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法人向け退職金積立の方法を比較|税メリットと経費になる制度とは

投稿日:2026年06月11日

更新日:2026年06月11日

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この記事を読むのに必要な時間は約 10 分です。

法人が従業員や役員のために退職金を準備する積み立て方法には、社内で資金を確保する「社内積立」と、外部の機関を活用する「社外積立」の2種類が存在します。
特に社外積立制度は、掛金が経費として損金算入できる場合が多く、法人税の負担を抑える高い節税効果が期待できます。
将来の支払いに備えつつ、税制上のメリットを享受するためには、それぞれの方法の特徴を理解し、自社の目的に合った制度を選択することが重要です。

法人における退職金積立の基本|社内積立と社外積立の違い

法人における退職金の積み立ては、資金の管理場所によって「社内積立」と「社外積立」に大別されます。
社内積立は自社で資金を管理する方法で自由度が高い一方、積み立てた資金は損金に算入できず、企業の倒産時には保全されないリスクがあります。
対照的に、社外積立は外部の金融機関や共済制度に掛金を拠出する方法で、掛金の損金算入による節税効果や、会社の資産とは分別管理されることによる資産保全性の高さが特徴です。

将来の支払いに備える「社内積立」の方法

社内積立とは、将来の退職金支払いに備え、自社の資産内で資金を準備する方法です。
具体的には、決算時に退職給付引当金を計上する、あるいは別途銀行口座などで現預金を積み立てる形で準備します。
この方法のメリットは、掛金の金額や時期を会社の経営状況に応じて柔軟に調整できる点です。

しかし、会計上費用として計上する退職給付引当金は、税法上は損金として認められません。
また、会社の資産と区別されていないため、会社の業績が悪化したり倒産したりした際に、準備した資金が別の用途に使われたり、差し押さえられたりするリスクがあります。

節税効果が期待できる「社外積立」の方法

社外積立は、共済制度や生命保険会社といった外部の機関を活用して退職金を準備する方法です。
この方法の最大のメリットは、支払う掛金の全部または一部を損金として算入できるため、法人税の負担を軽減する高い節税効果が見込める点にあります。

また、積み立てた資産は会社の資産とは切り離して管理されるため、万が一会社が倒産した場合でも従業員や役員の退職金原資が保全されます。
代表的な制度には、中小企業退職金共済(中退共)や企業型確定拠出年金(企業型DC)などがあり、それぞれ特徴が異なります。

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【一覧比較】法人向け退職金積立制度の主な種類と特徴

法人向けの退職金積立制度には、対象者や目的に応じて様々な種類が存在します。
従業員向けには国の支援がある「中小企業退職金共済」や、従業員自身が運用を行う「企業型確定拠出年金」が代表的です。
一方、役員・経営者向けには「小規模企業共済」や「法人保険」といった方法が活用されます。

それぞれの制度で加入要件、掛金の損金算入ルール、資産の運用方法などが異なるため、自社の状況に最も適した方法を選ぶためには、各制度の特徴を正しく比較検討することが不可欠です。

従業員向けの代表的な退職金積立制度

従業員の福利厚生を充実させ、人材の定着や採用力の強化を図る目的で導入される退職金制度には、代表的なものがいくつかあります。
特に中小企業で広く活用されているのが、国が掛金の一部を助成する「中小企業退職金共済(中退共)」です。

また、従業員が主体的に資産形成に関わることを促す制度として、近年導入が増えているのが「企業型確定拠出年金(企業型DC)」です。
これらの制度は、掛金が損金算入できるという税制上のメリットも共通しています。

中小企業退職金共済(中退共):国がサポートする安心の制度

中小企業退職金共済(中退共)は、国が運営をサポートする中小企業向けの退職金制度です。
事業主が独立行政法人勤労者退職金共済機構と契約し、毎月の掛金を納付することで、従業員の退職時に機構から直接退職金が支払われます。
掛金は月額5,000円から30,000円の範囲で従業員ごとに設定でき、全額を損金として計上可能です。

新規加入時には国からの助成が受けられるほか、社外で一元管理されるため管理が容易というメリットがあります。
ただし、一度決めた掛金を減額することは原則できず、従業員が自ら資産を運用することはできない点には留意が必要です。

企業型確定拠出年金(企業型DC):従業員自身が運用できる制度

企業型確定拠出年金(企業型DC)は、企業が毎月掛金を拠出し、従業員自身が用意された金融商品の中から運用方法を選んで資産を形成する制度です。
将来の受取額は従業員の運用成果によって変動します。
掛金は全額損金として計上でき、従業員は運用益が非課税になるなどの税制優遇を受けられます。

また、転職する際に年金資産を持ち運べる(ポータビリティ)という利点もあります。
一方で、導入や運営にコストがかかることや、企業には従業員に対して投資教育を行う努力義務が課されるなど、制度の維持管理には一定の負担が伴う積み立て方法です。

