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企業年金と退職金の違いとは?税金・受け取り方・仕組みをわかりやすく比較

投稿日:2026年05月14日

更新日:2026年06月09日

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この記事を読むのに必要な時間は約 10 分です。

企業年金と退職金は、どちらも退職後の生活を支える重要な資産ですが、その仕組みや税金、受け取り方には大きな違いがあります。
企業年金とは退職後に分割して受け取るお金で、退職金とは退職時に一括で受け取るお金を指すのが一般的です。
この記事では、両者の制度的な違いや税制面での比較、それぞれの受け取り方におけるメリット・デメリットをわかりやすく解説し、自身にとって最適な選択をするためのポイントを整理します。

そもそも企業年金と退職金はどう違う?制度の基本を解説

退職金と企業年金は、退職時に会社から支払われるお金という点では同じですが、その性質や受け取り方は根本的に異なります。
この2つの制度はしばしば混同されがちですが、最も大きな違いは「受け取るタイミングと回数」にあります。
退職一時金として一度にまとめて受け取るのが退職金、年金形式で定期的に受け取るのが企業年金です。

ここでは、それぞれの制度の基本的な定義から解説します。

退職金(退職一時金)は退職時に一括で受け取るお金

退職金とは、一般的に「退職一時金」を指し、従業員が退職する際に勤務先から一括で支払われるお金のことです。
これは、長年の会社への貢献に報いる功労報奨的な意味合いが強く、賃金の後払いという性質を持っています。

多くの企業では、退職金規程に基づいて勤続年数や役職、退職理由などに応じて支給額が算定されます。
原資は企業の内部留保から支払われるのが一般的で、受け取る際には税制上優遇される「退職所得控除」が適用される点が大きな特徴です。

企業年金は退職後に分割して受け取る仕組みのお金

企業年金は、退職後の生活保障を目的として、退職後に一定期間または生涯にわたって分割して受け取る仕組みのお金(退職年金)です。
これは国が運営する公的年金(国民年金・厚生年金)に上乗せされる私的年金の一種と位置づけられています。
掛金は主に企業が拠出し、信託銀行や生命保険会社といった社外の機関で管理・運用されるため、企業の経営状態から影響を受けにくいという特徴があります。

これにより、従業員はより安定的に老後の資金を確保できます。

受け取るタイミングと回数が根本的な違い

企業年金と退職金の最も根本的な違いは、受け取るタイミングと回数にあります。
退職金は、その名の通り「退職時に一括」で受け取るのが原則です。
これに対して企業年金は、「退職後に分割」して定期的に受け取ります。

この違いが、税金の計算方法や退職後のライフプラン設計に大きな影響を与えます。
ただし、近年では制度が多様化しており、企業年金の制度の一部を一時金として受け取ったり、退職金を年金形式で受け取ったりと、両方の選択肢を用意している企業も増えています。

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【3つの観点で比較】企業年金と退職金それぞれの特徴

企業年金と退職金の違いをより深く理解するために、「受け取り方」「税金の計算方法」「仕組み」という3つの具体的な観点から比較します。
これらの違いを知ることで、どちらの制度が自分のライフプランや資産形成に適しているかを判断する材料になります。
特に税金の扱いは手取り額に直結するため、それぞれの特徴を正しく把握しておくことが重要です。

ここでは、各観点における両者の違いを詳しく解説していきます。

①受け取り方の違い:一括か分割か、または併用か

受け取り方の違いが、両者を区別する最も分かりやすいポイントです。
退職金(退職一時金)は、原則として退職時に一括で全額を受け取ります。
一方、企業年金は分割での受け取りが基本となり、5年、10年といった確定年金や終身年金などの形式があります。

ただし、企業の制度によっては、企業年金の原資を退職時に一時金として受け取る選択や、一部を一時金、残りを年金というように併用する選択が可能な場合もあります。
この選択肢の有無が、退職後の資金計画を立てる上で重要な要素となります。

②税金の計算方法の違い:適用される控除を理解しよう

税金の計算方法は、受け取り方によって大きく異なります。
一括で受け取る退職金は「退職所得」として扱われ、勤続年数に応じた「退職所得控除」が適用されます。
この控除額は非常に大きいため、税負担が大幅に軽減されるのが特徴です。

一方、分割で受け取る企業年金は「雑所得」に分類され、「公的年金等控除」の対象となります。
年金形式で受け取る場合、毎年の所得が増えるため、国民健康保険料や介護保険料、住民税の負担額に影響を及ぼす可能性がある点にも注意が必要です。

③仕組みの違い:誰が掛金を準備し運用するのか

制度の仕組み、特に掛金の準備と運用の主体が異なります。
一般的な退職金制度では、企業が将来の支払いに備えて社内で資金を準備します。
この場合、資金は企業の資産の一部として扱われます。

対照的に、企業年金制度では、企業が掛金を信託銀行や保険会社などの外部機関に拠出し、そこで資産が管理・運用されます。
これにより、年金資産は企業の資産から切り離されて保全されるため、万が一企業が倒産した場合でも、従業員の年金受給権が守られやすいというメリットがあります。

