投稿日:2026年06月11日
更新日:2026年06月11日
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「中退共と企業型DC、どちらを選ぶべきか」という質問は、SMC税理士法人グループに寄せられる退職金制度相談のなかでも特に多いテーマのひとつです。中退共は導入が簡単で国の助成もある一方、経営者・役員は加入できないという大きな制約があります。対して企業型DC(企業型確定拠出年金)は役員も含めて加入でき、2026年12月からは拠出限度額も月額6.2万円へと引き上げられる予定です。本記事では、5つの比較軸と具体的な数字によるシミュレーションを通じて、中小企業経営者の皆様がどちらの制度が「自社に合うか」を判断できるよう、税理士・DCプランナーが徹底解説します。
目次
| 比較ポイント | 中退共 | 企業型DC |
|---|---|---|
| 役員の加入 | 不可(事業主・役員は対象外) | 可能(役員も加入できる) |
| 損金算入 | 掛金全額が損金 | 掛金全額が損金 |
| 掛金上限 | 月額30,000円(一般) | 月額55,000円(2026年12月から62,000円予定) |
| 受取時の課税 | 退職所得控除・公的年金等控除が適用 | 退職所得控除・公的年金等控除が適用 |
| 解約・変更 | 途中解約は返戻金が減額になる場合あり | ポータビリティあり(転職時に持ち運び可能) |
| 運用益 | 固定(一定の利息) | 非課税で運用可能(自分で運用商品を選択) |
| 税理士の実際の提案 | 従業員全員の退職金整備に活用 | 経営者・役員の老後資産形成に活用 |
結論: 「どちらが得か」は加入対象者と経営者の目的によって異なります。経営者自身の老後資産形成が目的なら企業型DC一択、従業員の退職金を安定的・一律に整備したいなら中退共が合う場面もあります。多くの場合、両制度を組み合わせるのが最適解です。
30代の企業型確定拠出年金|おすすめ配分割合のモデルプランを解説**中退共(中小企業退職金共済)**とは、中小企業退職金共済法(昭和34年制定)に基づき、独立行政法人勤労者退職金共済機構・中小企業退職金共済事業本部が運営する国の退職金制度です。
「退職金制度を自社で運営するのは難しい」という中小企業のために設けられた公的な共済制度であり、事業主が中退共と退職金共済契約を締結し、毎月掛金を納付することで、従業員の退職時に中退共から直接本人へ退職金が支払われます。
中退共の主な特徴
中退共の「役員は加入不可」という点は、法律上明確に定められています。中小企業退職金共済法第2条において、被共済者(共済契約の対象となる者)は「従業員」とされており、「事業主及びこれと生計を一にする親族」「法人の理事等」は除外されています。中退共への加入は労働者(従業員)に限定されており、経営者・役員は制度の趣旨から対象外です。
**企業型DC(企業型確定拠出年金)**とは、確定拠出年金法(平成13年制定)に基づく私的年金制度のひとつです。事業主(会社)が規約を作成して実施し、毎月の掛金を拠出します。加入者(従業員・役員)は自分で運用商品を選んで運用し、60歳以降に年金または一時金として受け取ります。
企業型DCの主な特徴
企業型DCは「確定拠出」であるため、将来受け取れる金額は運用実績によって変動します。リスクと引き換えに、非課税での長期運用という大きなメリットを享受できる制度です。
中退共と企業型DCの最も本質的な違いは、**「誰のための制度か」**という点に集約されます。
中退共は「中小企業の従業員の退職金を国が支える」という福祉的な制度であり、経営者・役員は対象外です。一方、企業型DCは「企業が拠出した掛金を従業員・役員が自己責任で運用する」という制度であり、経営者・役員も加入できます。
この違いが、税理士による制度選定の出発点になります。
このセクションのポイント 中退共は「従業員専用の退職金制度」。経営者・役員の老後資産形成には使えない。企業型DCは役員も含めて全員が加入でき、掛金全額が損金算入になる唯一の年金制度。
| 制度 | 役員の加入可否 | 根拠 |
|---|---|---|
| 中退共 | 不可 | 中小企業退職金共済法第2条(被共済者は「従業員」に限定) |
| 企業型DC | 可能 | 確定拠出年金法第2条(厚生年金被保険者であれば役員も対象) |
中退共は「事業主・役員」を明確に除外しています。中小企業では経営者自身も第一線で働いていることが多いですが、それでも中退共には加入できません。
