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仮払金の中身、高額な場合は要注意

安易に処理しがちな仮払い処理に注意

投稿日:2022年06月09日

更新日:2023年06月09日

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この記事を読むのに必要な時間は約 5 分です。

仮払金とは「支出した時点では内容が確定していない」金銭を表す勘定科目で、経理お仕事をしていると比較的よく目にするものです。仮払金は適正に処理していれば問題ないのですが、税務調査などで調査官が注目しやすい勘定科目でもあります。
この記事では特に小規模事業所で安易に処理しがちな仮払い経理の注意点と、税務調査だけに留まらないリスクについて解説します。

仮払金の正しい処理とダメな処理

仮払金として金銭を支出するのは「従業員(あるいは役員)が経費を立替払いしなくて済むようあらかじめ適当な額を渡す」というケースが多いでしょう。
これ自体は何も問題はないのですが、肝心なのはその後の処理です。ここからは当たり前にすべき正しい処理と、後々問題になるダメな処理について考えてみます。

仮払金の支出とその精算

 仮払金はあくまで一時的に処理する勘定科目のため、通常であれば仮払いをしてから何日以内に精算するなどルールを定めるべきものです。 
出張旅費や交際費など経費の支払いのために渡された仮払金は、目的の支出を終えたら速やかに精算しなければなりません。つまり「仮払金」ではなく支払いが明確な「経費等」に振り替えられ、残ったお金は会社に戻すのです。経理職としては面倒な作業ですが、ここを厳格に運用しなければ内部統制が取れなくなるため、決して疎かにできない業務です。

小規模な同族会社で見られがちなダメな例

ルールがあり厳格に運用されている事業所であれば、一時的な計上である仮払金は、とくに問題にもならないでしょう。ところが事業所の規模が小さいほど仮払金がトラブルの温床になってきます。
きちんとした処理を行っていない事業所では、仮払いをしてから精算をしないまま放置したために、仮払金の残高が増えていってしまいます。また規模が小さい事業所では、社長がが「何に使うか言わないまま持ちだした金銭」が仮払金になったままというケースもあります。
いずれにしても、すぐ精算すべき仮払金が未処理のままであるのは良くないことです。

税抜経理における未払消費税・仮払消費税の適切な処理方法

税務調査で仮払金が注目される理由とそのリスク

法人の税務調査では、売上の計上漏れがないか、架空経費がないかをチェックするほか、社長をはじめとした役員に関係するお金の流れも確認されます。その際に登場しやすい勘定科目が仮払金なのです。税務調査でどのように指摘されるのか、否認されたときどのような処分になるのか考えてみましょう。

精算されることのない仮払金

精算もされずの仮払金のまま残っているのは、仮払いを受けた従業員が倒れて長期入院するなど特殊な例を除いて、社長や役員に支払ったケースが多く見られます。 
「社長が持って行ったけど何に使ったか分からないから仮払いにしておこう」という場合など、しまいには処理のしようがなくなることもあるから困ったものです。
税務調査ではこのような仮払金について、未精算であれば「精算するつもりはあるのか?それとも出来ない理由があるのか?」を聞かれますし、精算されていたとしても個人的な支出が混在するケースであれば、精算の中身についてもチェックされます。

貸付金処理と役員賞与

未精算の役員仮払金が「精算されないもの」と認定された場合、その処分は「役員に対する貸付金」か「役員への利益供与」か、どちらかになります。
貸付金として処分される場合、いずれ当該役員が法人へ返さなければいけません。さらにここで問題になるのは「貸付金利息(認定利息)」です。税務調査で指摘された段階では貸付金だという認識はありませんから、会社としては貸付金利息をもらっていないはずです。
そのため合理的に計算した利息額を算出し、貸し付けた役員から利息を受け取る債権(未収入金)が発生します。未収入金として受け取れない場合は、その金額が役員に対する利益供与とみなされ給与所得となります。給与所得なので源泉所得税が課税されるうえ、法人役員の「定期同額給与」にあたらないことから、法人では損金不算入になります。
同様に仮払金が役員への利益供与とされた場合、その全額が役員の給与扱いとなります。精算した損金に個人的支出が入っていたときも、その金額も役員の給与となり、先ほどの認定利息と同じように源泉所得税の課税と、役員の給与は法人では損金不算入となります。
「社長が売上金の集金額をそのまま使ってしまい、仕方なく仮払金にしている」などのケースでは、かなり大きな金額が否認されることがあるので、そのような場合は金銭消費貸借契約書を作成のうえ「貸付金」に振替えておき、利息も毎月払ってもらうことが、多額の追徴課税を防ぐために必要です。

正当な仮払金の残高として認めてもらうには?

通常「仮払金」は、経費精算までの短期間だけ計上する勘定科目です。したがって短期間で精算することで税務調査での否認は避けられます。
また使途不明で「とりあえず仮払金」といった金額はそのまま放置しないことが重要です。
会社と個人のお金が区別しにくくなる個人事業主や会社経営者ですが、税務調査があった場合のリスクを理解してもらい、「仮払金」を適切に処理する経理を心がけましょう。

税務調査だけではないリスク

仮払金に着目するのは税務署だけではありません。実は金融機関から見ても仮払金とは疑念を抱く勘定科目なのです。仮払金は見方を変えれば「使途不明金」ともいえますから、融資する金融機関は「融資金の目的外使用」と解釈する可能性があります。
法人が金融機関から融資を受けるとき、運転資金や設備資金のように使用目的を伝えますが、仮払金や貸付金に残高があると資金の横流しをしていると解釈され、次回融資を受けようと思っても実行されない恐れも出てきます。

まとめ

経費支払のための仮払金であれば、必要な経費を支払った後に速やかに精算をし、経理処理をするだけです。
しかし小規模法人でやりがちな「とりあえず仮払いにしておく」処理は、期間の経過とともに内容の確認が難しくなるばかりか、その残高も大きくなってしまいます。
お金の流れを把握することが経理の大事な役割です。 安易に仮払金という勘定科目を多用しないよう気を付けましょう。

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このコラムの著者 : 舩田 卓

1972年愛媛県生まれのA型。 愛媛県立松山商業高校卒業後、東京IT会計専門学校に進学。 在学中に税理士試験を全国最年少20歳で合格。 そのまま専門学校の専任講師となり、税理士試験の受験指導を担当。 22年間務めた講師の道から飛び出しSMC税理士法人に入社。

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