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役員・経営者向けの代表的な退職金積立制度

会社の発展に貢献した役員や経営者の勇退に備えるため、計画的な退職金の準備は不可欠です。
役員退職金(役員退職慰労金)は、従業員向けの制度とは異なる方法で準備するのが一般的であり、経営者の老後資金確保と法人の節税を両立させる視点が重要になります。
代表的な制度として、経営者自身の退職金準備を目的とした「小規模企業共済」や、万が一の際の保障と資産形成を兼ね備えた「法人保険」の活用が挙げられます。

小規模企業共済:経営者のための退職金準備制度

小規模企業共済は、中小企業の経営者や役員、個人事業主が事業を廃止したり役員を退任したりした場合に備え、生活資金などを準備するための共済制度です。
国が全額出資する中小企業基盤整備機構が運営しています。
この制度の大きな特徴は、掛金が法人の損金ではなく、個人の所得から全額控除される「小規模企業共済等掛金控除」の対象となる点です。

これにより、役員個人の所得税や住民税の負担を軽減しながら、自身の退職金や老後資金を積み立てることが可能です。
また、積み立てた掛金の範囲内で事業資金の貸付制度も利用できます。

法人保険(生命保険):保障と資産形成を両立する方法

法人保険(生命保険)を活用して役員の退職金を準備する方法もあります。
これは、法人を契約者、役員を被保険者として生命保険に加入し、将来の解約返戻金を退職金の原資に充てる手法です。
経営者に万が一のことがあった場合には死亡保険金が支払われるため、事業保障対策も兼ねることができます。

支払う保険料は、保険の種類や契約形態によって異なりますが、一部または全額を損金として計上可能です。
ただし、税制改正により損金算入のルールが複雑化しているため、専門家のアドバイスを基に適切な保険商品を選ぶことが重要です。
また、医療保障を付加することもできます。

【重要】退職金積立で得られる税制上のメリット(損金算入)

法人向け退職金積立制度を活用する大きなメリットの一つが、税制上の優遇措置です。
特に、中小企業退職金共済や企業型確定拠出年金といった社外積立制度では、会社が支払う掛金を損金として経費計上できます。

これにより、課税対象となる所得が減少し、結果として法人税の負担を軽減する節税効果が得られます。
将来の退職金支払いに備えながら、当期の税負担を抑えられる点は、企業のキャッシュフローを安定させる上でも重要なポイントです。

掛金が全額損金として経費計上できる制度とは?

掛金の全額を損金として経費計上できる代表的な制度には、「中小企業退職金共済(中退共)」や「企業型確定拠出年金(企業型DC)」があります。
これらの制度は、従業員の福利厚生を目的としており、拠出した掛金は全額が福利厚生費などとして扱われます。
これにより、企業は法人税の負担を直接的に軽減しながら、計画的に退職金原資を積み立てることが可能です。

ただし、法人保険(生命保険)を活用する場合は注意が必要で、保険の種類や契約内容によって損金に算入できる割合が異なるため、事前の確認が不可欠です。
節税効果を最大化するには、制度ごとのルールを正確に理解することが求められます。

損金算入する際の会計処理と使用する勘定科目を解説

社外積立制度の掛金を損金算入する際の会計処理は、比較的シンプルです。
例えば、中小企業退職金共済(中退共)や企業型確定拠出年金の掛金を支払った場合、その費用は「福利厚生費」や「退職金掛金」といった勘定科目を用いて経費として計上します。
これにより、税務申告時に損金として認められ、法人税の課税所得を減らすことができます。

一方で、社内積立である「退職給付引当金」は、決算時に会計上の費用として計上しますが、税法上は損金として認められないため、申告調整が必要になるという違いがあります。

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自社に最適な退職金積立制度を選ぶための3つのポイント

退職金の積立制度は多岐にわたるため、自社に最適な方法を選ぶにはいくつかの重要なポイントを総合的に検討する必要があります。
まず、誰のための退職金なのかという「対象者」を明確にし、次に会社の財務状況に見合った「掛金の負担額」を考慮します。

そして、短期的な「節税効果」と将来の「受取額」のバランスを見極めることが求められます。
これらの視点から制度を比較し、自社の目的と経営体力に合致した積み立て方法を選択することが、制度を無理なく継続させる鍵となります。

ポイント1:対象者は誰か(従業員・役員)を明確にする

退職金制度を導入する際、最初のステップは退職金を支払う対象者を明確にすることです。
制度によって、加入できる対象者が従業員に限定されるもの、役員・経営者向けのもの、あるいは両方に対応できるものがあるためです。
例えば、従業員の福利厚生を手厚くしたいのであれば、中小企業退職金共済(中退共)や企業型確定拠出年金(企業型DC)が主な選択肢となります。

一方、役員の勇退慰労金を準備することが目的であれば、小規模企業共済や法人保険の活用が適しています。
対象者を明確にすることで、検討すべき制度の範囲が絞り込まれ、より目的に沿った選択が可能になります。

