投稿日:2026年03月30日
更新日:2026年05月14日
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企業型確定拠出年金(企業型DC)は、老後資金を準備するための有効な制度であり、税制上の優遇措置が大きな魅力です。
特に、自身で掛金を上乗せする「マッチング拠出」を利用している場合、その掛金は所得控除の対象となります。通常、勤務先が給与から掛金を控除するため、加入者自身で年末調整や確定申告を行う必要はありません。
この記事では、企業型DCの税制メリットや、iDeCoとの違い、年末調整の手続き、そして将来の資産を一時金として受け取る際の控除について、具体的な受け取り方とともに解説します。
目次
企業型確定拠出年金(企業型DC)には、「拠出時」「運用時」「受取時」という3つのタイミングで大きな税制優遇が設けられています。
加入者自身が掛金を上乗せするマッチング拠出を利用すると、その掛金は全額所得控除の対象となり、税控除が受けられます。
また、運用期間中に得られた利益はすべて非課税で再投資されるため、効率的な資産形成が期待できます。
将来、積み立てた資産を受け取る際にも、税負担が軽減される仕組みが整っています。
企業型DCにおいて、加入者自身が給与から天引きで掛金を追加する「マッチング拠出」を行った場合、その掛金の全額が「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除の対象になります。
所得控除とは、所得税や住民税を計算する際の基となる課税所得から、掛金の年間合計額を差し引ける仕組みです。
課税所得が少なくなることで、結果的に所得税や翌年の住民税の負担が軽減されます。
例えば、年間12万円を拠出した場合、その12万円分が課税対象から外れるため、税率に応じた節税効果が得られます。
会社が拠出する掛金は給与と見なされないため、そもそも課税対象ではなく、所得税は0円です。
通常、株式や投資信託などの金融商品で得た運用益(売却益や分配金など)には、20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)の税金がかかります。
しかし、企業型確定拠出年金の制度内で運用した場合、この運用益がすべて非課税となります。
非課税になった利益はそのまま再投資に回されるため、税金で差し引かれる分も元本に組み入れて運用でき、複利効果を最大化できます。
この非課税メリットは、長期にわたる資産形成において非常に大きな効果をもたらし、効率的に資産を増やす上で重要なポイントです。
企業型DCで積み立てた資産は、原則60歳以降に受け取れますが、その際にも税制上の優遇措置が用意されています。
受け取り方には、一時金として一括で受け取る方法と、年金として分割で受け取る方法があり、それぞれ異なる控除が適用されます。
一時金で受け取る場合は、他の所得と合算せず税負担を抑えられる「退職所得控除」という大きな控除枠が利用可能です。
一方、年金形式で受け取る場合は「公的年金等控除」が適用され、税負担が軽減されます。
どちらの受け取り方が有利かは、退職金の有無や公的年金の受給額などによって異なります。
企業型確定拠出年金の掛金が所得控除の対象になるかどうかは、その掛金を誰が拠出しているかによって決まります。会社が全額を拠出している場合と、従業員自身が給与から上乗せして拠出する「マッチング拠出」を利用している場合では、税務上の扱いが異なります。
マッチング拠出分の掛金は全額所得控除の対象となりますが、通常、給与から控除される場合は事業主が所得控除の手続きを行うため、従業員自身で年末調整や確定申告を行う必要はありません。
この違いを正しく理解し、自身が控除の対象であるかを確認することが重要です。
企業型DCにおいて、会社が従業員のために拠出する掛金は、従業員の給与所得とは見なされません。
給与として扱われないため、所得税や住民税の課税対象にはならず、固定費の算定基礎からも除外されます。
このように、会社が拠出する掛金はそもそも非課税の扱いであるため、年末調整や確定申告で所得控除を申告する必要はありません。
所得控除は、課税対象となる所得から一定額を差し引く制度であるため、もともと課税されない会社拠出分は対象外となります。
勤務先の企業型DCの規約で認められている場合、加入者は会社が拠出する掛金に加えて、自身の給与から掛金を追加で拠出できます。これを「マッチング拠出」と呼びます。このマッチング拠出によって支払った掛金は、全額が「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除の対象となります。
事業主(会社)が手続きを行うことで、課税所得金額がその分だけ減少し、所得税や住民税の負担が軽減される仕組みです。節税しながら老後資金を準備できるため、制度が利用できる場合は活用を検討するとよいでしょう。
会社の規約によっては、企業型DCに加入しながら個人型確定拠出年金(iDeCo)にも同時に加入できます。
iDeCoに加入して掛金を支払っている場合、その掛金も企業型DCのマッチング拠出分と同様に、全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象です。
企業型DCのマッチング拠出とiDeCoの両方に加入している場合は、その年中に支払った掛金の合計額を申告することで、所得控除を受けられます。
これにより、より大きな節税効果を期待しながら、老後に向けた資産形成を進めることが可能です。
