投稿日:2026年09月30日
更新日:2026年10月02日
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企業型DCの加入者数は2025年3月末で862万人、実施事業所数は58,326と、いずれも2021年以降毎年増えています。一方で、DC加入者は厚生年金被保険者の18%、企業年金全体でもカバー率は約28%にとどまり、企業年金に加入していない人がまだ多数派です。2026年4月のマッチング拠出の制限撤廃や、2026年12月施行予定の拠出限度額引き上げ(共通限度額 月額6.2万円)も踏まえ、自社の退職給付を見直す材料として統計を活用することをおすすめします。
「企業型DCはどれくらいの会社が導入しているのか」「今から導入しても遅くないのか」。経営者の方からこうしたご質問をいただくことが増えています。この記事では、厚生労働省が掲載している運営管理機関連絡協議会の統計資料と、MUFG資産形成研究所のレポートをもとに、企業型DCの現状を数字で整理します。AFP・DCプランナー2級として企業型DCの導入を支援している、株式会社SMC総研の宍戸沙綾が解説します。
企業型DCは、加入者数・実施事業所数・承認規約数のすべてが2021年から2025年にかけて増加しています。特に実施事業所数は2024年3月末の52,033から2025年3月末の58,326へ、約12.1%増えました。
一方で、次のような課題も読み取れます。
2026年は制度改正が続く年でもあり、統計は自社の制度設計を考える判断材料になります。
企業型DC導入時の労使合意・従業員説明会の進め方|担当者が押さえるべき実務ポイントこのセクションのポイント
- 加入者数・実施事業所数・承認規約数は2021年以降毎年増加しています
- 企業年金全体のカバー率は約28%で、加入していない人が多数派です
- 運用・マッチング拠出・受取方法・投資教育の数字には、制度運営上の課題も表れています
企業型DC(企業型確定拠出年金)とは、企業型年金規約の承認を受けた事業主が掛金を拠出し、従業員(加入者)が自ら運用商品を選んで老後資金を準備する企業年金制度です。
厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」によると、企業型DCの主な仕組みは次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施主体 | 企業型年金規約の承認を受けた事業主 |
| 加入対象者 | 実施企業に勤務する従業員(第1号・第4号厚生年金被保険者) |
| 掛金 | 事業主が拠出。規約に定めれば加入者も拠出可能(マッチング拠出) |
| 拠出限度額(現行) | 月55,000円から、DB等の他制度掛金相当額を控除した額 |
| 投資教育 | 事業主は加入者に投資教育を行わなければならない |
損金算入とは、法人税の計算において費用として認められ、課税所得を減らせることをいいます。国税庁タックスアンサーNo.5231によると、企業型年金規約に基づいて支出した事業主掛金は法人税の損金(個人事業の場合は必要経費)となります。根拠として法人税法施行令第135条ほかが示されています。
従業員側も事業主掛金の支出時点では給与課税されず、加入者掛金は小規模企業共済等掛金控除の対象です。運用益は運用中非課税(特別法人税は課税停止中)で、受取時は一時金なら退職所得控除、年金なら公的年金等控除の対象となります。
このセクションのポイント
- 企業型DCは、規約の承認を受けた事業主が掛金を拠出する企業年金制度です
- 事業主掛金は法人税の損金となり、従業員は拠出時点で給与課税されません(国税庁タックスアンサーNo.5231)
- 「実施事業所数」は事業所単位の数字で、会社数とは必ずしも一致しない点に注意が必要です
統計からは、企業型DCが着実に広がる一方で、普及率や制度の使われ方には課題が残る姿が読み取れます。
厚生労働省が掲載している「企業型年金の規約数等の推移」(出典:運営管理機関連絡協議会『確定拠出年金統計資料(2025年3月末)』)の数字は次のとおりです。
| 各年3月末 | 加入者数 | 実施事業所数 | 承認規約数 |
|---|---|---|---|
| 2021 | 750万人 | 39,081社 | 6,601件 |
| 2022 | 782万人 | 42,669社 | 6,802件 |