企業型DCは「厚生年金に加入している60歳未満の人」であれば役員も加入可能です。会社の代表取締役や取締役であっても、厚生年金被保険者であれば問題なく加入できます。
経営者・役員の老後資産形成を目的とする場合、企業型DCは現実的に唯一の選択肢となります(中小企業退職金共済・特定退職金共済は役員不可、生命保険は受取時の税務処理が複雑)。
両制度とも、事業主が拠出した掛金は全額損金算入できます。これは中退共・企業型DCに共通する大きなメリットです。
| 制度 | 損金算入のタイミング | 留意点 |
|---|---|---|
| 中退共 | 掛金を支払った事業年度に全額損金 | 未払い計上は不可(実際に支払った分のみ) |
| 企業型DC | 掛金を拠出した事業年度に全額損金 | 事業主掛金のみ損金(マッチング拠出の個人負担分は個人の小規模企業共済等掛金控除) |
損金算入という観点では両制度は同等ですが、企業型DCは掛金上限が高いため、より多くの金額を損金算入できます。
| 制度 | 掛金上限(月額) | 備考 |
|---|---|---|
| 中退共 | 30,000円 | 1人あたりの上限。それ以上は加入不可 |
| 企業型DC | 55,000円(2026年12月〜62,000円予定) | 他の企業年金と併用する場合は27,500円に制限 |
月額30,000円と55,000円では、年間で30万円の差(10年間で300万円の差)になります。さらに運用益が加わると、長期的な差はさらに拡大します。
2026年12月改正のポイント: 確定拠出年金法の改正により、企業型DCのみに加入している場合の拠出限度額が月額55,000円から62,000円に引き上げられる予定です(施行日は2026年12月1日)。これにより、年間744,000円まで損金算入できるようになります。
| 受取方法 | 中退共 | 企業型DC |
|---|---|---|
| 一時金受取 | 退職所得として課税(退職所得控除適用) | 退職所得として課税(退職所得控除適用) |
| 年金受取 | 一時金のみ(年金受取は不可) | 公的年金等に係る雑所得として課税(控除あり) |
| 分割受取 | 不可 | 可能(一時金+年金の併用も可) |
退職所得控除は「勤続年数×40万円(20年以下)または70万円(20年超)」という計算式で非常に大きな控除が受けられます。退職金1,000万円程度であれば、20年超の勤続年数があれば課税額がゼロになる場合も多いです。
企業型DCのほうが年金受取という選択肢があるため、受取時の柔軟性は企業型DCが上回ります。
| 項目 | 中退共 | 企業型DC |
|---|---|---|
| 途中解約 | 可能だが不利(短期解約は返戻金が掛金を下回る) | 原則60歳まで引き出し不可(ロックアップ) |
| 掛金変更 | 増額・減額とも申請で変更可能 | 規約変更が必要(年1回程度の変更が一般的) |
| 転職時の取り扱い | 退職時に中退共から本人へ支払い(または新会社に引き継ぎ) | 個人型DC(iDeCo)または新会社の企業型DCへ移換 |
| 従業員の離職時 | 自動的に退職金として支払われる | 個人で管理継続(ポータビリティ) |
中退共は「解約返戻金」という形で資金が戻ってきますが、掛金を払い始めてから12か月未満の場合は返戻金がゼロ、24か月未満の場合は掛金合計額を下回ります。長期積立が前提の制度です。
企業型DCは原則として60歳になるまで引き出せないという制約があります。これはデメリットに見えますが、裏を返せば「老後資産として確実に積み立てられる」という安心感にもなります。
30代の企業型確定拠出年金|おすすめ配分割合のモデルプランを解説このセクションのポイント 役員加入・掛金上限・年金受取の柔軟性は企業型DCが優位。損金算入効果は両制度とも全額損金で同等。中退共の強みは「管理の簡易さ」と「国の助成」にある。
ここでは「月額1万円を10年間積み立てた場合」を比較の基準として、中退共と企業型DCのそれぞれの手取り額を試算します。法人税率は中小企業の実効税率として約23%(法人税・地方法人税・住民税・事業税の合算)を用います。受取時の課税は退職所得控除(勤続10年:40万円×10年=400万円控除)を適用します。
積立の状況
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 月額掛金 | 10,000円 |
| 積立期間 | 10年間(120か月) |
| 掛金総額 | 1,200,000円 |