企業型DCのマッチング拠出による掛金は、通常、給与から控除されるため、所得控除の手続きは勤務先が行い、加入者自身による年末調整や確定申告は原則不要です。源泉徴収票で控除額を確認できます。
ここでは、申告に必要な書類や、具体的な記入項目について解説します。
年末調整でiDeCoの掛金(マッチング拠出ではない個人型iDeCoの掛金)の控除を申告する際は、国民年金基金連合会から送付される「小規模企業共済等掛金払込証明書」が必要です。この証明書を添付して年末調整または確定申告を行うことで、所得控除を受けることができます。
一方、企業型DCの加入者掛金(マッチング拠出を含む)については、勤務先で所得控除の手続きが行われるため、個人で年末調整や確定申告を行う必要はありません。また、企業型DCの加入者掛金については「給与所得者の保険料控除申告書」への記入も不要です。
年末調整において、会社から「給与所得者の保険料控除申告書」が配布されます。iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金については、個人払込(ご自身の口座から掛金を引き落とし)の場合に国民年金基金連合会から送付される「小規模企業共済等掛金払込証明書」に基づいて「給与所得者の保険料控除申告書」に記入し、会社に提出することで年末調整の手続きが行われます。なお、マッチング拠出の掛金は給与から控除されて源泉徴収が行われるため、ご自身でのお手続きは不要です。
もし年末調整でマッチング拠出分の控除を申告し忘れたり、書類の提出が間に合わなかったりした場合でも、諦める必要はありません。
翌年の確定申告期間中(通常2月16日~3月15日)に、自身で確定申告を行うことで、払い過ぎた税金の還付を受けられます。
この手続きは「還付申告」と呼ばれ、対象となる年の翌年1月1日から5年間行うことが可能です。
申告には源泉徴収票と「小規模企業共済等掛金払込証明書」が必要になるため、大切に保管しておきましょう。
税務署の窓口のほか、e-Taxを利用して電子申告での手続きもできます。
企業型確定拠出年金で積み立てた資産は、原則60歳以降に受け取ることができ、その際にも税制上の優遇措置が適用されます。
受け取り方は「一時金」「年金」「併用」の3つから選べ、選択した方法によって適用される控除や税金の計算方法が異なります。
自身のライフプランや他の所得とのバランスを考え、どの受け取り方が最も有利になるかを事前にシミュレーションしておくことが大切です。
積み立てた年金資産を一括で受け取る「一時金」形式を選択した場合、その所得は「退職所得」として扱われます。
退職所得には、長年の勤労に報いるという観点から「退職所得控除」という非常に有利な税制優遇が適用されます。
この控除額は勤続年数(企業型DCの加入期間)に応じて大きくなり、控除額を差し引いた後の金額のさらに2分の1が課税対象となります。
また、退職所得は給与所得などの他の所得とは分離して税額を計算する「分離課税」のため、所得が多い年でも税負担が急激に増えることを避けられます。
退職所得控除の額は、企業型DCの加入者期間によって計算方法が異なります。
勤続20年以下の場合は「40万円×勤続年数」、勤続20年超の場合は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」で計算します。
例えば、加入期間が30年の場合、控除額は800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円です。
仮に一時金が2,000万円だった場合、課税対象は(2,000万円-1,500万円)×1/2=250万円となり、この額に対して所得税が課されます。
このように、いくら控除されるかシミュレーションすることで、税負担の額を把握できます。
年金資産を5年や10年などの期間にわたって分割で受け取る「年金」形式を選択した場合、その所得は「雑所得」として扱われます。
この雑所得には「公的年金等控除」が適用され、税負担が軽減されます。
控除額は、受給者の年齢(65歳未満か65歳以上か)や、公的年金など他の収入を含めた雑所得の合計額に応じて決まります。
ただし、雑所得は給与所得など他の所得と合算して税額を計算する「総合課税」の対象となるため、他に所得が多い場合は税率が高くなる可能性があります。
どの受け取り方が有利かは、公的年金の受給額なども考慮して判断する必要があります。
企業型DCの規約によっては、積み立てた資産の一部を一時金で受け取り、残りを年金形式で受け取るという「併用」の選択が可能です。
この方法のメリットは、「退職所得控除」と「公的年金等控除」の両方の控除枠を最大限に活用できる可能性がある点です。
例えば、退職所得控除額を超える部分を年金で受け取ることで、一時金にかかる税金を抑えつつ、年金での受け取り額を公的年金等控除の範囲内に調整するといった工夫ができます。
自身の退職金や公的年金の状況を踏まえ、税負担を総合的に抑えられる受け取り方を検討することが重要です。
企業型DCとiDeCoは、どちらも私的年金制度であり、掛金が所得控除の対象になるなど税制上のメリットは共通しています。
しかし、制度の主体や掛金の上限額、手数料の負担者などに違いがあります。
これらの違いを理解することで、自身の状況に合わせてより効果的に制度を活用できます。
特に両制度の併用を検討している場合は、それぞれの特徴を把握しておくことが大切です。
最も大きな違いは、掛金を拠出する主体と、その上限額です。
企業型DCは会社が主体となって掛金を拠出し、従業員は規約に基づきマッチング拠出で上乗せできます。
