投稿日:2026年06月11日
更新日:2026年06月11日
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企業型確定拠出年金(企業型DC)は、法人の税務対策と従業員の老後資産形成を同時に実現できる制度として、近年多くの中小企業で導入が進んでいます。AFP・DCプランナーとして企業型DC導入を支援する立場から、税務バックグラウンドを活かして制度の仕組み・会社側と従業員側それぞれのメリット・デメリットを丁寧に解説します。2025年には確定拠出年金法の大幅改正が成立し、2026年4月・12月に順次施行される予定です。この記事では最新の制度情報も盛り込み、経営者の皆様が「今、何をすべきか」を判断できる内容をお届けします。
目次
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 企業型確定拠出年金(企業型DC) |
| 根拠法令 | 確定拠出年金法(平成13年法律第88号) |
| 掛金の拠出者 | 原則:事業主。規約に定めた場合は加入者(マッチング拠出) |
| 掛金の上限(現行) | 月額55,000円(他の企業年金なしの場合) |
| 掛金の上限(2026年12月以降) | 月額62,000円に引き上げ予定 |
| 拠出時の税務メリット | 事業主掛金:全額損金算入(法人税節税)/加入者掛金:全額所得控除 |
| 運用時 | 運用益非課税(特別法人税は現在凍結中) |
| 受取時 | 年金:公的年金等控除 /一時金:退職所得控除 |
| 受取開始 | 原則60歳以降(通算加入期間10年以上) |
| 2026年改正のポイント | マッチング拠出の加入者掛金額制限撤廃(4月)・拠出限度額引き上げ(12月) |
この記事で押さえていただきたいポイントは次の3点です。第一に、事業主掛金が全額損金算入されるため、法人税の節税効果が直接・即効性をもって現れること。第二に、従業員の老後資産が会社の貸借対照表(BS)から切り離され、個人名義で積み立てられること。第三に、2026年の改正で掛金上限額が月額62,000円に拡大され、活用の幅がさらに広がることです。
企業型確定拠出年金の定期預金は損?メリットと隠れたデメリット企業型DC(企業型確定拠出年金)とは、事業主が確定拠出年金法に基づき規約を策定・承認を受け、従業員のために毎月一定の掛金を拠出し、その掛金と運用益の合計額をもとに将来の給付額が決まる年金制度です。
従来の退職金や確定給付企業年金(DB)と異なり、「いくら受け取れるか(給付額)」はあらかじめ確定していません。その代わり、「いくら積み立てるか(拠出額)」が確定しているため、会社側にとっては将来の退職金債務の見通しが立てやすく、財務計画上のリスクを抑えられるという大きな特長があります。
日本の公的・私的年金制度は、一般的に「3階建て構造」と呼ばれます。企業型DCはこの「3階部分」に該当します。
┌─────────────────────────────────────────┐
│ 【3階】私的年金(任意加入) │
│ 企業型DC(企業型確定拠出年金) │
│ 確定給付企業年金(DB)・厚生年金基金 │
│ iDeCo(個人型確定拠出年金) │
├─────────────────────────────────────────┤
│ 【2階】厚生年金(会社員・公務員が加入) │
│ 報酬比例部分(在職中の標準報酬月額に連動) │
├─────────────────────────────────────────┤
│ 【1階】国民年金(基礎年金) │
│ 全ての国民が加入(20歳〜60歳) │
└─────────────────────────────────────────┘
1階の国民年金・2階の厚生年金は、どちらも公的年金として国が運営します。しかし、少子高齢化の進展により、公的年金だけで老後の生活費をまかなうことが難しくなっています。企業型DCはそのギャップを補う「3階部分」として、会社が従業員の老後資産形成を支援する仕組みです。
企業年金には大きく2種類あります。
| 比較項目 | 確定拠出年金(DC) | 確定給付企業年金(DB) |
|---|---|---|
| 確定しているもの | 拠出額(掛金) | 給付額(受取額) |
| 運用主体 | 加入者(従業員個人) | 実施主体(会社・基金) |