| 2023 | 805万人 | 47,138社 | 7,049件 |
| 2024 | 830万人 | 52,033社 | 7,222件 |
| 2025 | 862万人 | 58,326社 | 7,432件 |
出典:運営管理機関連絡協議会『確定拠出年金統計資料(2025年3月末)』(厚生労働省掲載資料)
加入者数は4年間で112万人増えました。実施事業所数は2024年から2025年にかけて約12.1%増と、加入者数(同期間で約3.9%増、筆者計算)よりも高い伸びを示しています。
加入者数よりも実施事業所数の伸びが大きいことから、1事業所あたりの加入者が比較的少ない事業所での導入が増えている可能性があると読み取れます。実施事業所数の増加は、中堅・中小企業での導入拡大をうかがわせます。ただし、規模別の内訳や増加の原因までは統計から特定できません。
MUFG資産形成研究所のレポート(2026年3月16日)によると、2025年3月末時点のDC加入者は862万人、DB(確定給付企業年金)加入者は887万人です。DC加入者は厚生年金被保険者の18%にあたります。
DBを含めた企業年金全体のカバー率は約28%(厚生年金被保険者4,746万人)とされています。同レポートによると、DC加入者のうちDB・厚生年金基金等の他制度を併用している人は426万人で、重複を除いた企業年金加入者はおおよそ1,334万人と試算されています。
言い換えると、厚生年金被保険者の7割程度は企業年金に加入していないことになり、企業型DCには導入検討の余地がまだ大きいと見ることもできます。
同レポートによると、DC資産総額は2025年3月末で23兆8,201億円です。資産の構成比は、外国株式が25.2%、預金等が22.3%、保険が8.5%となっています。
注目したいのは、元本確保型のみで運用する人の変化です。
| 時点 | 元本確保型のみで運用する人 |
|---|---|
| 2020年3月末 | 254万人(34.1%) |
| 2025年3月末 | 192万人(21.2%) |
人数・割合ともに減少しており、元本確保型以外の商品を含めて運用する人が増えていると読み取れます。一方で今も約5人に1人は元本確保型のみで、それが本人の意思による選択かどうかは統計からは判断できません。
マッチング拠出の採用率は約50%で頭打ち、採用している制度内での利用率は30%強とされています。制度として用意しても、実際に上乗せ拠出している加入者は3人に1人程度という状況です。
これまでは「加入者掛金は事業主掛金以下」という制限がありましたが、2026年4月1日に撤廃されました。撤廃が採用率・利用率にどう影響するかは、今後の統計で確認する必要があります。
老齢給付金の新規裁定は年間約9.8万件で、そのうち一時金が9.25万件、年金を選択した割合は8.2%とされています。受取は一時金が大半を占めています(年金と一時金を併給する人〈約2,300件〉は両方に計上されているため、件数の合計は総件数を上回ります)。
一時金と年金のどちらが有利かは、退職金や他の所得との関係で個人ごとに異なるため、税理士にご確認ください。
NPO法人DC・iDeCo協会の意識調査(MUFG資産形成研究所レポートより)によると、継続投資教育の実施率は次のように推移しています。
| 年 | 継続投資教育の実施率 |
|---|---|
| 2023年 | 58.9% |
| 2024年 | 63.1% |
| 2025年 | 64.7% |
実施率は上昇していますが、なお3割強は実施されていないと読み取れます。また「資格喪失時の対応・ポータビリティ」を扱った割合は7.0%にとどまります。資格喪失後6か月以内に移換手続きをしないと国民年金基金連合会へ自動移換されるため、この点の周知は課題といえます。
事業主掛金は全額が損金となるため、法人税等の計算上の課税所得を減らす効果があります。ここでは仕組みを理解するための簡易試算を示します。
【試算の前提(仮定)】
| パターン | 事業主掛金 | 年間の損金算入額 | 法人税等への影響(仮定30%) |
|---|---|---|---|
| ① 従業員10人×月1万円 | 月10万円 | 120万円 | 約36万円少なくなる計算 |
| ② 従業員20人×月2万円 | 月40万円 | 480万円 | 約144万円少なくなる計算 |