| 法人税節税額(年間12万円×23%) | 約27,600円/年 × 10年 = 約276,000円 |
| 新規加入助成(1年間・月5,000円上限) | 約60,000円 |
受取時(退職一時金として受取)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 退職金受取額(利息を含む概算) | 約1,220,000円(付加退職金含む) |
| 退職所得控除(勤続10年) | 4,000,000円 |
| 退職所得(課税対象) | 0円(控除内に収まる) |
| 受取時の税金 | 0円 |
| 実質的な手取り効果合計 | 約1,220,000円 + 法人税節税276,000円 + 助成60,000円 = 約1,556,000円分の価値 |
中退共は「付加退職金」として運用益相当が加算されますが、金額は毎年度の運用状況により変動し、大幅な増加は期待できません。
積立の状況
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 月額掛金(事業主拠出) | 10,000円 |
| 積立期間 | 10年間(120か月) |
| 掛金総額 | 1,200,000円 |
| 法人税節税額(年間12万円×23%) | 約27,600円/年 × 10年 = 約276,000円 |
| 運用益(年利3%で複利運用の場合) | 約200,000円(概算) |
受取時(退職一時金として受取・運用益込み)
| 項目 | 金額(年利3%運用) |
|---|---|
| 10年後の積立資産 | 約1,400,000円 |
| 退職所得控除(勤続10年) | 4,000,000円 |
| 退職所得(課税対象) | 0円(控除内に収まる) |
| 受取時の税金 | 0円 |
| 実質的な手取り効果合計 | 約1,400,000円 + 法人税節税276,000円 = 約1,676,000円分の価値 |
運用益が年利5%の場合は積立資産が約1,550,000円程度になり、中退共との差はさらに拡大します。
| 比較項目 | 中退共 | 企業型DC(年利3%) | 差額 |
|---|---|---|---|
| 10年間の掛金総額 | 1,200,000円 | 1,200,000円 | — |
| 法人税節税効果 | 約276,000円 | 約276,000円 | — |
| 国の助成金 | 約60,000円 | なし | 中退共+60,000円 |
| 受取時の運用益 | わずか(固定利息) | 約200,000円 | DC+200,000円 |
| 受取時の税金 | 0円 | 0円 | — |
| トータル価値 | 約1,556,000円 | 約1,676,000円 | DC+120,000円 |
月額1万円・10年間という比較的小規模な積立でも、企業型DCが約12万円有利になります。掛金が高いほど・期間が長いほど、その差は拡大します。
月額3万円・20年間の場合(試算)
| 比較項目 | 中退共 | 企業型DC(年利3%) |
|---|---|---|
| 掛金総額 | 7,200,000円 | 7,200,000円 |
| 法人税節税効果 | 約1,656,000円 | 約1,656,000円 |
| 運用益 | ごくわずか | 約2,400,000円 |
| 受取時の手取り | 約7,400,000円 | 約9,600,000円 |
20年間積み立てた場合、受取額で約220万円の差が生じます(試算値。実際の運用利回りによって変動します)。
このセクションのポイント 損金算入効果は同じでも、運用益の非課税複利効果により長期では企業型DCが有利になる。中退共は「国の助成金」があるが、それを差し引いても積立期間が長くなるほど企業型DCの優位性が高まる。
経営者・役員が自分自身の老後資産形成のために退職金制度を整えたいという場合、中退共は法的に利用できません。企業型DCが唯一の選択肢です。
特に以下の状況では企業型DCの優先度が高くなります。
企業型DCは「選択制DC」として設計することも可能で、役員・従業員が自分の給与の一部を掛金に回す仕組みにすることもできます(選択制DC)。この場合、会社の追加コストを最小限に抑えながら制度を導入できます。
次のような状況では、中退共にも一定の合理性があります。
ただし、この場合でも「経営者・役員のための退職金制度」は別途企業型DCで整備する必要があります。
SMC税理士法人グループが多くの中小企業に提案する「現実的な最適解」は、中退共と企業型DCの組み合わせです。