知っておきたい企業年金の主な種類と特徴

企業年金制度は一つではなく、いくつかの種類が存在します。
現在、日本の企業で導入されている主な制度は「確定給付企業年金(DB)」と「企業型確定拠出年金(DC)」の2つです。
また、過去の制度として「厚生年金基金」があり、以前に加入していた方はその内容を把握しておく必要があります。

これらの制度は、給付額の決まり方や運用の主体が異なるため、自身の加入している企業年金基金の種類と特徴を理解することが、将来の資産形成を考える上で不可欠です。

確定給付企業年金(DB):企業が運用し将来の給付額が保証される

確定給付企業年金は、将来受け取る年金額が、あらかじめ規約で定められている制度です。
掛金の拠出は企業が行い、資産の運用も企業の責任において実施されます。
もし運用実績が悪化して積立金が不足した場合は、企業がその不足分を穴埋めする義務を負います。

加入者である従業員は、自身で運用を行う必要がなく、市場の変動リスクを負わずに確定した額の給付を受けられるため、安定した将来設計を立てやすいのが大きなメリットです。

企業型確定拠出年金(DC):自分で運用し将来の受給額が変動する

企業型確定拠出年金(DC:Defined Contribution Plan)は、企業が毎月一定の掛金を拠出し、加入者である従業員自身が運用方法を選んで資産を形成する制度です。
この仕組みでは、投資信託や保険商品などのラインナップから自分で商品を選び、その運用成果によって将来受け取る金額が変動します。

運用がうまくいけば資産を大きく増やせる可能性がある一方、元本割れのリスクも自身で負うことになります。
この制度は、転職時に資産を持ち運べるポータビリティ制度がある点も特徴です。

厚生年金基金:過去の制度だが加入歴がある人は確認が必要

厚生年金基金は、国の厚生年金の一部を企業が代行し、さらに独自の給付を上乗せして支給する制度でしたが、財政難などの問題から2014年4月をもって新規設立が認められなくなりました。
多くの基金はすでに解散または他の制度へ移行しています。
しかし、過去に厚生年金基金に加入していた期間がある場合、その分の年金を受け取る権利は残っています。

解散した基金の資産は企業年金連合会などに引き継がれていることが多いため、心当たりがある場合は自身の加入記録を確認してみることをお勧めします。

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退職金と企業年金、どちらの受け取り方がお得?判断のポイント

退職金や企業年金を「一括(一時金)」で受け取るか、「分割(年金)」で受け取るかは、多くの人が悩む問題です。
どちらがお得かは、個人のライフプラン、健康状態、資産状況、そして税制などによって異なるため、一概にどちらが良いとは言えません。

判断するためには、それぞれの受け取り方のメリットとデメリットを正しく理解し、自身の状況と照らし合わせることが重要です。
ここでは、最適な選択をするための具体的な判断ポイントを解説します。

一括(一時金)で受け取る場合のメリット

一括で受け取る最大のメリットは、税制上の優遇措置である「退職所得控除」を受けられる点です。
勤続年数が長いほど控除額が大きくなり、税負担を大幅に抑えることができます。

また、まとまった資金が一度に手元に入るため、住宅ローンの完済や家のリフォーム、事業の開業資金など、大きな支出に柔軟に対応可能です。
さらに、その後の所得が増えるわけではないため、国民健康保険料や介護保険料などの固定費に影響を与えない点も利点として挙げられます。

一括(一時金)で受け取る場合のデメリット

一括受取のデメリットは、まとまった資金を計画的に管理する必要がある点です。
手元に大金があると、つい無計画に使ってしまい、老後の生活資金が早くに底をついてしまうリスクが考えられます。
また、企業によっては年金形式で受け取る場合に、運用益相当分などが上乗せされる「年金化利率」が設定されていることがあります。

この場合、一時金で受け取るとその恩恵を受けられないため、年金で受け取るよりも総受取額が少なくなる可能性があります。

分割(年金)で受け取る場合のメリット

分割で受け取る最大のメリットは、公的年金に上乗せする形で定期的な収入を確保できるため、計画的で安定した生活設計を立てやすい点です。
退職後も資産の運用が継続される制度が多く、その運用益によって総受取額が一時金よりも増える可能性があります。

また、手元に大金を持つことによる浪費のリスクを避けやすいという心理的なメリットもあります。
長期にわたって安定した収入を得たいと考える人にとっては、魅力的な選択肢となり得ます。

分割(年金)で受け取る場合のデメリット

年金での受け取りは「雑所得」として課税対象となるため、毎年所得税や住民税が発生します。
また、所得が増えることで国民健康保険料や介護保険料などの固定費負担が増加する可能性があります。

受取期間中に亡くなった場合、保証期間のない終身年金などでは、遺族が残りの年金を受け取れず、結果的に総受取額が一時金より少なくなることもあります。
さらに、受給期間が長期間にわたるため、インフレによって資産価値が目減りするリスクも考慮する必要があります。

手取り額を最大化するための税金控除の活用法

手取り額を最大化するには、税金控除をいかにうまく活用するかが鍵となります。
特に「退職所得控除」は非常に有利な制度であり、この非課税枠を最大限に活かすことが重要です。

例えば、退職金と確定拠出年金(DC)など、複数の制度から一時金を受け取る場合、受け取るタイミングを調整することで税負担が変わる可能性があります。
同じ年に受け取れば退職所得控除を一度しか使えませんが、年をずらすことで別々に控除を適用できる場合もあります。
勤務先の規程や税の専門家に相談し、シミュレーションを行うことが賢明です。

転職・退職するとき企業年金はどうなる?