| 運用リスクの帰属 | 加入者が負う | 会社が負う |
| 会社の退職金債務 | 原則なし(掛金を拠出すれば完了) | 運用不足が生じると会社が補填義務 |
| 資産の管理 | 個人別管理(持ち運び可能) | 一括管理 |
| 財務諸表への影響 | 毎月の掛金が費用計上のみ | 退職給付債務がBSに計上される |
DBは受取額が確定している安心感がある一方、運用不足が発生すると会社が追加拠出を求められます。企業型DCは掛金の拠出時点で会社の債務が完結するため、財務リスクの観点から導入企業が増えています。
企業型DCの加入対象者は、厚生年金保険の被保険者(第1号厚生年金被保険者または第4号厚生年金被保険者)のうち、実施企業に勤務する従業員です(確定拠出年金法第2条)。
企業型DCと個人型確定拠出年金(iDeCo)の両立については、一定のルールがあります。企業型DCの加入者がiDeCoにも加入する場合、両者の掛金合計が拠出限度額(現行:月額55,000円)の範囲内であることが必要です。なお、2026年12月の改正施行後は、企業型DC加入者のiDeCo拠出限度額が一本化され、共通上限が月額62,000円に引き上げられます。
このセクションのポイント
- 企業型DCは「3階建て年金」の3階部分にあたる私的年金制度
- 確定拠出型(DC)は「掛金が確定」、会社の退職金債務が発生しない点が特長
- 厚生年金の被保険者が加入対象で、iDeCoとの併用も一定ルールのもとで可能
企業型DCの掛金は、原則として事業主が拠出します(確定拠出年金法第3条第3項)。会社が毎月一定額を各従業員の個人口座(個人別管理資産)に積み立てる仕組みです。
加えて、企業型年金規約に定めた場合は、加入者(従業員)も掛金を上乗せ拠出できます。これを「マッチング拠出」と呼びます。
現行(2026年3月まで)のマッチング拠出ルール
2026年4月以降の改正後
2025年の確定拠出年金法改正(令和7年法律成立)により、マッチング拠出における加入者掛金の額が「事業主掛金の額を超えてはならない」という制限が撤廃されます。これにより、加入者が自分の状況に応じて、拠出限度額の枠をより柔軟に活用できるようになります。
たとえば、事業主掛金が月額1万円でも、加入者が月額4万5,000円(合計5.5万円の上限まで)を拠出できるようになります。
企業型DCの運用は、加入者(従業員個人)が自分で行います。会社が契約した運営管理機関(金融機関等)が提示する運用商品の中から、自分でどの商品にいくら配分するかを選びます。
運営管理機関は、必ず3以上35以下の商品を選定し提示しなければなりません(確定拠出年金法第23条)。運用商品の例としては、以下のものがあります。
加入者は複数の商品を選ぶことができ、運用途中で変更(スイッチング)することも可能です。ただし、運用の結果は自己責任であり、元本割れリスクも存在します。
企業型DCで積み立てた資産は、原則として60歳以降に受け取ることができます。ただし、通算加入者等期間が10年に満たない場合は、支給開始年齢が以下のとおり段階的に遅くなります。
| 通算加入期間 | 支給開始年齢 |
|---|---|
| 10年以上 | 60歳から |
| 8年以上10年未満 | 61歳から |
| 6年以上8年未満 | 62歳から |
| 4年以上6年未満 | 63歳から |
| 2年以上4年未満 | 64歳から |
| 1ヶ月以上2年未満 | 65歳から |
受け取り方は2種類あります。
一時金受取の場合は退職所得控除が活用でき、長期積立ほど税負担が軽くなります。どちらの受け取り方が有利かは、その方の退職所得控除の残枠・他の所得状況などによって異なります。具体的な計算は税理士やFPにご相談ください。
【2026年最新】企業型確定拠出年金のおすすめ商品ランキング|選び方と年代別の配分も解説このセクションのポイント
- 掛金は原則として事業主が拠出。規約に定めた場合は従業員も上乗せできる(マッチング拠出)
- 2026年4月以降、マッチング拠出の加入者掛金額の制限が撤廃され、柔軟な積立が可能に
- 受取は60歳以降。一時金(退職所得控除)か年金(公的年金等控除)かを選択できる
企業型DCの事業主掛金は、法人税法上の損金として全額算入できます。これは確定拠出年金法および法人税法の規定によるものです(厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」参照)。
