expand_less

企業型確定拠出年金を退職したらどうなる?必要な手続きやiDeCoへの移換方法

投稿日:2026年03月05日

更新日:2026年05月14日

確定拠出年金はこちら

この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入している方が退職した場合、原則として退職後6ヶ月以内に資産の移換手続きが必要です。
この手続きは、転職先に企業型DC制度があるか、自営業になるか、iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入するかなど、退職後の進路によって異なります。

年金資産を適切に管理し運用を続けるために、自身の状況に合った手続きを理解しておくことが求められます。

企業型DCは退職したら手続きが必須!放置するとどうなる?

会社を退職した時、それまで加入していた企業型DCの加入者資格は喪失します。
そのため、積み立てた年金資産を次の制度へ移す手続きが必ず必要になります。

もし、この手続きをせずに放置したら、資産は自動的に国民年金基金連合会に移され、手数料の負担や運用の停止といったデメリットが生じます。
退職したら速やかに手続き方法を確認し、自身の資産を守るための行動を起こすことが重要です。

退職後6ヶ月以内に手続きをしないと「自動移換」される

退職日の翌月から数えて6ヶ月の間に企業型DCの移換手続きを行わなかった場合、積み立てた年金資産は個人の意思とは関係なく、国民年金基金連合会に自動的に移されます。
これを「自動移換」と呼びます。
自動移換された状態では、資産は現金化され、新たな運用が一切行われません。
さらに、管理手数料が継続的に差し引かれるため、大切な年金資産が徐々に目減りしていくことになります。

このような事態を避けるためにも、期限内に必ず手続きを完了させることが不可欠です。

自動移換で発生する3つのデメリット

自動移換には主に3つのデメリットがあります。
第一に、管理手数料が継続的に発生し、資産から差し引かれ続ける点です。
第二に、資産は現金として管理されるため、投資信託などでの運用が完全に停止します。
これにより、資産を増やす機会を失うことになります。

第三に、自動移換されている期間は確定拠出年金の加入期間に算入されないため、将来年金を受け取る際の要件(通算加入者等期間)を満たせなくなる可能性があります。
資産が実質0円になるリスクもあり、速やかな移換手続きが推奨されます。

確定給付企業年金と企業型確定拠出年金の違いを比較!どっちがお得?

【退職後の進路別】企業型確定拠出年金(企業型DC)の移換手続き

企業型DCの退職後の手続きは、再就職先の制度の有無や働き方の変化によって移行先が異なります。
転職先に企業型DCがある場合、ない場合、あるいは自営業や公務員、専業主婦になる場合など、それぞれの状況に応じた適切な手続きを選択しなければなりません。

ここでは、各ケースでどのような手続きが必要になるかを具体的に解説します。

ケース1:転職先に企業型DC制度がある場合

転職先に企業型DC制度が導入されている場合、これまで積み立ててきた年金資産を転職先の制度に移換して、運用を継続することが可能です。
手続きは、転職先の会社の人事・総務担当者を通じて行うのが一般的です。

以前の会社から受け取った書類や、移換元の運営管理機関から送付される「加入者資格喪失手続完了通知書」などをもとに、転職先の指示に従って申込書類を提出します。
これにより、複数の会社の資産を一つにまとめて効率的に管理できるようになります。

ケース2:転職先に企業型DC制度がない場合

転職先に企業型DC制度がない、または確定給付企業年金(DB)など他の制度しかない場合は、個人型確定拠出年金であるiDeCo(イデコ)に資産を移換する必要があります。
iDeCoは個人で加入する私的年金制度であり、自分で運営管理機関となる金融機関を選んで申し込みます。

これにより、企業に属していなくても、これまでの年金資産を引き継いで掛金の拠出や運用を継続できます。
個人型への移換は、老後の資産形成を途切れさせないための重要な選択肢となります。

ケース3:自営業・フリーランス・公務員になる場合

会社を退職して自営業者やフリーランス(国民年金の第1号被保険者)になる場合、または公務員(第2号被保険者)に転職する場合も、iDeCoへ年金資産を移換することになります。
iDeCoは国民年金基金連合会が主体となって運営しており、会社員だけでなく、自営業者や公務員も加入対象です。