典型的な組み合わせ例(従業員10名・役員2名の会社)
| 対象者 | 利用制度 | 月額掛金 | 年間損金算入額 |
|---|---|---|---|
| 従業員10名 | 中退共 | 10,000円/人 | 1,200,000円 |
| 役員2名 | 企業型DC | 30,000円/人 | 720,000円 |
| 合計 | — | — | 1,920,000円 |
この組み合わせにより、法人税率23%で試算すると年間約44万円の法人税節税が実現します。10年間では440万円以上の節税効果です(法人税額・税率等は状況によって異なります)。
なお、企業型DC導入時は従業員も加入の機会を与えることが制度上の要件です(全従業員を加入対象とするか、一定の資格要件を設けることが可能)。税理士・社労士と連携して規約設計を行うことが重要です。
企業型確定拠出年金の平均受取額はいくら?計算方法と賢い受け取り方このセクションのポイント 「中退共 vs 企業型DC」は二択ではなく、組み合わせが最強。従業員向けに中退共、役員向けに企業型DC、というハイブリッド戦略が多くの中小企業にとって合理的。
SMC税理士法人グループでは、企業型DC・中退共の比較・提案から、導入に向けた規約設計・労使合意の支援まで、ワンストップでサポートしています。
こんな経営者様はぜひご相談ください
SMC税理士法人グループの強み
ご相談はSMC税理士法人グループのお問い合わせページよりお気軽にどうぞ。
「中退共 vs 企業型DC」の比較をまとめると、以下のとおりです。
中退共が向いている場面
企業型DCが向いている場面
最も合理的な戦略
制度の選択は「現在の従業員構成」「役員の年齢と老後までの期間」「会社のキャッシュフロー」によって最適解が変わります。SMC税理士法人グループでは、個別の状況を踏まえた上で、最適な退職金制度の設計をご提案しています。まずはお気軽にご相談ください。
SMC税理士法人では、金融機関OBや税理士をはじめ経験豊富なプロが御社の円滑な 確定拠出年金導入 をサポートいたします。お電話やお問い合わせフォームから相談可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
加入できません。中小企業退職金共済法により、被共済者(加入対象者)は「従業員」に限定されており、事業主本人や法人の役員(理事等)は除外されています。代表取締役が老後のための退職金を積み立てたい場合は、企業型DC(確定拠出年金)の活用をご検討ください。
変更できます。掛金の増額・減額ともに、中退共への申請手続きで変更可能です。ただし、従業員ごとに掛金を変えることは難しく、原則として「同一の事業所では同一の掛金」という考え方が基本になります(職種別の区分は一定の条件のもとで可能)。
原則として企業型DCは従業員が加入できる制度として設計する必要がありますが、「一定の年齢要件(60歳以上は対象外)」などの資格要件を規約で設けることはできます。全員を加入させることも、一定の要件を満たす者のみを対象とすることも、規約設計次第で対応可能です。詳細は社会保険労務士・税理士にご相談ください。
できます。中退共と企業型DCは別の制度であり、同時に利用することも可能です。従業員向けに中退共を継続しつつ、役員向けに企業型DCを追加導入するケースは実際に多くあります。
2026年11月までは月額55,000円(他の企業年金未加入の場合)が上限です。2026年12月施行予定の法改正により、月額62,000円(年額744,000円)に引き上げられる予定です。DBや厚生年金基金と併用する場合は上限が異なります。最新情報は税理士または年金アドバイザーにご確認ください。
ありません。企業型DCは「確定拠出」型であり、運用結果はすべて加入者(個人)の責任に帰属します。会社は掛金を拠出する義務を果たせば、運用損失について法的な補填義務はありません。これが確定給付型(DB)との大きな違いです。
退職時に、中退共から直接本人へ退職金が支払われます。ただし、転職先の会社も中退共に加入している場合は、「合算申出」により退職金を新会社に引き継ぐことも可能です(一定の要件あり)。企業型DCは転職先の企業型DCまたはiDeCoへ資産を移換(ポータビリティ)できます。
導入自体は可能ですが、掛金は会社が拠出するものであり、役員報酬の多寡とは直接関係ありません。ただし、会社の資金繰りを考慮した上で適切な掛金額を設定することが重要です。月額1万円から始めることもできます。