損金算入とは、法人税の計算において費用として認められ、課税所得を減らせることをいいます。
節税効果の試算例(法人税実効税率約34%で計算)
| 従業員数 | 月額掛金(1人あたり) | 年間掛金総額 | 年間節税額(概算) |
|---|---|---|---|
| 5名 | 20,000円 | 1,200,000円 | 約408,000円 |
| 10名 | 20,000円 | 2,400,000円 | 約816,000円 |
| 10名 | 30,000円 | 3,600,000円 | 約1,224,000円 |
| 20名 | 20,000円 | 4,800,000円 | 約1,632,000円 |
※法人税実効税率は会社の規模や所得水準によって異なります。中小企業の場合、課税所得800万円以下の部分は軽減税率が適用されます。節税額は目安としてご参照ください。
同じ金額を「給与」として支払う場合は、給与所得税・源泉徴収義務があり、従業員の手取りが増える反面、会社側も法人税の損金算入という点では同じです。しかし、給与は毎月の定期費用として従業員が自由に使えてしまいます。企業型DCの掛金は老後資産として確実に積み立てられる点が異なります。
企業型DCを導入すると、毎月の掛金拠出時点で会社の債務が完結します。退職金積立のために社内に資金を留保する必要がなく、その分を本業の投資に回せます。
また、従来の確定給付型の退職金制度では、積立不足が生じると会社が追加拠出を求められます(退職給付引当金の計上義務)。企業型DCにはこのような追加拠出義務がなく、財務リスクを限定できます。
中小企業では退職金の原資を社内に蓄えておくことが難しく、退職時に資金繰りが逼迫するケースも少なくありません。企業型DCはその問題を解消する手段の一つとして有効です。
企業型DCは、従業員にとって「会社が自分の老後資産を毎月積み立ててくれる制度」として映ります。特に若い世代や共働き世代は老後への意識が高く、福利厚生の充実度は採用・定着に直結します。
「中小企業だから退職金制度が充実していない」と思われがちですが、企業型DCを活用すれば少ない負担で従業員の老後保障を実現できます。導入企業には「企業型DC加入可」と求人に明記できるため、採用面でも差別化が図れます。
企業型DCを実施する事業主は、加入者に対して必要かつ適切な投資教育を行う義務があります(確定拠出年金法第22条)。具体的には、加入時・加入後も継続的に投資教育を実施することが求められます。
この義務は、多くの場合、運営管理機関(金融機関等)がサポート資料やセミナーの場を提供する形で対応可能ですが、会社として関与する体制が必要です。
また、制度導入時の手続き(規約策定・厚生労働大臣への承認申請など)と、月次の掛金拠出・記録管理のための運営管理コスト(運営管理機関への手数料等)も発生します。なお、2026年4月の法改正では、従来の「簡易型DC(簡易企業型年金)」が通常の企業型DCに統合され、中小事業主でも手続きが簡素化される予定です。
このセクションのポイント
- 事業主掛金は全額損金算入で、法人税の課税所得を直接減らせる
- 掛金拠出時に会社の退職金債務が完結し、財務リスクを抑えられる
- 採用・定着の福利厚生効果があるが、投資教育義務と運営管理コストも発生する
従業員(加入者)が企業型DCに加入することで、以下の税務上のメリットがあります。
(1)運用益が非課税
通常の投資では、運用で得た利益に約20%の税金(所得税・住民税)がかかります。しかし、企業型DCの運用中は運用益が全額非課税です。この「非課税の複利効果」により、長期間の運用では大きな差が生まれます。
(2)マッチング拠出した掛金が全額所得控除
従業員がマッチング拠出(加入者掛金)を行った場合、その全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除の対象になります(所得税法第75条、国税庁タックスアンサーNo.1135)。たとえば、月額10,000円(年間120,000円)を拠出した場合、所得税率20%の方なら年間24,000円、住民税10%を加えると年間36,000円の税負担軽減効果があります。
(3)受取時に退職所得控除または公的年金等控除が適用
(1)原則60歳まで引き出し不可
企業型DCの最大のデメリットは、積み立てた資産を原則として60歳まで引き出せないことです。急な資金需要が生じても対応できないため、生活費の予備資金は別途確保しておく必要があります。