自分で選んだ金融機関を通じてiDeCoの加入手続きを行い、企業型DCで積み立てた資産を移すことで、掛金の拠出や運用を継続し、将来の年金資産を育てていくことが可能です。

ケース4:専業主婦(主夫)など扶養に入る場合

退職後、配偶者の扶養に入り専業主婦(主夫)になるなど、国民年金の第3号被保険者になった場合も、iDeCoに資産を移換して運用を続けられます。

この場合、iDeCoに加入して新たに掛金を拠出するか、掛金の拠出はせずにこれまでの資産の運用のみを続ける「運用指図者」になるかを選択できます。

掛金を拠出するかどうかは任意ですが、運用指図者であっても口座管理手数料は発生するため、自身のライフプランに合わせて最適な方法を検討することが求められます。

企業型DCからiDeCoへ資産を移換する具体的な手順

退職後に転職先で企業型DCを継続できない場合など、iDeCo(個人型確定拠出年金)へ資産を移換する必要があります。
この移換手続きは、自分で行わなければなりません。

iDeCoを始めるための金融機関選びから、必要書類の準備と申し込み、そして最終的に資産が移換されたことを確認するまで、一連の流れを3つのステップに分けて具体的に解説します。

ステップ1:iDeCoに加入する金融機関を選ぶ

iDeCoへの移換を始める最初のステップは、運営管理機関となる金融機関を選ぶことです。
金融機関によって口座管理手数料や取り扱っている投資信託のラインナップが大きく異なります。
手数料は長期的なリターンに影響するため、なるべくコストの低い金融機関を選ぶことが重要です。
また、自分が投資したいと思える商品があるかも確認しましょう。

みずほ銀行をはじめ、各金融機関のウェブサイトで情報を比較したり、資料請求をしたりして、自分の運用方針に合った金融機関を慎重に選定します。

ステップ2:必要書類を準備して加入を申し込む

移換先の金融機関を決めたら、次に加入の申し込み手続きに進みます。
サイト上の申し込みフォームから手続きを行います。
手続きには「基礎年金番号」が必要ですが、年金手帳の写しなどを送付する代わりに、スマートフォンで「マイナンバーカード」を読み取ることで本人確認と加入資格確認を同時に行う「eKYC」が一般的になっています。

2024年12月の改正により、勤務先に書類を記入してもらう必要もなくなったため、スマホ一つで自分一人で手続きを完結させることが可能です。申し込み後は、国民年金基金連合会によるオンライン審査が行われます。

ステップ3:資産が移換されたことを通知で確認する

申し込みと審査が完了すると、国民年金基金連合会から「個人型年金加入確認通知書」が届きます。
また、口座を開設した金融機関からは、加入者サイトのIDやパスワードなどが記載された通知が送付されます。
これらの書類が届いたら、手続きはほぼ完了です。

その後、元の企業型DCに預けていた年金資産が、新しく開設されたiDeCoの口座へ移されます。
資産が正しく移換されたかどうかは、金融機関のウェブサイトや送られてくる通知で必ず確認してください。

企業型確定拠出年金の2026年法改正|マッチング拠出・限度額の変更点を解説

企業型DCを現金化できる?脱退一時金の受給要件を解説

企業型確定拠出年金は、老後の資産形成を目的とする制度のため、原則として中途での引き出しは認められていません。
しかし、一定の厳しい要件を満たす場合に限り、「脱退一時金」として現金での受け取りが可能です。

多くの方がこの例外的な措置の対象にはなりませんが、どのような条件で脱退一時金を受け取れるのか、その仕組みと受け取り方について正確に理解しておくことが重要です。

原則として60歳になるまで現金で引き出すことはできない

企業型確定拠出年金は、老後の生活資金を確保するための私的年金制度です。
そのため、制度の趣旨から、加入者が原則として60歳になるまで資産を引き出すことはできません。

