効税率34%での節税額 |
|---|---|---|---|---|
| 役員1名 | 660,000円 | 99,000円 | 153,120円 | 224,400円 |
月額5.5万円を役員1名に拠出した場合、年間で最大約22万円(実効税率ベース)の節税効果が生まれます。 10年間継続すれば累積節税額は約224万円(実効税率34%適用の場合)に達します。
従業員を対象に含めるケースです。企業型DCは全従業員を加入対象とする必要があります(役員のみへの適用は規約設計上の制約あり。詳細は専門家に確認)。
前提条件
| 区分 | 年間掛金額 | 法人税節税額(15%) | 法人税節税額(23.2%) | 実効税率34%での節税額 |
|---|---|---|---|---|
| 6名分合計 | 2,160,000円 | 324,000円 | 501,120円 | 734,400円 |
年間掛金216万円に対し、実効税率ベースでは年間約73万円の節税効果です。 中小企業のオーナー経営者が「節税しながら従業員の資産形成も支援できる」という点で、費用対効果が非常に高い制度です。
役員1名が月額5.5万円を20年間継続して拠出した場合の累積節税額を試算します。
前提条件
| 期間 | 累積掛金総額 | 累積節税額(実効税率34%) |
|---|---|---|
| 5年 | 330万円 | 約112万円 |
| 10年 | 660万円 | 約224万円 |
| 20年 | 1,320万円 | 約449万円 |
20年間で累積掛金1,320万円に対し、約449万円の法人税等節税効果が期待できます。さらに、この掛金は従業員(役員)個人の運用資産として積み立てられるため、退職時には退職所得控除の恩恵を受けながら受け取ることが可能です(詳細はセクション4を参照)。
ポイント:掛金は法人の費用でありながら、役員・従業員の資産として蓄積される
通常の役員報酬や賞与は支払った時点で法人の費用になりますが、従業員の手取りは税引後となります。企業型DC掛金は「法人の損金」でありながら「従業員の非課税資産」として積み上がっていく点が、他の給与・福利厚生と根本的に異なります。
企業型確定拠出年金の控除を解説 iDeCoとの違い、年末調整、一時金の受け取り方このセクションのポイント
- 月額5.5万円×役員1名で年間約22万円(実効税率34%)の法人税等節税が可能
- 役員1名+従業員5名・月額3万円では年間約73万円の節税効果
- 20年間上限フル活用で累積約449万円の節税効果(実効税率34%ベース)
企業型DCの節税効果は法人税だけではありません。加入者(役員・従業員)個人の側でも大きな税制優遇が受けられます。
(1)拠出時:個人の課税なし
事業主掛金は拠出時に従業員の給与所得に含まれません。同額を給与として受け取った場合と比較して、所得税・住民税の課税が繰り延べられます。
(2)運用期間中:運用益が非課税
通常、株式や投資信託等の運用益には約20%の税金がかかりますが、企業型DC口座内の運用益は全額非課税です。長期運用による複利効果が最大限に発揮されます。
(3)受取時:退職所得控除が適用される
国税庁タックスアンサー No.1420によると、確定拠出年金法に規定する企業型年金規約に基づいて老齢給付金として支給される一時金は退職所得とみなされます。
退職所得控除額の計算は以下のとおりです(所得税法第30条)。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円×勤続年数(最低80万円) |
| 20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
例えば、勤続30年の場合の退職所得控除額は1,500万円です。DC積立額が1,500万円以内であれば、一時金受取時の所得税は実質ゼロになります。
退職所得の課税対象額は「(受取額-退職所得控除額)×1/2」となるため、退職所得控除を超えた場合も税負担は軽減されます(特定役員退職手当等を除く)。
オーナー経営者の方には、企業型DCを「退職金の代わり」として設計する方法も有効です。
具体的な出口設計は個々の状況によって異なりますので、SMC税理士法人グループへの相談をお勧めします。
このセクションのポイント
- 個人側でも拠出時非課税・運用益非課税・退職所得控除の三重の税制優遇がある
- 勤続30年なら退職所得控除額は1,500万円。DC積立額がこれ以内なら受取時の所得税はゼロ
- 退職金と組み合わせた出口戦略の設計は税理士に相談することが重要
企業型DCの掛金は、原則として60歳になるまで引き出すことができません(確定拠出年金法第32条)。資金の流動性が低下するため、以下の点に留意が必要です。
AFPとして多くの経営者の資産設計をサポートしてきた経験から申し上げると、「節税効果だけに目を向けて掛金を上限まで設定し、後で資金繰りが苦しくなった」というケースも実際に見てきました。月額掛金の設定は、会社のキャッシュフロー計画と照らし合わせて慎重に決めることをお勧めします。
確定拠出年金には「特別法人税」という税が制度上存在します。これはDC口座の積立残高に対して年1.173%を課税するものです。しかし、現時点(2026年6月)では引き続き凍結措置が延長されており、実際には課税されていません。
特別法人税が凍結解除になった場合、積立残高が多いほど課税負担が生じる可能性があります。今後の税制改正の動向を注視してください。SMC税理士法人グループでは、税制改正情報を随時お客様にご案内しております。