(2)元本割れのリスクがある
運用商品に投資信託などリスク性商品を選んだ場合、運用成績が悪化すると積立元本を下回る可能性があります。元本確保型商品(定期預金など)を選べば元本割れは回避できますが、低金利環境下では運用益もほとんど見込めません。加入者自身が自分のリスク許容度に応じた商品選択を行う必要があります。
(3)iDeCoとの掛金合算上限
企業型DCに加入している従業員がiDeCoに加入する場合、両者の掛金合計に上限があります(現行:月額55,000円の範囲内)。なお、2026年12月の施行後は上限が月額62,000円に引き上げられます。
2026年最新版|企業型DCの掛金上限はいくら?法改正の変更点と計算方法このセクションのポイント
- 加入者(従業員)は運用益が非課税、マッチング拠出した掛金は全額所得控除
- 受取時は退職所得控除(一時金)または公的年金等控除(年金)が適用される
- 原則60歳まで引き出せないことと、運用リスクを自己負担する点がデメリット
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企業型確定拠出年金(企業型DC)は、掛金の全額損金算入による法人税節税と、従業員の老後資産形成支援を同時に実現できる非常に優れた制度です。2026年4月にはマッチング拠出の制限撤廃、12月には拠出限度額の月額62,000円への引き上げと、さらに活用しやすい制度へと進化します。
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【出典・参考資料】
本記事の内容は2026年6月時点の法令・通達等に基づいています。税制は改正される場合がありますので、個別の判断は必ず税理士・専門家にご相談ください。
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はい、企業規模を問わず導入できます。従業員が1名(役員のみの場合は対象外)から導入可能です。2026年4月の法改正で、従来の「簡易型DC(中小企業向けの簡易手続きDC)」が通常の企業型DCに統合され、中小事業主も取り組みやすい設計になります。
はい、加入できます。企業型DCの加入対象者は「厚生年金保険の被保険者」である従業員です。役員が厚生年金保険の被保険者である場合(一般的な代表取締役・取締役等)は、加入対象となります。経営者自身が加入することで、役員報酬の一部を掛金として損金算入できる点も大きなメリットです。
規約に定めた範囲内で設定できます。全従業員一律にするケースのほか、職種・勤続年数・役職などで区分ごとに設定することも可能です(不合理な差別を設けてはならない旨が法律に規定されています)。月額の上限は現行55,000円(他の企業年金なしの場合)ですが、2026年12月以降は62,000円に引き上げられます。
掛金を拠出した事業年度に損金算入できます。月払いで毎月拠出している場合は、各月の掛金がそれぞれ当該事業年度の損金となります。年払い・一括払いにする場合も、払い込んだ事業年度の損金算入が可能です。詳細は顧問税理士にご確認ください。
加入者が退職・転職した場合、積み立てた資産は他の年金制度等に持ち運び(ポータビリティ)できます。転職先に企業型DCがある場合はそちらへ移換でき、ない場合はiDeCoに移換することが可能です。会社に資産が残るわけではなく、あくまで個人の資産として管理されます。
現在、積立金に対する特別法人税(年率1.173%)は課税が凍結されています。凍結措置は繰り返し延長されており、実務上は課税されていませんが、将来的に凍結が解除される可能性はゼロではありません。最新の動向については税理士や運営管理機関にご確認ください。
既存の退職金制度(社内規程・中退共・退職金共済等)との併用も可能です。既存制度を一部縮小して企業型DCに移行することも、完全に別建てで追加することもできます。ただし、他の企業年金(確定給付企業年金・厚生年金基金等)がある場合は、掛金の合算ルールや拠出限度額の計算方法が異なります。設計段階で専門家に相談することをお勧めします。
運用商品を選ばない(未指図の)場合、「デフォルト商品」として規約に定められた商品に配分されます。デフォルト商品は元本確保型が多いですが、運営管理機関や規約によって異なります。会社は加入者が適切な運用を行えるよう、継続的な投資教育の機会を提供する義務があります。