60歳未満で退職した場合には、積み立てた資産を現金化するのではなく、転職先の企業型DCやiDeCoといった他の年金制度に移換し、60歳以降の受給開始年齢まで運用を継続するのが基本となります。
この仕組みにより、長期的な視点での資産形成が促されています。

脱退一時金を受け取るために満たすべき条件

脱退一時金を受け取るためには、法律で定められた複数の条件をすべて満たす必要があります。
主な条件として、企業型DCの加入者資格を喪失していること、60歳未満であること、iDeCoに加入できない者であること、掛金の拠出期間が通算5年以下であること、または個人別管理資産の額が25万円以下であることなどが挙げられます。
ただし、企業型DCからの脱退一時金の場合、個人別管理資産の額が1万5千円以下であれば、通算拠出期間の条件は不要です。

日本国籍を持たない方が海外へ移住する場合も請求可能です。
これらの受取要件は非常に厳しく、該当するケースは限定的であるため、ほとんどの人は移換手続きを選択することになります。

要注意!勤続年数が3年未満だと会社の掛金が返還になることも

企業型確定拠出年金の制度では、会社の規約によって「事業主返還」という仕組みが設けられている場合があります。
これは、勤続年数が3年未満で中途退職した場合に、会社が拠出した掛金とその運用益を会社の資産として返還(没収)するというものです。

例えば勤続1年や2年で退職する際には、会社の規約を確認しないと、想定していた資産額が大きく減少する可能性があります。
自身の退職金規程や確定拠出年金規約を事前に確認しておくことが重要です。

企業型確定拠出年金の受け取り方|一時金と年金どちらが得?税金と手続きを解説

まとめ

企業型確定拠出年金は、退職時に適切な移換手続きを行わないと、資産が自動移換されて手数料が発生し続けるなどのデメリットが生じます。
退職後の進路に応じて、転職先の企業型DCやiDeCoへ資産を移す必要があり、この手続きは原則6ヶ月以内に行わなければなりません。

積み立てた資産は原則として60歳以降に受け取ることになり、一時金として受け取る場合は退職所得控除、年金形式の場合は公的年金等控除が適用されます。
退職時には、自身の将来の資産を守るため、これらの手続きを確実に行うことが求められます。

SMC税理士法人では、金融機関OBや税理士をはじめ経験豊富なプロが御社の円滑な 確定拠出年金導入 をサポートいたします。お電話やお問い合わせフォームから相談可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。

確定拠出年金はこちら

よくあるご質問

転職先が決まるまで期間が空く場合、いつ手続きをすればいいですか?

退職日の翌月から6ヶ月以内であればいつでも可能です。再就職先が決まらなければ、一旦iDeCoへ移換しましょう。

自動移換されてしまった後からでも、資産を取り戻せますか?

はい。iDeCoなどの口座を開設して移換手続きを行えば、特定期間の手数料は引かれますが、残りの資産を移して運用を再開できます。

iDeCoに移換する際、これまでの運用商品はどうなりますか?

企業型DCで持っていた商品は一度すべて売却・現金化され、移換先のiDeCo口座で新たに商品を選び直すことになります。

退職時に会社から「移換用」の書類をもらい忘れたらどうすれば?

会社から届く「加入者資格喪失手続完了通知書」があれば大丈夫です。紛失した場合は、元の運営管理機関へ再発行を依頼してください。

勤続3年未満で退職すると、積み立てたお金が減る可能性があるのは本当ですか?

はい、会社の規約によっては、勤続3年未満だと会社が拠出した分の掛金を会社へ返還(没収)される場合があります。

アバター画像

このコラムの著者 : 宍戸沙綾

株式会社SMC総研:株式会社日本企業型確定拠出年金センター 企業型DC導入支援グループ
AFP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)/DCプランナー2級 
前職で税理士法人グループの保険代理店に所属し、税務の観点から企業にとっての最適な金融商品の提案を実施。その経験を活かし、現在は企業型確定拠出年金の導入を多数支援。提携先の税理士事務所や大手保険会社との共催セミナーの主催や社内勉強会を実施。経営者の想いに寄り添い、「経営者と従業員の資産最大化」をサポートしている。

確定拠出年金