ポイント2:会社の財務状況と掛金の負担額を考慮する

退職金制度は長期にわたる運用が前提となるため、無理のない掛金設定が極めて重要です。毎月の掛金支払いが会社のキャッシュフローを圧迫しないよう、現在の財務状況と将来の収益見通しを慎重に分析し、継続可能な負担額を見極める必要があります。制度によっては、掛金額を柔軟に変更できるものもありますが、中小企業退職金共済制度のように、掛金月額の増額はいつでも可能であるものの、減額には一定の条件がある制度も存在します。

将来の事業計画と照らし合わせ、固定的な経費が増えることを念頭に置き、自社の支払い能力に応じた制度と掛金額を選択することが求められます。

ポイント3:節税効果と将来の受取額のバランスを考える

退職金積立制度を選ぶ際には、掛金の損金算入による短期的な節税効果に目が行きがちですが、従業員や役員が将来実際に受け取る金額とのバランスも考慮することが重要です。
例えば、中小企業退職金共済は予定利率が定められており受取額の見通しが立てやすい一方、企業型確定拠出年金は従業員自身の運用成果によって受取額が大きく変動します。
法人の節税メリットを追求しつつ、従業員の資産形成にどの程度貢献したいのか、あるいは役員としてどの程度の退職金を受け取りたいのかという長期的な視点を持ち、制度の特性を比較検討することが大切です。

役員退職金の積立で知っておくべき注意点

役員退職金を積み立てる際には、税務上のルールを正しく理解しておくことが極めて重要です。
特に、法人税法上、損金として認められる役員退職金には「不相当に高額でない」という条件があります。
この適正額を超えて支給した部分は、損金として認められず、法人税の課税対象となってしまいます。

そのため、計画的な積立を行うと同時に、退職金を支給する際には、客観的な基準に基づいた適正額の計算と、株主総会の決議といった正規の手続きを経ることが不可欠です。

損金として認められる役員退職金の適正額の計算方法

役員退職金を損金として経費計上するためには、その金額が適正な範囲内である必要があります。
税法上、明確な計算式は定められていませんが、実務では「功績倍率法」が広く用いられています。
この方法は、「最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率」という式で算出されます。

功績倍率は、代表取締役で3.0倍、専務・常務で2.5倍、平取締役で2.0倍程度が一般的な目安とされていますが、企業の規模や同業他社の水準も考慮されます。
税務調査で否認されるリスクを避けるため、株主総会議事録などで算定根拠を明確に残しておくことが重要です。

退職所得控除を活用して受取時の税負担を軽減する仕組み

役員や従業員が退職金を受け取る際、個人の税負担が大きく軽減される仕組みがあります。
退職金は給与などとは別の「退職所得」として扱われ、長年の功労に報いるという観点から税制上優遇されています。
その中心となるのが「退職所得控除」です。

控除額は勤続年数に応じて大きくなり、課税対象となる所得金額を大幅に圧縮します。
さらに、控除後の金額を2分の1にしてから税率を掛けて税額を計算するため、他の所得と比べて税負担が格段に軽くなります。
この有利な節税制度を最大限活用するためにも、計画的な退職金の準備が有効です。

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まとめ

法人が退職金を準備する積み立て方法には、社内積立と社外積立があり、特に社外の制度を活用することで大きな節税効果が期待できます。
従業員向けには中退共や企業型DC、役員向けには小規模企業共済や法人保険など、対象者や目的に応じて多様な選択肢が存在します。
自社にとって最適な方法を選ぶためには、対象者、財務状況、そして節税効果と将来の受取額のバランスという3つのポイントを総合的に考慮することが不可欠です。

それぞれの制度のメリット・デメリットを理解し、計画的に退職金の準備を進めてください。

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よくあるご質問

一度導入した退職金積立制度を途中で変更・廃止することは可能ですか?

制度の変更や廃止は可能ですが、就業規則の変更や従業員の同意など、定められた手続きを踏む必要があります。特に従業員にとって不利益な変更は原則として認められません。制度を別の方法に移行する際は、資産の移換手続きが必要になるなど、各制度のルールに従って慎重に進めることが求められます。

従業員が数名しかいない小規模な会社でも導入できる制度はありますか?

はい、導入できます。「企業型確定拠出年金(企業型DC)」にも役員1名から加入できるプランがございます。会社の規模を問わず、従業員の福利厚生を目的として活用することができます。

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このコラムの著者 : 宍戸沙綾

株式会社SMC総研:株式会社日本企業型確定拠出年金センター 企業型DC導入支援グループ
AFP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)/DCプランナー2級 
前職で税理士法人グループの保険代理店に所属し、税務の観点から企業にとっての最適な金融商品の提案を実施。その経験を活かし、現在は企業型確定拠出年金の導入を多数支援。提携先の税理士事務所や大手保険会社との共催セミナーの主催や社内勉強会を実施。経営者の想いに寄り添い、「経営者と従業員の資産最大化」をサポートしている。

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