投稿日:2026年06月11日
更新日:2026年06月11日
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企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入している従業員の方から「自分でも掛金を追加できると聞いたが、節税になるのか」という質問をよく受けます。これが「マッチング拠出」と呼ばれる制度です。2026年4月1日には重要な法改正も施行され、活用できる範囲がさらに広がりました。AFP・DCプランナー2級として企業型DC導入支援を行う宍戸沙綾(SMC総研 / NDCセンター 企業型DC導入支援グループ)が、制度の仕組みから税務上のメリット・デメリットまで、わかりやすく解説します。
目次
マッチング拠出とは、確定拠出年金法第19条に基づき、企業型DC加入者が事業主の拠出(事業主掛金)に上乗せして、自己負担で掛金を拠出できる制度のことです。従業員が自ら拠出した掛金(加入者掛金)は、所得税法第75条の「小規模企業共済等掛金控除」として、支払った全額が所得控除の対象となり、所得税・住民税の節税につながります。
企業型確定拠出年金を退職したらどうなる?必要な手続きやiDeCoへの移換方法このセクションのポイント
- マッチング拠出は確定拠出年金法第19条に基づく制度
- 従業員の自己拠出分は「小規模企業共済等掛金控除」として全額所得控除
- 事業主が規約でマッチング拠出を導入している場合にのみ利用可能
マッチング拠出で従業員が拠出した加入者掛金は、年末調整または確定申告において「小規模企業共済等掛金控除」として申告できます(所得税法第75条・国税庁タックスアンサーNo.1135)。控除できる金額は支払った掛金の全額です。
節税シミュレーション(例)
| 条件 | 計算 |
|---|---|
| 年収500万円の会社員、月額1万円(年間12万円)を拠出した場合 | |
| 所得税(税率20%)の軽減額 | 12万円 × 20% = 2.4万円 |
| 住民税(税率10%)の軽減額 | 12万円 × 10% = 1.2万円 |
| 合計節税額(年間) | 約3.6万円 |
給与から支払う場合は所得税・住民税が課税された後の手取りから出費するのに対して、マッチング拠出では課税前の所得から全額が控除されるため、実質的な手取り負担が大幅に軽減されます。
また、掛金を運用して得られた運用益は非課税であり、受取時も税制優遇(一時金受取の場合は退職所得控除)が適用されます。
従来のマッチング拠出には「加入者掛金の額は事業主掛金の額を超えてはならない」というルールがありました。たとえば事業主掛金が月額1万円の場合、加入者掛金も最大1万円までしか拠出できませんでした。
この制限が、2026年4月1日施行の確定拠出年金法施行令改正(令和7年政令第431号)により撤廃されました(厚生労働省「2025年の制度改正」)。
改正後は、拠出限度額の範囲内であれば、事業主掛金の金額に関わらず、加入者が希望する金額を自由に拠出できるようになります。これにより、事業主掛金が少ない会社の従業員でも、枠を十分に活用した資産形成が可能になります。
拠出限度額の目安(2026年4月1日時点): 企業型DCのみに加入している場合、事業主掛金と加入者掛金の合計で月額5.5万円が上限です(他の企業年金がある場合は月額2.75万円)。
このセクションのポイント
- 加入者掛金は支払った全額が所得控除(所得税法第75条)
- 年収500万円で月1万円拠出の場合、年間約3.6万円の節税効果
- 2026年4月1日施行の改正で「事業主掛金超過禁止」が撤廃され、拠出の柔軟性が大幅向上
マッチング拠出と混同されやすいのが「選択制DC」です。両者の違いを整理します。
| マッチング拠出 | 選択制DC | |
|---|---|---|
| 拠出の主体 | 従業員が自己資金を上乗せ | 給与の一部をDC掛金に振り替え |
| 自己資金の出どころ | 税引き後の手取りから | 税引き前の給与から |
| 所得控除 | 小規模企業共済等掛金控除(全額) | 給与として課税されず(課税前に拠出) |
| 従業員の選択幅 | 追加拠出額を選択できる | 給与として受け取るか・DCで運用するか選択 |
選択制DCは「給与の一部を拠出」する設計のため、課税前の給与が減少します。一方、マッチング拠出は課税後の手取りから拠出する設計で、所得控除により税負担を軽減する仕組みです。どちらが有利かは個人の状況によって異なります。
確定拠出年金法の規定により、マッチング拠出を行っている間は、iDeCo(個人型確定拠出年金)への加入・拠出ができません。企業型DCの加入者がiDeCoも利用したい場合は、マッチング拠出を選ばずにiDeCoを活用するか、どちらか一方を選択する必要があります。
なお、マッチング拠出をしていない企業型DC加入者がiDeCoに加入することは、規約で認められている場合に限り可能です(条件あり)。
その他の注意点として、マッチング拠出の掛金は原則として60歳まで引き出しができません(老齢給付金として受け取るまで拘束)。資金の流動性が下がる点は事前に確認が必要です。
企業型DCの掛金「全額損金算入」の仕組みを解説|保険・中退共との違いこのセクションのポイント
- マッチング拠出中はiDeCoへの加入・拠出は不可(確定拠出年金法の規定)
- 選択制DCとは仕組みが異なる。自己資金を上乗せするのがマッチング拠出
- 60歳まで原則引き出し不可のため、余裕資金での拠出が前提
AFP・DCプランナーとして企業型DC導入支援を行う立場から、経営者・従業員の方へ3点アドバイスします。
このセクションのポイント
- マッチング拠出の利用には会社規約での導入が必須
- iDeCoとの比較検討が節税最大化のカギ
- 2026年4月改正施行後の規約対応は早めの準備が必要
マッチング拠出は、企業型DC加入者が自分で掛金を上乗せし、所得控除によって所得税・住民税を節税できる有効な資産形成の手段です。2026年4月1日施行の改正で事業主掛金超過禁止が撤廃され、より柔軟な活用が可能になりました。iDeCoとの併用はできない点に注意しつつ、自社の規約を確認しながら最適な活用方法を検討することが重要です。制度の詳細や規約対応・節税設計については、ぜひSMC税理士法人グループへご相談ください。
出典・参照法令
SMC税理士法人では、金融機関OBや税理士をはじめ経験豊富なプロが御社の円滑な 確定拠出年金導入 をサポートいたします。お電話やお問い合わせフォームから相談可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
はい、年末調整で「小規模企業共済等掛金控除」として控除できます。勤務先に「給与所得者の保険料控除申告書」と掛金証明書を提出することで、確定申告なしに控除が受けられます(所得税法第196条)。
はい、2026年4月1日施行の改正により「加入者掛金が事業主掛金を超えてはならない」というルールが撤廃されました。拠出限度額の範囲内であれば、事業主掛金が少額でも加入者掛金を増やすことが可能です。
いいえ、できません。確定拠出年金法の規定により、マッチング拠出を行っている間はiDeCoへの新規加入・追加拠出は認められていません。iDeCoを優先したい場合は、マッチング拠出の利用を止めてiDeCoを選択する必要があります。
原則として、加入者掛金の額は定期的な変更機会(通常は年1回)に変更できます。ただし変更できるタイミングや回数は会社の規約によって異なりますので、勤務先の担当者または運営管理機関に確認してください。
企業型DCに加入している役員(使用人兼務役員など)は、会社の規約でマッチング拠出が認められていれば利用できます。ただし、役員のみを特別扱いする設計は認められないため、加入者全員に公平に適用される規約設計が必要です。