働き方が多様化し、転職が一般的になった現代において、退職時にそれまで積み立てた年金資産をどう扱うかは非常に重要な問題です。
特に、個人が運用に関わる企業型確定拠出年金(DC)などの制度では、積み立てた資産を次のキャリアへ引き継ぐ仕組みが整っています。
ここでは、転職や退職の際に年金資産をどう管理し、継続していくかについて、知っておくべき「ポータビリティ制度」やiDeCoへの移換手続きを中心に解説します。

転職先へ資産を移す「ポータビリティ制度」とは

ポータビリティ制度とは、年金資産の持ち運びができる仕組みのことです。
主に企業型確定拠出年金(DC)や確定給付企業年金(DB)の加入者が、転職や離職をする際に、それまで積み立てた資産を転職先の年金制度やiDeCo(個人型確定拠出年金)に移換できる制度を指します。
これにより、キャリアチェンジによって年金資産が途切れることなく、継続して資産形成を行うことが可能になります。

ただし、移換できる制度の種類や手続きには条件があるため、転職先の制度を事前に確認しておく必要があります。

iDeCo(個人型確定拠出年金)へ移換する際の手続き

転職先に企業型DC制度がない場合や、退職してフリーランスになる場合は、それまで企業型DCで積み立てた資産をiDeCo(個人型確定拠出年金)に移換することができます。
この手続きは、原則として退職後6ヶ月以内に行う必要があります。
手続きとしては、まずiDeCoを取り扱う金融機関を選んで口座を開設し、元の勤務先や運営管理機関から必要な書類を取り寄せて提出します。

公務員などが加入する共済組合の年金資産なども、条件によってはiDeCoにまとめられる場合があり、老後資産の一元管理に役立ちます。

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まとめ

企業年金と退職金の根本的な違いは、退職後に「分割」で受け取るか、「一括」で受け取るかという点にあります。
退職金の一括受取は「退職所得控除」による税制優遇が大きく、企業年金の分割受取は定期収入による生活の安定化がメリットです。
どちらの受け取り方が最適かは、自身のライフプラン、資産状況、そして健康状態など、さまざまな要因を総合的に考慮して判断する必要があります。

まずは勤務先の制度内容を就業規則などで正確に把握し、必要であれば専門家のアドバイスも参考にしながら、自身の老後にとって最良の選択をすることが求められます。

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よくあるご質問

2026年からの「10年ルール」とは何ですか?税金が増えるのでしょうか?

iDeCo(一時金)を受け取ったあと、会社の退職金を受け取る際、これまでは5年空ければ非課税枠(退職所得控除)を再利用できましたが、2026年1月からは「10年」空けないと控除額が減額調整されるようになりました。早めの受け取りを計画していた方は増税になる可能性があるため、注意が必要です。

転職を繰り返していますが、退職所得控除の「勤続年数」はどう計算されますか?

基本的に現在の会社での勤続年数のみがカウントされます。ただし、前の会社の企業年金資産を今の会社に移換(ポータビリティ)した場合、合算して計算できるケースがあるため、規約を確認しましょう。

退職金を「年金」として、企業年金を「一括」で受け取ることはできますか?

会社の規程によります。近年は多様化が進んでおり、退職金を分割払いにしたり、企業年金の原資を退職時にまとめて受け取ったりする「選択肢」を用意している企業が増えています。

退職後、すぐに年金を受け取らずに「据え置く」メリットは何ですか?

据え置いている期間中も一定の利息(予定利率)がつく場合があることです。公的年金の受給が始まる65歳まで据え置いて、そこから年金として受け取ることで、空白期間の生活費を効率よく補えます。

企業年金(DB)と企業型DC、どちらに加入しているか見分ける方法は?

給与明細や規約を確認してください。毎月の掛金(拠出金)が明示され、自分で運用商品を選んでいるなら「企業型DC」、将来の受取額があらかじめ提示されているなら「DB(確定給付企業年金)」です。

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このコラムの著者 : 宍戸沙綾

株式会社SMC総研:株式会社日本企業型確定拠出年金センター 企業型DC導入支援グループ
AFP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)/DCプランナー2級 
前職で税理士法人グループの保険代理店に所属し、税務の観点から企業にとっての最適な金融商品の提案を実施。その経験を活かし、現在は企業型確定拠出年金の導入を多数支援。提携先の税理士事務所や大手保険会社との共催セミナーの主催や社内勉強会を実施。経営者の想いに寄り添い、「経営者と従業員の資産最大化」をサポートしている。

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