企業型DCの節税効果を最大化するには、以下のタイミングで顧問税理士に相談することを強くお勧めします。
このセクションのポイント
- 掛金は60歳まで引き出せないため、会社のキャッシュフローとのバランスが重要
- 特別法人税は現在凍結中だが、今後の税制改正の動向に注意が必要
- 導入前・決算期・受取前の3つのタイミングで税理士への相談が節税効果を最大化する鍵
SMC税理士法人グループへのご相談はこちら
本記事に掲載したシミュレーションはあくまで概算です。実際の節税効果は、貴社の課税所得の水準・役員報酬の設定・既存の退職金制度の有無・加入対象者数などによって大きく異なります。
SMC税理士法人グループでは、顧問税理士と連携しながら企業型DC導入の節税効果を個別に試算し、最適な掛金設定をご提案しています。
まずはお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。
企業型確定拠出年金のメリットは節税と採用力|会社側のデメリットも解説企業型DCの事業主掛金は法人税法上の損金として全額算入でき、月額5.5万円×役員1名の規模でも年間約10〜22万円の法人税等節税効果が見込めます。役員・従業員の人数や掛金水準に応じて節税額はさらに拡大し、長期継続すれば累積節税額は数百万円規模に達します。節税効果と個人の資産形成効果を両立できる企業型DCの導入を、ぜひSMC税理士法人グループへご相談ください。
| 情報源 | 内容 |
|---|---|
| 国税庁タックスアンサー No.5759 | 法人税の税率(令和7年4月1日現在) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.html |
| 国税庁タックスアンサー No.1420 | 退職金を受け取ったとき(退職所得) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.html |
| 法人税法第22条第3項 | 損金の額の定義 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340AC0000000034 |
| 法人税基本通達9-3-1の3 | 確定拠出年金の事業主掛金の損金算入時期 |
| 確定拠出年金法第54条 | 事業主掛金の拠出義務 |
| 確定拠出年金法第32条 | 給付の制限(60歳前の引出禁止) |
| 厚生労働省・確定拠出年金の拠出限度額 | https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/taishousha.html |
| 所得税法第30条 | 退職所得控除額の計算方法 |
本記事は2026年6月9日時点の法令・通達に基づいて作成しています。税法は改正されることがありますので、最新情報は国税庁ウェブサイトまたは顧問税理士にご確認ください。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談には該当しません。具体的な税務判断はSMC税理士法人グループへご相談ください。
SMC税理士法人では、金融機関OBや税理士をはじめ経験豊富なプロが御社の円滑な 確定拠出年金導入 をサポートいたします。お電話やお問い合わせフォームから相談可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
企業型DCの事業主掛金は、実際に拠出(支払い)した日の属する事業年度の損金になります(法人税基本通達9-3-1の3)。月払いで掛金を拠出している場合、その月の属する事業年度に損金算入されます。
役員のみを加入対象とした企業型DCの設計は、規約の承認上、制約がある場合があります。一般的には「使用人兼務役員を含む全従業員」を対象とする規約が要件となることが多いです。詳細は企業型DC導入支援の専門家にご確認ください。
課税所得が年800万円を超えている会社(法人税率23.2%が適用される部分が多い会社)の方が、同額の掛金に対して節税額が大きくなります。ただし、所得が800万円以下の会社でも15%の節税効果は確実に得られるため、規模の大小にかかわらず導入メリットがあります。
いいえ、企業型DCは法人(会社)が導入する制度です。個人事業主の方はiDeCo(個人型確定拠出年金)を活用することができます。iDeCoの掛金は全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象となり、所得税・住民税の節税効果があります。
はい、掛金額は規約の範囲内で変更が可能です。ただし、変更には規約の改定手続きが必要な場合があります。また、一度設定した掛金を大幅に下げると従業員の資産形成計画に影響が出ることもあるため、慎重に検討することをお勧めします。
損益計算書(P/L)において、事業主掛金は「福利厚生費」または「退職給付費用」として費用計上されます。その分だけ当期純利益が減少し、課税所得も減少します。貸借対照表(B/S)への影響は基本的にありません(確定拠出型のため、退職給付引当金の計上は不要)。
はい、企業型DCの導入・運営にかかる費用(運営管理機関への手数料、事務委託先への費用等)も、原則として損金算入されます。導入コストを含めたトータルの費用対効果を試算したうえで、導入を検討されることをお勧めします。
従業員が退職した場合、それまでに積み立てられた資産はその従業員個人に帰属します。転職先に企業型DCがある場合はそこへ移換(ポータビリティ)でき、ない場合はiDeCoへ移換することができます。法人側が拠出済みの掛金を取り戻すことはできません。