上限額は、他の企業年金の有無によって月額6.2万円または3.1万円(2026年12月~)です。
一方、iDeCoは加入者自身が主体となって掛金を拠出します。
iDeCoの上限額は、国民年金の被保険者種別や企業型DCの加入状況などによって細かく定められており、月額1.2万円から6.8万円までと幅があります。
自分がどちらの制度で、いくらまで拠出できるのかを確認することが重要です。
制度の利用にかかる手数料の負担者も異なります。
企業型DCの場合、加入時や毎月の口座管理手数料などは、基本的に会社が負担してくれます。
そのため、加入者は手数料を気にすることなく制度を利用できるのが一般的です。
一方、iDeCoでは、加入時の初期費用から毎月の口座管理手数料まで、すべての手数料を加入者個人が負担する必要があります。
金融機関によって手数料の金額は異なるため、iDeCoを始める際は手数料の比較検討が重要です。
手数料は長期間にわたって発生するため、運用リターンや税金の軽減効果と合わせて総合的に判断する必要があります。
企業型DCとiDeCoは、本人の意思で併用することが可能になりました。また2026年12月の改正により、企業型DCとiDeCoを併用する場合の月額拠出限度額は、企業年金に加入していない方で月額最大62,000円となります。企業年金に加入している場合は、企業型DCの掛金額と確定給付企業年金制度の他制度掛金相当額を差し引いた額が上限となります。
手続きは、2024年の開始により加入時に必須であった「事業主の証明書」の提出が廃止されました。これにより金融機関のサイト等から本人だけでオンライン申し込みが完結し、以前より手続きが簡素化しました。
企業型確定拠出年金(DC)とは?メリット・デメリットをわかりやすく解説企業型確定拠出年金は、税制優遇という大きなメリットがある一方で、利用する上で知っておくべき注意点も存在します。
特に、資金の流動性の低さや、投資に伴う元本割れのリスクは、制度加入前に必ず理解しておくべき重要なポイントです。
これらの注意点を把握し、ふるさと納税などの他の制度との兼ね合いも考慮しながら、自身のライフプランに合った資産形成を進めることが求められます。
企業型確定拠出年金は、あくまで老後の所得確保を目的とした年金制度です。
そのため、積み立てた資産は、原則として60歳になるまで引き出すことができません。
これは、住宅購入の頭金や子供の教育資金など、ライフイベントで急にまとまったお金が必要になった場合でも、年金資産を充てることができないことを意味します。
税制優遇があるからといって、生活に必要なお金まで拠出に回してしまうと、いざという時に困る可能性があります。
老後資金と、それとは別の短期・中期的な資金を分けて計画的に準備することが重要です。
退職した場合でも、即時に引き出すことはできません。
企業型DCに加入している人が転職または退職した場合、それまで積み立ててきた年金資産を、転職先の企業型DCやiDeCoなど、他の年金制度に移す移換という手続きが必須です。
退職後6ヶ月以内にこの手続きを行わないと、資産は国民年金基金連合会に自動移換されてしまいます。
自動移換されると、資産は現金化され運用がストップする上に、管理手数料だけが引かれ続け、将来受け取る額が目減りする原因となります。
キャリアチェンジの際には、年金資産の移換手続きを忘れずに行うことが非常に重要です。
企業型確定拠出年金は、加入者が自分で運用商品を選び、その運用成果によって将来の受取額が決まる制度です。
運用商品には、元本確保型の商品もありますが、多くは価格が変動する投資信託などです。
これらの商品は、高いリターンが期待できる一方で、市場の動向によっては購入時よりも価値が下落し、拠出した掛金の合計額、すなわち元本を割り込むリスクがあります。
税制メリットばかりに目を向けるのではなく、投資にはリスクが伴うことを十分に理解し、自身のリスク許容度に合った商品選択と、長期的な視点での資産配分を心がけることが必要です。
企業型確定拠出年金の控除は、主に加入者自身が掛金を上乗せする「マッチング拠出」が対象となり、年末調整で申告することで所得税・住民税が軽減されます。
運用益の非課税、受取時の控除と合わせて、3つの税制優遇を理解することが重要です。
受取時には、一時金(退職所得控除)と年金(公的年金等控除)の選択で税額が変わるため、自身の状況に合わせた計画が求められます。
なお、マッチング拠出による所得控除は、課税所得を下げるため、ふるさと納税の控除上限額にも影響を与える点を認識しておくとよいでしょう。
制度のメリットと注意点を把握し、計画的に活用することが大切です。
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いいえ。会社の掛金はそもそも「非課税(給与に含まれない)」扱いのため、所得から差し引く「控除」という手続き自体が必要ありません。
受けられます。翌年の2月16日〜3月15日の期間に、自分自身で「確定申告(還付申告)」を行うことで、払いすぎた税金を取り戻すことができます。
20年までは「1年あたり40万円」、20年超の期間は「1年あたり70万円」が加算されます。長く加入するほど、非課税で受け取れる枠が大きく広がります。
企業型DCを一時金で受け取った後、別の退職金の控除枠をフル活用するために必要な「空けなければならない期間」が、5年から10年に延長されたルールです。
「雑所得」として扱われ、公的年金等控除が適用されます。ただし、他の公的年金と合算されるため、合計額によっては税率が上がる可能性がある点に注意が必要です。