ただし、掛金の120万円・480万円そのものは会社から出ていくお金です。企業型DCは「損金算入の扱いを受けながら従業員の老後資金を準備する制度」と捉えることをおすすめします。自社の正確な税額への影響は、必ず顧問税理士にご確認ください。
このセクションのポイント
- 実施事業所数は2025年3月末で58,326と前年比約12.1%増。中堅・中小企業での導入拡大をうかがわせます
- 企業年金全体のカバー率は約28%で、元本確保型のみの運用者やマッチング拠出の利用率、ポータビリティ教育(7.0%)には課題が残ります
- 事業主掛金は全額損金算入されますが、試算は仮定に基づくもので、個別の税額は税理士への確認が必要です
企業型DC 導入後の年次業務スケジュール|運営管理と経理・税務の年間カレンダー
統計からは、企業型DCが広がる一方で、導入後の運営まで十分に活用できている会社は多くないと読み取れます。2026年の改正を踏まえ、次の点を確認しておきましょう。
優先度・高:自社の退職給付の現状を把握する 退職金規程の有無やDBなど他制度の状況を整理します。企業型DCの拠出限度額は、DB等の他制度掛金相当額を控除して決まるため、現状把握が出発点になります。
優先度・高:2026年の改正内容を確認する 2026年4月1日には、簡易型DCの通常の企業型DCへの統合、マッチング拠出の「加入者掛金は事業主掛金以下」の制限撤廃、自動移換に関する事業主の説明義務の前倒し(資格喪失が見込まれるとき)が施行されました。さらに2026年12月1日には、企業年金との共通拠出限度額を月額6.2万円とする拠出限度額の引き上げが施行予定です。
優先度・中:掛金設計とマッチング拠出の方針を決める マッチング拠出の制限撤廃により、事業主掛金が少額でも、加入者が自分の判断で拠出を増やせる設計を検討しやすくなりました。掛金の決め方は企業型DCの掛金の決め方で詳しく解説しています。
優先度・中:投資教育の計画を立てる 導入時だけでなく、継続教育や退職時の手続き案内まで計画に入れておくと安心です。投資教育の義務については企業型DCの投資教育義務をご覧ください。
掛金の損金算入による法人税等への影響や資金繰りへの影響は、顧問税理士と確認しておくことをおすすめします。SMC総研では、税務に明るいFPの立場から制度設計の選択肢を整理し、個別の税務判断は税理士と連携して検討を進められるようサポートしています。
このセクションのポイント
- まずは自社の退職給付の現状と、2026年の改正内容(4月施行分・12月施行予定分)を確認しましょう
- マッチング拠出や投資教育は「制度を用意する」だけでなく「使ってもらう」工夫が重要です
- 規約承認の標準処理期間は2か月。税務への影響は顧問税理士と事前に確認しましょう
経営者からよくいただくご相談を一般化してご紹介します。
「多くの会社が導入しているなら今さら遅いのでは」と感じる経営者の方は少なくありません。実際には企業年金全体のカバー率は約28%です。むしろ2026年の改正内容を踏まえて設計を考えられる時期といえ、まずは自社の退職給付の現状整理から始めることをおすすめしています。
導入済みの会社から「元本確保型のまま放置している人が多い」「マッチング拠出を使う人が少ない」というご相談をいただくことがあります。継続投資教育の内容を見直し、退職時の手続き(ポータビリティ)まで含めて説明の機会を設けることが、制度を活かす第一歩になります。
Q. 事業主掛金は、役員報酬や給与と同じ扱いになりますか? A. いいえ、企業型年金規約に基づいて支出した事業主掛金は、法人税の損金として扱われ、従業員側でも拠出時点で給与課税されません(国税庁タックスアンサーNo.5231)。会社の経理処理の詳細は顧問税理士にご確認ください。
Q. 受け取るときにも税金はかかりますか? A. はい、受取時には課税対象になります。一時金は退職所得、年金は雑所得(公的年金等)として扱われます(国税庁タックスアンサーNo.5231)。
このセクションのポイント
- 企業年金のカバー率は約28%で、「今から導入しても遅い」とは言い切れません
- 導入済みの会社では、運用の見直しやマッチング拠出の利用促進が課題になりやすいと考えられます
- 事業主掛金・加入者掛金・受取時の税務上の扱いは国税庁タックスアンサーNo.5231で確認できます
企業型確定拠出年金とiDeCoの併用条件・メリットを解説!マッチング拠出との比較も
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